話題1. 最近のアジアの動向 -タイの動きを中心としてー 加藤 隆
1.アジアの動き アジア地域のGDPの伸びは順調で、2050年には世界の50%を超える見込みである。しかし最近ASEAN諸国の成長はやや減速気味で、その理由に「中国経済減速を背景に輸出の伸びの鈍化」「国内消費の息切れ」があるが、この現象は一時的との見方が強い。その根拠として、①アセアンには6億人の市場があり、中間層が成熟し、直接投資が底堅い、②ASEAN経済共同体(AEC)が発足する、③米国・インドの景気が回復しよう、④後発国(ミヤンマーなど)が急速な経済進展が期待できる、としている。AFCは現行のASEAN10ヵ国が加盟しているAFTAを基に、その最終目標は域内の「単一生産基地」と「単一市場」の創設であり、関税撤廃はすんなりと進むと見られていて、本年末発足予定である。 一方、米国主導で締結が進められているTPPは大幅に遅れていて、参加予定国は12ヵ国間で関税、知的財産権などで未だ決着をみていない。この間TPPからはずれた中国が主導するアジア開発銀行(AIIB)には、創設メンバー国は57ヵ国が予定され「シルクロード構想」と呼ぶ経済圏づくりに向けた一歩を踏み出した。これには日米は参加していないが、G7のうち英国など4ヵ国やASEAN諸国が参加を希望していて、今後の動向が注目される。(6月29日開催の調印式では、フイリッピン、タイなど7ヵ国が、国内手続きの遅れなどを理由に設立協定への署名を見送った) 2.タイの動向 ASEAN陸の回廊の中心に位置するタイは中進国入りを果たしたが、現在軍事政権下にある。これは2001年に政権をとったタクシン派(赤シャツ派)とその反対派(黄シャツ派)との間で発生したデモ合戦の沈静を図って軍によるクーデタが起き、軍がそのまま暫定的に政権を握っている。来年には新憲法を制定し民政移管の計画はあるがなお不透明である。このような事情や「1.アジアの動き」で述べた理由もあり、タイ経済と産業は停滞を続けている。輸出不振を補い内需拡大を図るため、自動車など購入時の大幅減税や農村への補助金ばら撒きの反動もあるとのこと。その景気回復策の大きな柱の一つとして、タイ政府はICTを「ビジネス経済・産業の振興]「住み心地のよい社会の構築」に役立て、更に「周辺国への進出」を図る政策をたて、立法化し、公民連携(PPP)で国を挙げて取り組む方針を明確にしている。そしてICT省を「デジタル経済・社会省」とし、戦略として「デジタルコンテンツ開発」「民間競争力強化」および「人材育成」を掲げている。この巨大プロジェクトの成功を切に祈っている。
話題2. フランス革命の”史実と登場人物” 松本 哲男
フランス革命は現代社会の出発点に位置する革命である。「国民主権」「法のまえの平等」といった今の社会の根本原則はフランス革命によって確立されたのであった。この度、『小説フランス革命1~18巻(佐藤賢一著)』が文庫版として再発行された。これは、当時の時代背景の中で、フランス革命に登場する人物が、何を考え、どう行動したかを書かれ臨場感あふれる作品となっている。また、19世紀の著名な歴史家、ジュール・ミシュレ著の『フランス革命史上、下』は歴史書であると同時に文学書でもあり、その文章と内容は人を魅するものがあり世界の名著とされている。この二作品を読んで大いに感銘を受け、興味を抱いたので、「フランス革命」について”史実と登場人物”としてまとめた。「フランス革命のあらすじ」は、以下のとおりである。 1789年、餓えに苦しむフランスで、財政再建のために国王ルイ16世が全国三部会を招集。聖職、貴族、平民代表の議員がヴェルサイユに集うが、議会は空転。平民代表が憲法制定国民会議を立ち上げると、国王は軍隊で威圧、平民大臣ネッケルを罷免。激怒したパリの民衆がデムーランの演説で蜂起し、バスチューユ要塞を陥落。議会で人権宣言も採択されるが、庶民の生活苦は変わらず、女たちが国王一家をヴェルサイユ宮殿からパリへと連れ去る。議会もパリへ移り教会改革が始まるが、難航。王権擁護派のミラボーが病死し、国王は家族とともに亡命を企てるも、失敗。憲法が制定され立法議会が開幕する中、諸外国との戦争が叫ばれ始める。 1792年、王とジロンド派が結び開戦するが、緒戦敗退。民衆は王の廃位を求めて蜂起。新たに国民公会が開幕し、ルイ16世が死刑に。フランス共和国となるが、対外戦争に苦戦し内乱も勃発。革命裁判所が設置され、ロベスピエール率いるジャコバン派が恐怖政治を開始。元王妃やジロンド派、エベール派、さらにはダントン派まで、次々に断頭台へ送られた。 1794年、恐怖政治の行き過ぎから、臑に傷持つ国民公会議員の一部が暗躍して、テルミドールのクーデタを起こしロベスピエールを始めとするジャコバン派の幹部を死刑に処す。これにより恐怖政治は終了し、革命らしい革命は終わるが、その後も、反動が始まり、社会は大いに乱れた。こうした乱れた社会を救うべく登場してくるのが、ナポレオンなのである。
次回第350回例会は7月27日(月)予定
話題1. 下町っ子の昭和 高橋 澄夫
話題2. 最近の情報通信事情 桑原 守二