日比谷同友会 こぶし会

日比谷同友会 サークル活動

解散会報告

2022年01月21日 | 例会報告

こぶし会解散のご報告     こぶし会 会長 桑原守二 幹事 加藤隆 稲村隆弘

 こぶし会は宮川岸雄氏が創設して以来、会長は松橋達良氏、小口文一氏、山根信義氏(いずれも故人)に交代、その後昨年12月まで桑原がお引き受けしてきた。しかしながら日比谷同友会会員の高齢化と併せこぶし会会員も高齢化し、亡くなられたり、あるいは退会者が多く、これに対して入会希望者が少ないため、会員数が減少、会長および幹事の高齢化に直面し、運営が困難となってきた。そこで会長、幹事が会員有志と相談、12月13日の会合を最後として解散するも止むなしとの結論となった。

コロナ蔓延により会場の確保が困難な状況にあって、やむなくオンラインの会合を1年有余続けてきており、今回は約2年ぶりの会合で、しかも最終だということから、会員にとって故郷ともいえる日比谷電電ビルを望むことのできる日比谷公園内松本楼において、昼食をとりながらの開催を企画した。しかし、コロナの第5波が収束したとはいえ依然としてマスク装着が必要な状況にあり、また引きこもり生活が長く続いたため体調を崩した会員も多く居られ、会員総数15名のうち出席者は7名に留まった。

解散会では、話題提供を兼ねて、まず桑原からICTに関連する2項目について説明を行った。以下にその概要を記述する。

(1)テスラとスペースXについて

 天才起業家イーロン・マスクが創設し米国シリコンバレーに拠点を置く自動車メーカー、テスラの時価総額が本年10月25日に初めて1兆ドルを突破した。時価総額1兆ドルは、米企業ではアップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグルの親会社)、アマゾンに次ぐ5番手である。テスラの21年通年の販売目標は75万台超で、自動車大手の年間販売の10分の1以下だが、高い成長力への期待から、今ではトヨタ(2000憶ドル)の時価総額の5倍にまでなったのである。

 テスラが21年10月26日に発表した21年7~9月期決算は売上高が前年同期比57%増の138億ドル、純利益が5倍の16億ドルとなり、そろって過去最高となった。米中の2つの完成車工場に加え、21年中にはドイツと米テキサス州で建設中のEV工場が稼働を予定している。

 同じくマスクが創設したスペースXも順調に事業を推進している。20年5月にはNASAの宇宙飛行士2人を乗せた「クルードラゴン」を国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げることに成功した。民間企業による有人宇宙飛行は史上初であり、また米国内からの有人宇宙船打ち上げは9年ぶりである。

21年4月にはISSに向けた2回目の有人宇宙船「クルードラゴン2」を打ち上げた。この宇宙船にはNASAから2名、ESA(欧州宇宙機関)からの1名とともにJAXAの宇宙飛行士1名(星出氏)の4名が搭乗した。星出氏は半年間のISS滞在任務を終え、再び「クルードラゴン2」により11月8日、フロリダ沖に無事、着水した。

スペースXは今回の打ち上げを皮切りに、今後数年間に複数回の民間宇宙飛行を計画している。さらにスペースXは多数の小型衛星を低軌道に打ち上げ、地上通信網に依存しない衛星通信網を構築するプロジェクト、「スターリンク」を進めている。将来的には1万基以上の衛星を打ち上げる計画である。

同様な計画は中国も進めている。また11月8日の報道によれば、わが国でもNICT、通信事業者、メーカーが共同して、小型衛星による次世代通信網の実証拠点を来年度中に整備する計画だという。衛星通信ネットワークの競争が始まりそうだ。

(2)デジタル通貨について

 ビットコインの価格が10月20日に日本円で760万円(6万6000ドル)となり最高値を更新した。本文を記述している11月中でも、それに近い価格で取引されているようだ。当面の高値は7万ドルが見込まれるとの評論もみかける。昨年末の価格と比較すると、今日の価格は約10倍に高騰しているから、株価が値上がりする程度とは桁が違う。

今から10年前の2011年、米TIME誌が初めてビットコインの特集を行った時期に、筆者もビットコインなるものに関心を持った。その頃は1BTCが約10ドルであったので、試しに買ってみようかと思ったが、BTC取引所がハッキング被害を受けるなどの事件があって手を出すのを止めたことがある。

今から5年前の2016年、1BTCが450ドルとなり、11年からの5年間に100倍になった。その頃、某紙にビットコインの論評を載せた。今年は16年から5年たつ。そして6万5000ドルとなり、100倍に上昇している。半導体の集積度に関するムーアの法則は3年で4倍、10年間で100倍である。これよりも上昇率が一桁大きい。

最近は世界のいろいろな国で自国通貨と連動するデジタル通貨を発行する動きがある。日本も大手銀行やNTTなど約70社の企業連合が22年後半に実用化すると発表した。さらに明確な形で進めているのが中国のデジタル通貨、デジタル人民元である。中国人民銀行は2014年にデジタル通貨の調査を開始し、17年にはデジタル通貨研究所を設立した。20年に国内4都市で実証実験を行うと発表、深圳市では同年10月、5万人に1000万元(約1.6憶円)を配布、実証実験を行った。4都市合計では400万回の個別取引において20億元(約3億ドル)のデジタル通貨が使用されたという。

中国は軍事面、科学技術面に加え、経済面でもますますその存在感を高めている。安い人件費を武器に輸出を伸ばす一方、段階的な関税引き下げで輸入も増やした。国連貿易開発会議によると、20年の貿易総額は2001年の9倍に膨らみ、2.8倍だった世界貿易の拡大ペースをはるかに上回った。当然ながら世界貿易に占める中国の比率も増大、13年には米国を追い抜き、20年には13%に達した。

今や中国は人民元の流通に必死である。一帯一路に関わる国々に財政的な支援を行い、道路、港湾設備などのインフラ整備を援助しているが、こうした動きはすべて人民元の流通を増やすためである。将来的にはドルに匹敵する、あるいはドルに代わって世界の基軸通貨として存在させたいという野望があるのに違いない。その手段として利用されるのがデジタル人民元である。その先に恐ろしいことが起きないことを願っている。

以上2件の説明の後で、説明に対する質疑のほか、電電現役時代の思い出などについて会員から活発な発言があった。その中から杉浦右蔵氏と内山鈴夫氏の入会時の思い出話を紹介させて頂く。

杉浦:初代会長の宮川岸雄さんは、昭和35年1月に郵政省電波監理局長から電電公社保全局長に戻られました。私は関東電気通信局から2月保全局電信機械課回線係に参りました。電子計算機と端末機を結ぶ伝送速度50ボーの市内専用線が不足し、申込に応じられなかったことが忘れられない思い出です。新聞協会から宮川局長に直接苦情がきました。宮川さんは「新聞協会と仲良くやれ」と言われるので、大変苦労をしました。

「こぶし会」には創立当初から入りたかったのですが、私の履歴では入れて貰えませんでした。80歳になって加藤幹事から勧められて入会できました。

内山:こぶし会設立の重要メンバーだった松橋達郎様から、会の発足経緯、目的などを伺いました。当時松橋様は公社の理事、保全局長をされており、日本の海外協力にも先駆者として活躍されていました、こぶし会の意義につきましては、全国に咲く「こぶしの花」のように、公社やNTTの意義や発展動向を全国津々浦に伝える役割を果たしたと考えます。1OBとして、お世話になった公社そしてNTTに感謝し、機会があればこの種の活動にご協力させていただければ幸いです。

解散会の終了時点で、こぶし会の収支に約6万円の残金があった。これの使途について出席者一同で協議した結果、山根元会長や桑原が役員を務めたことがあり、こぶし会の会員の多くがメンバーとして参加しているボランティア団体「NPO法人・BHNテレコム支援協議会」に寄付することで全員の賛同がえられた。

以上、こぶし会の解散についての報告である。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第390回例会(令和3年8月)報告

2021年08月20日 | 例会報告

第390回例会(令和3年8月)報告

この例会もネット開催した。

話題 「プトレマイオス世界図の歴史的意義」      田上 智

 近年、歴史学の傾向が、グローバルヒストリーと言って、単に当該国の歴史のみでなく、その時その時の周辺の国々の歴史にも目を向ける俯瞰的なものに変わってきた。自身、地図という物に興味を持ち、江戸後期、伊能忠敬よりも40年ほど前に、既に日本全図を完成させていた長久保安赤水に注目、懸賞論文に応募、顕彰会から優秀賞を頂いたのがそもそものきっかけであったが、考えてみれば、極東の日本という全世界から見るとあまり周辺に影響を与える出来事ではない。

 それに対し、古代ローマ時代・アレキサンドリアのギリシャ人地理学者・プトレマイオスの世界地図はコロンブスのアメリカ発見のきっかけにもなり、世界史的意義は誠に大きいのだ。米中対立が激化しているが、旧世界の一方の旗頭中国と新世界の雄アメリカとは、そもそも、コロンブスの新大陸発見という誠に大きな事実が起因している。

 クラウディオス・プトレマイオスは古代ローマの学者で数学、天文学、占星学、音楽学、光学、地理学、地図製作学と幅広く活躍した人物だが、そのプトレマイオス世界図の作者としての役割が現代的な意味では最も大きいが、意外と知られていない。

 およそAD150年頃(日本の弥生時代)のこの世界地図は作成されたが、この地図をコロンブスが航海に携行したのだ。この地図とマルコポーロの「東方見聞録」の二つの武器を持って東洋の豊かな国であるインド・中国・日本を目指したのだ。地図の本物は無くレプリカが世界の各地に残っている。自分もヨーロッパのどこであったかは、記憶は無いが、英語でトレミー(プトレマイオスの英語読み)の地図を探しているのだと博物館の係員に行って見せてもらったことがある。コロンブスのアメリカ発見の航海は1492年だから、およそ1200年前の物を航海の手掛かりとして使ったわけだが、現代的意義としては、世界を約8,000のポイントで経線と緯度を示している。アフリカとアジアが大陸的につながっており、インド洋が内海だったり、スリランカが馬鹿でかかったり、もちろん大西洋も太平洋も描かれていない。東へシルクロードでたどるより、西への航海で直接・富の国やインドに行った方が手っ取り早いと考えたのだ。この航海なかりせば、今日的な、「米中対立」も無かったのだ。そういう意味では、この地図が歴史を変えた大きな原因にもなっていると言っても良い。                           (完)


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第389回例会(令和3年6月)報告

2021年06月21日 | 例会報告

 この例会もネット開催した。月初めに資料をネット配信し、ネット上で質疑応答を行い、6月17日にZOOM会議(一部会員参加)を行ってレジュメをまとめた。
 話題1 「台湾のデジタル担当政務委員オードリー・タン」   稲村 隆弘
 台湾のデジタル担当政務委員オードリー・タン著「デジタルとAIの未来を語る」プレジデント社2020.12.01.の要旨紹介を行った。
 序章は台湾のコロナ禍対策である。2020年1月21日に武漢から帰国した台湾人女性の感染が確認されると24日には中国本土からの入国を禁止、同時にスマホを活用し、感染経路確認及び接触者を割り出して警告メールを送出、民間企業にマスク増産を要請、政府が買い上げて全国民に行き渡らせる策を練った。これで感染拡大を防ぎ、ロックダウン、学校の休校、飲食店の強制休業を行わずに済んだ。
 1章の「AIが開く新しい社会」では、AIとの付き合いはあくまで人間が主導権を持つべきこと,公共の価値を生み出す為に人間とAIが協力する体制を作ること、デジタルを使い慣れない人には慣れた人が教えるインクルージョン(包括)が必要なこと、余裕のある社会を作る為にデジタルを活用すべきことが語られる。
 2章では、著者の生い立ちが語られるとともに、2014-5年に知り合った柄谷行人の「交換モデルX」から大きな影響を受け、これを実現するために、グレン・ワイル氏とともにニューヨークでRadicalxChange財団を設立したこと
 3章では、インターネットが間接民主主義の弱点を克服できること
 4章では、社会改革には、「持続可能な発展」「包括」「革新」が大切なこと
 5章では、プログラミング思考として、「自発性」「相互理解」「相互交流」により共通の価値観を見出すことが大事であること
 終章では、日本と台湾が自然災害に遭いやすいという共同体験で結ばれているが、日本と台湾の若者が一緒に暮らしやすい社会を築くことを期待することが語られている。
 オードリー・タンはこの本の出版と併行して、2021.01.15.に東京の国際文化会館で「インド太平洋次世代リーダーによるウェビナー講演」を行っているが、内容は、著書で述べたことを分り易く解説したものであった。
 2018年にオードリー・タンがグレン・ワイル氏と共に設立したRadicalxChange財団は、2019年より年次総会を開催しているが、2020.07.20.に行われた2020年の年次総会において、ユダヤ人哲学者で歴史作家のユヴァル・ノア・ハラリ氏との対談を行っている。その模様も紹介した。       

話題2 「若き無線屋の奮闘記 PCMマイクロ波方式を世界に先駆けて開発」
                                桑原 守二
今年は日本ITU(国際電気通信連合)協会が創立されてから50周年になる。記念して各種行事が企画されていたが、コロナ感染の収束が遅れているため、すべて縮小した形で行われるようだ。50年前の1971年(昭和46年)当時は、国内通信を本業とする電電公社にはITUそのものに関心を持つ社員が少なかった。本報告は、協会設立よりさらに5年前の1966年、遠くノルウェーのオスロで開催されたITUの会議で懸命になって奮闘した若き無線屋の昔話である。
公社のマイクロ波技術は、他の通信技術と同様に、米国ベル研究所の技術機関紙BSTJを良き教科書として必死に勉強した。昭和29年に東京―大阪間に4GHz帯のマイクロ波を用いたSF―B1方式が開通したが、その後は3年間隔ぐらいでB2からB4方式、さらに6GHz帯を用いたU1,U2方式を実用化した。かかる方式改良数の多さが研究・開発の熱心さを如実に物語っている。昭和39年のU2方式になると、何とかベルの
マイクロ波技術の足元ぐらいまで近づいたかなという印象があった。 
それまでのマイクロ波方式は、電話回線を4KHzずつずらして並べる周波数分割多重の技術を用いていた。詳細は省略するが、この操作にはフィルターなどのコストの高い部品が必要であった。方式の多重度を上げ、また新技術を導入してマイクロ波回線のコストを削減するほど、端局装置のコストが割高となった。ここで、PCM変調を導入し、時分割多重とすることにより端局装置のコストを下げようというアイディアが生まれた。
PCM技術自身は、ベルシステムにおいて大都市の局間中継線への導入が始まっており、公社でも開発が進められていた。しかしマイクロ波方式への導入は、電波利用の効率性が悪くなるので誰も考えなかった。事業部門の無線屋がPCM導入のアイディアを言いだしたとき、有線技術の専門家はもちろん、研究所の無線屋すらもこれに反対した。
ところが、ちょうどこの頃、衛星通信方式の導入が始まろうとしており、地上マイクロ波方式と無線周波数を共用する課題が生じていた。私達はこの点に救いを求めた。PCMをマイクロ波に導入すれば電波干渉に強くなるので、衛星通信と周波数を共用した時に両方式に課せられる制約条件が緩和されることを最大のメリットとして強調したのである。この搦手作戦は見事にヒットした。
昭和40年、モンテカルロでITUのCCIR中間会議が開催され、公社からPCMマイクロ波方式を研究する新質問(Question)の設定を提案した。筆者はフランス政府の給費留学生としてパリに駐在していたが、フランスPTTの好意により筆者が出席することについて許可が得られ、会議における筆者の主旨説明にも各国代表から賛意が得られて、新質問が設定された。
物事はいつまでも甘くは進まなかった。1966年オスロで開催された第Ⅺ回CCIR総会は私が一生忘れられない国際会議である。参加72か国、出席者720名は過去最大、日本からも総勢26名の大代表団を派遣した。公社からも肥後大介技術局長を筆頭に、西條無線課長、通研の池上研究室長、岩崎昇三調査員、桑原調査員、これに39年に新設されたNTTジュネーブ事務所の安藤所長を加えて合計6名の前例を見ない大部隊が出席した。カラーテレビの標準方式など世界的には大きな課題が議論されたが、公社の代表としては中間会議に続きPCMマイクロ波方式の技術報告書(Report)、詳細な研究課題を定めた2件のStudy Programの設定が課題であった。
中間会議のときのように、提案を各国がすんなり受け入れるというわけにいかなかった。後から考えると、PCM分野で日本が独自に活躍する姿を欧米先進諸国は黙って看過するわけにいかなかったのであろう。代表に顔見知りの居た米国、フランスは黙認してくれていたが、ドイツ、英国は相当厳しい言葉で反対意見を陳述した。岩崎氏と筆者が何度も発言を求め、必死に食い下がったが一歩も妥協しない。最後は「日本の提案を拒否(Refuse)する」という、国際会議ではほとんど用いられない断定的な表現まで飛び出した。
オスロ総会では結局Study Program1件の設定という不本意な成果で終わったが、数百名の各国代表が出席する大会議場で独、英のベテラン代表と、拙い英語とフランス語で対等に渡り合った2名の若い日本代表の姿は、かなり鮮烈な印象を他国代表に与えたことであろう(このことは、日本代表の団長を務めた電波監理局草部監視部長も同じ感想を後に述べておられた)。事実、その後のCCIR会議では、回を追うごとにPCMマイクロ波をテーマとする寄与文書が急激に増加している。公社はオスロ会議から2年後の1968年、世界で初の2GHzPCMマイクロ波方式を実用化した。これも、公社の無線屋の誇りとするところである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第388回例会(令和3年4月)報告

2021年05月06日 | 例会報告

第388回例会(令和3年4月)報告
 この例会もネット開催した。第一話の配信は1月22日、第二話は1月25日、第三話は2月3日、第四話は2月16日、第五話は2月21日、第六話は3月19日にネット配信し、ネット上で質疑応答を行い、終わりに5月3日にZOOM会議を行ってレジュメをまとめた。
話題 卓話
                        桑原 守二
第一話 米技術見本市が示した新潮流
米国のCESも初のオンライン開催となった。例年、世界から4000社以上が出店しているが、今年は記者会見や製品発表など全てがネットで配信され、出展企業も半減したようだ。それでも会期中の発表からは、これからの技術潮流が示されたという。
最初は米小売りの最大手、ウォルマートの健闘ぶりである。ネット通販配送拠点として既存の店舗を併用し、また定額制の宅配サービスに参入するなどコロナ危機下でも業績を伸ばしている。伝統的な巨大企業でもネット技術をうまく組み合わせれば、将来の成長戦略を示せる好例であり、日本企業もデジタル技術を活用して事業構造の変革を急ぐ必要があるとしている。
次は脱炭素の取り組みである。米GMは2025年末までに高級車から商用車まで30車種のEVを発売すると発表した。企業ロゴを57年ぶりに変更して電動化への決意を示した。日本の自動車各社も脱炭素への長期ビジョンを示すことが急務である。
世界1の自動車メーカ、トヨタもGMと同様にEVへの取組が遅れた。プラグイン・ハイブリッド(PHV)で当分はEVに対抗できると言っていたが、販売車両数の多い中国でシェアが惨憺たる状況を現実にして、ようやく電動化に腰が据わったようだ。
第二話 「一話:新潮流」の続き
EVと自動運転に向けて2025年までに270億ドルもの投資を行い、厳しい構造改革を進めるというGMの発表は車業界に「電気ショック」を与え、発表後にGMの株価を上昇させて2010年の再上場後の最高値を更新した。全車種にわたる電動化の具体的な方針を示したのは、大手ではGMが初めてである。
日産は主要市場で発売する新型車を30年代早期にすべて電動化する計画を発表したが、発売済みのモデルは対象にしていない。日本の自動車大手はHVを含めた全方位の電動化戦略であり、政府も電動車の35年の普及目標にHVを盛り込んでいて、ガソリン車中心の産業からの構造転換は道半ばだ。抜本的な構造改革を急がねば、生き残れないリスクがある。
堀洋一東京大学教授の「走行中給電の検討を」という論評を載せている。画像や音楽をすべてネットで配信して楽しむ昨今、大きなエネルギーを自らが持ち運ぶEVは時代錯誤の商品だ。配電のインフラを道路に設備し、電動車はワイヤレス給電を受けながら走ればよいという意見である。
日本の自動車業界には「日本は火力発電の依存度が高いために、EVを作るほど二酸化炭素ガスが増える」という意見がある。2030年という時代のことだ。もっと再生可能発電を増やすという議論をすべきあろう。
第三話 空飛ぶ基地局について
欧州エアバス、NTTドコモ、フィンランドのノキアの3社が「空飛ぶ基地局」に向け共同研究を実施する覚書を結んだ。高度約20キロメートルの成層圏を飛ぶ無人飛行機に携帯電話の基地局を搭載し、次世代の通信規格「6G」を含めて通信ネットワークの拡充を目指すという。
  筆者は「空飛ぶ基地局」構想について否定的である。高度20キロメートルの飛行機から電波を飛ばすのであれば、少なくなくとも直径50キロメートル程度をカバーするのであろう。これはセルラー方式ではなく、それ以前の大ゾーン方式である。この方式で数多くのユーザーに移動通信サービスを提供するために使用する電波の周波数をどこから探してこようというのであろうか。
 NTT研究所で100GHzの無線方式を開発したことがある。このあたりの周波数なら利用し得る電波があるかもしれないが、スマホなどの端末機で直接受信するのは難しいであろう。エントランス回線としての用途はあるが、雨が降った時の減衰は避けようがなく、伝送が不安定になるのを覚悟する必要がある。
 また昭和40年代の後半、成層圏を飛ばす飛行機をマイクロ波中継所とする案を横須賀研究所が検討したことがあった。詳しく調査をしたところ、成層圏には想像以上に強い偏西風が常時流れており、その風に逆らって一致の場所に止めておくためにはかなりの燃料が必要で、実現は困難という結論だった。
第四話 半導体の研究開発
世界最大の半導体受託製造会社、TSMC(台湾積体電路製造)が茨城県つくば市に本格的な開発拠点を設けると発表して、大きな話題になっている。このところ半導体分野で日本勢の存在感がなくなっているので、世界で名だたるTSMCが関連日本企業を引っ張っていってくれることを多くの人が期待している現われである。
TSMCの2020年の売上高は前年の25%増で約5兆円、サムスン電子の6兆円に近い数字である。TSMCの2020年売上げの20%が回路線幅5nm製品、29%が同7nm製品であるが、サムスンも昨年5nm製品の量産を始めたが歩留まりが十分でない。半導体の雄インテルもいまだ7nm製品の製造に踏み切れておらず、2022年にずれこむとの予想もある。長年見慣れた「Intel Inside」という表示が無くなるかもしれない。
第五話 クラウドとデータ通信サービス
 世界最大のデータセンタ企業はエクニクスだという。1998年の創立だからまだ20年余しかたっていないが、世界24か国、約200カ所にデータセンタを保有している。日本でも東京および大阪市で12カ所のデータセンタを運営している。
 現在、世界でクラウドサービスのシェア第1位はアマゾンのAWSであることは新聞で承知していたが、第2位マイクロソフト、第3位がIBMであり、このところ力を入れているグーグルがそのうちに肩を並べる存在になるかもしれない。NTTデータが活躍していると思っていたが、世界の中では存在感が薄いようだ。クラウドというのはネットを経由しコンピューター資源を活用する仕組みである。こうしたビジネスモデルは電電公社の北原安定元副総裁が局長時代に提言、昭和50年代初めにデータ通信サービスとして実用化された。しかし、通信回線の伝送速度が低かったため、大きくは発展しなかった。北原氏の着想が30年早かったのである。後に続く筆者たちの叡智と努力が足りなかったと、いつも忸怩たる思いに苛まれている。
第六話 垂直統合から水平分業へ
 開発・生産・販売まで、一貫して単一企業が担うのを垂直統合という。我々はこの言葉をベルシステムから学んだ。ベル研究所の研究開発成果を基にウェスタンエレクトリックが製造した通信機器を、22の地域電話会社と長距離電話を扱うAT&Tが調達して電話サービスを提供した。NTTはベルシステムから学んで、通研が研究し、技術局が仕様書を作成、ファミリ・メーカが製造し、専問の工事会社に発注したネットワークを介して電信電話サービスを提供した。これに対し、技術開発、部品生産、組み立て、販売、アフターサービスなどの業務ごとに、別々の企業(グループ)がそれぞれ得意分野を受け持つビジネスモデルを水平分業という。パソコンの製造委託は早かった。受託会社は韓国の広達(クアンタ)などで、工場にはソニーの銘柄が付けられた製品が並んでいた。液晶テレビなどの受託製造会社、鴻海(ホンハイ)は台湾を代表する企業である。半導体産業の水平分業については第四話で述べた。ガソリンを動力とする自動車は垂直統合の見本のような存在であった。しかしモーターと蓄電池だけで動くEV(電気自動車)は水平分業を可能にし、設計と販売だけを行う企業が現れ始めた。
 思いもかけなかった企業も電気自動車分野に参入する計画である。出光興産は地域内移動用の低価格EVを開発する。ヤマダ電機は、スズキOBが設立した小型EVメーカに出資をした。佐川急便は配送用の小型EVを開発中だという。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第387回例会(令和3年1月18日)報告

2021年01月31日 | 例会報告

こぶし会第387回例会(令和3年1月18日)報告
話題 コロナに思う事~良い加減のすすめ~      島田博文
今世の中はコロナで持ち切りだ。マスコミもコロナ一色で色々な議論がされている。お陰で色々な知識が増えた。特にウィルスの世界の歴史へのかかわりが興味をそそった。私は今のコロナ議論の中で、余り議論されていない神の話をしたい。
私はSomething great(天地創造の神)の存在を信じている。キリスト教のような、「全ての創造物は人間の為に作られた」という考えには組しない。私の信じる神は全ての創造物を平等に愛する神だ。
Something great=天地創造の神=神は全宇宙を設計し、創造物の日々の行動まで決めている。神は全ての創造物が予測通りに動くので感動がなくなり、少し物足りなくなった。(ちょっと人間的かな?)そこで設計図の要らない突然変異という仕組みを創った。
その最高傑作(?)が人間だ。最初神は、人間の行動を目を細めて見ていた。しかし、段々神の創った創造物を無神経に破壊し始めたので、人間に警告を鳴らすことにした。ペストやスペイン風邪やSARS等で何度も忠告をした。しかし、人間はその都度、その英知で、ワクチンや治療薬を開発して危機を乗り越え、無神経で傲慢な行動を変えなかった。
そこで神は、ウィルスを次々と変異させたり、ワクチンでできる抗体の寿命を短くしたりする、賢いコロナを、皮肉を込めてペストと同じく世界三大発明を生み出した中国で発生させた。そして欧州、米国へと感染させ、人間にグローバル化の行き過ぎを警告することにしたのだ。遂に神は本気になった。
しかし、神はまだ人間を愛している。実は、神は地球上に解決のヒントを創っていた。それが日本だ。日本は緯度的に恵まれ、しかも海に囲まれ、国土の大きさも最適で、世界に類を見ない地の利に恵まれている。結果、世界の何処にもない豊かな自然があり、四季が鮮明にある国になっている。しかし、神は日本人に試練も与えている。地震・風水害・火山の噴火などの災害による苦しみである。これにより日本人は全てのものに神の存在を感じ、神を畏れ、敬い、自然との共存を志向している。共存の心は”足るを知る”心だ。その心は”ほどほど”とも、仏教用語の”良い加減”とも表現される価値観だ。
神は日本が、この”足るを知る”価値観を世界に広めることを期待している。行き過ぎたグローバル化を是正し、強欲な資本主義にブレーキをかけ、効率第一主義の価値観を変え、無駄の効用も認める、何事にも”ほどほど”の社会作りを期待している。
自然との共存とは、循環型社会を創ることであり、全ての生き物がお互いに関連を持ち、自然界の存続の為に役目を果たす世界で、皆が”ほどほど”に幸せな地球・宇宙を創ることを神は日本人に託しているのではないか。
日本という組織体は、2680年も続く組織体だ。ローマ法王庁も長いが2000年弱だ。ローマ帝国も約2000年で滅びている。これだけ長く存続できる組織体は神の配剤があってのことと考えてもおかしくない。
コロナ禍を機会に日本の文化である”良い加減のすすめ”をグローバルスタンダードにすべく、その役目を果たしたいものだ。
コロナ禍の巣籠りの中、80歳の誕生日に考えた戯論です。
お笑いあれ!


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする