前回の記事の最後で,固定額の元利金返済額が決まっているときに,金融機関側が返済額を一方的に変更した場合,いったいどちらが約束を破ったといえるでしょうか?という質問で締めくくりました。
約束されていた金額を一方的に変更した金融機関側でしょうか?
それとも,決まった元利均等返済額どおりにきちんと支払っていた預金者側でしょうか?
これも愚問ですよね。
約束されていた金額を一方的に変更した金融機関側が責任を問われるのが当然です。決まった元利均等返済額を,律儀に支払っていた預金者側が責任を問われることなど,あるはずがないのです。
にもかかわらず,今回の大阪高裁13民判決は,
「しかし,そうであったとしても,当事者が元利均等返済方式,かつ,変動金利型の消費貸借契約として本件貸付けを受け,それを合意内容としている以上,金利が変動した場合,変動するのは分割弁済額であるとするのが消費貸借契約を締結した当事者の合理的意思に沿うというべきである。」
として,金融機関が行った一方的な変更は,契約条項の記載に明らかに反しているとしても,「合理的意思解釈」により有効であると判断したのです。
しかし,こんな判断が許されては,取引社会において混乱を生じさせてしまいます。
契約条項や合意内容という約束されたこととは全く正反対の仕打ちをうけた契約者側が,いったいどうなるか全く予測も付かない金融情勢を,予測したり把握したりしなければならないということになります。
しかも,契約条項のどこにも書かれていないことを合理的意思解釈として肯定されてしまうかもしれないのです。
そんな恐ろしく不確実な状況で,誰が安心して契約できるでしょうか?
こうした大阪高裁13民判決の判断は,こうした混乱を招くような判決です。
そもそも,合意内容を明確にするために作成される「契約書」の存在意義自体を否定するものでもあります。
そして,契約条項に違反した側が「適法」となり,契約条項を遵守した側が「違法」となるとの社会通念における「是非・善悪」の判断を根底から覆すような判決です。
今回の大阪高裁13民判決は,真面目に契約を守っている契約者のほうに責任を負わせるものです。言葉が過ぎるかもしれませんが,今回の判決は,正直者を「馬鹿にする」判決だと言わざるを得ません。
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