響庵通信:JAZZとサムシング

大きな好奇心と、わずかな観察力から、楽しいジャズを紹介します

華麗なるミュージカル(2)

2018-02-11 | 音楽

人気テレビ番組『Youは何しに…』は空港で来日する外国人を、
   「何処から来たの?」
   「何故日本へ?」とインタビューする。
「日本のアニメに興味があって…日本語を勉強して…日本に行ってみたかった…」というヤングからミドル達が少なくないのに、驚く。
“セーラームーン”や“忍者”などのコスプレに熱心な若者(といえないYou)も多い。
シニアの筆者にはアニメはおろか、
“変身ヒーロー”や“恐竜”の知識に疎く頭を下げるしかない。
戦後の漫画映画はディズニーの天下だった。
ミッキー・マウスを生んだディズニー世界初総天然色長編漫画映画『白雪姫』が、
1950年(昭和25年)に日本で公開され、
7300万円余の興行収入を上げその年の大ヒットになった。
何年か経って『白雪姫』は日米開戦四年前(1937)に製作されていたことが解り、
こんなところにもアメリカが先進していたとは!
 〈これじゃあ負けるのも仕方ないか?〉と妙な敗北感を持った〉
更に何年か経ちジャズのスタンダード曲:
♪Someday My Prince Will Comeが映画挿入曲だと知って、
アメリカ映画、特にミュージカルに溺れていたこの頃が、
ジャズ喫茶人生を通す“ひとこま”だったのかもしれない。

映画『巨星ジーグフェルド』は黒白版である。
最大の見せ場、直径21メートル、重さ100トン、175段の螺旋階段を回転させ聳え立たす“豪華”な舞台装置が,もしカラーだったら“絢爛”極まりなかったのに !!!
フローレンツ・ジーフフェルド役だったウイリアム・パウエルは、
再び『ジーグフェルド・フォリーズ』で、天国に逝った彼を演じている。

【ジーグフェルド・フォリーズ】(原題:Ziegfeld Follies)
1946年:米(カラー 110mins)
  劇場公開:89年
  監督:ビンセント・ミネリ
主な出演者
  ウイリアム・パウエル
  ジュディ・ガーランド
  フレッド・アステア
  ファニー・ブライス
  リナ・ホーン
  シド・チャリシー
  ジーン・ケリー

ゆっくり天国に近づくと三つのモニュメントを潜る。
シェークスピアの門、バーナム・サーカスのテント、そしてジーグフェルド劇場入口。
  *バーナムは「世界最大のショウ」を設立したアメリカの興行師
広々した書斎でワインレッドのガウンを着たフローレンツは、
『巨星ジーグフェルド』のキャラクター人形を見、楽しかりし日々を回想する。
「古き良き時代だった。私が天に召されたらフォリーズもなくなった?
私のフォリーズは私にしか出来ない、あと一つ作るとしたら?どんなショウにする?」…
「オープニングを飾る主演は?旧友のフレッド・アステアが、ふさわしい」

シルクハット・タキシード・ステッキ・ファッションのアステアが歌う、
♪Here's to The Girls
 銀とピンクの花飾りの帽子の美女群の(“の”が続くのは溜息間隔)輪から、
 トウダンスのシド・チャリシーが躍りでる、
 麗美が織りなすショウ、
 本物の白馬に跨りバージニア・オブライエン艶美の・唄。
ストーリーは無くMGMゆかりのスター達が、
レビュー、オペラ、軽歌劇、軽喜劇、寸劇などを競う贅沢な構成。
音楽プログラムを追ってみよう…

●『椿姫』を歌う
 ジェームズ・メルトン(男性)、マリオン・ベル(女性)が歌う、踊る「乾杯の歌」
 舞踏会シークエンスがフォリーズ調。
●この僕の心は
 アステア最初の出番
 真骨頂の12分→の3分の2は、お馴染み“口説き落とし”(いつもより巧妙)
 ♪This Heart of Mineを歌いながら、ルシル・ブレマーと踊るシーンは…(いつもより熱い)
●愛
 MGM映画に度々出演している美人ジャズ歌手、
 バンプ役を演じさせたら──この人、
 リナ・ホーンがトロピカル酒場で唄う♪Love
●ライムハウス・ブルース
 黒の帽子・服すがたの中国人に扮したアステア、
 古いチャイナタウンの歓楽街を不気味にうろつく。
 黄色いドレスを着た女性が骨董店で陳列の“扇”をジット見、諦めて去る。
 アステア迷わずそれを盗む。
 撃たれた彼は半死状態、必死に、“扇”に手を…
  〈ここからアステア・ファンタスチック・ワールド〉
 “扇”ひらひら…天国に誘う、
 黒ずくめコスチユームが真紅に替わり黄色女も赤くなり、
 7分続くこのシーンのほぼ半分を占めたのは、斬新なデュオの踊り。
   〈アステアは様々な小物を使って楽しませてくれてきたが、
    “扇子”は初めて見た〉
 両手に表・裏が紅白になるちょっと大きめの扇子を自在に変化させ、
 まるで日舞のような所作!
 振付師が日本贔屓かな~?ジャナクッテモ嬉しい。
 さて、現場に還った、アステア如何に!
●インタビュー
 大女優が記者に取材されるコミック・オペラ
 16歳のとき映画『オズの魔法使い(1939)』ドロシーを演じ、
 アカデミー特別賞を得たジュディ・ガーランドが、
 コケティッシュでダイナミックな踊りと唄──
 男性コーラス群とのコラボレーションは、格が違う。
●凡人と凡人(原題:The Babbitt and The Bromide)
   〈babbitt(俗物)&bromide(凡人)とへりくだったタイトル?
    いや、いや“粋”な、ふ・く・せ・ん〉
  ミュージカル二大スターの、ただ一度だけ共演した“お宝映像”だった。
  公園のベンチで新聞を読んでいるジーン・ケリー、
  隣に座ったフレッド・アステアはどうやら御同業者。
  ジェントルマン:アステアと伊達男:ケリーのシンクナイズド・ステップ。
  ガーシュウイン兄弟の曲に乗って出会いから10年後・20年後の人生を語り踊る、
  7分15秒!  〈YouTube でご覧になリます〉
  まさに“名人”&“名人”パフォーマンスこそ、本編最大の見どころだろう。
  天国在住のフローレンツもサプライズの一幕は、想定外に違いない。
●美
  フィナーレはキャサリン・グレイスン。
  ミュージカル・ソプラノ歌手で女優。
  MGM映画『錨を上げて(1945)』ではケリーと共演している。
  アーサー・フリード詞・ハロルド・アーレン曲♪Word and Music
  グレイソンの唄と踊り──
    美はどこにでもある/誰もが愛でることができる/
    すてきな世界に広がっていく…
  泡の海で踊るシド・チャリシー、舞う美女&美女、
    目の前に誰かが現われ/突然真実だと知る…
  Ziegfeld Follies の輝く文字を背に、グレイソンが立つ!

      “フォリーズ動く絵画『ビーナスの誕生』だ”

                END

    [追記]
      1974年映画『ザッツ・エンターテインメント』には、
      約半分縮小された「凡人と凡人」が挿入されています。
      共同ディレクターのケリーが、
      「フレッド・アステアと踊る時は力が入ります、
      このジーグフェルド・フォリーズが唯一の共演、
      また一緒にやりたいものです」と語っています。