話題1. 冊子「電電公社・NTT民営化直後の海外技術協力活動」への反響 加藤 隆
ICT海外ボランティア会と冊子の編纂 当会は2008年に石井孝氏を中心として発足し、NTTOB・現職をはじめNTT以外の方の入会もありました。活動としてJICAによるシニア海外ボランティア(SV)活動への参加を奨め、活躍中SVを支援し、「会報」を発行し、「ホームページ」を立ち上げ、毎日約200名の訪問がありました。わが国ICT産業の国際競争力強化や、海外人材育成にも寄与できるよう他団体と協調し、トンガで防災システム構築のプロジェクトを行いました。(会員150名、支援者350名)。その活動の一環としてNTTコミュニケーションズ及びNTTのご支援を得て標記冊子を編纂しました。第一部ではわが国技術協力の目標、電電の活動方針、および活動実績を概説しました。長期専門家は主にアジア・大洋州・仲南米に延べ640名、青年協力隊員は仲近東・アフリカを中心に490名に及びました。第二部は海外技術協力の具体的活動記録20篇を掲載しました。その中で電電・NTTの本活動のインパクトは「わが国ODA政策に呼応し大きな尽力」「電電・NTT自主プロジェクトの基盤醸成」「海外人材育成とNTTの知名度向上への寄与」「わが国電気通信産業の海外進出に貢献」と要約しました。 冊子への反響 反響は予想以上に大きく、FACEBOOKでの意見交換を含めて、100名を超える方々からコメントをいただきました。それを要約すると ①このような冊子はいわば歴史に残すことであり、極めて意義深い。素晴らしい国際活動の一端が窺え、大変誇りに思います。第一線で活躍された方々の経験談には迫力がありす。②貴重な記録です。NTTはかってこれほどまでの専門家や協力隊わ送っていたことは驚きです。一大企業文化でした。NTTの海外活動には関心をもって眺めていましたが、この冊子を拝見して知らないことばっかりであったっと思い知らされました。 ③グローバルビジネスが伸びているこの時期に、その礎となった諸先輩方のご活動を記録として残しておくことは、たいへん重要な意味があり、意義深いものと感じております。改めてその重要性を認識しているところです。 ④このような草の根活動がNTTの現在のグローバル化につながったと思います。海外での技術協力活動は、人材の育成、人の交流等から始まり、そこから信頼関係、友好親善が育まれると言われます。貿易立国にとって大切な基盤づくりです。 NTTグループとして、これまでの海外との技術協力の実績・ノウハウを活かし、JICAの傘下のもと可能な範囲でより積極的な継続・推進の意志(方針)を示して取り組んでいくことは世の中からも理解されるのではと思えます。
話題2. イギリスの歴史―王権と議会ー その2 松本哲男
今回は、1000年の英国史のうち、イギリスが世界の覇権国であった時代以後、1901年から現代までの117年間についてまとめた。 1.第一次世界大戦と戦後処理 1914年7月、第一次世界大戦が勃発した。イギリスは、露仏両国とともにドイツに対し宣戦布告した。これに伴い、イギリスでは「徴兵制」を導入し、総力戦で戦った。1918年11月ドイツ降伏までの4年間の長い戦争であった。イギリス帝国全体で919万人もの兵士が動員された。戦死者は帝国全体で88万人にも及んだ。総力戦はそれまでのイギリスの社会構造を大きく変えた。貴族政治の時代から大衆民主政治の時代へと変わっていた。1920年アイルランド自由国が成立した。自由党が没落し、労働党が勃興した。1931年には「英連邦諸国」が形成され、イギリス、カナダ、オーストラリア等7ヵ国間の対等な地位が承認された。 4.第二次世界大戦、その後の3大改革 1939年9月、ドイツのポーランド侵攻に伴い、英仏両国はドイツに宣戦布告した。イギリスでは総力戦体制が整えられた。経済や情報、資源などが国家の統制下に置かれた。1945年5月ドイツ軍が連合国軍に降伏し、第二次世界大戦は終了した。イギリスが戦争で受けた打撃は、ドイツや日本などの敗戦国にも劣らなかった。第二次世界大戦後の3大改革は、アトリー、サッチャー、ブレア政権である。 ①アトリー政権(労働党、1945~1951年):戦後直ぐの政権。戦後の復興政策としては基幹産業の「国営化」であった。イングランド銀行、航空、石炭、電信・電話、運輸、電力、ガス、製鉄などが次々と国営化された。また全国民への福祉の供与である。 ②サッチャー政権(保守党、1979~1990年):「英国病」からの蘇生。サッチャー革命は「小さな政府」、自由経済に基づく景気回復と社会福祉国家の見直しであった。基幹産業の「民営化」で、電信・電話、航空、造船、鉄鋼、電力、石油、自動車など国営企業が次々と民営となった。また、社会保障費を大幅に削減し、金融政策にも力を注いだ。 ③ブレア政権(労働党、1994~2005年):新しい労働党として、中産階級を取り込んだ。政策として、地方の分散化(スコットランド、ウェールズに議会設置)、「世襲議員」の改革等を進め、種々の国政改革を行った。 ④エリザベス2世:1952年2月、25歳の若さで即位し、現在、在位64年間で、ノルマン王朝以来のイギリス君主として最長である。ダイアナ元妃の事故死への対応等で一時王室の危機があったがその後「開かれた王室」を目指して改善され、現在は国民から愛されている。[王権と議会」は1000年の歴史を経て共存しながら、比較的安定した政治を保っている。 3.英国におけるEU離脱問題 2016年6月の国民投票によって、イギリスはEU離脱が決定した。これから生ずる諸問題についてまとめた。