結婚という制度にとらわれずに元気くんと再出発した向井くんの妹・麻美。
最終話は、笑顔の麻美がたくさん見られました。実は麻美はカレーが苦手だったなんて。でも元気くんのカレーは世界一だと言ってた。そう言えるなんて愛だね。長く付き合っていても、まだまだパートナーの知らないところって結構あると思う。きっと一生かけて知っていくのかも。そしてパイレオに美和子がやってきた。もう向井くんとは気まずさもない様子だ。そして麻美と久しぶりに再会した。(10年ぶりかな?)美和子と別れる時に向井くんが取った行動が、彼女にとって大きな転機になったなぁ。美和子は心機一転、部屋を引っ越しすることに。
そんな美和子に麻美が言ったのは、「一人で頑張らなくてもいい。くだらない話して、一緒にいるだけで楽しくて頑張れるみたいな。そんな人がまた見つかったら、その人と人生歩んでみたらいいんじゃないかって私は思うかも。」美和子は笑顔で麻美にありがとうと伝えた。美和子は強くなったなぁと思う。
一方、坂井戸さんのことが好きだと自覚した向井くんは悩みに悩んでいた。坂井戸さんは出会った時は恋愛相談の相手であり、飲み友達となって、飲まなくても親しい友達になっていった…。親しさは深まっていく。そして坂井戸さんは、空にかかった美しい虹の写真を躊躇することもなく向井くんに送ってくれた。向井くんも坂井戸さんに送りたいと思っていた虹だった。その時、向井くんはモヤモヤしていた坂井戸さんへの特別な思いに気づいてしまった。最終話を迎え、ドラマのヒロインだったのは坂井戸さんだとわかった。
しかし、向井くんはもしも坂井戸さんに好きだと告白すれば、今の関係が崩れてしまうことをとても怖れていた。それほど向井くんにとって坂井戸さんは大切にしたい存在になっていた。また向井くんはこれまで坂井戸さんの恋愛の価値観を親身に聞いていただけに、告白してもその先がどうなるのかが想像ができた。向井くんは最終話に来てまた恋愛迷子になっていた。
向井くんと坂井戸さんの会社がコラボしたTシャツが好評で第二弾を作ることとなり、向井くんが大好きなデザイナーのところへ坂井戸さんと商談に行くことになった。仕事とはいえ二人三脚での仕事ができることは嬉しいことだった。ところが商談当日、アポを取っているにも関わらず打ち合わせが滞っていて足止めされた。二人は最初にランチに行くことにした。
向井くん「あーでも助かった。」
坂井戸さん「ん?」
向井くん「11時半からの打ち合わせっていつ飯行っていいかムズイよね。」
坂井戸さん「いつでもよくない?前後適当に?」
向井くん「えー?11時とかじゃ早すぎてまだ腹が欲してないし、かといって打ち合わせ中にお腹すくのも嫌なんだよなぁ。」
坂井戸さん「悩めるねぇ向井くんは~。」向井くんらしいと思いながら笑顔で話を聞いていた。
ランチの注文で坂井戸さんは向井くんと違う考えだった。
坂井戸さん「シェフのおススメなんだろうね?」
向井くん「んーね、他がハンバーグとパスタだからそれ以外かぁ。えー気になる。」
坂井戸さん「聞いてみようか?」
向井くん「え?聞いちゃうの?」
坂井戸さん「なんで聞かないの?」
向井くん「俺こういうのはさ、頼んでみて何が来るのか楽しみにしたいんだよね~。」
坂井戸さん「うっそぉ!食べたくないものじゃなかったら嫌じゃん!」
向井くん「え~でもそれも込みでドキドキしない?」
坂井戸さん「私はそんな博打打てないなぁ。」
向井くん「博打っておおげさだなぁ~」
坂井戸さん「え、料理来て、あーこれじゃなかったって思ったことはないの?」
向井くん「あー正直、あるね。そしてそれを怒られたこともある。」
坂井戸さん「ん。まぁいいや、聞かないでおく。」
向井くん「ねぇめんどくさがらないでよ。」
坂井戸さん「私は人生の選択は必ず自分がしたいの。」
向井くん「人生の選択ってランチのメニューだけで。」
坂井戸さん「そう?」
向井くん「でも坂井戸さんぽくはあるね。」
坂井戸さん「向井くんも向井くんぽいよ。」
向井くん「え?」
坂井戸さん「出たとこ勝負しちゃうとこ?ちゃんと聞いてから決めなよって心配になっちゃう。」
向井くん「まぁぶっちゃけおススメ聞いておいて、じゃあBのハンバーグランチでって言いにくいってのもあるんだよね。」
坂井戸さん「ん?」
向井くん「あ。この人おススメ気にくわなかったんだって思うでしょ?なんか悪いじゃーん。」
坂井戸さん「気ぃ使い過ぎだって、てか誰に悪いのかもわかんないし。」
向井くん「え?そうかな?」注文を聞きに店員さんがやって来る。
向井くん「えっとぉ本日のおススメってなんですか?」向井くんは意に反しておススメを聞いた。それは気まぐれで聞いたわけではない。坂井戸さんと話していて「おススメを聞いてもいいかもしれない。」と思ったのでは?そしてアンサーを聞くことで、相手の坂井戸さんにメニューを決める選択肢も増える。向井くんは確実に相手の気持ちを肯定しつつ、自分の気持ちを見出すことができる人になっていた。
店員「本日は魚介のリゾットとなります。」
向井くん「そうですか、じゃあそれで。」
坂井戸さん「私はパスタランチでお願いします。いいのに~聞かなくて。ロシアンルーレットでも良かったよ。」
向井くん「人生の選択だよ。」向井くんはふざけるように言った。注文をしただけでこんなに盛り上がって笑っていられる。二人は食事を待つ間も楽しそうにしていた。
向井くん(これだよ、やっぱ。俺たちはこんな感じがいい。この楽しさを失うなんてバカだよ。)
向井くん「(オフィスに行く時間)ちょうどいいね。」ランチした二人はお店を出た。
坂井戸さん「うん。どうだったおススメ?」
向井くん「おいしくいただきましたぁ。」向井くんはおススメに満足しているようだった。
そういえば10年前、向井くんは美和子とランチをしたことがあった。店を出てから向井くんがぼやいた。
向井くん「何か食った気がしないな~。いや~なんかナポリタンの気分じゃなかったからな~。いや、でも…他にピンと来るもんもなかったし。」
美和子「そんなにまずかった?」
向井くん「いや…別にまずくないけど。」
美和子「じゃあそんなこと言わないでよ、折角二人で食事するの楽しみにしてきたのに。」
向井くんは折角のデートを台無しにした。でも、今の向井くんはそんなことはもう言わないな。
坂井戸さん「ね、向井くんってさ、ひょっとして洋服屋さんとかで一回試着しちゃうとあれ?って思っても買っちゃうタイプ?」
向井くん「あー買っちゃうなぁ。なんか悪いじゃん、試着したのに買わないで帰るの。」
坂井戸さん「えー!そんなことお店は気にしてないのに。むしろどんどん試着して気に入ったものを買って欲しいよ。」
向井くん「アパレルのプロの人だったね。」
向井くんと坂井戸さんは、互いの価値観を肯定しつつ意見し合える親しい関係になっていた。でも坂井戸さんは向井くんに対して全く恋愛感情はない。そして楽しそうにしていた。ただ向井くんは、坂井戸さんと一緒にいる時間が楽しいけれど、このまま楽しいままでいいのか複雑な思いだった。
坂井戸さん「ってゆうか、世の中のあらゆることは試した方がいいんだよね?」
向井くん「あらゆることって?」
坂井戸さん「例えば恋愛にもお試し期間があっていいと思う。」
向井くん「え~恋愛のお試し期間ってどーゆう?」
坂井戸さん「あ~ほら、告白してお友達からってゆうあれは?あれもお試し期間じゃない?」
向井くん「あぁ」
坂井戸さん「でもそんなこと出来んの中高生ぐらいか。大人がお友達からってゆうのは無いね~。あーじゃあどうやってお試しすればいいんだろ?」
向井くん(えっと…俺はどんなつもりでこの話を聞いたらいいの?俺、今上手く笑えてますか?)
向井くんはこの話のようなお試し的なことを坂井戸さんに求めていた。坂井戸さんはこの時、向井くんの気持ちに全く気づいていないが、やがて向井くんを通して自分の考え方と向き合っていくことになっていく。「大人」というワードに縛られた価値観を持っている坂井戸さんの本質がこの会話から見えた気がした。
デザイナーから二度目の足止めを受けた二人。ゲームセンターにいて時間を潰す。ちょうどクレーンゲームコーナーを通った時、坂井戸さんがのかわいい!と言ってカブトムシ(かわいいか?)のクレーンに挑戦したが取れなかった。すると向井くんがクレーンにリトライしようとしていた。
向井くん「俺に任せろ。」
真剣な表情でクレーンを操作する向井くんの横顔から頼もしさ、かっこよさが見えた。坂井戸さんの表情も変わった。それは坂井戸さんが初めて見る向井くんの姿だったからだ。何も言わず真剣な表情でカブトムシを取ろうと何度もトライしていた。坂井戸さんは向井くんには負けず嫌いで頑固な一面があることをこの時知った。これまでは散々すねたり投げやりな向井くんを見てきただけに驚きの光景である。笑
でも第一話の向井くんだったら、坂井戸さんがカブトムシを取れなかったら中谷さんの時のように「こんなの取れないようになってんだよ。やめときなよ。」って絶対言ってたと思う。そもそも向井くんはカブトムシがかわいいとは思っていない。でも坂井戸さんはカブトムシをかわいいと思ってる。だから向井くんは坂井戸さんに一番喜んでもらえることを選択してクレーンにトライした。そんな向井くんはかっこいい。カブトムシをゲットした向井くんは坂井戸さんに渡した。嬉しそうにカブトムシを持って歩いてる坂井戸さんを見つめながら向井くんはまた妄想していた。
向井くん(このまま気持ちを伝えずに友達として付き合っていくとして…。そんなある日のことでした。)
向井くん「え?もう会えないの??」
坂井戸さん「パートナーにとって異性の友達ほど嫌な者はないから。」
向井くん「そんな!」
坂井戸さん「さよなら、向井くん。永遠に…。」
向井くん「坂井戸さーーん!!待って、行かないで。」
向井くん(気持ちを伝えなくてもいつかはどこかへ行ってしまうのかー!どうしたらいいんだよ~。)
以前、坂井戸さんは元気くんと一緒に向井くんの話をしていた。
元気くん「お兄さんなら適当な相槌うってくれるのに。マジで適当だけど」
坂井戸さん「向井くんってそんな感じする。悪気ないんだけど適当、優しいんだけど適当。笑 いや頑張ってんだけどね、なんかフワフワっとしてて着地しきってないっていうか宙に何ミリか浮かんで歩いている感じ。大丈夫なのか~。笑」しかし今の向井くんはそうではない。ちゃんと着地して相手と向き合っている。
向井くん(坂井戸さんに恋人が出来たら、俺はお払い箱になるのか。だとしたら今勇気を出して…読めない坂井戸さんの心が。どうするのが正解なんだ、何か…何か手掛かりは…。)
向井くんが美和子と復縁しそうな流れになった時、坂井戸さんはパートナーの異性の友達ほど嫌な者はないと言って頑なに向井くんに会うことを避けていた。それ知っちゃってるからなぁ。泣 坂井戸さんの情報量があまりにも多すぎて向井くんは無駄に臆病になってしまっているのだ。ゲーセンを出て二人はデザイナーのオフィスまで歩いていた。
坂井戸さん「ねぇ夏休み取った?」
向井くん「ううん、まだ。坂井戸さんは?」
坂井戸さん「私もまぁだ。」
向井くん「どっか遊びに行く?」
坂井戸さん「え?二人で?」
向井くん(くー早速間違えたぜ。)
向井くん「どっか遊びに行くって言っても大人ってさ、食べるか飲むかしかないよね~世の人々何してんだろ?大人は豊島園のプール行こうって言わないもんね~。」
坂井戸さん「豊島園ね、懐かしい。」
向井くん「もう行けないんだよ。豊島園も。プールも。」
坂井戸さん「や、プールは行けるでしょ?行ったらいいじゃん。」
向井くん「行ける?33歳で。」
坂井戸さん「なんでよ。行きたいならいけばいいじゃない?」
向井くん「誰と行くのよ?あーあ、子供でもいればなぁ。あ、そうゆうのもあるんだなぁ。」
坂井戸さん「ん?」
向井くん「あ、いや子供がいれば、もう一度全部体験できんだなと思って。ほら子供の頃に楽しかったイベント。誕生日会、クリスマス会、入学式、夏休みの旅行に、体育祭、文化祭とかそうゆうの。子どもがいれば親の立場でもう一度全部経験できるの。めっちゃ嬉しくない?」
坂井戸さん「いい子供時代だったんだね。」坂井戸さんは向井くんの話を苦笑いしながら聞いていた。
向井くん「子供の時って楽しいこと多くなかった?給食にカレー出ただけで一日幸せだったし。そっか、だからか。いや色んな人生あるのわかってるんだけど。俺、未来の想像すると漠然と普遍の家族像浮かんじゃうんだよね。それは俺がまぁまぁ楽しい子供時代を過ごしてきたからっていうのもあんのか。本当に望んでるわけじゃないんだけどね。」
坂井戸さんは向井くんの話を聞いていたが共感することはなかった。向井家が素敵な家庭だったことはドラマを見ててすごくわかる。いい家庭に育ってきたから向井くんに結婚して家庭を持つことが幸せの選択肢の中にあると思ってしまうのは納得だ。けれど向井くんはそれはあくまでも選択の中の一つだと思っている。結婚して家庭を持っても幸せになるとは限らないことを向井くんは学んできた。
坂井戸さん「向井家はいい家庭なんだろうね。」
向井くん「坂井戸さんちは?…あー言いたくないなら全然。」
坂井戸さん「ううん。私は両親のことは嫌いじゃないよ。でも父と母はあんまりいい関係じゃなかったかなぁ。だから私は離れてる方が楽だし。私はさ、いつの間にか一人が一番楽になっちゃったんだよね~。」
向井くん「でもこの先付き合ったりはするよね?」
坂井戸さん「どうだろ?わかんない。ほら私、素を見せるの苦手だからさ。」
向井くん「でも素を見せられる人もいるんじゃない?どこかで。」向井くんは坂井戸さんから勘違いしないでよ的な顔をされた。
向井くん(やべ、責め過ぎた!)
坂井戸さん「どうだろ、なかなかね。」
デザイナーのオフィスでまさかの三度目の足止めを喰らった。二人はランチをしたカフェに戻った。
向井くん「そういえば、坂井戸さんさ、いつから一人暮らしなの?」
坂井戸さん「大学入った時から。」
向井くん「ふーん。」
坂井戸さん「向井くんはずっと実家なの?」
向井くん「うううん、広島に転勤してた時は一人暮らししてた。」
坂井戸さん「あーそうなんだ。」
向井くん「それで東京戻ってきて、家見つける間だけ実家にって思ってたんだけど、あれ?何でだったみたいな?」
坂井戸さん「あ。そう、そうだったんだ。」
向井くん「煩わしいこともあるけど、つい楽だしやっぱ人がいるのは嬉しいから未だに。正直さ、この歳で実家暮らしって言うと形見狭いんだよ。だからそろそろ出ないとは思ってんだけど自立できてない男みたいで引くじゃん。」
坂井戸さん「うーん。私はそうは思わないなぁ。一人暮らしか実家暮らしかで、自立してるかしてないかが決まるわけなくない?実家暮らしだって自分のことを自分でやってれば何も問題ないと思う。みんなそれぞれの世界で一人前の大人として頑張って、そしてみんなそれぞれの家へ帰ってく。それでいいんじゃない?」
向井くん「うーん、でも女性の33歳で実家暮らしは全然いいような気がするんだよ。」
坂井戸さん「向井くん、33歳はただの33歳だよ~。男性にとっても、女性にとっても33歳は33歳でしかない。年齢に囚われてるね~。」
向井くん「だって大人っていろいろ大変じゃん。さっきの話じゃないけど、子供の頃のように無邪気にはいられない。」
坂井戸さん「そうかな?私は楽しいことも増えてると思うなぁ~。例えば、さっきからちょっと思ってたんだけど、あの椅子うちにあるのとおんなじなの。」
向井くん「あ、そうなの?あんなおしゃれな家具のある家なんだ。いいね。」
坂井戸さん「そういう家具集めたりとか、自分の周りを自分の物で満たされるのって、大人の特権じゃない?私は大人になってよかったなって思うこといっぱいあるなぁ。外ではこうやって向井くんと話したり、楽しい時間を過ごせるでしょ?だから家では一人の時間を堪能したいみたいなのがいいんだよねぇ。」
向井くん(それは、俺と話す今の時間を評価してくれているのか…それとも俺とは今のままで違う関係になりたくないという牽制なのか?)
向井くんはまた複雑な思いになっていた。坂井戸さんの一つ一つの言葉と向き合いながら、これまでのことを振り返りながら坂井戸さんの気持ちを考えていた。
「ありがとう、今の私を褒めてくれて」坂井戸さんが向井くんに言ったこの一言は深い。向井くんをとても信頼しているのだとすごくわかる。
これまでの坂井戸さんを見ていると坂井戸さんは、とてもしっかりしてるし、意見もはっきり言うから相談するよりされる側の女性だ。仕事も完璧にこなせてきっと有能な社員だと思う。でも坂井戸さんのように有能すぎると仕事がこなせて当たり前だと思われがちだ。でも…坂井戸さんは隠れたところで努力をして悩んだりしている。スルーされてるけれど本当は努力して頑張った自分を褒めてもらいたい人だと思う。でも向井くんには自分を褒めてもらいたいという感情が坂井戸さんに生まれていた。
4度目のデザイナーオフィスに向かう時、二人は街頭インタビューでカップルと間違えられた。
坂井戸さん「男女が一緒にいるとさーすぐ恋愛に結び付けられちゃうよねー。男女が行き着くところは、結局大人の恋愛しかないって言われてるみたいで、なんかちょっと悲しいよね。」
坂井戸さんは向井くんのことを全く異性として意識はしていない。しかし坂井戸さんへの友情と恋愛感情を行き来している向井くんの心中は複雑だった。デザイナーのオフィスに訪れ、向井くんの熱いプレゼンで商談は見事に成立した。こうして向井くんが仕事をしたかったデザイナーとのコラボが決まり二人は大喜びで帰ろうとしていた。
坂井戸さん「仕事で向井くんと向き合えて、普段の向井くんとは違う熱い一面を見られて結構感動してる。やっぱりさ、好きなものを好きって真っすぐ言えるって素敵なことだと思うし、相手にもそれは伝わるんだよ。」坂井戸さんが無邪気に喜ぶ顔を見ていたら、向井くんは思いを抑えられなくなってしまった。
向井くん「好き!」
坂井戸さん「へ?」
向井くん「俺、坂井戸さんのことが好きえっと・・・ごめん、あっ違う。」向井くんは、勢いでいきなり告白してしまったことでテンパってしまう。
坂井戸さん「違う?」
向井くん「いや違わくはないんだけど、言わない方がいいと思っていたのに…ごめん。」
坂井戸さん「えっとぉ…。」坂井戸さんから笑顔が消えた。そして戸惑っている表情だった。
向井くん「困るよね?」
坂井戸さん「うん、正直、すごくすごーく戸惑ってる。」
向井くん「そうだよね。困らせたくないなーって思って色々考えてたのに、ごめん。ほんとにごめん。あ、じゃあここで今日はありがとうございました。お疲れさまでした。」
坂井戸さんの困った顔を見てしまった向井くんは、その場から足早に去っていった。向井くんからの突然の告白に戸惑う坂井戸さん。まさか仕事の帰り道に友達の向井くんから告白されるとは…。しばらくその場に座り込んでしまっていた。そのまま会社に戻った向井くんは告白したことをとても後悔していた。これで坂井戸さんとの親しい関係が終わってしまったと思っていた。
向井くん(友達を失ったって、恋を失ったって、ただ生きていけばいいだけ。昨日と同じように。何も変わらない明日を。)仕事の帰り道に向井くんは、問いかけながら心の中で自分のこれからと向き合っていた。
向井くん(どうするのが正解なのか?このまま仮に80歳生きるとして、あと47年。彼女がいる人生、いない人生、結婚する人生、独身の人生。どんな人生だって有りだって本当に思える。だけど、今…目を閉じて思い浮かぶのは…思い浮かぶのは…。)
第一話でも同じことを問いかけていたが、このドラマの最大のテーマである人生で向井くんの望むもの、一体何が欲しいのか最終話で答えがハッキリした。恋愛迷子だった向井くんが思い浮かんだのは…
坂井戸さんの笑顔だった。 坂井戸さんとの大切な時間だった。坂井戸さんと一緒にいたいのだ。
坂井戸さんと恋愛や結婚という関係性ではなく、定義づけされない、それぞれの人生の価値観を尊重し、互いに向き合ってベストな人生を楽しんでいきたい。向井くんが考えに考えた末に出した結論に至った。向井くんは、もう一度、自分の気持ちをきちんと伝えようと思った。坂井戸さんならきっとパイレオにいるだろう。向井くんは勢いよく坂井戸さんの元へ向かおうとした。しかしはずみで脚がつってしまった向井くん。笑 あーやっぱりコメディだぁ。ダサい。めっちゃダサい。でもそんなところが向井くんらしいし、愛しくなる。笑 向井くんはタクシーを頼んでパイレオに向かった。最初からタクシーで行けよ。(オイ)
向井くんは慌ててパイレオに向かった。すると店の外で坂井戸さんが待っていた。
坂井戸さん「来るんじゃないかなって思ってた。」
向井くん「ごめん、さっきは。」
坂井戸さん「ううん。」
向井くん「あれで終わりはそれは嫌だから。俺さぁ自分がどうしたいのか何が欲しいのかずっとわからなかった。だけど、今、目をつぶって思い浮かぶのは坂井戸さんなんだ…。くだらない話だとしても、俺がバカなこと言って怒られるんだとしても、一日の終わりには坂井田さんと話がしたい。俺、坂井戸さんと過ごす時間好きなんだ。いやぁ俺の人生ってさ、今までは何となくのイメージでいろんなことを決めていて、目の前の人を見ていなかったんだよね。相手が何を望んでいるのかどう思っているのかちゃんと相手の方を向いてなかった。あ、もちろん人と人は他人同士だしホントのところはわからないんだと思う。でもそれは悲観するようなことじゃなくて自分と考えや価値観が違っても、全部わかりきらなくても違うってことを理解して向き合っていきたいんだ。だから…。」
向井くんは椅子から立ち上がって、坂井戸さんに背中を向けた。顔を覆って奮い立たせるように一呼吸ついてから、もう一度坂井戸さんの方を向いて告白する。
向井くん「俺は坂井戸さんと向き合いたい。坂井戸さんのことが好きです。」
坂井戸さん「ううん…正直、だいぶ困ってる。何て答えたらいいか。はっきりしたことは言えないけど(椅子から立ち上がる)でも、さっき向井くんと別れてこのまま会えなくなるのは嫌だなって思った。…から今ここにいるんだけどね。私も向井くんと過ごす時間が好きだし、何か素の自分でいられるみたいだし。笑 ありがと。向井くん。」いつもと変わらない坂井戸さんの笑顔と感謝に安堵する向井くんだった。
坂井戸さんとの大切な時間、一緒にいられる喜び。それが定義づけのない関係性であっても坂井戸さんとこれからも向き合っていきたい。坂井戸さんもそんな向井くんの思いがとても嬉しそうだ。
向井くん「はぁ言えた…。言えて良かったーぁ。痛っ!あ、たっ!」
坂井戸さん「え~足どうしたの?」
向井くん「あ、いやさっき走ろうとしてつっちゃって。」
坂井戸さん「わぁおじさんだ。笑」
向井くん「ちょっと年齢に囚われてるよ!いった!」
坂井戸さん「じゃあ私、お店に入るね。」坂井戸さんはいつもと変わらない態度で向井くんを店に誘った。
向井くん「あ!ちょっと!」相変わらず向井くんのダサダサ感は拭えないけど、坂井戸さんはそんなとこが向井くんらしいと思っただろうし、そんなところも向き合おうと思ってくれた…ってことだよね?笑
向井くん(人はみんな幸せになるために生きている。だけどその幸せがどこにあるのかどうすれば掴めるのかはわからなくって悩んだり迷子になったりする。でも、本当は幸せっていうゴールはどこにもないのかもしれない。ゴールはどこなのか、誰かが決めてくれたら楽だなって思っちゃうこともあるけどやっぱり自分で決めた道を。時には一人で。時には誰かと一緒に進んでいこう。)
向井くん「なんかさ、大人って思ったより大人じゃなくて楽しいね。」
坂井戸さん「ん?なんか私似たようなこと言った気がする!え?楽しくないようなこと言った気がする。」
ドラマのラストシーン。いつものようにパイレオのカウンターで向井くんと坂井戸さんはカレーを食べている。二人で楽しい時間を共有して言いたいことを言っている。人生いろいろあるけれど、自分の幸せは自分で見出していく。それが大人の特権であり楽しさなのかもしれないし、また大人という枠に縛られない生き方があってもいい。最終話で向井くんが見つけた幸せの答えがこのドラマで描きたかった全てだと思う。