衛さんは最後の手段として聡美さんに会いに行く。お金で解決できないのなら、情で訴えるしかない。衛さんは聡美さんのところへ行く前に空くんと優くんに電話で伝えた。
空くん「でも衛さんがおっしゃってるのは、作戦というより…」
優くん「それは賭けだよ。本当にいいの?」二人とも不安をにじませた声だった。
衛さん「もう決めたから。」衛さんの決意は揺るがなかった。
衛さんは自身がCEOを退き、空くんが引き継ぎ、社員たちの雇用を保証するのであれば、自分の持株を手放すと聡美さんに告げて友好的な買収を求める。そしてそのための社内調整に1ヵ月の猶予が欲しいと頼んだ。すると聡美さんは衛さんの提案した条件を飲まなくてもTOBは成立するが社内調整のための1ヵ月を衛さんに与えた。
優くんが韓国から帰国した。衛さんはカレーを用意して待っていた。衛さんが初めて作ったカレーは具が固くて苦くてまずいカレーだったなぁ。あれから数年。衛さんのカレーはおいしいカレーに進化した。
優くん「うわぁ、カレー食べたかったー!おいしい。」
衛さん「長い間お疲れ様。」
優くん「衛さんがたくさん考えて出した結論だと思うから俺はどんな結果になっても衛さんを応援する。」
衛さん「ありがとう。」優くんに応援され、衛さんは心強いかった。
優くん「一か月一緒に頑張ろうね。あ、そうだ。お土産、お土産。」
衛さん「いらんってゆうたやん。」
優くん「衛さんがいつも使ってる化粧水、ビューティーフリーで買っておいたよ。」
衛さん「優くん、好き♪」
優くん「現金だねー。」変な人形じゃなく、免税店で衛さんの愛用の化粧水を買ってきた優くん。そういうところにパートナーとしての成長が感じられる。
1ヵ月後。衛さんは社員が見守る中、聡美さんに約束した通りCEOを降りて会社から去ることになった。
衛さん「宮村くん、後は頼んだよ。」
空くん「はい。」衛さんは会社を去っていった。表情は晴れやかだった。
衛さんの代わりに空くんがCEOに着任する。そこで空くんは「MEDIA」の担当者にある資料を渡した。そこには驚きの内容が綴られていた。「MEDIA」は「スリースターブックス」が持つ作品と作家のライセンスを既存作品以降は手にすることができなくなっていた。衛さんは聡美さんからもらった1ヵ月の間に新会社を設立していた。新会社「TSBクリエイティブ」を「スリースターブックス」株の売却と買収で株価が下がった「MEDIA」株の再上昇を見込んで買って儲けた資金で設立。社員たちも戻して経営を元に戻すことに成功した。
まず「スリースターブックス」が抱える作家たちの次回作以降の専属契約を失効させた。碇さんと作家に説明し、新会社との契約を得ることにも成功する。「MEDIA」は「スリースターブックス」が持つ作品と作家のライセンスを既存作品以降は手にすることができなくなった。
衛さんは、自宅でパーティーをする前に聡美さんと会って食事をしていた。
聡美さん「負けたわー完敗です。」悔しがりながらも、情に流されたと負けを認めた。しかし聡美さんは晴れやかな表情だった。「MEDIA」をスパイのように探っていた空くんのことも訴えないと衛さんに話した。
衛さん「聡美さん、宮村くんにゆったそうですね。うちの会社を気にかけてくれていたのは私が聡美さんの後輩だからっていうのが半分だって。もう半分な何なんですか?」
聡美さん「簡単なことよぉ。うちにとって金の卵になりえたから。それ以上ある?」
衛さん「すっきりです。」衛さんが思っていたより聡美さんの答えはシンプルだった。
聡美さん「私、MEDIA辞めるの。」
衛さん「えっ?」
聡美さん「別に今回のこととかじゃなくて目標に達したから、いろいろと。」
衛さん「目標?」
聡美さん「人生100年なら、もうすぐ折り返し。もう十分稼いだ。これからは仕事以外のことをするの。やりたいことを、やりたい場所で、やりたいだけ。」
衛さん「何やるんですか?」聡美さんは衛さんの耳元で話しかけた。
衛さん「はい、はい、はい、想像を絶します。」
聡美さん「そりゃそうよー。だって私が本当のSUPERRICHだもの。」
衛さん「間違いないです。いいな、ご一緒したいなー」
聡美さん「行こうよ。」聡美さんのやりたいことって豪華客船で世界一周?海外の移住して豪邸で暮らす?どっちにしても聡美さんはSUPER RICHな暮らしをしていきそう。
衛さん「乾杯!」衛さんと優くんの家では幹部と編集部が集まって祝賀パーティが開かれていた。もろもろの後始末を終えた空くんも遅れて到着。笑 経緯の説明を求めてきたリリカたちに衛さんが事情を話した。
宴の途中、空くんが席を外してキッチンに向かう。するとリリカが追いかけ空くんに話しかけた。
リリカ「大丈夫なんですか?宮村さんが一番損していると思います。これから大変ですよね、事後処理とか。」
空くん「ま、わかって始めたことだから。」
リリカ「宮村さん絶対向いてますよ、CEO。」
空くん「そんなことないよ。」
リリカ「冷静に状況分析できて意外と行動力もある。」
空くん「意外って…。」
リリカ「宮村さんがやりたいこと始めたらついていく人いると思います。」
空くん「そうかな?」
リリカ「その時は呼んでください。私、結構目立つの好きだったけど、自分はサポートに向いてるtって最近わかったんです。」
空くん「田中さん、入ってよかった?この会社。」
リリカ「はい。自分のことがちょっと好きになりました。」
空くん「それはよかった。」
リリカ「はい、良かったです。ホントに。」リリカの成長に空くんは目を細めた。
空くん「よし、戻ろう。」空くんとリリカの会話がすごく心地よかった。ドラマでは衛さん、優くんの成長パートが大半だったけれど、リリカもインターンになった時と比べたら成長がとても著しいと思った。
2021年の冬。その後、衛さんの新会社は順調で今まで以上に部下のやりたいことを尊重し、衛さんはCEOとして頑張っていた。CEOと社員の隔たりを無くし社員と同じフロアにデスクを置いている。会議も同じフロアで行っていて、以前より一体感を感じる。
空くんは「TSBクリエイティヴ」の資金運営を担う関連会社のCEOになった。空くんと共にリリカと小村がサポートする仲間となり、衛さんの会社をサポートしている。空くんのCEOルームも社員と隔たりのない構造になっている。
なんと優くんは大学合格を目指し受験勉強をしていた。予備校にも通っていて優くんは予備校生より10歳年上なため、みんな敬語で話すから寂しそうだ。優くんの実家は東海林さんが提案してくれた古書をデータ化する仕事を始めて軌道に乗っていた。優くんへの借金を少しずつ返していくようだ。今吉さんは彼女と優くんの自宅に来て食べ歩きばかりしているとのろけて幸せそうだ。衛さんが休日の日。衛さんと優くんは合格祈願に出かけていた。拝み終えた衛さんだったが、隣でずーーーーっと祈る優くん。なかなか終わらない。
衛さん「めっちゃ祈るな。5円で。」
優くん「衛さんが早すぎ。」
衛さん「だって祈ることひとつしかないやん。」
優くん「え?」
衛さん「優くんが第一志望の大学に受かりますようにって。」
優くん「それだけ祈ってくれたの?」
衛さん「そうやで、祈りにきたんやから。優くん他にも祈ったん?」
優くん「うん、知りたい?何祈ったのか?」
衛さん「ゆったらかなわへんねんで。」
優くん「衛さん、今はっきり言ったよね。俺が大学受かりますようにって。」
衛さん「…」
優くん「え、言ったよね?」
衛さん「合格祈願のお守り買って帰ろ。」衛さんは優くんのために合格祈願のお守りを買った。笑
帰ろうとした時いい匂いがした。道端に屋台のラーメン屋があった。衛さんも優くんも、きっと初めて一緒に食べた屋台のラーメン屋を思い浮かべたよね。あの日屋台で500円のラーメンを二人で分け合って食べた。あの日お金が無かった二人が共に歩んでいく人生は一杯のラーメンを分け合うところから始まっていたのかも。
衛さん「ただいまー。」
優くん「おかえりー。」
衛さんと優くんは、高級マンションではなくこれまでと同じ古民家に住んでいた。生活も派手になっている様子はどこからも感じられない。衛さんは古いストーブの火を付けようとした。
衛さん「この家、夏意外と涼しいけど、冬は寒いのがなぁ…」
優くん「そう?東京はあったかいよ。そんな変わる?」
衛さん「変わる、変わる。」
優くん「正月うちに来たらびっくりするよ。」
衛さん「それはそれで楽しみ。」
優くん「そんなに寒いなら引越し考える?」
衛さん「うーん。優くんはどう?」
優くん「うーん。俺は好きだけどな、この家。なんか俺たち二人にピッタリってゆうか。」
衛さん「そうやね、うちら二人家族にはちょうどええか。」RICHになったはずなのに、二人とも贅沢な暮らしを望んでなかった。穏やかな暮らしと住める家さえあれば二人にはそれで十分だった。
優くん「まぁ防寒は考えよ。老人になったら死活問題だから。」
衛さん「ホンマやなー床暖とかなー。」
優くん「うん。」二人はインスタントの袋麺を取り出しラーメンを作る準備をしていた。
衛さん「あ、今、東海林が大学受験の漫画作ろうとしててさ、受験終わったら優くんに取材させてほしいって言ってたよ。」
優くん「俺、まだ受かってもないからなぁ。ま、受かったらぜひ。」
衛さん「もう受けるとこ全部資料もらったん?」
優くん「資料はね。TOBの一件の時、俺もっと勉強したいと思って。だから経済学部と経営学部も受けてるけどメインは文系も理系も広く勉強できる総合学部を出そうって。」
衛さん「そんな学部あるんや。」
ラストは夫婦で作ったラーメンを美味しそうに食べるシーンだった。ほのぼのとした雰囲気でラーメンをすすりながら今後のことを話していた。
優くん「あ、衛さん。俺大学受かったら旅行行こうよ。」
衛さん「受かってからいいや。そういうの。」
優くん「いやいやいや、モチベーションにするから。どこ行きたい?」
衛さん「うーん?うーーん」
優くん「そんな悩む?あ、味玉作ってたの忘れてた。」
衛さん「うーーん。」
優くん「一個でいい?」
衛さん「うん。」
優くん「はい。」
衛さんのラーメン鉢に味玉を入れるこのシーン。赤楚くんがさりげなく、秒で衛さんとの距離感を表現するところはお見事。演技だとはとても思えなかった。私は赤楚くんに惹かれたというより、赤楚くんの演技に惹かれてしまったのだろうか。笑
衛さん「ありがとう、え、どこやろなぁ~。」
優くん「ハワイとか?」
衛さん「ハワイアンズでええわ。ってかどこでもいいよ。」
優くん「そうぉ?」
衛さん「あなたがいたら私はどこでもいいです。」
優くん「嬉しいなぁ…」照れる優くん。
衛さん「これ北別府先生の漫画のセリフ。」
優くん「え~なんだよ~。」ムッとする優くん。笑
衛さん「ってゆうのは嘘。」
優くん「何?どっち?」
衛さん「ふふどっちでしょう。」
優くん「まぁどっちでもいいよ。俺がゆうから。あなたがいたらどこでもいいです。」
優くんの言葉にドキッとした衛さんは、優くんから視線をそらしラーメンをすする。
優くん「あ、照れた?」
衛さん「あのラーメン高かったよな!」
優くん「話変えた~。」
衛さん「思わんかった?一杯千円やで。」
優くん「それは思った。なんだかんだ作るのが一番安い。」
衛さん「そしたら二人で500円もかからんもん。」
優くん「うん。でも衛さん、そんな節約しなくても、俺大学4年行っても、留学しても、院に行ってもちゃんと暮らせるぐらいは持ってるから、」
衛さん「わかってる。お金はなんぼあっても良いから。」
優くん「そうだね。俺たちまだまだお金かかるしね。」
衛さん「そうそう。人間生きてくだけでめっちゃお金かかるから。お金の心配せんと、楽しくみんなと仕事して、おいしいご飯食べて、ふかふかのベッドで寝る。隣には優くんがいてさ。それが多分私の…」
衛さんは幸せに生きていくためにはお金が必要だと身に染みて感じている。お金があるから人生を豊かにしてくれる。優くんと穏やかな生活が送れる。仲間と共に楽しく仕事をすることも出来る。紆余曲折の人生を歩んできた衛さんは自身にとっての”SUPERRICH”に辿りついた。
旅行先を相談していた衛さんと優くんが、互いに「あなたがいたらどこでもいいです」と伝えるところは胸アツでした。しかし優くんは衛さんを頼らなくても自分の貯えを持ってたんですね。しかも実家の借金の返済もしている。笑(豪徳くんグッジョブ)
優くんは豪徳くんから株式出資のことを学び、生活をしていくだけのお金を得て、自分のやりたいことをやろうと思った。専門学校を中退した過去、TOBの一件があって、優くんのやりたいことが「仕事」から「学び」に変わった。学ぶためにお金を使うことは価値のあることであり、それが優くんの未来に繋がっていく。会社のことを良く知っているから大学に行っても、衛さんの良き相談相手になれそうですね。
そして優くんは大学(大学院や留学もあり得る)を卒業したら会社のCOOに復帰して衛さんを支えていくだろう。これからもずっと優くんは衛さんにとって最強で最高の人生のパートナーであることには変わりはない。
そして登場人物それぞれがやりたいことをやるというチャレンジ精神は、まさに優くんがラミネートにして大切にしていた衛さんの言葉そのもの。見事に登場人物がベストな形で着地して終わって清々しいラストだった。
私にとっての”SUPERRICH”は何?あなたにとっての”SUPERRICH”は何?それはきっと何気ない日常の先にきっとあるはず。