響庵通信:JAZZとサムシング

大きな好奇心と、わずかな観察力から、楽しいジャズを紹介します

続:気になる映画監督

2014-07-27 | 音楽

《まぼろし》
{現実のものとしては、それを見たり聞いたりすることが出来ないのに、存在するものといわれるもの}…新明解国語辞典
1960年代、《幻の名盤》といって、『レフト・アローン/マル・ウォルドロン』『オーバー・シーズ/トミー・フラナガン』『クワイエット・ケニー/ケニー・ドーハム』『サキソフォン・コロッサス/ソニー・ロリンズ』などのオリジナルLPは、
ジャズ喫茶店にとって〔三つ葉葵の印籠〕だった。
《幻の映画》という仕訳はないけれど、オットー・プレミンジャー監督の『ポーギーとベス』は、是が非でも観たかった。

幻の映画【ポーギーとベス】 (Porgy and Bess)
      1959年:米/サミュエル・ゴールドウィン (カラー 138mins)
       劇場公開61年
       監督:オットー・プレミンジャー
       制作:サミュエル・ゴールドウィン
       原作:デュボーズ・ヘイワード
       脚本:リチャード・ナッシュ
       音楽:ジョージ・ガーシュィン
       音楽監督:アンドレ・プレビン
       出演:シドニー・ポアチェ、ドロシー・ダンドリッジ
          サミー・デイビス・ジュニア、パール・ベイリー
          ダイアン・キャロル、ブロック・ピーターズ
  *音楽監督のアンドレ・プレビンはケン・ダービーと共同で、
  第37回アカデミー賞:ミュージカル映画音楽賞を受賞した。

1925年、デュボーズ・ヘイワードは、障害ある黒人青年の悲恋小説『ポーギー(Porgy)』を発表し、2年後、小説を妻のドロシーと共に戯曲化した。
ジョージ・ガーシュィンは、かなり早くから注目していて、33年暮、ヘイワードと兄アイラ・ガーシュィンに作詞を任せ、オペラの作曲を始めた。
編曲を含め20か月要した3幕9場のオペラ『ポーギーとベス』は、
35年9月、ボストンのコロニアル劇場で初演され、
画期的な作品として話題になったが興行的には失敗だった。
翌10月、ニューヨーク・ブロードウェイ初演:アルビン劇場で成功し、後4回再演されるなど演劇史上最大興行の1つに数えられた。
(『ブロードウェイ・ミュージカル:スタンリー・グリーン著/青井陽治訳』参照)

映画化されたのは1959年。
この年は、史上最多の音楽映画がリリースされている。
『5つの銅貨』『真夏の夜のジャズ』『お熱いのがお好き』『ジーン・クルーパ物語』『アメリカの影』『或る殺人』『拳銃の報酬』(以上アメリカ映画)
『危険な関係』『殺される』『彼奴を殺せ』『黒いオルフェ』『墓にツバをかけろ』(以上フランス映画)、『夜行列車』(ポーランド映画)
そして、プレミンジャーの『ポーギーとベス』である。
殆どの作品は翌年…遅くても65年までに日本で上映されている。(『ジーン・クルーパ物語』:未公開)
筆者にとって『5つの銅貨』『真夏の夜にジャズ』…など、不覚にも見落とした映画への願望を叶えてくれるビデオ・ディスク文化は、何よりも嬉しかった。
ところが、ところが!
『ポーギーとベス』だけ、いつまで経っても〈片思い〉だった。
20年ぐらい待ったあるとき、ガーシュィン家から再上映・再放送・ビデオ化が禁止されている〔絶滅種映画〕だ、と知った。
自由の国アメリカでなんてこった。
生涯無縁か~
みられないのをみるにみかねた知人が、今年、〔アメリカのアマゾン・サイト〕で入手してくれた。
〔補遺〕今まで画質はともかく、ノーカットの『ポーギーとベス』が、YouTubeで見られたので我慢してきた、ところ、今度は、制作会社のサミュエル・ゴールドウィンが〔著作権侵害〕を理由に削除!
全く、何とも割り切れないデモクラシーの国だよ。


筋書きはこうだ。
●歌う登場人物
ポーギー(シドニー・ポアチェ)…脚の悪い乞食
ベス(ドロシー・ダンドリッジ)…クラウンの情婦
スポーティング・ライフ(サミー・デイビス・ジュニア)…遊び人
マリア(パール・ベイリー)…隣人
クラウン(ブロック・ピーターズ)…気の荒い沖仲士
クララ(ダイアン・キャロル)…ジェイクの妻
セリーナ(ルース・アッタウェイ)…ロビンスの妻
ジェイク(レスリー・スコット)…漁師
●アメリカ東南部サウスカロライナ州チャールストンの黒人居住街。
賭博のいざこざからロビンスを殺したクラウンは、ベスから金を貰って逃げてしまう。
ベスはスポーティング・ライフから“あるもの”を渡される。
事件に係わりたくない住民はベスを冷たくするが、ポーギーが小屋に入れてかくまう。
ポーギーとベスはいつしか愛し合う。
ある日、近所の人たちと沖合のキティワ島にピクニックの計画があり、脚の悪いポーギーは残り、ベスを見送る。
帰り支度で一行から遅れたベスは、島に隠れていたクラウンに捕まってしまう。
クラウンとの関係を告白されても、ポーギーのベスへの愛は変わらない。
ハリケーンが近づき住人達は集会場に避難する。
漁に出ている夫を心配するクララは“赤ん坊”をベスに預け、
暴風雨の外に出て、戻ってこなかった。
ポーギーとベスと赤ん坊の平和な生活が始まった夜、
ベスを奪おうとクラウンが忍び寄る。
窓を挟み男二人の争いになり、
ナイフを振り上げるクラウンがセリーナに目撃されている。
死んだのはクラウンでポーギーが連行される。
スポーティングはチャンスとばかりに「ポーギーは長いこと帰れないから…〕と、
ベスをニューヨークに誘い出す。
(証拠不十分?)機嫌よく帰ってきたポーギーはベスがいないことを知って、
みんなが止めるのを振り切り、“山羊車”でニューヨークを目指し去ってしまう。

プレミンジャーのオール黒人キャスト(白人刑事役を除く)の異色ミュージカル映画は、
『黄金の腕』の前作『カルメン』に次いで2度目になる。
『カルメン』(20th フォックス)の原題は『Carmen Jones』で、邦題の『カルメン』は30本以上もあり、アメリカ映画でさえ既に4作品あった。
プレミンジャー・カルメンは1943年のブロードウェイ・ミュージカル『カーメン・ジョーンズ』をもとに54年に映画化。
ドロシー・ダンドリッジ(カルメン)、パール・ベイリー(カルメンの友達)、ブロック・ピーターズ(ブラウン曹長)、ダイアン・キャロル(カルメンの友達)が出演している。
因みに、ハリー・ベラフォンテがドン・ホセ伍長役。
 【蛇足の注】下線の俳優は『ポーギーとベス』に出演。
“あるもの”とは、
「ハッピー・ダスト(幸福になる粉)」と呼ばれるコカインで、
プレミンジャーは『黄金の腕』でみせたリアルな演出ではなく、ベスがこっそり後ろを向くだけなので、
どの程度の薬物依存なのか、スポーティングが麻薬密売人という印象は、
映画からは感じられない。
サミー・デイビス・ジュニアの『ハリウッドをカバンにつめて』に、
[スポーティング・ライフ]の章があり、
「当時の私はとても純情だったので、じつは、コカインであることなどまるで知らなかった(中略)ベスが何をしていたかを完全に理解したのは、ハリウッド中がコカインにとりつかれたときだった」
…そのあとの暴露話が、
「どのハリウッドのパーティに出ても、アル中(原文のまま)の連中のためにアルコール類がほんの少しだけ片隅においてある。
大部分の連中は大きな鉢を二つ並べたテーブルのまわりに集まる。
一つにはキャビアが、もう一つにはコカインが入っている」
“赤ん坊”は、
演技しないがもっとも重要な役割を担っている。
①船着場でクララが赤ん坊を抱いて子守唄♪「サマータイム」を唄っているところから映画が始まる…
②クララから預かった赤ん坊がポーギーとベスの幸せのシンボルになる…
 (ベスが♪「サマータイム」を唄いながら、おむつ、を取り替える)
③釈放されたポーギーがベスを探すけれど、住民たちは黙っている…
 (ベスが預かっている筈の、赤ん坊が、
 セリーナの乳母車にいるのに気が付く)
“山羊車”だけではイメージが浮かばないと思う。
英字版『Porgy and Bess』でポーギーはcrippled beggarと書かれている。
crippledは差別語らしいので、〈脚の悪い〉と表現したけれど、
ポアチェの演技は、痛々しい。
両膝でにじり寄らないと移動できない。
それでも階段を昇り降りする。
外出するときは、
木製の車輪を付けた木箱に乗り、飼っている“山羊”に牽かせる。

『ポーギーとベス』は、オペラも映画も20曲を超える大作である。
♪[サマータイム](作詞:デュボーズ・ヘイワード)
ジャズ・スタンダード・ランキング:3位の曲。
クララ役のダイアン・キャロル(吹替え:ソプラノ歌手ルーリー・ジーン・ノーマン)が、
①冒頭の船着場で赤ん坊を抱いて夫の漁師ジェイクを待っている~
②集会場に避難している最中にも唄う。
 (そのあと、赤ん坊をベスに預けて外に飛び出してしまう)
③預かったベス(ドロシー・ダンドリッジ…吹替え:ソプラノ歌手アデル・アディソン)は、おむつ替えのときに唄う。
続く2曲目以後も当然オール英語、しかも、オペラ。
 “父ちゃん金持ち 母ちゃん別嬪” なら、まだしも、
これは深刻な**障害というものだ…(T_T)
見ただけの紹介しかできないが、主な曲を──
♪[ア・ウーマン・イズ・ア・サムタイム・シング(女は気まぐれ)](詞:ヘイワード)
ジェイク役のレスリー・スコットが赤ん坊を抱き歌う…スポーティング(サミー・デイビス・ジュニア)も続く…コーラスもバックに。
 *レスリー本人のボーカル
♪[ゼイ・パス・バイ・シンギン](詞:ヘイワード)
ポーギーが山羊車に乗って帰ってくる。
集会場の階段下で、ひざまずき、歌う…驚くほど美声!
【あ】で始まる気になる映画で紹介した『パリの旅愁』で格好いいテナー・サックス奏者を演じたポアチェは、
歌も歌えるんだ!と、感動してしまった…が、

バリトン歌手のロバート・マクファーリンが吹替えていた。
そういえば、『パリの旅愁』はポール・ゴンザルベス(ts)がダビングしたん、だった。
 【蛇足の注】
 ロバート・マクファーリンはジャズ歌手ボビー・マクファーリンの父。
♪[ゴーン、ゴーン・ゴーン](詞:ヘイワード)
山寺の鐘ではない…(*^_^*)
ロビンスの葬儀に集まった住人が合唱する。
♪[マイ・マンズ・ゴーン・ナウ(あの人は行ってしまった)](詞:ヘイワード)
ジャズ・スタンダード・ランキング:481位。
LMDb profile を検索すると、
セリーナ・ロビンス役:ルース・アッタウェイ(吹替え:メゾ・ソプラノ歌手アイネズ・マシューズ)が唄っている。
ストーリーから推測すると、
♪[ゴーン、ゴーン、ゴーン]と同じシーンで歌われていなければならないのに、
いくら見返ししても、この曲は聴けない。
もしかしたら、
アンカットと断っているこのビデオのランニング・タイムを実測すると116minsで、
オリジナルの138minsに足りないから、♪[マイ・マンズ…]のシーンが抜けてしまったかもしれない。
まあ、絶滅種の〈呪い〉から解放されないと、真相はまだまだ?
♪[アイ・ガット・プレンティ・オ’ナッシン(ないものがたくさんある)](詞:アイラ・ガーシュイン)
ポーギーがジェイク(クララの夫)から赤ん坊を預かり歌う。
 (ポーギーとベスの睦まじさをコーラスでも)
♪[ベス・ユー・イズ・マイ・ウーマン・ナウ(ベス、今こそおまえは俺のもの)](詞:ガーシュイン)
ジャズ・スタンダード・ランキング:539位。
ポーギーがベスにちょっかいをかけるスポーティングを追い払い、ドアをロックして歌う。
続いてベスも笑顔で唄い…合唱。
♪[オー・アイ・キャント・シット・ダウン](詞:ガーシュイン)
マリア役:パール・ベイリー(本人のボーカル)が唄う。
チャーチ・ピクニックの準備でマリアが仕切って…マーチング・バンドと一緒に全員船着場に行進…コーラスも。
♪[アイ・エイント・ガット・ノー・シェイム](詞:ヘイワード)
島に着いた時と帰るとき…全員のコーラス。
♪[イット・エイント・ネセサリリー・ソー(そうとも限らない)](詞:ガーシュイン&ヘイワード)
ジャズ・スタンダード・ランキング:420位。
牧師を囲んだ集会で、スポーティング(=サミー・デイビス・ジュニア)のワン・マン・ショー。
歌って…踊って、コーラス…タップ・ダンス~歌う。
圧巻!4分21秒の、ここだけハリウッド!ここだけミュージカル!
 *憶測だけれど、ガーシュイン家の逆鱗に触れた部分では…
  ないだろうか?
♪[ホワット・ユー・ウオント・ウイズ・ベス?](詞:ヘイワード)
ベスが島でクラウンに迫られ、唄う。
 (抵抗もむなしく抱え込まれて林の奥へ)
♪[オー・ドクター・ジーザス](詞:ヘイワード)
ベスが島から帰ってきて病に倒れ、マリア、ピーター(蜂蜜売り)たちが戸口で心配する。
セリーナがお祈りを捧げながら唄う。
♪[アイ・ラブズ・ユー・ポーギー](詞:ガーシュイン)
ジャズ・スタンダード・ランキング:270位。
ベスが泣きながら謝り…ポーギーの手を握って唄う。
ポーギーと合唱…Kiss。
 *英語のタイトルは「I Loves You, Porgy」でLove に“s”が付いている。
  がーシュインが黒人の慣用を熟知していたことが、解る。
♪[ガット・アンド・ミー](詞:ヘイワード)
♪[ア・レッド・ヘデッド・ウーマン](詞:ガーシュイン)
2曲とも後から集会場に避難してきた殺人犯クラウン役:ブロック・ピーターズが歌う。
 *ブロック本人のヴォーカル
♪[ゼアズ・ア・ボート・ダッツ・リービン・スーン・フォア・ニューヨーク(ニューヨークへ向かう船が出る)](詞:ガーシュイン)
ポーギーが逮捕され赤ん坊を抱き途方にくれるベス。
スポーティングはコカインで落ち着かせ「俺と一緒にニューヨークに行こう…」と、
歌で口説く。
歌の前後に♪「イット・エイント・ネセサリリー・ソー」をハミングして2分強の熱唱が、
エンタテイナー:サミー・デイビス・ジュニアだ。
♪[オー・ベス・オー・ホェアズ・マイ・ベス](詞:ガーシュイン)
♪[オー・ロード・アイム・オン・マイ・ウエイ(俺は俺の道を行く)](詞:ヘイワード)
『ポーギーとベス』のフィナーレ。
警察馬車(パトカーならぬ蹄音が和む馬車)で釈放されたポーギーを大勢の住民たちが出迎える。
「…誰か本当のことを教えてくれ…」
跪(ひざまず)き、皆に訴える(=歌ったえる)熱演。
ニューヨークと知ると、山羊車に…
「何処に行くんだ」
マリア、セリーナ達が必死に止める。
「…俺の道を」
握手して、去る。
           “グッド・ラック”  
      (観客の一人としてポーギーに捧ぐ)
 
「サマータイム」をジャズ・スタンダード・ランキング第3位と紹介したが、
参考までにベスト・10は、
①「ボディ・アンド・ソウル」②「オール・ザ・シングス・ユー・アー」④「ラウンド・ミッドナイト」⑤「アイ・キャント・ゲット・スターテッド」⑥「マイ・ファニー・バレンタイン」⑦「ラバー・マン」⑧「ホワット・イズ・ジス・シングス・コールド・ラブ」⑨「イエスタデイズ」⑩「ステラ・バイ・スターライト」
日本で88年のFM東京のファン投票順位1位の「枯葉」は、残念…11位である。

 

 《響庵流「サマータイム」聴き比べ》
『John Coltrane/My Favorite Things』(左端)
1960年録音、アトランチック
ジャズ喫茶店主時代LPレコードは片面文化だったので(お断わりしておくけれど、他店さんの実情は知らない)コルトレーン愛聴盤No.2の『マイ・フェイバリット・シングス』は100%A面のリクエストだった。
従って、B面の「サマータイム」の名演奏に気が付かなかった。
言い訳するようだが、『決定盤!ジャズ・スタンダード1001(スイングジャーナル社)』所載の同曲推薦バージョン10枚中でも漏れている。
コルトレーンがリーダーとして、ホップ(=プレスティッジ)、ステップ(=アトランチック)、ジャンプ(=インパルス)する過程で、
先に決まっていたスティーブ・デイビス(b)に長年待ち望んでいたマッコイ(p)とエルビン(ds)が加わった、このレコードの存在は重要になる。
「サマータイム」のコルトレーンはリラックスして楽しそうな演奏…ピアノ、ベース、ドラムスがスキップしてついていく。
スティーブはマッコイの義理の兄(奥さんが姉妹)で、コルトレーンは最初の夫人ネイマをスティーブの家で奥さんから紹介され5年前に結婚していた…から、アット・ホームなセッションになったのかもしれない。

『Jimmy Smith At The Organ vol.1』(中央)
1957年録音、ブルーノート
これほど南部の日差し、土の匂いを感じる「サマータイム」を聴いたことが無い。
アルフレッド・ライオン(ブルーノート・レコード創始者)の“子飼い7人の侍”の筆頭:ジミー・スミス(or)と仲間:ルー・ドナルドソン(as)のデュエットという仕掛けも珍しい。
物憂いオルガンの揺りかごに、やるせないアルト・サックスが手を添え、
聴く者にさまざまな歌詞を創作させられる。

“子飼いの7人の侍”とは、
ここだけの自家製カテゴリーで、
ライオン氏がブルーノート・レコード至宝の1500番台・栄光の4000番台に、
積極的に登用して世に知られるようになったミュージシャン達。
ジミー・スミス、ハンク・モブレー、ルー・ドナルドソン、ジャッキー・マクリーン、
グラント・グリーン、リー・モーガン、ソニー・クラーク。(アルバムの多い順)

『Collaboration/The Great Jazz Trio』(右端)
2002年 ビレッジ・レコード
エルビンのリーダー・アルバムは1993年秋のエンヤ盤で止まったままだったので、
ザ・グレイト・ジャズ・トリオ名義ではあったが、
ハンク・ジョーンズ(p)、リチャード・デイビス(b)、エルビン・ジョーンズ(ds)の
『枯葉』『いつか王子様が』『コラボレーション』3部作が発表されたとき、
筆者は喝采した。
「サマータイム」は、『枯葉』『コラボレーション』両盤に収録されているが、
ここでは1分短いテイクの後者を選ぶ。
ハンクのピアノはバラードというよりゴスペル・ミュージック…しみじみ。
リチャードの賛歌が続き…エルビンの黙祷。
なぜ、『枯葉』からではなく『コラボレーション』の?
実は3部作全29曲のレコーディングは2002年5月12&13日だった。
エルビンは長兄ハンクに先立って2004年5月18日に亡くなっている。
プロデューサーはハンクのピアノ・ソロで、
♪「メモリーズ・オブ・ユー」を2004年2月5日に録音していた。

音楽一家らしい弔辞が、30曲目、
最後に収められていた。

              ─おわり─

【付録】サウスカロライナ州出身のジャズ・ミュージシャン
 *チャールストン
   ウイリー・スミス(cl.as)フレディ・グリーン(g)
   ルーファス・ジョーンズ(ds) ロビン・ケニヤッタ(as.ss.fl)
   アルフォンゾ・ムザーン(ds.vo.comp)
 *州都コロンビア
   ウエブスター・ヤング(tp)ラッキー・トンプソン(ts.ss)
 *グリーンビル
   キャット・アンダーソン(tp)
 *チーロー
   ディジー・ガレスピー(tp.comp)