コバルトブルーのような風に包まれて

俳優の赤楚衛二くん、ミュージシャンの藤井風くん、好きなドラマについて、日常生活などを中心に書いてます。

「こっち向いてよ向井くん」Blu-rayBOXを手にして

2024年01月30日 | ドラマ『こっち向いてよ向井くん』

本日、昨年夏に放送されたドラマ「こっち向いてよ向井くん」のBlu-rayが届きました。ドラマが終わった時、向井くんのBlu-rayを買おうと決めていました。連ドラのBlu-rayは高額ですよね。だから風ちんのBlu-rayやグッズを買うことは見送ったままです。

「こっち向いてよ向井くん」のBlu-rayを本当に買ってよかった、手にしてよかったと思いました。どれだけ思い入れがあるドラマだったとしても、長い時間が経てばドラマの熱は冷めていき、たくさんのドラマが生まれていく。「こっち向いてよ向井くん」も過去作として埋もれていくと思います。

でも赤楚くんGP帯主演のドラマだったし、時が経っても自分の中で埋もれさせたくない気がして…。視聴してきた人たちが忘れてしまっても、私は忘れたくない。向井くんを手元にずっと残して置きたいと思いました。

ドラマのBlu-rayBOXは作品によって中身に大きな開きがあります。本編がディレクターズカット版だったり、特典映像が盛り沢山だったり、ブックレットが手厚いものだったり。特典が盛りだくさんであればあるほどお得感を感じますよね。でも、私の場合は本編に重きを置いてBlu-rayを買ってます。

ちなみに「こっち向いてよ向井くん」のBlu-rayBOXの特典は他作品と比べると盛り沢山とは言えません。しかしメイキング映像が全体的にユーモアに富んでてアットホーム感を楽しめました。座長の赤楚くんの現場の様子もたくさん見られたし、最後の最後には笑える赤楚くんも見られました。メイキングを見ていると赤楚くんはキャストやドラマ制作陣からとても愛されていたように思えました。ほわ~んとしていた座長でした。笑

温かく楽しい現場であっても、赤楚くんは主役だから膨大なセリフを覚えたり、撮影で苦労したところもたくさんあったと思います。苦労の中でも場を笑顔にしていたことはメイキングを見ていて感じました。

今は配信であっても見られないドラマがたくさんあります。キャストが事件や問題を起こせば、ドラマが即見られなくなったりします。向井くんのドラマもそうならないとは限らない。そういった大人の事情で好きなドラマを見られなくなることは寂しいし悲しい。Blu-rayはそうならないための保険のようなものかもしれません。

今、ドラマのことで悲しいニュースが飛び交っています。あえてそのことに触れませんが「こっち向いてよ向井くん」が何のトラブルもなく、ドラマに関わった人たちが誰も傷つかずに無事終えることが出来、Blu-rayを手に出来たことは幸いが重なったことだと思わなければなりません。今年初めてもらったギフトを大切にしようと思います。

「こっち向いてよ向井くん」のブログ記事をたくさん書きましたが、Blu-rayを手にしたことで向井くんの記事はここで完結することになります。

ありがとう。向井くん。

「こっち向いてよ向井くん」永遠に…。


こっち向いてよ向井くん

2023年11月18日 | ドラマ『こっち向いてよ向井くん』

もうすぐ12月を迎えますが、今頃、今年の夏ドラマの感想を書いてます。汗

日テレ水曜10時枠に放送されたドラマ「こっち向いてよ向井くん」について振り返ろうと思う。私が今年一番心に残った満足度の高いドラマだった。

最終話が近づくと、あー終わって欲しくないなぁと思ったし、ドラマが終わってからかなりロスに陥りました。それほど大大好きなドラマになってしまったことに自分でも驚いてる。

このドラマはラブコメディなので笑いがたくさん盛り込まれていて、毎週笑わせてもらった。しかし、ただのラブコメではなく、ヒューマン的要素も丁寧に織り込まれたドラマだったと思う。令和の時代、コロナ渦を経て、人はどう生きていきたいのか、どんな幸せの形を望んでいるのか。最終話で主役の向井くんを通じて答え合わせが出来たと思った。私もそこからたくさんの学びをもらうことができた。

「こっち向いてよ向井くん」は全10話の放送だった。私のブログであらすじと感想を幾つかまとめて載せようと思う。向井くんのドラマはセリフが最も重要なのでシナリオのように一部書き起こすことにした。書き起こしてみるとこのドラマはセリフの長さが半端なく、その作業と感想をまとめるのがとても大変で…長い時間を費やした!大変だとわかっていながらも、このドラマのことだけは「舞いあがれ!」のようにどうしても書き残しておきたかった。これから自分が何かに行き詰った時に、迷った時に、どう進めばいいのか。その時にブログで向井くんのドラマを思い返せば、また前に進めそうな気がする。

というわけで、興味がある方やドラマを見ていた方は覗いてみてください。

「こっち向いてよ向井くん」のヒロインは10年前に別れた元カノ美和子だと思っていた。おそらく最終的に向井くんが数々の恋愛を経て大人になり、美和子ともう一度やり直していく展開になると思っていた。ところが蓋を開ければヒロインは美和子ではなく、恋愛ご意見番の坂井戸さんだった。でもその流れはとても腑に落ちた。現実的だと思った。その現実と向き合ってきたのが主人公の向井くんとドラマを見ていた視聴者だ。

向井くんは美和子と10年ぶりに再会して、昔のように一緒に過ごす日々を重ねながらも、美和子とは終わりにする決断をした。10年前の元カノと会っても、あの頃のように上手くいかないのは自然なことだと思う。10年間もあれば人は誰でも変わる。周りにいる人も、環境も変わる。向井くんは10年前のままで美和子といられるわけがない。もし美和子がヒロインで終われば、恋愛ドラマの王道というか、現実味が全く感じられないただのファンタジーで終わっていたと思う。他のドラマや映画でファンタジーのようなパターンはありかもしれないけれど、「向井くん」は内容的に現実味があるからそういう流れにはならない。

やっぱり人は現実と向き合って生きているから、向井くんも現実の中で坂井戸さんと出会って、恋愛迷子から抜け出して、人とちゃんと向き合うようになっていった。だからそういう意味では初回から向井くんを導いていった坂井戸さんが真のヒロインだと思った。

最終話は成長した向井くんと坂井戸さんの関係はどうなるのか?最後の最後まで予想できない展開だった。ただこのドラマでは絶対ファンタジーのような終わり方はしないと思っていた。予想は的中し、最終話はこのドラマらしい終わり方だった。これぞ人生よ!感がめっちゃあった。そして向井くんが坂井戸さんに伝えた気持ちは、視聴者に向けての愛あるメッセージだと私は受け止めている。

向井くんは坂井戸さんに恋愛感情はあるけれど、坂井戸さんにはその感情はない。向井くんのことは大切な友人だと思っていた。また坂井戸さんは男女の関係は恋愛や結婚で括られがちなことに抵抗を感じている。だから向井くんは坂井戸さんの捉え方をちゃんと肯定していた。坂井戸さんの気持ちを大切にして、今の自分と向き合いながらどうしたいのかを見い出した。

向井くんは、坂井戸さんとは関係を定義づけせず、それぞれの人生の価値観を尊重し互いに向き合って楽しんでいきたいと思ったのだ。その上で自分の気持ちを伝えた。

「自分がどうしたいのか何が欲しいのかずっとわからなかった。だけど、今、目をつぶって思い浮かぶのは坂井戸さんなんだ…。くだらない話だとしても、バカなこと言って怒られるんだとしても、一日の終わりには坂井田さんと話がしたい。俺、坂井戸さんと過ごす時間好きなんだ。」

「俺の人生ってさ、今までは何となくのイメージでいろんなことを決めていて、目の前の人を見ていなかったんだよね。相手が何を望んでいるのかどう思っているのか、ちゃんと相手の方を向いてなかった。もちろん人と人は他人同士だし、ホントのところはわからないんだと思う。でもそれは悲観するようなことじゃなくて自分と考えや価値観が違っても、全部わかりきらなくても違うってことを理解して向き合っていきたいんだ。だから俺は坂井戸さんと向き合いたい。坂井戸さんのことが好きです。」

向井くんは、坂井戸さんに「俺と付き合って下さい!」とは言ってない。恋愛感情は一方的なわがままだから、坂井戸さんに何かしらの答えを強制的に求めてないし、負担をかけることもしていない。それでも向井くんは坂井戸さんが告白されて困っていることはわかっている。

そんな坂井戸さんの気持ちを考えて行動して気持ちを伝えた向井くんはすごい!って思った。恋愛関係にとらわれず、好きな相手と向き合って、お互いにとって一番幸せな形を見出したのだから。坂井戸さんに告白したことは間違いじゃなかったと思う。

坂井戸さん「正直、だいぶ困ってる。何て答えたらいいか。はっきりしたことは言えないけど。でも、さっき向井くんと別れて、このまま会えなくなるのは嫌だなって思った。私も向井くんと過ごす時間が好きだし、何か素の自分でいられるみたいだし。笑 ありがと。向井くん。」

向井くん「はぁ言えた…。言えて良かったーぁ」

いつもと変わらない坂井戸さんの笑顔に安堵する向井くん。坂井戸さんは向井くんに告白されて戸惑いながらも不快ではなかった。むしろ定義づけすることなく、これからも自分と向き合いながら楽しく過ごしていこうと言ってくれた向井くんへの感謝の気持ちを感じた。

向井くんの最後のモノローグは、「人はみんな幸せになるために生きている。だけどその幸せがどこにあるのか、どうすれば掴めるのかはわからなくって悩んだり迷子になったりする。でも、本当は幸せっていうゴールはどこにもないのかもしれない。ゴールはどこなのか、誰かが決めてくれたら楽だなって思っちゃうこともあるけど、やっぱり自分で決めた道を。時には一人で。時には誰かと一緒に進んでいこう。」

向井くん「なんかさ、大人って思ったより大人じゃなくて楽しいね。」

人生いろいろあるけれど、自分の幸せは自分で見出していく。それが大人の特権であり楽しさかもしれない。大人という枠に縛られない生き方であってもいいのだ。向井くんが見つけた幸せの答えは、いつものようにパイレオで仲良くカレーを食べている向井くんと坂井戸さんに反映していると思った。

このドラマから、令和の時代に大人の男女はどこへ向かうのか、これからの幸せの在り方を考えるきっかけをもらった。昭和生まれの私は、子供たちに結婚して欲しい、孫を生んで欲しい、そして家族に囲まれながら賑やかに過ごしたい…。そんな願望があって、その願望を子供たちに求めていた。でも…それは親のエゴだ。私の願望が、本当に子供たちが望む幸せなんだろうか?例え私が望む人生ではなくても、子供たちは自分の幸せを見出していくはずだ。

結婚もあり、独身もあり、恋人がいるのもあり、いないのもあり。自分と向き合いながら辛いことや苦しいことがあっても、性別や年齢などの関係性にこだわらなくても向井くんや坂井戸さんのように楽しい時間を過ごせられる相手が近くにいてくれたら最高だ。私も、自分の価値観を押し付けるのではなく、子供たちの気持ちと向き合っていかないと。

ドラマ「こっち向いてよ向井くん」から素敵なギフトをもらえた感じ。秀作な作品だったと思う。向き合う時間には制限時間は無い。これからも誰かと向き合っていく中で、少しずつ互いのことを知っていけばいい。たわいのない話をしたり、悩みを話したり。相手の価値観とは違いがあることも肯定しながら自分の思いも伝えて。そんなふうに一緒に大切な時間を過ごしていけたら、誰かと自然にそういう関係になっていけたらいいな。


ありがとう「こっち向いてよ向井くん」

2023年11月18日 | ドラマ『こっち向いてよ向井くん』

「こっち向いてよ向井くん」について思ったことあれこれ

・キャスティングがとても良かった。キャスト全員それぞれ演じられた役柄が魅力的で存在感も抜群だった。

・GP帯初主演の赤楚衛二くんは、膨大なセリフ量と出演時間だったにもかかわらず、役に入り込んでいて頑張っただろうなぁと思う。確かな演技力と存在感を醸し出していた。彼は心情を表わす目の演技が特に良い。向井くんはハマり役だと思ったし素晴らしい座長さんだった。

・このドラマの最重要人物の坂井戸さんを演じた波瑠ちゃんは、感情表現がすごく上手かったしさすがだと思った。赤楚くんの見事なアシストをしてくれたと思う。このドラマを見てから、波瑠ちゃんが大好きな女優さんになった。

・坂井戸さんと美和子がパイレオで初めて出会うシーンを見た時に、坂井戸さんから眩しいぐらいキラキラしたオーラを感じた。演出かもしれないけれど、向井くんには美和子ではなく坂井戸さんの方がお似合いだと思えたシーンだった。

・赤楚くんと波瑠ちゃんの相性がとてもよかった。二人の楽しいやりとりがリアルに思えたし、二人の会話劇をずっと見ていたいと思ったし、また二人の共演があったらぜひ見てみたいと思った。

・NiziUがドラマ主題歌「LOOK AT ME」がドラマの世界観を盛り上げてくれた。

・ドラマの劇伴がものすごくよかった。おしゃれだしセンスもあるし、さすがゲス極のちゃんMARIちゃんだと思った。ドラマを音で上手く調理してくれた。特にメインテーマがお気に入り。

・ドラマの中で一番好きだったセリフは向井くんが言った「一日の終わりには坂井戸さんと話がしたい。」こんなことを言われたら…嬉しくてもう泣きそ。笑 素敵なセリフだった。

・ドラマ本編については別記事でも触れたけれど、このドラマのラストは秀逸だった。向井くんと坂井戸さんの関係が定義づけされることなく終わったけれど、これからも向かい合いながら一緒にいられるし、二人の人生がきっと楽しくなるだろうという余白を感じさせて終わらせてくれた。そして最終話の向井くんのセリフがこのドラマの全てだったと思う。

・ドラマを見ていて人生ってままならないものだと思った。楽しいこともあるけれど、都合よくいかないこともあるし、誰かと価値観が違えば悩んだり、衝突することもある。だから自分とも相手とも向き合うことってすごく大切だ。そして人生はいろいろな考え方、幸せがあっていいことを教えてくれた。

・向井くんと坂井戸さんは本当に実在していて、今も恵比寿に行けば会えるんじゃないかと錯覚してる。笑 パイレオで一緒にカレーを食べながら、たくさんいろんなことを話していそうだなぁ。

・坂井戸さんのファッションがすごくおしゃれで参考になった。ジャケットにデニムスタイル、挑戦したい。笑

・原作は読んでないけれど、ドラマの脚本の構成に奥行きがあり、セリフに共感できるところもたくさんあった。

・お気に入りの回は第8話。向井くんと坂井戸さんのパフェ論争と朝ごはんのシーンや環田さんに牽制されて怯えてる向井くんが最高におもしろかったし、ほっこりした。

・向井くんとうちの息子の寝具が一緒だった。笑

・公式のTwitterで皆様にとっての「幸せ」が訪れますように。とメッセージがありました。このメッセージを頂いたことがすごく嬉しかった。

公式で一番のお気に入りショット。赤楚くんと波瑠ちゃん、ホントにお似合い。

パイレオのシーンはすごく好きでした。パイレオでのやりとりは笑いが大半だったかも。笑

波瑠ちゃんの笑顔がかわいすぎる。そして美しい。

元気くんはドラマで大活躍だったね。岡山くんの演技とビジュアルが最高に良かった。

ドヤ顔してる向井くんの腕時計の値段はいくらだったのでしょうか?笑

カメラが回っているように思えないほどリアルな会話劇だった。バレーボールのシーンもあったな。笑

たくさんのスタッフに囲まれて向井くんと坂井戸さんは談笑中。

本編ではうなぎを食べるシーンは出てこなかったけど、おいしく頂いたみたいです。

ドラマを終えてから改めて二人を見ると、やはりお似合いだなぁって思います。美男美女。

向井くんの台本はピンクだったのか。笑 黄緑だと思ってました。

美和子さんも一歩踏み出して終わりました。美和子にも幸あれ。

坂井戸さんのファッションはいつも素敵でした。環田さんが公式に登場したのはこの一枚のみ。謎

マミンも元気くんと幸せの形を見つけられてよかった。マミンの笑顔がすごくかわいかった。

向井くんと麻美のご両親はとても素敵でした。パパとママの言葉はとても深かった。

向井くんの職場は人間関係がすごくよくて、こんな会社で働きたい。あ、ここに部長がいない。笑

河西くんは優しくて頼もしい向井くんの後輩でした。中谷さんとお幸せに。

杉ちゃんと村田くん。美和子と再会するきっかけを作った罪な二人。パイレオ紹介したのも村田くん。笑 

赤楚くんは深夜のクランクアップだったそうです。よく頑張りました!

赤楚衛二くん、本当にお疲れさまでした。向井くんはハマり役でした。赤楚くんのモノローグ最高でした!

波瑠ちゃん、素敵な坂井戸さんを演じてくれてありがとうございました。大好きになりました。

生田さん、お疲れさまでした。清楚な生田さんのラブシーンには驚愕でした。笑 想定外でした。

パイレオのカレー美味しそうで、ドラマ見てからカレーを食べる頻度が増えちゃった。笑

「こっち向いてよ向井くん」キャスト&スタッフの皆さま、素敵なドラマをありがとうございました。最後の向井くんはちゃんとこっちを向いてくれました。(写真は公式SNSからお借りしました)


目を閉じて思い浮かぶのは…

2023年11月18日 | ドラマ『こっち向いてよ向井くん』

結婚という制度にとらわれずに元気くんと再出発した向井くんの妹・麻美。

最終話は、笑顔の麻美がたくさん見られました。実は麻美はカレーが苦手だったなんて。でも元気くんのカレーは世界一だと言ってた。そう言えるなんて愛だね。長く付き合っていても、まだまだパートナーの知らないところって結構あると思う。きっと一生かけて知っていくのかも。そしてパイレオに美和子がやってきた。もう向井くんとは気まずさもない様子だ。そして麻美と久しぶりに再会した。(10年ぶりかな?)美和子と別れる時に向井くんが取った行動が、彼女にとって大きな転機になったなぁ。美和子は心機一転、部屋を引っ越しすることに。

そんな美和子に麻美が言ったのは、「一人で頑張らなくてもいい。くだらない話して、一緒にいるだけで楽しくて頑張れるみたいな。そんな人がまた見つかったら、その人と人生歩んでみたらいいんじゃないかって私は思うかも。」美和子は笑顔で麻美にありがとうと伝えた。美和子は強くなったなぁと思う。

一方、坂井戸さんのことが好きだと自覚した向井くんは悩みに悩んでいた。坂井戸さんは出会った時は恋愛相談の相手であり、飲み友達となって、飲まなくても親しい友達になっていった…。親しさは深まっていく。そして坂井戸さんは、空にかかった美しい虹の写真を躊躇することもなく向井くんに送ってくれた。向井くんも坂井戸さんに送りたいと思っていた虹だった。その時、向井くんはモヤモヤしていた坂井戸さんへの特別な思いに気づいてしまった。最終話を迎え、ドラマのヒロインだったのは坂井戸さんだとわかった。

しかし、向井くんはもしも坂井戸さんに好きだと告白すれば、今の関係が崩れてしまうことをとても怖れていた。それほど向井くんにとって坂井戸さんは大切にしたい存在になっていた。また向井くんはこれまで坂井戸さんの恋愛の価値観を親身に聞いていただけに、告白してもその先がどうなるのかが想像ができた。向井くんは最終話に来てまた恋愛迷子になっていた。

向井くんと坂井戸さんの会社がコラボしたTシャツが好評で第二弾を作ることとなり、向井くんが大好きなデザイナーのところへ坂井戸さんと商談に行くことになった。仕事とはいえ二人三脚での仕事ができることは嬉しいことだった。ところが商談当日、アポを取っているにも関わらず打ち合わせが滞っていて足止めされた。二人は最初にランチに行くことにした。

向井くん「あーでも助かった。」

坂井戸さん「ん?」

向井くん「11時半からの打ち合わせっていつ飯行っていいかムズイよね。」

坂井戸さん「いつでもよくない?前後適当に?」

向井くん「えー?11時とかじゃ早すぎてまだ腹が欲してないし、かといって打ち合わせ中にお腹すくのも嫌なんだよなぁ。」

坂井戸さん「悩めるねぇ向井くんは~。」向井くんらしいと思いながら笑顔で話を聞いていた。

ランチの注文で坂井戸さんは向井くんと違う考えだった。

坂井戸さん「シェフのおススメなんだろうね?」

向井くん「んーね、他がハンバーグとパスタだからそれ以外かぁ。えー気になる。」

坂井戸さん「聞いてみようか?」

向井くん「え?聞いちゃうの?」

坂井戸さん「なんで聞かないの?」

向井くん「俺こういうのはさ、頼んでみて何が来るのか楽しみにしたいんだよね~。」

坂井戸さん「うっそぉ!食べたくないものじゃなかったら嫌じゃん!」

向井くん「え~でもそれも込みでドキドキしない?」

坂井戸さん「私はそんな博打打てないなぁ。」

向井くん「博打っておおげさだなぁ~」

坂井戸さん「え、料理来て、あーこれじゃなかったって思ったことはないの?」

向井くん「あー正直、あるね。そしてそれを怒られたこともある。」

坂井戸さん「ん。まぁいいや、聞かないでおく。」

向井くん「ねぇめんどくさがらないでよ。」

坂井戸さん「私は人生の選択は必ず自分がしたいの。」

向井くん「人生の選択ってランチのメニューだけで。」

坂井戸さん「そう?」

向井くん「でも坂井戸さんぽくはあるね。」

坂井戸さん「向井くんも向井くんぽいよ。」

向井くん「え?」

坂井戸さん「出たとこ勝負しちゃうとこ?ちゃんと聞いてから決めなよって心配になっちゃう。」

向井くん「まぁぶっちゃけおススメ聞いておいて、じゃあBのハンバーグランチでって言いにくいってのもあるんだよね。」

坂井戸さん「ん?」

向井くん「あ。この人おススメ気にくわなかったんだって思うでしょ?なんか悪いじゃーん。」

坂井戸さん「気ぃ使い過ぎだって、てか誰に悪いのかもわかんないし。」

向井くん「え?そうかな?」注文を聞きに店員さんがやって来る。

向井くん「えっとぉ本日のおススメってなんですか?」向井くんは意に反しておススメを聞いた。それは気まぐれで聞いたわけではない。坂井戸さんと話していて「おススメを聞いてもいいかもしれない。」と思ったのでは?そしてアンサーを聞くことで、相手の坂井戸さんにメニューを決める選択肢も増える。向井くんは確実に相手の気持ちを肯定しつつ、自分の気持ちを見出すことができる人になっていた。

店員「本日は魚介のリゾットとなります。」

向井くん「そうですか、じゃあそれで。」

坂井戸さん「私はパスタランチでお願いします。いいのに~聞かなくて。ロシアンルーレットでも良かったよ。」

向井くん「人生の選択だよ。」向井くんはふざけるように言った。注文をしただけでこんなに盛り上がって笑っていられる。二人は食事を待つ間も楽しそうにしていた。

向井くん(これだよ、やっぱ。俺たちはこんな感じがいい。この楽しさを失うなんてバカだよ。)

向井くん「(オフィスに行く時間)ちょうどいいね。」ランチした二人はお店を出た。

坂井戸さん「うん。どうだったおススメ?」

向井くん「おいしくいただきましたぁ。」向井くんはおススメに満足しているようだった。

そういえば10年前、向井くんは美和子とランチをしたことがあった。店を出てから向井くんがぼやいた。

向井くん「何か食った気がしないな~。いや~なんかナポリタンの気分じゃなかったからな~。いや、でも…他にピンと来るもんもなかったし。」

美和子「そんなにまずかった?」

向井くん「いや…別にまずくないけど。」

美和子「じゃあそんなこと言わないでよ、折角二人で食事するの楽しみにしてきたのに。」

向井くんは折角のデートを台無しにした。でも、今の向井くんはそんなことはもう言わないな。

坂井戸さん「ね、向井くんってさ、ひょっとして洋服屋さんとかで一回試着しちゃうとあれ?って思っても買っちゃうタイプ?」

向井くん「あー買っちゃうなぁ。なんか悪いじゃん、試着したのに買わないで帰るの。」

坂井戸さん「えー!そんなことお店は気にしてないのに。むしろどんどん試着して気に入ったものを買って欲しいよ。」

向井くん「アパレルのプロの人だったね。」

向井くんと坂井戸さんは、互いの価値観を肯定しつつ意見し合える親しい関係になっていた。でも坂井戸さんは向井くんに対して全く恋愛感情はない。そして楽しそうにしていた。ただ向井くんは、坂井戸さんと一緒にいる時間が楽しいけれど、このまま楽しいままでいいのか複雑な思いだった。

坂井戸さん「ってゆうか、世の中のあらゆることは試した方がいいんだよね?」

向井くん「あらゆることって?」

坂井戸さん「例えば恋愛にもお試し期間があっていいと思う。」

向井くん「え~恋愛のお試し期間ってどーゆう?」

坂井戸さん「あ~ほら、告白してお友達からってゆうあれは?あれもお試し期間じゃない?」

向井くん「あぁ」

坂井戸さん「でもそんなこと出来んの中高生ぐらいか。大人がお友達からってゆうのは無いね~。あーじゃあどうやってお試しすればいいんだろ?」

向井くん(えっと…俺はどんなつもりでこの話を聞いたらいいの?俺、今上手く笑えてますか?)

向井くんはこの話のようなお試し的なことを坂井戸さんに求めていた。坂井戸さんはこの時、向井くんの気持ちに全く気づいていないが、やがて向井くんを通して自分の考え方と向き合っていくことになっていく。「大人」というワードに縛られた価値観を持っている坂井戸さんの本質がこの会話から見えた気がした。

デザイナーから二度目の足止めを受けた二人。ゲームセンターにいて時間を潰す。ちょうどクレーンゲームコーナーを通った時、坂井戸さんがのかわいい!と言ってカブトムシ(かわいいか?)のクレーンに挑戦したが取れなかった。すると向井くんがクレーンにリトライしようとしていた。

向井くん「俺に任せろ。」

真剣な表情でクレーンを操作する向井くんの横顔から頼もしさ、かっこよさが見えた。坂井戸さんの表情も変わった。それは坂井戸さんが初めて見る向井くんの姿だったからだ。何も言わず真剣な表情でカブトムシを取ろうと何度もトライしていた。坂井戸さんは向井くんには負けず嫌いで頑固な一面があることをこの時知った。これまでは散々すねたり投げやりな向井くんを見てきただけに驚きの光景である。笑 

でも第一話の向井くんだったら、坂井戸さんがカブトムシを取れなかったら中谷さんの時のように「こんなの取れないようになってんだよ。やめときなよ。」って絶対言ってたと思う。そもそも向井くんはカブトムシがかわいいとは思っていない。でも坂井戸さんはカブトムシをかわいいと思ってる。だから向井くんは坂井戸さんに一番喜んでもらえることを選択してクレーンにトライした。そんな向井くんはかっこいい。カブトムシをゲットした向井くんは坂井戸さんに渡した。嬉しそうにカブトムシを持って歩いてる坂井戸さんを見つめながら向井くんはまた妄想していた。

向井くん(このまま気持ちを伝えずに友達として付き合っていくとして…。そんなある日のことでした。)

向井くん「え?もう会えないの??」

坂井戸さん「パートナーにとって異性の友達ほど嫌な者はないから。」

向井くん「そんな!」

坂井戸さん「さよなら、向井くん。永遠に…。」

向井くん「坂井戸さーーん!!待って、行かないで。」

向井くん(気持ちを伝えなくてもいつかはどこかへ行ってしまうのかー!どうしたらいいんだよ~。)

以前、坂井戸さんは元気くんと一緒に向井くんの話をしていた。

元気くん「お兄さんなら適当な相槌うってくれるのに。マジで適当だけど」

坂井戸さん「向井くんってそんな感じする。悪気ないんだけど適当、優しいんだけど適当。笑 いや頑張ってんだけどね、なんかフワフワっとしてて着地しきってないっていうか宙に何ミリか浮かんで歩いている感じ。大丈夫なのか~。笑」しかし今の向井くんはそうではない。ちゃんと着地して相手と向き合っている。

向井くん(坂井戸さんに恋人が出来たら、俺はお払い箱になるのか。だとしたら今勇気を出して…読めない坂井戸さんの心が。どうするのが正解なんだ、何か…何か手掛かりは…。)

向井くんが美和子と復縁しそうな流れになった時、坂井戸さんはパートナーの異性の友達ほど嫌な者はないと言って頑なに向井くんに会うことを避けていた。それ知っちゃってるからなぁ。泣 坂井戸さんの情報量があまりにも多すぎて向井くんは無駄に臆病になってしまっているのだ。ゲーセンを出て二人はデザイナーのオフィスまで歩いていた。

坂井戸さん「ねぇ夏休み取った?」

向井くん「ううん、まだ。坂井戸さんは?」

坂井戸さん「私もまぁだ。」

向井くん「どっか遊びに行く?」

坂井戸さん「え?二人で?」

向井くん(くー早速間違えたぜ。)

向井くん「どっか遊びに行くって言っても大人ってさ、食べるか飲むかしかないよね~世の人々何してんだろ?大人は豊島園のプール行こうって言わないもんね~。」

坂井戸さん「豊島園ね、懐かしい。」

向井くん「もう行けないんだよ。豊島園も。プールも。」

坂井戸さん「や、プールは行けるでしょ?行ったらいいじゃん。」

向井くん「行ける?33歳で。」

坂井戸さん「なんでよ。行きたいならいけばいいじゃない?」

向井くん「誰と行くのよ?あーあ、子供でもいればなぁ。あ、そうゆうのもあるんだなぁ。」

坂井戸さん「ん?」

向井くん「あ、いや子供がいれば、もう一度全部体験できんだなと思って。ほら子供の頃に楽しかったイベント。誕生日会、クリスマス会、入学式、夏休みの旅行に、体育祭、文化祭とかそうゆうの。子どもがいれば親の立場でもう一度全部経験できるの。めっちゃ嬉しくない?

坂井戸さん「いい子供時代だったんだね。」坂井戸さんは向井くんの話を苦笑いしながら聞いていた。

向井くん「子供の時って楽しいこと多くなかった?給食にカレー出ただけで一日幸せだったし。そっか、だからか。いや色んな人生あるのわかってるんだけど。俺、未来の想像すると漠然と普遍の家族像浮かんじゃうんだよね。それは俺がまぁまぁ楽しい子供時代を過ごしてきたからっていうのもあんのか。本当に望んでるわけじゃないんだけどね。」

坂井戸さんは向井くんの話を聞いていたが共感することはなかった。向井家が素敵な家庭だったことはドラマを見ててすごくわかる。いい家庭に育ってきたから向井くんに結婚して家庭を持つことが幸せの選択肢の中にあると思ってしまうのは納得だ。けれど向井くんはそれはあくまでも選択の中の一つだと思っている。結婚して家庭を持っても幸せになるとは限らないことを向井くんは学んできた。

坂井戸さん「向井家はいい家庭なんだろうね。」

向井くん「坂井戸さんちは?…あー言いたくないなら全然。」

坂井戸さん「ううん。私は両親のことは嫌いじゃないよ。でも父と母はあんまりいい関係じゃなかったかなぁ。だから私は離れてる方が楽だし。私はさ、いつの間にか一人が一番楽になっちゃったんだよね~。」

向井くん「でもこの先付き合ったりはするよね?」

坂井戸さん「どうだろ?わかんない。ほら私、素を見せるの苦手だからさ。」

向井くん「でも素を見せられる人もいるんじゃない?どこかで。」向井くんは坂井戸さんから勘違いしないでよ的な顔をされた。

向井くん(やべ、責め過ぎた!)

坂井戸さん「どうだろ、なかなかね。」

デザイナーのオフィスでまさかの三度目の足止めを喰らった。二人はランチをしたカフェに戻った。

向井くん「そういえば、坂井戸さんさ、いつから一人暮らしなの?」

坂井戸さん「大学入った時から。」

向井くん「ふーん。」

坂井戸さん「向井くんはずっと実家なの?」

向井くん「うううん、広島に転勤してた時は一人暮らししてた。」

坂井戸さん「あーそうなんだ。」

向井くん「それで東京戻ってきて、家見つける間だけ実家にって思ってたんだけど、あれ?何でだったみたいな?」

坂井戸さん「あ。そう、そうだったんだ。」

向井くん「煩わしいこともあるけど、つい楽だしやっぱ人がいるのは嬉しいから未だに。正直さ、この歳で実家暮らしって言うと形見狭いんだよ。だからそろそろ出ないとは思ってんだけど自立できてない男みたいで引くじゃん。」

坂井戸さん「うーん。私はそうは思わないなぁ。一人暮らしか実家暮らしかで、自立してるかしてないかが決まるわけなくない?実家暮らしだって自分のことを自分でやってれば何も問題ないと思う。みんなそれぞれの世界で一人前の大人として頑張って、そしてみんなそれぞれの家へ帰ってく。それでいいんじゃない?」

向井くん「うーん、でも女性の33歳で実家暮らしは全然いいような気がするんだよ。」

坂井戸さん「向井くん、33歳はただの33歳だよ~。男性にとっても、女性にとっても33歳は33歳でしかない。年齢に囚われてるね~。」

向井くん「だって大人っていろいろ大変じゃん。さっきの話じゃないけど、子供の頃のように無邪気にはいられない。」

坂井戸さん「そうかな?私は楽しいことも増えてると思うなぁ~。例えば、さっきからちょっと思ってたんだけど、あの椅子うちにあるのとおんなじなの。」

向井くん「あ、そうなの?あんなおしゃれな家具のある家なんだ。いいね。」

坂井戸さん「そういう家具集めたりとか、自分の周りを自分の物で満たされるのって、大人の特権じゃない?私は大人になってよかったなって思うこといっぱいあるなぁ。外ではこうやって向井くんと話したり、楽しい時間を過ごせるでしょ?だから家では一人の時間を堪能したいみたいなのがいいんだよねぇ。」

向井くん(それは、俺と話す今の時間を評価してくれているのか…それとも俺とは今のままで違う関係になりたくないという牽制なのか?)

向井くんはまた複雑な思いになっていた。坂井戸さんの一つ一つの言葉と向き合いながら、これまでのことを振り返りながら坂井戸さんの気持ちを考えていた。

「ありがとう、今の私を褒めてくれて」坂井戸さんが向井くんに言ったこの一言は深い。向井くんをとても信頼しているのだとすごくわかる。

これまでの坂井戸さんを見ていると坂井戸さんは、とてもしっかりしてるし、意見もはっきり言うから相談するよりされる側の女性だ。仕事も完璧にこなせてきっと有能な社員だと思う。でも坂井戸さんのように有能すぎると仕事がこなせて当たり前だと思われがちだ。でも…坂井戸さんは隠れたところで努力をして悩んだりしている。スルーされてるけれど本当は努力して頑張った自分を褒めてもらいたい人だと思う。でも向井くんには自分を褒めてもらいたいという感情が坂井戸さんに生まれていた。

4度目のデザイナーオフィスに向かう時、二人は街頭インタビューでカップルと間違えられた。

坂井戸さん「男女が一緒にいるとさーすぐ恋愛に結び付けられちゃうよねー。男女が行き着くところは、結局大人の恋愛しかないって言われてるみたいで、なんかちょっと悲しいよね。」

坂井戸さんは向井くんのことを全く異性として意識はしていない。しかし坂井戸さんへの友情と恋愛感情を行き来している向井くんの心中は複雑だった。デザイナーのオフィスに訪れ、向井くんの熱いプレゼンで商談は見事に成立した。こうして向井くんが仕事をしたかったデザイナーとのコラボが決まり二人は大喜びで帰ろうとしていた。

坂井戸さん「仕事で向井くんと向き合えて、普段の向井くんとは違う熱い一面を見られて結構感動してる。やっぱりさ、好きなものを好きって真っすぐ言えるって素敵なことだと思うし、相手にもそれは伝わるんだよ。」坂井戸さんが無邪気に喜ぶ顔を見ていたら、向井くんは思いを抑えられなくなってしまった。

向井くん「好き!」

坂井戸さん「へ?」

向井くん「俺、坂井戸さんのことが好きえっと・・・ごめん、あっ違う。」向井くんは、勢いでいきなり告白してしまったことでテンパってしまう。

坂井戸さん「違う?」

向井くん「いや違わくはないんだけど、言わない方がいいと思っていたのに…ごめん。」

坂井戸さん「えっとぉ…。」坂井戸さんから笑顔が消えた。そして戸惑っている表情だった。

向井くん「困るよね?」

坂井戸さん「うん、正直、すごくすごーく戸惑ってる。」

向井くん「そうだよね。困らせたくないなーって思って色々考えてたのに、ごめん。ほんとにごめん。あ、じゃあここで今日はありがとうございました。お疲れさまでした。」

坂井戸さんの困った顔を見てしまった向井くんは、その場から足早に去っていった。向井くんからの突然の告白に戸惑う坂井戸さん。まさか仕事の帰り道に友達の向井くんから告白されるとは…。しばらくその場に座り込んでしまっていた。そのまま会社に戻った向井くんは告白したことをとても後悔していた。これで坂井戸さんとの親しい関係が終わってしまったと思っていた。

向井くん(友達を失ったって、恋を失ったって、ただ生きていけばいいだけ。昨日と同じように。何も変わらない明日を。)仕事の帰り道に向井くんは、問いかけながら心の中で自分のこれからと向き合っていた。

向井くん(どうするのが正解なのか?このまま仮に80歳生きるとして、あと47年。彼女がいる人生、いない人生、結婚する人生、独身の人生。どんな人生だって有りだって本当に思える。だけど、今…目を閉じて思い浮かぶのは…思い浮かぶのは…。)

第一話でも同じことを問いかけていたが、このドラマの最大のテーマである人生で向井くんの望むもの、一体何が欲しいのか最終話で答えがハッキリした。恋愛迷子だった向井くんが思い浮かんだのは…

坂井戸さんの笑顔だった。 坂井戸さんとの大切な時間だった。坂井戸さんと一緒にいたいのだ。

坂井戸さんと恋愛や結婚という関係性ではなく、定義づけされない、それぞれの人生の価値観を尊重し、互いに向き合ってベストな人生を楽しんでいきたい。向井くんが考えに考えた末に出した結論に至った。向井くんは、もう一度、自分の気持ちをきちんと伝えようと思った。坂井戸さんならきっとパイレオにいるだろう。向井くんは勢いよく坂井戸さんの元へ向かおうとした。しかしはずみで脚がつってしまった向井くん。笑 あーやっぱりコメディだぁ。ダサい。めっちゃダサい。でもそんなところが向井くんらしいし、愛しくなる。笑 向井くんはタクシーを頼んでパイレオに向かった。最初からタクシーで行けよ。(オイ)

向井くんは慌ててパイレオに向かった。すると店の外で坂井戸さんが待っていた。

坂井戸さん「来るんじゃないかなって思ってた。」

向井くん「ごめん、さっきは。」

坂井戸さん「ううん。」

向井くん「あれで終わりはそれは嫌だから。俺さぁ自分がどうしたいのか何が欲しいのかずっとわからなかった。だけど、今、目をつぶって思い浮かぶのは坂井戸さんなんだ…。くだらない話だとしても、俺がバカなこと言って怒られるんだとしても、一日の終わりには坂井田さんと話がしたい。俺、坂井戸さんと過ごす時間好きなんだ。いやぁ俺の人生ってさ、今までは何となくのイメージでいろんなことを決めていて、目の前の人を見ていなかったんだよね。相手が何を望んでいるのかどう思っているのかちゃんと相手の方を向いてなかった。あ、もちろん人と人は他人同士だしホントのところはわからないんだと思う。でもそれは悲観するようなことじゃなくて自分と考えや価値観が違っても、全部わかりきらなくても違うってことを理解して向き合っていきたいんだ。だから…。」

向井くんは椅子から立ち上がって、坂井戸さんに背中を向けた。顔を覆って奮い立たせるように一呼吸ついてから、もう一度坂井戸さんの方を向いて告白する。

向井くん「俺は坂井戸さんと向き合いたい。坂井戸さんのことが好きです。」

坂井戸さん「ううん…正直、だいぶ困ってる。何て答えたらいいか。はっきりしたことは言えないけど(椅子から立ち上がる)でも、さっき向井くんと別れてこのまま会えなくなるのは嫌だなって思った。…から今ここにいるんだけどね。私も向井くんと過ごす時間が好きだし、何か素の自分でいられるみたいだし。笑 ありがと。向井くん。」いつもと変わらない坂井戸さんの笑顔と感謝に安堵する向井くんだった。

坂井戸さんとの大切な時間、一緒にいられる喜び。それが定義づけのない関係性であっても坂井戸さんとこれからも向き合っていきたい。坂井戸さんもそんな向井くんの思いがとても嬉しそうだ。

向井くん「はぁ言えた…。言えて良かったーぁ。痛っ!あ、たっ!」

坂井戸さん「え~足どうしたの?」

向井くん「あ、いやさっき走ろうとしてつっちゃって。」

坂井戸さん「わぁおじさんだ。笑」

向井くん「ちょっと年齢に囚われてるよ!いった!」

坂井戸さん「じゃあ私、お店に入るね。」坂井戸さんはいつもと変わらない態度で向井くんを店に誘った。

向井くん「あ!ちょっと!」相変わらず向井くんのダサダサ感は拭えないけど、坂井戸さんはそんなとこが向井くんらしいと思っただろうし、そんなところも向き合おうと思ってくれた…ってことだよね?笑

向井くん(人はみんな幸せになるために生きている。だけどその幸せがどこにあるのかどうすれば掴めるのかはわからなくって悩んだり迷子になったりする。でも、本当は幸せっていうゴールはどこにもないのかもしれない。ゴールはどこなのか、誰かが決めてくれたら楽だなって思っちゃうこともあるけどやっぱり自分で決めた道を。時には一人で。時には誰かと一緒に進んでいこう。)

向井くん「なんかさ、大人って思ったより大人じゃなくて楽しいね。」

坂井戸さん「ん?なんか私似たようなこと言った気がする!え?楽しくないようなこと言った気がする。」

ドラマのラストシーン。いつものようにパイレオのカウンターで向井くんと坂井戸さんはカレーを食べている。二人で楽しい時間を共有して言いたいことを言っている。人生いろいろあるけれど、自分の幸せは自分で見出していく。それが大人の特権であり楽しさなのかもしれないし、また大人という枠に縛られない生き方があってもいい。最終話で向井くんが見つけた幸せの答えがこのドラマで描きたかった全てだと思う。


虹を送ってくれた大切な人

2023年11月18日 | ドラマ『こっち向いてよ向井くん』

朝の通勤途中、向井くんと坂井戸さんがバッタリ会う。いつものように会話も弾みコーヒーを片手に歩いていた。向井くんは、坂井戸さんを見つめながら思っていた。

向井くん(坂井戸さんと朝食を食べたあの日。思いがけず坂井戸さんをより深く知れて…というより、あの日がどうのではなく、日々仲良くなるにつれて坂井戸さんという人がかわいく思えてる。え?かわいく?へ?何この感情?いやいや違うよ、そうゆうことじゃないよ。違う違う違う。坂井戸さんは大切な飲み友達。いや、飲んでない時もあるから普通の友達。うん。普通。え?普通って何?あーわからなくなってきたぁ。坂井戸さんって俺の何?)

向井くんは今までになかった坂井戸さんに対しての新しい感情に戸惑っていた。俺たちって何だろう?坂井戸さんとの関係に悩み始めていた。坂井戸さんも、また向井くんについて考えていた。

坂井戸さん(あの日。向井くんと朝食を食べたあの日。向井くんにはいつの間にか素を見せているってことに気が付いた。いや、違う。ホントはもっと前から。確かに中身見せてるのか。何か自然と話せるオーラがあるんだよねぇー。向井くんには。大切にしよ。)

坂井戸さんは、向井くんのことを恋愛の対象として全く見ていない。けれど、自分の素を見せられる特別な相手であり、大切な人になっていた。二人の間にあった距離感がより近くなっていた。互いにそんな変化を感じながら過ごしていた。言いたいことを言ってきた二人だから、気兼ねなく一緒にいられて心地よい。

そんなある日、向井くんの元カノ美和子が一人でご飯を食べに行こうとしていた。一人でお店に向かうのは実は初めてだった。そんな時にバッタリ会ったサークル仲間の村田くんから、パイレオを紹介してもらった。村田くんは、向井くんに紹介してもらっていたお店だとうっかり忘れていた。パイレオで美和子はおいしいカレーを食べて、そして店にいた坂井戸さんとひょんなことから意気投合。ソファ席で歓談していた。すると元気くんからLINEをもらった向井くんがパイレオに訪れた。店に入り、何気なくカウンターに向かおうとしたら…。向井くんはソファ席を二度見した。それはあり得ない光景だった。出会うはずのない美和子がパイレオにいる。そしてその隣に坂井戸さんがいる。

坂井戸さん「おっ!向井くん」いつものように坂井戸さんは向井くんに声をかけた。

美和子「え?向井くん?」向井くんと美和子が動揺する姿を見て、坂井戸さんは美和子が向井くんの元カノだと気づくのだった。

向井くん「何?この状況?気まずすぎるだろ?」

坂井戸さん「美和子さん、この人があの美和子さんかー。」

美和子「村田…村田め!こんにゃろー!村田!」

向井くん「なんで坂井戸さんと美和子が同じ店にいたからって何で仲良くなってんだよ。何だよー、何で何だよー。どうする俺。どうしたらいいんだー。え?何に動揺してんの?俺。」

坂井戸さん「美和子さんって、ここに向井くんがわかってきているってことは…ない…よね?」

美和子「村田ー!村田め!村田!」村田くんは、美和子の怒りの気配を感じていた。笑

向井くん「あのぉ~」

美和子「うふふ。ちょっと気まずいね。」

向井くん「だよねー。」

坂井戸さん「あー良かった。言ってくれて。息詰まるところだった。」

向井くん「やっぱ。」

元気くんが離婚したため、向井くん、坂井戸さん、美和子が相談に乗っていた。坂井戸さんと美和子は、二人が離婚しても、お互い好き同士ながら別れなくてもいいのではないかと言った。離婚=別れではないと。

元気くんは、麻美と別れたことが痛手となりミスも多くなる。メンタル的に店を続けていく自信を失っていく。ついに元気くんは店を閉めることを決意。突然の元気くんの閉店宣言に驚く向井くんと坂井戸さん。向井くんは、店を閉める決心をした気持ちがわからなくもなかった。

坂井戸さん「元気くん、大丈夫かな?落ち込む気持ちはわかるけど早まらないといいのに。」

向井くん「早まってないんじゃないかな?」

坂井戸さん「ん?」

向井くん「いや俺もちょっと気持ちわかるなーって思っちゃった。自分の為だけには頑張れないってやつ?」

坂井戸さん「ふーん。」

向井くん「俺も思っちゃうんだよね。なんか昔はさ、大学の頃とか新入社員の頃とか、あーゆう会社入りたい、あんな仕事がしたい、なんかもっとできるようになりたい。なんかでっけぇかっけぇことしたいとかさ。バカっぽいのかもだけど、自分のためにアドレナリン出まくってた感あるよ。でも数年ぐらい前から、あれ?俺いつまで踏ん張ればいいんだっけ?そもそも何のために頑張ってんだっけ?いろいろ考えるようになってきちゃって。めっちゃ疲れてきてる。」

パイレオの近くにある恵比寿神社で二人は元気くんを心配しながらお詣りした。

向井くん「仕事自体は20代より要領よく舞わせてる気ぃするんだけど熱量は昔の方があったんだよなぁー。いや手抜いてるわけじゃないよ。マジで。」

坂井戸さん「うんわかるよ。」

向井くん「いや出世したってその先に何があるんだろうって考えちゃうし、自分の為だけに頑張り切れない頑張る理由が欲しいなって思ったりする。」

坂井戸さん「頑張れる理由?」

向井くん「うん。何かの誰かの為に頑張りたい、為にって大それたことじゃないな。ただ一緒にいてくれるだけでいいってゆうか。そしたら踏ん張れる気がするってゆうか。」

坂井戸さん「私は自分のために頑張っている。」坂井戸さんは否定的な考えを持っているように聞こえた。

向井くん「はい。そーですよねー。人を巻き込むなってことですよねぇ。はい、すいません。」

ところがそうじゃなかった。坂井戸さんは向井くんの考えを肯定してた上で話し始めた。

坂井戸さん「だけど、うーん…自分にとっても、相手にとってもお互いの存在がモチベーションになる。そんな関係は素敵だなって思う。それはわかるよ。私もそうゆう存在の人がいたらいいと思うし、誰かのそうゆう存在になれたらいいって思う。でもパイレオが無くなるのは、やだなぁー。元気くんの自由だからし仕方ないけど、でも、嫌だなぁ。」坂井戸さんの隣で、向井くんはいろいろ考えていた

向井くん(もしもパイレオが無くなったら、俺たちはもう会わなくなるのかなぁ?そんなことでもう会わなくなるかもしれない。俺たちは結局友達っていうざっくりした箱に自分たちを入れてただけで、確固たる関係性の名前を持ってないのかもしれない。でも、もうきっと二度と会わない、その繰り返し。どんな箱に集った人なのか、その人と自分を結び付けているものは何なのか…。名前の関係のない人たちはその箱が無くなったら、もう会わなくなるものだから…。)

向井くんは元気くんの気持ちを理解した上で、一時帰宅した麻美と離婚について話し合った。

向井くん「この先どうするの?」

麻美「何が?」

向井くん「何がって元気くんとのことだよ。」

麻美「どうするもこうするも離婚したんだからこの先なんて無いよ。」

向井くん「ふーん。」

麻美「何?」

向井くん「いや、結局ただの離婚なんだなと思って。」

麻美「へ?」

向井くん「結婚とか制度とかどーでもよくて、元気くんと麻美二人だけで良かったんだよ。だったら、今これどうゆう状況?ただの離婚じゃん!二人は普通に好きなんじゃないの?だったら何してんの?何やってんだよ!」

麻美「しょうがないこともあんの。」

向井くん「なんだよ。しょうがないことって。結局ノイズに負けたのは麻美だな。」

麻美「お兄ちゃんにはわかんないよ!」

向井くん「俺が結婚してないから?あぁ確かに。正直、結婚する離婚する。よくわかんないと思ってる。でも元気くんと麻美がお互いのこと好きだっていうことぐらいわかってるよ。もっとシンプルに考えちゃだめなのかよ!元気くんとこのままサヨナラになってもいいの?それだけだろ。」

麻美「うるさい!ほっといてよ。関係ないでしょ。」

向井くん「関係あるね!だってそうだろ?一緒に暮らしてきて、元気くんはデリカシーなくてうざいけど、でもお母さんとも仲いいし、まぁ俺も嫌いじゃないし、元気くんだって麻美の望む通りじゃないかもしれないけど、でも一生懸命おまえのこと考えて…」

麻美はそのまま言い合いしたまま家を出て行った。兄妹の会話を聞いていて、向井くんの成長が著しいと思った。とても的を得ている考えだし、説得力もあった。あの向井くんが何より元気くんと麻美の気持ちを一番大切にして向き合って話していることに驚いた。笑

麻美「夫婦とか制度とか、そんなのマジどうでもいい。ただ元気とずっと一緒にいたい。」

元気「え?離婚したのに?」

麻美「私はこれからも私たちらしく、ずっと幸せでいられるために、ずっと一緒に生きていくための離婚にしたい。こっから私たちの関係を新しく作っていきたい。元気はどうかな?そういう関係は嫌かな?」

元気くんは、麻美を抱きしめた。元気くんと麻美は、結婚や制度の枠にとらわれない形で、再出発することとなった。

向井くん(ただ一緒にいたい…か。俺にもそんな人が現れる日が来るのかなぁ。どんな関係性なのかが重要なんじゃない。そんなふうに思える相手がいれば…。)

お互いの気持ちを確かめ合った元気くんと麻美。向井くんは二人を見守っていた。そして、向井くんにも、ただ一緒にいたいと思える相手が、いつの間にかすぐ目の前に現れていたのだ。

向井くん「あ、すっげぇー、へぇ」

向井くんはスマホのカメラで虹のかかった青空の写真を撮った。そして坂井戸さんに送ろうとしていた。

向井くん(え?待って。坂井戸さんって虹送ったら喜ぶ人?送られたくない人?どっち?え?わかんない。え?ってか、俺はなんで坂井戸さんに虹を送ろうとしてんの?どうゆうこと?どういう感情?)

悩んでいると、LINEに坂井戸さんから虹の写真が送られてきた。送られてきた写真は、向井くんが撮影した場所と同じところだった。

向井くん「ここ…?」

向井くんが振り返ると、スマホを見ている坂井戸さんがいた。坂井戸さんは向井くんに気が付いた。

坂井戸さん「お?向井くん、(虹)見た⁉」

向井くんは何も言わずに、ずっと坂井戸さんのことを見つめていた。

坂井戸さん「向井くーん??」

そして向井くんは、坂井戸さんの傍に歩み寄っていった。坂井戸さんは虹の写真が送られたら喜ぶ人だった。虹の写真を送りたいと思う人だった。偶然なのか?必然だったのか?虹の写真を共有したことが向井くんと坂井戸さんが向き合っていく大きなきっかけとなった。

虹が運んでくれた大切な人は坂井戸さんだった。なんてドラマティックな展開!向井くんの恋愛迷子の物語はいよいよフィナーレを迎えることとなる。

向井くんと坂井戸さんは公園を歩きながら話していた。向井くんは坂井戸さんと話をしながらも、頭では坂井戸さんに対しての感情と向き合っていた。

坂井戸さん「元気くんからLINEもらったよ。パイレオ無くなんなくてホント良かった。私、正直ほっとした。」

向井くん「うーん。」

向井くん(やばいこの感じ、ひょっとしてひょっとしてひょっとしてるよね。)

坂井戸さん「それにしてもカレーって飽きが来ないよね。」

向井くん(この感情ってまさかのまさかなのかなぁ!だめだー!向井!戻れぇ~!向井!!感じるな!考えろ!!)

坂井戸さん「なんかさ、いつの間にか、なくてはならないかけがえのないものになってるんだよね。大切なものって。そんな感じなんだろうな。いつの間にか気づいたら自分の中ですごく大きな存在になってる。」

向井くん(いつの間にか~♪気づいたら~♪大きな存在になってた?坂井戸さんの存在が?)

いつの間にか~♪向井くんは大好きカレーと坂井戸さんを被って考えていた。

坂井戸さん「カレーの存在がね。ね?向井くん?どうしたの?」

向井くん「あーいや。」

我に返る向井くん。向井くんが考えごとをしているのはいつものことなので、坂井戸さんは特に気にはしていない。笑

坂井戸さん「じゃ、私行くね。」

向井くんは、公園で坂井戸さんと別れた。そして別れた後、向井くんは自分の気持ちに気付いたが手放しで喜ぶことはできなかった。坂井戸さんへの思いは、友達としてではなく恋愛感情だったからだ。

向井くん(俺、坂井戸さんのこと好きなんだ。最悪だ…。)

帰社した向井くんは、坂井戸さんへの気持ちに気づいてしまって元気がない。元気がない向井くんを後輩の河西くんが心配する。平然とした態度を取る向井くんだったが…。

向井くん(はぁ、これからどーすりゃいいんだよ。気持ちを伝える?もし言ったらどうなるんだろ?)

ここで、向井くんのいつもの妄想タイムが始まった。

妄想パターンA

坂井戸さん「え?お友達だと思ってたのに、そんなふうな目で見られるの?マジキチイ。」

向井くん(うぅ妄想でえぐるのよくない。もっといいパターンだってある!)

妄想パターンB

坂井戸さん「ありがとう。」

向井くん「え、いいの??」

坂井戸さん「いいに決まってんじゃん。あ、こっから先はバニラアイスゾーンだから。」

向井くん「バニラアイスもおいしいよぉ!」

向井くん(結局こーなるかぁー。)

かなり落ち込んでる様子の向井くんを河西くんが気にかけてくれていた。河西くん、中谷さんとお幸せに…。その時、二人は部長に呼び出される。前回のレイザーズとの企画が大成功し、部長は環田さんに第二弾をどうかと試しに言ったところ、また一緒にやりましょうと言ってもらえた。

部長のおかげで向井くんの思考が仕事にシフトすることができた。笑 この企画について向井くんは、以前から頼みたかったグラフィックデザイナーにオファーしたいと伝えた。部長から了解を得た向井くんは、早速企画を進めることとなった。レイザーズ側の担当は坂井戸さんだった。向井くんは坂井戸さんと仕事でも連絡をまた取り合うこととなった。

第8話で坂井戸さんと環田さんの恋愛が終わって、二人の現在はただの上司と部下の関係なんだろうなぁ。向井くんはもう牽制されることもないし、気まずさを感じることもない。坂井戸さんからは別れてから清々しささえ感じられる。引きずってる感じも全くない。それは、向井くんが坂井戸さんが環田さんと別れた理由や恋愛の価値観を聞いてくれたことが大きいよね。

そして坂井戸さんが環田さんとの恋愛が終わったことで、結果、向井くんが坂井戸さんを好きになる方向に行ってしまったけど。美和子と別れ、第8話に入った辺りから向井くんは変わってきていた。美和子を思い出すこともなく、未練もない。スッキリしてる。そして坂井戸さんとの関係も変化した。これまで坂井戸さんからグサグサ刺されるような言葉を言われ続けてきたし、反論しても撃沈状態。傷つくことを言われても坂井戸さんに頼らないと恋も出来ない迷子ちゃんだった。でも今は対等に深い話が出来るし、お互いの価値観を肯定し合いつつ意見を言い合える。一緒にいて楽しい素敵な関係を構築している。

坂井戸さんのことが好きだと気付いてしまった向井くんは、今までのように気軽にLINEを打つことをためらっていた。友達のまま、仕事を通じてこれからも付き合っていかないといけない。向井くんはスマホのLINEではなく、社内メールを使って坂井戸さんと連絡した。坂井戸さんの気持ちに気づいた向井くんは、元気くんに相談する。

向井くん「あのさ例えば、例えばなんだけど、ずっと友達だと思っていた人、好きになったらどうする?」

元気くんは向井くんに好きな人ができたと嬉しそうなリアクションをした。

向井くん「例えばだって。」

元気くん「はい、例えばですね。例えば。」

元気くんは、向井くんのことだと察しながらも、相談に乗ってくれた。いい義弟だ。

向井くん「やっぱ最悪だよな。」

元気くん「へ?最高じゃないですか!」

向井くん「ん?」

元気くん「だって友達として気が合う人が恋人になるんすよね?一台で焼く、煮る、蒸す、揚げるが全部できる最新型のオーブンレンジぐらい有能なマルチプレイヤーじゃないですか?最高っすね!」

向井くん「まぁ付き合えた場合はね。でもさ相手がこっちのことを友達としてしか好きじゃない場合はせっかくの友情を失うことになるだろ?」

元気くん「そんなの聞いてみなきゃわかんなくない?」

向井くん「聞ける?いや恋愛感情ってさ、よく考えるとすっげー一方的なわがままなもんだなって思ってきちゃって。だって相手に自分の気持ちを伝えるのって、実は相手からしたら何かしらの答えを強制的に求められることになるんだなーって。それって結構相手に負担をかける行為だよな。」

元気くん「お兄さん、なんか似てきましたね。洸稀ちゃんと。」

元気くんは、向井くんが相手と向き合う考え方に

向井くん「多分坂井戸さんならもっと明確に答え出せるよ。」

元気くん「でもずっと好きな人が出来ないって悩んでたじゃないですか?なのにそれ無かったことにするのは勿体なくないですか?俺ならちゃんと気持ち伝えたいですね。」

向井くん「うーん。好きって伝えるの、マジでムズイ。」

元気くんは、例えば相談じゃなく、向井くんの恋愛相談だと察している。おそらく相手は坂井戸さんじゃないかということも。向井くんと坂井戸さんの仲の良さを見てきた元気くんは、向井くんを優しく見守ってくれてるなぁ。

向井くん「あっ、例えばだから、例えば!」

坂井戸さん「はい、例えばっすね。例えば。」

坂井戸さんとのLINEは虹の写真で止まったままだったが、坂井戸さんからまた一緒に仕事ができて嬉しいとLINEが送られてきた。「第二弾やったね~。またよろしく」「つい嬉しくてラインしちゃった。」

向井くんは、元気くんに相談した後もずっと坂井戸さんとのことを考えていた。坂井戸さんと一緒に商談に行く日が近づいていた。

向井くん(坂井戸さんとはいい感じだと思う。でもそれは友達としてであって、この関係を壊さないためにはやっぱり言わない方がいいんだぁ。)

向井くんは、自分の気持ちを伝えることに前向きになれなかった。これまで築いた関係が壊れてしまうことが怖かったのだ。わかる、わかるよ。坂井戸さんとここまで親しくなってしまうと好きになっちゃうよ。お互い言いたいこと言い合えて、誰にも言えないような本音を話せる人ってなかなかいないし。向井くんはずっと坂井戸さんに救われていたけど、笑 坂井戸さんも環田さんとのことでは向井くんに救われたもんなぁ。男と女じゃなく、人と人の結びつきがものすごく強い。恋愛関係と人間関係か…。ムズイ。