話題1.IT関連の最近の話題 桑原守二
(1)毎年ハノーバで開かれるセビットに今年は日本企業が多数出展した。NTTもサッカー場の新しいVIP席を実現するシステムを展示し多くの観客を集めた。 (2)天才企業家イーロン・マスクが「環境破壊で人類が滅亡することを防ぐ」という夢に向けて設立したベンチャー企業「テラスモーターズ」と「スペースX」が最近話題を呼んでいる。テスラが12年の発売した「モデルS」は現在世界で最も売れている電気自動車である。 (3)24年から固定電話がIP電話に切り替わる。遠くに電話をかけるほど料金が高くなるというのは電話料金の常識であった。この常識が2024年からは通用しなくなる。全国規模で移行するのは、先進国の中で日本が最初らしい。 (4)近頃は放送された映像や音楽を視聴したり、CDなどの記録媒体に入っているコンテンツを再生するよりも、インターネットを通して送られてくるデータから逐次再生(これをストリーミングという)して楽しむ利用者が多くなった。 (5)他人のパスワードを盗んで無線LANを使っても無罪という判決はおかしい。他人の家のコンセントを使用して電気を使う「盗電」と同じで、窃盗罪ではなかろうか。 (6)天才将棋士と評判の高い藤井総太四段がテレビや新聞で騒がれている。藤井少年は史上最年少でプロ入りを果たした。デビュー後の公式戦で29連勝を達成、記録を30年ぶりに更新した。日経は「AIの申し子が偉業」と書き立てた。 (7)中国でスマホを使った電子決済が拡がっている。 今ではスマホ決済が出来ない店を探すのが難しいほどである。対するに日本は現金王国だ。ドコモのお財布ケータイで電子化の世界最先端を切ったのは情けない姿だ。 (8)マイナンバー カードがあれば区役所に行かなくてもコンビニで住民票や印鑑証明を取得でき、料金も区役所だと300円なのだが200円で済む。しかし印鑑登録は区役所まで本人が行かないと、代理人が登録する手続きは大変面倒である。 (9)日立製作所が大型コンピューターのハードウエア開発から撤退する。米IBMも経営に苦しんでいるようだ。対照的なのがクラウドサービスの普及で、世界最大のクラウド事業を手掛ける米アマゾンの17年3月期営業利益は約1000億円と過去最高を記録した。 (10)台湾のTSMCが好調な業績を続けている。回路幅10ナノメートルの製品を量産しており、米アップルは年内に発売するスマートフォン向けの発注をTSMCに決めたという。現在TSMCは回路線幅7ナノメートルの製品の量産体制を進めているようだ。 (11)スマートグリッドから始まりスマートなものが次々と出てきたが、今度はスマートスピーカーが登場した。人工知能と連動し、情報を検索したり音楽を再生したりする。音声認識の進歩がミソで”スマホの次”のネットサービスの入り口になるという。 (12)1914年の有機ELパネル市場規模は液晶パネルの4割以下であったが、急速に増加しており、18年には逆転しそうだ。JDIの最大顧客アップルも!(年以降は有機ELパネルを採用するという。しかしJDIが安定して量産するにはまだ時間がかかりそうだ。 (13)総務省はITU[国際電気通信連合)が災害時の緊急通信システム用として日本が開発した移動式通信装置を導入すると発表した。ITUは世界各国で災害が生じた際に衛星通信回線の提供を行っているが、移動式通信装置に注目したようだ。 (14)準天頂衛星が活躍する場面をようやく見ることができそうだ。日本政策投資銀行など5社が準天頂衛星を使った高精度の位置情報サービスを手掛ける新会社が実現する。 (15)新しい移動通信方式5Gが新聞などの話題になっている。5Gha4Gの100倍の速度を実現する。データの遅延時間も0.001秒と短い。これよりIOTや自動運転への活用が開ける。
話題2.人工知能(Artificial Intelligence)について 飯田徳雄
1.まえがき 人の仕事の約半数は人口知能(AI)などに取って代わる等の事が言われる時代となった。囲碁の世界では、2015年3月6日に韓国棋院所属のプロ囲碁士のイ・セドル氏がGoogle傘下のGoogle Deep Mind社が開発したAlpha Goと対戦して負けるという報道があった。AIは産業の競争力に繋がることからわが国も理化学研究所に富士通、日電、東芝の協力を得て組織を立ちあげたようである。しかしながら、国際的な競争力というか国際学会での論文発表数でみてみると、米国の1281、中国の413に対して日本は、僅か75であり、出遅れの感があり、これから産業界の競争力の維持が懸念されてる。
2.人工知能の発展形態 人工知能(AI) とは、その名のとおり人間の有している知性・知能を人工的に実現する技術である。現在のところ人間の知能と同等の仕組みを実現することで次のような形で進展してきている。 レベル1.単純な制御プログラム。単なる制御。温度が上がるとスイッチを入れ、下がると切るといったもの。 レベル2.対応パターンが 非常に多いもの。探索や推論の類い。将棋のプログラムや掃除のロボット、質問に答える人工知能など。レベル3.対応パターン自動的に学習するもの。機械学習を取り入れたもの。検索エンジンやビックデータの分析で活用される。レベル4.対応パターンの学習に使う特徴量も自力で獲得するもの。特徴量の設計もできるもの。知識や思考に必要特徴量を自ら抽出するディープラーニング(深層学習)等の技術が該当。
現在、中心的な役割をはたしているのが、レベル4のディープラーニング(深層学習)である。画像認識や音声認識の性能が格段に向上してきている。画像認識では2015年、標準的なデータセットにおいて人間の認識制度5,1%を上回る5%のところまできている。音声認識では国際的なコンテストでは人間と同等であるとされている。
3.AI技術のビジネスなどへの活用の例
3,1コールセンターのオペレーター支援 一人前のオペレーターに育成するまでに相応の時間にかかるにも関わらずクレーム対応等のストレスから離職率が高いことがあって、慢性的 に人材不足となっている。これを解消するためにAI技術の導入が始まっている。コンピューター は顧客とオペレーターの通話内容を聞いて瞬時に状況を理解し、知識ベースと合、トラブルの原因を予測し、次の確認すべき質問事項や最適なアドバイスをオペレーターのパソコン画面にリスト表示します。解決策が複数ある場合は、ランキング・スコアの高い順に表示し、オペレーターはそれを参考にしながら顧客のトラブル解消のために対応する。
3.2オンラインショッピング 会話によってユーザーの要望を聞き、それに沿って適切な商品をリコメンド・エンジンと連携して、客の要望に対して良品の商品の提案を行う。
3.3 案内掛(コンシェルジュ) Aiコンシェルジュの開発が急速に進められていて、ホテルではロボットがコンシェルジュとして待機しているところもある。
3.4 フィンテック(Fin Tech) 金融(Finance)と技術(Technology)の造語であり、近年注目度が急上昇している。FInTech の範囲は広く、より有利な条件で借り入れを可能とするサービスもあれば、人工知能を用いて格安な手数料で資産運用するロボットアドバイザー等の分野がある。2016年5月みずほ銀行は東京八重洲口にある鉄鋼ビル に新支店をオープンした。大和証券と大和総研は本年5月9日にAIが予測した株価上昇銘柄を個人投資家に提供するサービスを始めると発表した。
3.5 医療 ①東京大学医科学研究所の例 2016年日本の医療で画期的な出来事があった。東京医科学研究所とIBMによる臨床研究において、Wtosonが提案した治療薬に基づいて医師が診断した治療方法を変更した結果、劇的な効果を上げ患者の命を救ったというものです。人手による解析方法では、治療薬を確定するまで、少なくとも2週間程度はかかるのに対しWatosonは実に10分でできたとのことである。 ②産業技術研究所の例 産業技術研究所はガンがあるかどうかを検査画面から高い精度で見分ける人工知能を開発した。正常な組織や細胞の画像データをAIに学習させる。AIは検査画像全体を解析して「正常でない」と判定した部分を「異常」と見做して検出する。乳がんを調べる超音波画像では、医師ががんを疑う病変の85%以上を判定できた。
3.6 囲碁の世界のAI 人工知能と人間の頭脳の対決ということで世界的に注目を集めた囲碁対決が行われた。対局したのはGoogie傘下のGoogle Deep Mind社が開発したAIシステムAlpha Goとプロ棋士のイ・せルド氏である。イ氏は韓国棋院所属の九段で、国際棋戦での優勝回数10数回 実績をもつ最強の棋士である。世界大会でも2回優勝している。全5戦の結果、AlphaGoの4勝1敗となったのである。2017年5月グーグルが中国政府などの協力を得て開いた「囲碁サミット」では中国ランキング1位世界最強棋士の柯九段と3番勝負をしてAIが3連勝した。この結果を受けて、グーグルは囲碁のAIの開発を打ち切ることにしたと発表した。
3.7 AI兵器 AIを搭載することで、自ら攻撃目標を発見し殺傷する「キラーロボット」が誕生する日が近づいて きている。火薬、核兵器、に次ぐ戦争の「第3の革命」を巻き起こす危険がある。すでに、AIを搭載したロボットは軍事利用されている。韓国は北朝鮮との軍事境界線にロボットを配している。相手の熱や動きを感知し目標をとらえ、人間の指示に基づき機関銃などで攻撃する能力がある。イスラエルでは、自ら目標を捜索し、攻撃できる無人機「ハロップ」ヲ開発した。米国は潜水艦の探知、追跡を行う「シーハンター」無人戦闘機を開発している。英国は標的を自動追尾するミサイル「プリムストーン」を搭載した軍用機を開発している。
7.あとがき 19世紀の機会は動力源として、人間の体力と競ってきたが、今日のマシンは人間の脳と競っているような状態になってきている。例えば、ロボットは脳と体力の両方を備えている。我々人間は、自ら生み出したものに、完全に打ちのめされているのではないか、という危機に直面していると、危惧する人が出てきている。