goo blog サービス終了のお知らせ 

コバルトブルーのような風に包まれて

ミュージシャンの藤井風くん、好きなドラマについて、日常生活などを中心に書いてます。

連続テレビ小説『ちゅらさん』再放送を総括①

2024年10月30日 | 朝ドラ『ちゅらさん』

今年の4月から朝ドラ『ちゅらさん』がお昼に再放送されていて、23年ぶりに見ています。2001年の放送からもうすぐ四半世紀が経つんですね。そんな昔に放送されていたのだと思うと……時の流れの早さを感じます。その再放送がもうすぐ終わりを迎えます。最終回が終わる前に『ちゅらさん』のことをたくさん書こうと思います。続編も含めて『ちゅらさん』を振り返る記事を載せてありますので、興味のある方はがんばって読んで下さい。笑『ちゅらさん』大好きな朝ドラでした。当時は放送を見ながら笑ったり、泣いたり、感動したり、ホッコリしたり。現在も脚本家の岡田さんは素晴らしいドラマを生み出され活躍されていますが、岡田作品の中で私は『ちゅらさん』が一番好きです。やはり名作は何十年ぶりに見ても同じ感情が湧いてきて、私の記憶の中にこれからも残り続けていくものなのだと考えさせられました。

『ちゅらさん』では、えりぃと文也の純愛を最後まで変わらずに見ることができてとても嬉しかった。今でも文也くんがえりぃに小浜島のカジュマルの樹の下でプロポーズしたシーンは、朝ドラ史上一番ドラマティックで最高のプロポーズだったと思っています。再放送を見ても、やはり文也くんのプロポーズに感動して私は涙を流しました。また『ちゅらさん』から沖縄の自然や文化の魅力、命の大切さ、家族の絆、人と人が触れ合うことの大切さを教えてもらいました。そして令和の時代になって再放送を見ていると『ちゅらさん』が放送された平成の時代が逆に新鮮に思えました。令和では起こらないようなドラマが確かにありました。

当時の時代設定から計算すると、令和6年の現在は、えりぃは52歳、文也くんは53歳、和也は27歳になっています。今のえりぃたちの年齢を知るともうビックリですよね。笑 放送から23年が経って、50代になったえりぃと文也はどうしているのだろうか?世の中の生活環境は一変し、便利な時代なっていて、医療も進歩していますが、二人はきっと今も変わらず元気でがんばっていると思います。二人は今も小浜に住んでいるのだろうか?東京の一風館に住んでいるのだろうか?それとも、新天地にいるのだろうか?あぁ知りたいところです。

えりぃは、那覇のお母さんやおばぁのようにパワーアップしてがんばっているでしょう。笑 年齢的にすっかりベテランで病院に勤務しているなら看護部長になっているかもしれません。文也くんはもともと優秀で努力家だから超一流のベテラン医師になっているはず。そして先進医療に貢献していると思います。いろいろ想像は膨らみますが、どこにいても二人の天職が変わることはないだろうし、夫婦で支え合いながら幸せに暮らしているはず。二人の物語はこれからもずっと続いていて欲しいです。

続編を含めて『ちゅらさん』でラストシーンを飾るのは、えりぃと文也くん夫婦でしたが、えりぃが文也くんに伝える言葉は、視聴者へのメッセージになっていました。えりぃは、生きてるって楽しいし、おもしろいと言ってました。えりぃの明るさと笑顔に救われ、人生が変わった、元気をもらえた人はたくさんいました。ただえりぃのあまりの純粋さと天真爛漫さに戸惑った人も多かったと思いますが。笑 しかし、そんなえりぃもドラマの中では、何度も泣いたり悩んだり落ち込んだり。いろいろ困難に出会ってきました。そんな時、文也くんと周りにいる人たちに支えられて乗り越えることができました。どんな時代も助け合いながら生きていくことは大切なことだと思います。えりぃと文也くんは困難を乗り越え、常に新たな自分を見出しながら努力を重ねて成長してきました。えりぃと文也のような生き方を見習えば、時代は違えど私たちも充実した日々を送れそうな気がします。また『ちゅらさん』では平成という時代をドラマティックな展開で描いていました。まだ不便が当たりまえの時代の中で、えりぃたちは生きてきました。固定電話で小銭を用意して電話をかけていて、スマホもなかったわけで。それでも幸せに暮らしていた時代だったと思います。今は便利になりすぎてドラマティックなことが起こりにくい世の中になってしまいました。だから、平成ドラマはドラマティックな描写が多くておもしろく語り継がれるような秀作が多いと思うのです。

『ちゅらさん』は視聴者からの反響もあり、なんと『ちゅらさん4』まで続編が制作されました。朝ドラ史上、ここまでシリーズ化され放送することは異例中の異例でした。しかし残念ながら『ちゅらさん5』は実現しませんでした。憶測ですが、キャストが揃わなかったことが大きな要因だったような気がします。文也くん役の小橋くんは、突然俳優活動を休止して、今はクリエイティブディレクターにとして活躍していますし、おばぁ役の平良さんやえりぃのお母さん役の田中さんは亡くなりました。恵達役の山田くんも超売れっ子俳優になってしまいスケジュール的に出演は難しくなってしまって。でも、えりぃたちは今も視聴者の中で生き続けています。ヒロインの国仲さんと相手役を小橋くんにした制作陣には先見の明があったと思います。大人になったえりぃと文也くんに少年少女の面影が残っていたのは、国仲さんと小橋くんが当時22歳の若さで演じられたことが大きく、30代を演じていても爽やかで若々しい夫婦でした。またえりぃと文也くんの子供時代もよかったです。登場人物一人一人にスポットを当てて語りたいところですが印象に残った人物についてここで振り返りたいと思います。

①太陽のような存在となった文也くん

『ちゅらさん』は、子供時代のえりぃと文也くん、小浜で亡くなった和也くんを描いた第1週目がベースとなっていて、やがて大人になったえりぃと文也くんは結婚する。『ちゅらさん4』まで見終えて、キャスト陣で別人のように変わったのは間違いなく文也くんだ。

文也くんは、東京で生まれ、割と裕福で上品な家庭で育ってきた。仲良しの兄は難病を患っていて、両親は仕事を抱えながら和也くんの看病と家事をこなす日々だった。家族の苦労を知る文也くんが、親子ゲンカや兄弟ゲンカをするなんてまずありえない。学校で問題を起こすようなこともなかったはずだ。本編で文也くんは一風館の住人に家族の話をしたことがある。

文也「僕の場合は、家族でなんかしたって思い出はあんまり無くて。兄貴ずっと入院してたんで、父も母も大変だったと思うんですよね。でも家の中は全然暗い雰囲気は無くて、父も母も僕のこと考えてくれてたんだなぁと思って。子供心に僕もそういうところわかっちゃって。家の中でわざとふざけちゃったりして。笑って欲しいなぁて思ったりして。ませた子供だったかもしれないですね。」

文也くんは、友達とあまり遊ぶこともなく、兄の和也くんと過ごす時間を大切にしてきたように思える。和也くんの存在はとても大きく、兄弟の絆も強かった。しかし文也くんが小学校6年生の時に和也くんの病気が悪化する。入院中の和也くんは「最後の楽園」と書かれた小浜島「こはぐら荘」のチラシを手にする。死期が迫っていることを悟っていた和也くんは、小浜島で死を迎えたいと両親に頼み、和也くんの最後の願いを叶えようと母の静子さんは、和也くんと文也くんを連れて小浜島に行くことを決意した。

小浜にやってきた文也くんは、運命の人・えりぃと出会う。和也くんとえりぃはすぐに意気投合するが、人見知りで内向的な文也くんは、えりぃに遠慮気味だった。そして幼い文也くんにとって死期が近い兄と小浜で暮らすことはとても残酷なことだった。小浜に来た初日から堪えきれずに号泣してしまう。

そんな文也くんを明るく照らしてくれたのがえりぃだった。えりぃと過ごすうちに閉鎖的な心は開放され島に溶け込んでいった。そして天真爛漫で、かわいい太陽のようなえりぃにも惹かれていく。和也くんはそんな文也くんの気持ちに気づいていた。和也くんは、無人島で文也くんとえりぃに大人になったら結婚しろよと告げた。子供の思いつきと捉えられても和也くんは真剣だった。絶対に二人に叶えて欲しいと心の底から思っていた。それほど弟の文也くんの幸せを強く願っていたのだと思う。

純粋なえりぃは、和也くんの前で文也くんと大人になったら結婚する約束をした。えりぃのことが好きな文也くんも恥ずかしそうにしながら和也くんと約束をした。しかし翌日、和也くんは亡くなってしまう。数日後、えりぃと文也くんは海の見える丘に和也くんの木を植えた。文也くんは東京に帰ることとなり、二人はいつか大人になったら結婚しようと約束をして別れた。

文也くんにとって小浜は楽園の島となった。兄が亡くなって悲しい思いもしたが、それ以上に最後に兄と楽しく過ごせた喜びの方が大きかった。(だから文也くんは医大生の時に一度小浜を訪れている。)えりぃと別れた文也くんは、石垣に向かう船の中で医者になろうと決意した。東京に戻ってからきっと勉強を今まで以上にがんばっていたはずだ。そして徐々に内向的な文也くんに戻っていく。更に二年後、文也くんの父が事故で亡くなる。父と兄を失った文也くんの悲しみは想像を絶する。しかし文也くんは悲しみを原動力に変えて苦難を乗り越えていった。

文也くんは医者になるため青春のすべてを勉強に捧げた。努力を重ねた結果、現役で医学部に合格。医大では人に群れることなく勉学に励んでいた。小浜のえりぃのことは遠い昔の思い出に変わっていた。

ところが上京したえりぃと偶然再会。その夜、文也くんは小浜で過ごした思い出に浸りながらも、特別なこと起きるわけでもなく、えりぃとは再会したままだった。

えりぃと再会した頃、文也くんは同級生の遥と付き合っていたが、実際は付き合っているのかどうか曖昧な感じ。文也くんは、恋愛よりも医者になるための勉強を最優先にしていたが、遥は文也くんの傍にいられるだけで十分満足だった。ただ…文也くんはいつもクールで固い表情をしていて、笑顔を見せることはなかった。遥にも…母の静子にも…誰にも心を開いていなかった。

えりぃと再会してから4年後。内科の研修医になった文也くんは、看護婦になったえりぃと同じ病院で働くことに。その時、文也くんはえりぃと不思議な縁で結ばれていることを自覚する。

文也「人が死ぬの止められる医者になろうって。絶対そうなろうって決めたんだ。それだけ考えて生きてきた。えりぃはさ、どんなこと考えて生きてきたのかなぁ。」

文也くんは、えりぃには内に秘めた思いをさらけ出すことができ、無邪気な笑顔を見せていた。大人になった文也くんが初めて視聴者に見せた姿だった。この時点で文也くんにとってえりぃは特別な存在だったんだよね…。自覚のない文也くんはえりぃとは友達のままでいた。ところがえりぃから突然告白されてしまう。えりぃの告白はあまりにも純粋なものだった。

えりぃは子供の頃の約束をずっと信じてきた……文也くんは、えりぃの純粋な告白にどう答えていいかわからない。結婚の約束は遠い昔の話だと思っていて、えりぃとは数回しか会話を重ねていないし、えりぃのこともまだよくわからない。遠い記憶とえりぃの告白を重ねながら返事を導きだそうとしていた。

しかしえりぃの告白が、これまでの文也くんを大きく変えるきっかけとなる。えりぃが小浜島に滞在している時、奇跡が起きる。えりぃが無くしたスーパーボールが巡り巡って文也くんのところに辿り着く。スーパーボールを手にした文也くんは、これほどまでにえりぃと強い運命で結ばれているなら、兄との約束を果たして結婚するべきだ。えりぃと結婚すれば絶対に不幸になるはずがないと思ったのだ。文也くんは、遥に笑みを浮かべながら話しかけた。

文也「俺、兄貴がいてさ、ずーっと入院しててさ、親はやっぱり結構大変で、だから子供心に親にあんまり心配かけないようにって思っててさ、結局子供の頃から自分をどこか抑えてた。それでいつの間にか本当にそういう人間になっちゃったのかもしれないなぁ。でも、今さぁものすごくバカなことしてみたい。人にバカじゃないのって言われるようなことがしたい。してみたいなぁ。」

文也くんは内向的な自分と決別し、運命を信じてえりぃと結婚しようと決意する。そして急いで小浜にいるえりぃの元にとびきりの笑顔で現れた。

文也「えりぃ、結婚しよう。」

文也くんは、えりぃにプロポーズをして優しく抱きしめた。えりぃは感激して大号泣。こうして子供の頃に交わした結婚の約束は果たされた。そして結婚を決めてから交際を始めることに…えりぃと文也くんの常識外れの運命の恋が始まった。

えりぃ「文也くんは優秀だからもう一人前だと思うけどさ。私はまだ三分の一人前ぐらいだからね。」

文也「そっか。」

えりぃ「そっかって、そんなことないだろうとか言わないの?普通。三分の一っていうのはやっぱり少し謙遜して言ってるんだけどなぁ。笑」

文也「え、そうなんだ、ごめんごめん。なんかだんだん自分が壊れてくような気がするんだよなぁ。でも悪くないけど。笑」

えりぃのあどけない明るい笑顔と親しみやすさが、文也くんに多大な影響を与えていることがよくわかる。えりぃといる文也くんはとても楽しそうだ。固くクールな表情が消えて笑顔が増えていき、無邪気なところを見せるようになっていった。仕事の方も一人前になれるよう二人で励ましあっていた。二人はキャラ的にタイプは違えど、考え方や価値観は一致しているため衝突することがない。だから文也くんはえりぃといると気持ちが楽になれた。そう思うとやはりえりぃは強い影響力をもたらすスーパーヒロインなんだと思う。

文也くんは、遥にえりぃと結婚することを伝えた。遥はあまりにも短絡的な話に納得するわけがない。「二人の結婚は長続きしない、いつか壊れる、それまでは二人を見届ける。」と宣言。すると文也くんは意外な言葉を口にする。

文也「でも俺、今の自分嫌いじゃないんだ。えりぃに会ってからの俺、嫌いじゃないんだ。なんかわかんないけど嫌いじゃないんだ。」

文也くんの言葉は、遥より、えりぃといる時の自分が好きだと言われたような残酷さがあった。文也の言葉に遥は傷ついてしまうが、えりぃと文也くんの幸せを見守っていく側になっていく。

仕事のシフトがなかなか合わない二人だが、一緒に過ごすときはいつもラブラブ。

仕事で一人前になったえりぃと文也くんは東京と沖縄で結婚式を挙げた。すると二次会で容子さんや真理亜たちは、えりぃの想像を超えるような思いつきや行動で、何度も振り回され、面倒を見てきた大変だったと文也くんに打ち明けた。「疲れるよ。」「肩の荷が重い。」「強烈だ。」「心配すると自分が損する。」そんな言葉が飛び交った。

恵達「僕もやっと肩の荷がおりますよ。がんばってね、文也くん。笑」

文也「うん、がんばる。」

恵達は、破天荒な姉の面倒を見てきて、姉が迷惑をかければいつも頭を下げていた。笑 その役目が夫の文也くんに回ることとなり、結婚してから周囲に「すいません。」と謝ることが多い。笑 けれど文也くんはえりぃの本質をよくわかっている。えりぃは明るくがんばり屋で、周囲の人たちにいつも全力で寄り添う女性であることを。えりぃといて大変だとか、疲れると思うことは全くなくとても幸せだった。

人と群れるような経験がなかった文也くん。人見知りで気遣い屋のところはやはりある。結婚していきなり個性豊かな一風館の人々と暮らす不安は少なからずあったはず。けれども、えりぃが構築した温かい人脈のおかげで、文也くんは自然に一風館に溶け込むことができ、公私共に充実した日々を過ごしていた。えりぃと同じ夢を見たり、同じことを考えたり、同じことを思いついたり…。以心伝心な夫婦になっていく。

やがてえりぃと文也くんの間に息子の和也が生まれ、父となった文也くんは、外科医を目指すことをえりぃに打ち明けた。

えりぃ「でも大変じゃないの?今からじゃ。」

文也「うん、大変だよ。でも和也が生まれたことで何か新しいことに挑戦してみたくなったんだ。」

えりぃは、文也くんの新たな挑戦を快く賛成してくれた。自分に相談してくれたことが嬉しくて気恥ずかしそうな笑顔で喜んでいた。母になっても純粋なえりぃを文也くんは愛しく思うのだった。

文也くんは研修医からやり直すため、勉強の日々が続き、忙しさは増していくが、やがて優秀な外科医となり、後にえりぃを大病から救うこととなる。

和也が生まれて4年が経ち、幸せなえりぃと文也くんに初めて大きな試練が訪れる。息子の和也が心の病を患ってしまう。和也を心配するえりぃの心労は増すばかり。文也くんはえりぃと和也のことを心配していた。みんな元気で賑やかな古波蔵家ですくすく育ってきたえりぃと違い、幼少期からいくつもの困難を乗り越えてきた文也くんのメンタルはやはり強い。和也のことで苦悩するえりぃを優しく励まし、冷静に和也の病気も受け止め、親子で触れ合う時間を大切にしている。夫となり、父となった文也くんはえりぃを明るく照らす太陽のような存在になっていく。そんなある日、文也くんは容子さんから質問された。

容子「改めて聞くのもなんだけどさ、どう?恵里ちゃんと結婚して良かった?」

文也「はい。」

真理亜「変わった?あいつと結婚して。」

文也「変わりましたよー。全然違いますよ。えりぃって自然そのものみたいな子じゃないですか。だから一緒にいると、僕まですごく力が抜けるっていうか楽なんですよね。自然でいられるんですよ。肩の力が抜けて。全然カッコつけないでいられんですよねー。正直でいられるっていうのかな。なんか一緒に暮らしてて全然お互い嘘が無いって感じがするんですよ。

でも、時々力抜けすぎじゃないかなっと思うことがあって。男としていいのかなって思ったりするわけですよ。えりぃといると、ちょっとマイペースじゃないですか。だから、僕はひょっとして上手く扱われてるんじゃないかなーっと思ったりするんですよね。笑 それでもいいかなって思うんですよね。普段力抜けてても、いざというとき頼りになれればいいんです。いつか僕がえりぃを何かから救える。そんな気がするんです。だからそれまで、まぁいいかなって。そう思うんですよね。」

真理亜「でもさーほんと最近、もう文也くんは緩々な感じだよね。」

昔の文也くんなら、赤裸々に自分の本音を打ち明けることはなかった。今はためらうこともなく信頼できる人たちには心をさらけだせるようになっていた。本当に文也くんは変わったと思う。

その後、突然えりぃが和也を連れて小浜に行くと言い出した。文也くんはえりぃを信じて小浜行きを賛成した。東京に残った文也くんは、えりぃが作ってくれたお守りを持ち歩き、和也がよくなることを強く祈っていることがよくわかる。文也くんは運命を信じているのだ。

ところがえりぃは悪性の腫瘍があることを文也くんに隠して小浜に向かっていたのだ。その事実を知った文也くんは、気づいてやれなかった自分に腹を立ててしまう。わかった以上、いかなる理由があってもえりぃの「命」を最優先にしなければならない。とうとう小浜で倒れてしまったえりぃは東京の病院に搬送された。目が覚めたえりぃに文也くんは涙をこらえて大声で怒鳴った。

文也「ふざけるな!なんでだよ。子供の時におばぁに小浜で言われた言葉忘れたのかよ。”命どぅ宝”命が一番大切だろ。そうだろ!そう思って生きてきたんじゃないのかよ。だったらどうして自分の命大切にしないんだよ。何でだよ!!」

和也くんが亡くなった時、二人は命が一番大切だということを共有して生きてきた。

えりぃ「ごめんなさい…ごめんなさい……文也くん。ごめんなさい。」

文也「もうやめてくれよ。俺、嫌だからさ。えりぃいなくなるの、やだからさ。今度やったらえりぃとは一緒にいないからね。」

えりぃ「やだ。」

文也「バーカ。」

二人のこの会話。とても懐かしく感じる…二人の子供時代の面影が浮かんだ。そしてえりぃの手術は文也くんが執刀することとなった。手術前夜、文也くんはえりぃの病室を訪れ、ずっと内緒にしてきたことを告白した。

文也「子供の時、小浜にいた時さ、俺さ、ヤキモチ妬いてたんだ。えりぃは、俺より兄貴の方が好きなんじゃないかなって、ずっと思ってた。」

えりぃ「ははは。バッカだねー。笑」

文也「あー運命かぁ…。えりぃに出会えて良かった。」

文也くんは、この先いかなることがあっても、えりぃへの永遠の愛を誓うようなキスをした。文也くんのえりぃへの愛の深さがとても感じられた。

「いざというとき頼りになれればいい、いつか僕がえりぃを何かから救える。」えりぃの手術は無事成功した。そして和也の心の病を克服することができた。しばらくして上村家は小浜に移住して、えりぃと文也くんは夢だった島の保健室を始め、地域医療を志すことになった。小浜での暮らしに家族は溶け込んでいき、美しい自然と緩やかな時間の中で幸せな日々を送っていったのだ。

続編『ちゅらさん2』小浜島に住み始めて約1年ほど経った頃、医者としてまだ力量が足りないと思った文也くんはスキルアップがしたいと思っていた。

えりぃ「文也くん、あのさ、私になんか言いたいことある?注文とか、文句とか。」

文也「いや、別に無いけど。」

文也「え?なんか無いかって?いやぁ無いよー。無いとダメなの?」

えりぃ「ううん、そんなことないよ。いいよ無くたってねー♪」

続編でもえりぃの破天荒さは変わらない。笑 しかし、それは誰かのために役に立ちたいという強い思いがあるからだと文也くんはよく理解している。明るく優しく何事にも一生懸命にがんばるえりぃに文也くんが注文や文句なんて言うはずがない。

そんなえりぃも、東京で訪問看護の仕事と巡り合う。目標を見つけた二人は東京に帰ることに。二人の運命は新たなステージへと動き出した。えりぃが「結婚しようね。」と叫んだ堤防で大勢の人たちが見送ってくれた。どうやら文也くんは、子供時代のえりぃのことを思い出したようだった。

文也「よかったな。結婚して。」

えりぃ「はい。」

えりぃは笑顔で頷いた。文也が言ったこの言葉は、まさに本編に対しての大きなアンサーだと言える。

もともと優秀な文也くんは、病院で診療科を周りながら順調にスキルアップをしていた。だから続編では医者として深く落ち込んだり悩むシーンはない。逆に妻のえりぃは訪問看護を始めたけれど、患者から担当を代えて欲しいと言われ落ち込む日々が続いていた。文也くんは悩むえりぃを優しく励まし、安心感を与える頼もしい存在になっていた。

続編『ちゅらさん3』では、文也くんはますます明るく元気な姿を見せている。えりぃとの夫婦関係も良好だ。休日を利用して小浜に帰った時も、文也くんは無邪気な子供のように海に向かって叫んでいる。文也くんは、やっと青春を満喫しているように思う。

また珍しく文也くんがえりぃを怒鳴るシーンもあった。恵達と結婚し妊娠した祥子は、那覇で出産する予定だった。ところが突然、恵達が祥子の前から姿を消してしまう。恵達は地道に音楽活動していたがヒット曲に恵まれず、音楽から離れて配送作業の仕事をしていた。生まれる子供のために働いていたが、不安定な精神状態が続き、父親になることを怖れ、不安な気持ちを文也くんに打ち明けていた。

父親になった文也くんは恵達の気持ちが理解できた。ところが、えりぃは逃げ出した恵達への怒りが止まらない。一方的に恵達を責めまくり、文也くんの話に耳を傾けようとしない。「ちょっと聞けよ!」とうとう文也くんはえりぃに激しく怒鳴った。文也くんが皆の前で怒鳴ったことは初めてだった。

文也くんのおかげで祥子や周りを不安な思いにさせずに済んで、えりぃも冷静さを取り戻した。怒鳴った文也くんが頼もしくてかっこよかったと思うえりぃ。ポジティブな奥さんですね。笑

『ちゅらさん3』も、えりぃは複雑な事情を抱えた患者の担当となった。患者の母を心配する娘は看護するえりぃにも冷たくあたった。えりぃはその親子のことで悩み続けた。自分に何かできることはないだろうか…。文也くんは悩み続けるえりぃに声をかけた。

文也「いや、何か考えるとさー、何言っても無駄だからさ。えりぃは。」

えりぃ「何で?そんなことないさー。」

文也「あるよー。まぁ、わからないけど俺はえりぃを応援する。とにかく俺はえりぃを応援する。無条件に。ま、そうでもしないとやってけないでしょ。えりぃの旦那は。そうゆう運命なんでしょ?」

えりぃ「すいません。笑」

文也「なかなか素敵な愛の言葉だったでしょ?」

えりぃ「うん。ありがとう。」

文也「いぃーえ。」

文也くんが「無条件に」とえりぃにサラッと愛の言葉を話すところがとてもかっこよくて素敵だ。

『ちゅらさん3』では、文也くんの頼もしさは増して、えりぃを明るく照らしてくれる太陽のような存在として更に進化していった。

そして『ちゅらさん4』では、文也くんはますます進化した。日焼けして緩々さも増していて、すっかり沖縄の男になっている。小浜島の診療所でドクター文也は島民の健康を守っている。文也くんの進化はきっとこれからも続いていくだろう。

②真理亜の孤独な人生が大きく変わった

東京の一風館の住人でメルヘン作家の真理亜は、えりぃと対照的で、とてもぶっきらぼうでクールな女性。えりぃが一風館にやってくる前は住人との交流も特に無かったし、人と群れることが苦手だった。特にえりぃのようなタイプの人種は超苦手。えりぃの前ではいつも不機嫌そうにしていた。

真理亜は、複雑な家庭で育ち、悲しい過去を背負っていた。両親は有名な音楽家で裕福な家庭で育った真理亜だったが、両親は険悪な仲で、子供に愛情を注ぐ親ではなかったため優しさに飢えて育ってきた。そんな家庭環境の中でも、真理亜は自分の中にある優しさを忘れずに病弱で気弱だった妹のマチコの面倒をずっと見ていた。真理亜の子供時代は妹に捧げたようなものだった。

家庭環境は子供の人格を作り上げていく。真理亜は、冷え切った家庭で育ったこともあり、明朗快活な子供になれるわけがない。学校でも引っ込み思案で教室の隅にいるような子供だった。子供の頃の文也くんと似ていて、おそらく真理亜も学校が終われば、すぐに帰宅して妹と過ごしていたと思う。

やがて真理亜は、短大の時に書いた小説が認められ、メルヘン作家の道に進むこととなり、家を出て一風館に入居。両親や妹から解放された真理亜はようやく自由を手に入れた。これまで味わうことがなかった楽しい日々を過ごしながら、妹を思う優しさを忘れていく。しかし家に一人取り残された妹は病気を患い手術をして亡くなってしまう。孤独になった妹に優しくできなかった真理亜は、妹亡き後は黒い服を纏うようになってしまう、きっと妹への哀悼の思いがあるからだ。ひなたの生活から離れ、日陰のような生活を送るようになったのだ。えりぃが太陽なら、真理亜はまるで月のようだ。

真理亜は、えりぃと出会った頃は、ピュアで単純で後先考えず一生懸命になる子がこの世に存在するのだと驚いていた。えりぃの奔放さに巻き込まれながら、真理亜は周りにいる人たちに心を開いていくようになっていった。えりぃは、真理亜の孤独な人生を変えていったのだ。

初めは、えりぃが子供の頃に交わした結婚の約束をずっと信じていて、あまりにも幼稚で単純な考えみ大笑いして小バカにしていた。しかしどう言われようが、純粋な思いを貫くえりぃと関わるうちに、結婚の約束に興味を持つようになり、えりぃをモデルとしたメルヘンを書こうと思いつく。真理亜は密かに取材を重ねていくうちに、えりぃの初恋が成就することを願うようになる。えりぃは文也くんに思いを告白するが困らせて終わってしまった。そのことを知った真理亜は傷心のえりぃを小浜に連れ出した。そして、えりぃにモデルにした執筆中の小説ではハッピーエンドにしてあげると伝えた。その言葉から真理亜の優しさが溢れていた。

ところが予想外の展開となり、えりぃと文也くんは小浜で劇的なハッピーエンドを迎えた。真理亜は二人を遠くで見守りながら涙を流した。もしかしたら二人が結ばれることを誰よりも願ってたのかもしれない。奇跡の瞬間に立ち会えた真理亜は、今もえりぃと文也くんの運命の力を信じている。やがて、メルヘン小説『ガジュマルの樹の下で』を出版する。それ以降メルヘン小説家として精力的に執筆活動を続けていく。

真理亜は本当の家族とは家族になれなかったけれど、一風館の住人たちとは本当の家族になっていった。明るく楽しく優しさに満ち溢れた一風館で、真理亜は賑やかで楽しい幸せな毎日を送っている。容子さんやえりぃとは離れていても姉妹のように深い絆で結ばれていった。

真理亜の孤独だった人生は大きく変わり、えりぃや一風館の人たちとの出会ったことで豊かな人生となっていった。人の人生を変えてくれるのは、やはり「人」なんだと思う。そして真理亜はいつか大きな賞をもらえる大作家になれると思っている。

この記事についてブログを書く
« 連続テレビ小説『ちゅらさん... | トップ | 「Fujii Kaze Stadium Live “... »

朝ドラ『ちゅらさん』」カテゴリの最新記事