話題1 ITに関する話題 桑原 守二
日本と中国のキャッシュレス化:日本政府は高額の新紙幣を2024年度に発行,また21年度に500円硬貨も刷新するが,ATMの更新など資金と労力を費やすことになり無駄な投資である。そんなことより現金を使わないキャッシュレス決済の比率を高める政策を推進する必要がある。こんな日本に対し,スマホによる決済が進んだ中国では「顔認証決済」が広がり始めた。事前に顔写真を登録しておくと,コンビニでは無人のレジで決済してくれる。地下鉄では切符を使わずに改札口を通れるサービスも始まった。顔認証決済の利用登録者は1億人を突破したという。
GAFAの現況:米国の4メガIT企業G(グーグル)、A(アマゾン)、F(フェイスブック)A(アップル)の4社は世界中でますます巨大な力を発揮している。単にお金を収集するだけでなく、サービス提供の副産物として懐に入ってくる膨大なデータが今や大きな力を発揮する。今や適うものなき新興メガ企業のGAFAであるが、アップルが動画配信サービスを始めるなど中核事業において互いに浸食するようになり、成長に陰りが見えてきた。
イーロンマスクの新規事業の動き:EVメーカーのテスラが中国・上海市で建設中であったEVの新工場で試作車の生産を開始した。また11月にはベルリンにEV工場を建設すると発表した。既存の米カリフォルニア州の工場を合わせて、米、中、欧の3極でEVの供給体制が整うことになる。さらにピックアップトラック型のEV「サイバートラック」を初公開するなど活躍が目覚ましい。一方、宇宙ベンチャーのスペースXは28日、開発中の次世代宇宙船「スターシップ」の試作機を南部テキサス州の施設で公開した。2か月以内に高度20kmへの打ち上げと着陸の試験を実施するという。スターシップは再利用が可能で、将来は100人を乗せて月や火星等に飛行することを目指す。
ロボットの研究開発:東工大発スタートアップのリバーフィールドは開発中の内視鏡手術支援ロボットについて2020年秋にも臨床治験に入る。柔らかい臓器を含む肺など呼吸器系のがん手術などで需要を開拓する。新製品の価格は「ダビンチ」の半額以下の1億円以下を狙っている。京阪奈にあったNTTの研究所も、こんな分野でもっと活躍して欲しい。
ストリーミング時代の到来:最近は、映像コンテンツをテレビ放送あるいはケーブルTVで視聴するよりも、ネットを通じて流れてくる映像コンテンツをスマホ、あるいはタブレットなどで楽しむ人々の方が多くなった。この傾向は、米国では10年ほど前から始まり、日本でも最近はテレビ受像機を持っていない若者が増えてきた。
話題2 在外公館勤務の思い出 松本 慎二
九州通信局の勤務が2年目に入った昭和51年夏,本社の課長会議に出掛ける時に部長から受けた指示に従って,本社の技術系人事部門に出頭したら,君は海外勤務を希望しているね,と確認後,外務省に転籍して,大使館に勤務するのはどうだ,と尋ねられた。海外に出ることに強い興味があったので,即座に「ありがとうございます,よろしくお願いします」と答えた。
というのも,戦前,私が上海で生まれた時,父は上海の紡績工場のエンジニアで,戦後も商社で紡織機フルターンキープラント輸出の仕事で,10以上の発展途上国に,2年程単身滞在して帰国する生活を繰り返していた。時々一緒に過ごす時には,海外の事を話してくれたので,自然と外国に興味を持つようになっていたからだ。更に電電公社に入社後,現場実習の仙台で<東北大学夏季仏語講座生徒募集中>の広告に惹かれて一ヶ月間受講,本社配属後も,勤務後に日仏会館等で仏語習得に励んだ。これらが幸いして担当者の海外出張が珍しい時代に,国際電気通信連合主催第1回世界電気通信展の電電公社ブースの責任者としてジュネーブに派遣され,,同時に開催された世界無線主管庁会議政府代表の一人として出席された北原総務理事の帰国時のフランス,レバノン,クェート,タイ訪問に鞄持ちで3週間随行した経験が前向きな気持ちを後押しした。
程なく,本社に転勤になり,外務省中近東第一課に席を置き,外務省の仕事に慣れると共に,外務省研修所で,在外公館に派遣される各省庁の官僚と共に外交官に必要な業務知識やマナー,仏語とアラビア語,日本文化等学んだ。昭和51年7月電電公社辞職,外務省在アルジェリア日本大使館二等書記官に発令され,直ちに赴任した。
アルジェリア日本大使館には,外交官8名(大使1名,公使1,一等書記官1,二等書記官3他),現地雇用4名の構成で,外務大臣秘書官を経験したキャリアの一等書記官が業務を統括した。私は技術協力,内政,広報を担当した。館員が少ないので,夫々の館員はもっぱら独立で業務処理し,必要な場合には一等書記官と相談し,更に大使に報告,意見具申,指示を仰いで業務を捌いた。その頃,日本企業によるマイクロ波回線,同軸伝送路,地球局が建設中で,偶に発生する支払遅延等のトラブルのサポートの他,外交団や現地日本人社会との定期的情報交換等も重要な仕事だった。
当時は,世界各地で航空機ハイジャック事件が多発していたが,日本赤軍によるダッカ日航機ハイジャック事件が,昭和52年9月28日に発生した。この時,要の一等書記官は休暇帰国中で,急ぎアルジェ帰任に努めたが,空港が閉鎖され,パリで待機を余儀なくされた。本省の指示で,大使がアルジェリア政府にハイジャックされた日航機の受入と人質解放への協力を要請する交渉に陪席したが,緊迫の交渉の末に合意した結果,アルジェリアで全ての人質が無事解放され,事件は10月3日に終結した。開放された人質と関係者が乗った飛行機が日本に向け出発したときの安堵感は忘れることが出来ない。
第382回例会(令和2年2月17日)につきましては,
話題1 伊能忠敬と長久保赤水 田上 智
話題2 世界経済に寄与するASEANの進展 加藤 隆
を予定しています。
場所はいつもの
情報エンジニアリング協会 渋谷区猿楽町3-3 Tel(03)3464-3211
時間は 13:30-16:30 であります。