さらさら

なーんにもない、平凡な日常です。

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2004’ 1970年代  学校前のあやしいおじさん

2008年06月20日 09時30分27秒 | 過去のお気楽日記&過去の日記
よく小学校の正門前で放課後、怪しいおじさんがいた(笑)


学校に許可をもらっているはずもなく、だけどそれを先生が止めるでもなく。
おじさん達は堂々とお店を広げていた。

このおじさん達の持ってくる品物がおもしろくて、皆それを見るのが好きだった。
手品に使う商品を売っていたり、スプリングのおもちゃとか、スライムとかを売って
いたと思う。(スプリングのは、階段の上に置いてジャージャーと一段づつ降りてくる物)

親の世代だと子供が集まるのは紙芝居屋さんかな?
そのおじさん達は何度も来るおじさんだっただろうから、子供達もそんなに恐がりも
しなかっただろう。

だけど、私達の時代のこのおじさん達は一度見たら・・・ ほとんどの人が、


「二度と見かけない」


おじさん達だったのではないだろうか。

おじさん達はニコニコと愛想のいい人もたまーにいたが、小学生相手だというのに
ニコリともしない人もいた。
口調もなかなか恐くて、怒ってるような口調のおじさんもいた。

私達はそのおじさん達に



「よくわからない怪しさ」



を感じつつも、ビビリながらも、それでも興味がビビリを上回ってしまって、その人に
恐る恐る近づいたものだった。

ある日、その中で今までにない位、



すんごーい恐いおじさん



がいた。
おじさんはあまり表情もなく、


「・・・だよ。」


とぼそぼそとしゃべる。
おまけにくわえタバコだ。



怪しさむんむん



恐さむんむん



である。
おじさんは決して大声をあげたりしないのだが、それが余計に恐かったりする。

いつもなら子供達が集まって大盛況のはずなのだが、この時はさすがにみんな独特の
雰囲気にビビリまくって、ちょっと見ることはあっても買わずにそそくさと帰っていったと
思う。

おじさんは手品用品を売っていた。

中には初めて見る、とってもおもしろそうな商品もある。
が、どうも今回は手に取って試せない雰囲気だ。


手に取ってみたい・・・


恐々と近づいた私と友達。
最初から買う気はなかったのに手品に使う木箱があって、それに私は惚れてしまった。

絵の描いてある小さな薄型の長方形の箱をマッチ箱のように開けて、中に10円玉を入れる。

箱を閉じる。

そしてまた箱を開けるとあらあら不思議。
10円がなくなっているという不思議な箱なのだ。

そしてもう一度開けると10円がまた現れる・・・。

って、なんのことはない。
入れた10円を乗せている板を移動できるという細工があるのだ。

これが2~300円だったろうか。
もしかしたら500円くらいしたかもしれない。

当時の私は小学生で、お金は文房具を買う時以外は持ち歩かなかったから当然、それを
その場で買えるはずはない。

家に帰ればお金はある。
だけどそれまでこのおじさんは、ここにいるだろうか。

確認をしたいのだけど、



おじさんが恐くて



話しかけられない。
でも箱は欲しい。
欲しい欲しい、とっても欲しい。

恐いおじさんにしたら、もしかしたら私の方が恐かったかもしれない(笑)
じーっと一点を見つめ・・・ かと思うとおじさんの方を向き無言でまたそれを繰り返す。



無口なおじさん


話せない私


そしてそれを黙って見守る友達



沈黙の時は続く。
意を決して私は小さな、消え入りそうな声で


「まだいますか?」


と聞く。
おじさんはうなづいた。

やっと買う決心をして家に帰る。
友達に別れを告げ、往復ともダッシュだった。
車の激しい通りをつっきるので、私は事故にだけ気をつけながら走った。

家に帰り、お小遣いを手にしてまた学校に戻るとおじさんはいた。
この時に私を見つけたおじさんの顔は



ちっとも恐くなかった。



おじさんの顔は寧ろ優しげに見えた。
慣れなのだろうか(笑)
それともおじさんの表情が変わったのだろうか。

私は息を切らせながらおじさんにお金を渡す。
おじさんの周りにはもう誰もいなくて、時間も結構経っていたのでもしかしたら待って
いてくれたのかもしれない。

その時私は子供だったので、そんなことは考えなかったけれど。


苦労して手に入れた手品の木箱は回りにすごく好評だった。
実は一緒にいた友達も、クラスメイトもその箱が欲しかったらしい。
だけどおじさんのあまりの恐さにあきらめたのだった(笑)


私はもう、嬉しくてその箱をいつも持ち歩いていた。


今は当たり前のようにその箱はないのだけれど、この木箱、しばらくは持っていた気がする。


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