響庵通信:JAZZとサムシング

大きな好奇心と、わずかな観察力から、楽しいジャズを紹介します

続【あ】で始まる気になる映画

2014-04-08 | 音楽

マイルス・デイビスの自叙伝に、
[オレの名前は、マイルス・デューイ・デイビス三世だ。だから、みんなはオレを“ジュニア”と呼んだ。オレの大嫌いなニックネームだ]の記述がある。
ジャズ・ミュージシャンでデイビス・ジュニアが二人いる。
サミー・デイビス・ジュニア( vo)、ウオルター・デイビス・ジュニア(p)である。

サミー・デイビス・ジュニアが大物男性歌手のジュニアと組んだ映画がある。

【アダムのブルース】(A Man Called Adam)
1966年:米/エンパシー (モノクロ 103mins)
  劇場未公開
  監督:レオ・ペン
  音楽:ベニー・カーター
  出演:サミー・デイビス・ジュニア、
      フランク・シナトラ・ジュニアシシリー・タイソン
      ルイ・アームストロング、メル・トーメ

これは、ジャズが生きている映画だ。

〔あらすじ〕
天才肌で直情家のトランペット吹きアダム・ジョンソン(サミー・デイビス・ジュニア:吹き替えはナット・アダレイ)は、
演奏中、酔客のヤジに腹を立て舞台を捨てる。
バンド仲間の「客あっての仕事だから…」も聞き入れず、
盲目のピアニスト:レス(ジョニー・ブラウン)に、ひどい言葉をぶつけて喧嘩別れになる。
演奏先から帰ってみると、留守の間、友人ネルソン・デイビス(デイビスだらけで混乱するけれどオシー・デイビスが演じている)に貸していた部屋に見知らぬパジャマ姿の老人がいた。
老人はウイリー“スイート・ダディ”ファーガソン(ルイ・アームストロング演じる有名トランペット奏者)で孫娘クローディア・ファーガソン(シシリー・タイソン)と一緒に、ネルソンから〈また借り〉していた。
事情が解りダディに謝り、クローディアに一目ぼれするアダム。

ステージ態度を問題にしたマニー(ピーター・ローフォード演じるプロモーター)は、
アダムを切ろうと、エージェンシーのボビー・ゲールズ(ミシェル・リプトン)に告げさせる。
マニーのオフィスで「我慢することも必要だ…」、
最後のチャンスとして南部のツアーを提示される。
「我慢しろといったって南部の連中は、俺みたいな黒人を殺そうとする」とアダムは、「それでも我慢するのか?」と、ウイスキー壜を割ってマニーに詰め寄り、土下座させる。

一匹狼になったアダムは、バンド仲間を誘うのだが、
「お前と係わるなとマニーから指令が出てるんだ…レスに当たってみろよ、親友だろう ?」と冷たい。
アダムは、10年前、南部でライブをしたとき、白人警官から人種差別を受け、やけ酒をあおり泥酔状態で車を運転し、事故で妻と子を亡くし同乗していたレスを失明させていた。

【蛇足の注】サミー・デイビス・ジュニアは28歳のとき(1954.11.19)ラスベガスで自動車事故に逢い死にかけ、左目を失明している。

喧嘩別れしたレスがリーダーになって一緒にやろうと誘ってくれた。
昔どおりのメンバーでクラブに出演すると、
私服が「ペット吹きが逮捕されるぞ」と経営者を脅す…
マニーの圧力だった。
追いつめられたアダムは、レストランで食事中のマニーに這いつくばって詫びをいれる。
「ツアーに出たいんだ、何でもするよ。ビンセントという若い奴も連れて行きたいんだけど…」
ビンセントは若い白人トランぺッター(フランク・シナトラ・ジュニア:ゴーストはビル・ベリー)で、アダムの弟子。
南部ツアーは熱狂の歓迎を受けて、順調に…
悪意の仕打ちをされても「マニーに俺は我慢したと伝えてくれ」と、ロードマネージャーに頼むアダム。
最終ライブにクローディアが駆け付けた。
終演後、ファンに囲まれサインを求められたビンセントに、いきなり暴漢が殴りかかる。
アダムは呆然と…「助けてあげて」と叫ぶクローディア…
しかし、立ちすくんだまま手出しができなかった。
クローディアはネルソンに、「私のせいで臆病になったのよ、死ぬまで闘ってほしかった」と自分を責める。

焦燥しきってクラブに来たアダムは、ダディに「ビンスは ?」と、
「大丈夫だ もうすぐ治るよ」
楽屋では、レスがトランペットを質から受けだしてくれていて、
「アダム吹いてくれ」
咳き込みながらステージにあがる。
満員の客が拍手で迎える。
額に絆創膏を貼ったビンセントがいる、
ダディの隣にクローディアも坐っている。
「ジャズ・フィーリングのある曲をやります」の言葉どおり、
アダムのトランペットがスクランブルをかけた。
だが、ハイ・ノートで〈きめ〉に入ったところで…思いがけない幕引き。

♪「オール・ザット・ジャズ」(ベニー・カーター曲)
この映画の主題曲。
クレジット:タイトルの墨絵風イラストがアダムの実写にオーバーラップして、
そのままファースト・シーンに続く。
サミー・ジュニアはトランペット、ビブラフォン、ベース、ドラムをこなせるので、
隣のカイ・ウインディング(tb)のアップに、見劣りしない。
♪「アイ・ウォント・トゥ・ビー・ウォンテッド」(ピーノ・スポッティ曲:キム・ギャノン、アルベルト・テスタ詞)…ブレンダ・リーでヒットした曲。
トランペットとトロンボーンが〈せつなく〉迫るバラード。
アダムがメランコリックに歌う。
“もっと明るい曲をやれ”と酔客がしつこく絡み、
カットなって“ジュークボックスで聞け”…コインを投げつけ、
ストーリーの発端になった。
♪「エイント・アイ」(B・カーター曲)
クラブで演奏中のテナー・サックスとトロンボーン(ジミー・クリーブランド?)のクインテット。
アダムが入ってきて控えのミュージシャンに “どうだ?” “今ひとつだよ大将”
“じゃ やってみるか” 飛び入りでプレーする。
3分弱のシーンだが、アダム(ナット・アダレー)の演奏は、
興奮を煽るファンキー・ジャズ。
♪「バック・オー・タウン・ブルース(ルイ・アームストロング、ルイ・ラッセル曲・詞)
この映画の最初の見どころ。
ビリー・カイル(p)のイントロで、右からバスター・ベイリー(cl)中央ダディ・ファーガソン(ルイ・アームストロング:tp vo)左タイリー・グレン(tb)にパンして…〈どアップ〉バディ・カトレット(b)
1965年、ちょうどその頃のアームストロング・オール・スターズの実写である。
ドラムスはダニー・バルセロナではなく、ジョー・ジョーンズ。
“アイ・ハッド・ア・ウーマン…” と歌い出すダディに、
タイリー・グレンが合いの手を入れる。
どっと、客席がわく。
テーブルでクローディア、アダム、ビンセントの3人が楽しむ。
♪「オール・ザット・ジャズ」(B・カーター曲、アル・スティルマン詞)
  注:ボーカル・バージョン・1
最大の見どころ聴きどころ、ダウン・ビート誌のパーティ会場。
フランク・シナトラと並ぶ浮世節のお家元メル・トーメが、
総立ちの客に囲まれ…“アイム・イン・ラブ・ウイズ・ユー…”
「オール・ザット・ジャズ」を歌う。
得意芸のスキャットでは、フレーズごとにダディが…男が…女が…
“オール・ザット・ジャズ”と歌い返す…
♪「ウィスパー・トゥ・ワン」(B・カーター曲、アル・スティルマン詞)
ピアノ・トリオの伴奏でアダムが繊細に歌うバラード。
カイ・ウインディングの撫でるようなミュート・トロンボーンに、
探るようなトランペットが滲み合う…
クローディアがやさしく見つめる。
♪「クラック・アップ(プレーボーイのテーマ)」(サイ・コールマン曲)
映画のラストのセッション。
常に攻撃的な言動をしてきたアダムが、
トランペットのベルから思い切りソウルを吹き出す。
激しく屈伸しハイ・ノートを出し続ける…最後まで。
♪「オール・ザット・ジャズ」(B・カーター曲、アル・スティルマン詞)
  注:ボーカル・バージョン・2
アダム、“アーメン” ひとこと叫んで倒れる。
“ホワット・ハップン” 走り寄って人々が囲む。
しめやかに、メル・トーメが歌う。
“ユー・ワズ・ボーン・トゥ・ア・ホーン…”(ペットを吹くために生まれた…)
スティルマン鎮魂詞「オール・ザット・ジャズ」が、続く。

  『オール・ザット・ジャズ/エラ・フイッツジェラルド』(パブロ)

映画でメル・トーメが歌った「オール・ザット・ジャズ」を、
エキサイティングに唄ったエラのCDがある。
間奏のトランペットはハリー・スウィーツ・エディソン、
アルト・サックスが作曲者自身ベニー・カーター。
軽快・洒脱・即妙…エラ流スキャットに引き込まれる。
ケニー・バロン(p)、レイ・ブラウン(b)、ボビー・ダーハム(ds)のリズムセクション。
ほかに、「マイ・ラスト・アフェア」「ベイビー・ドント・ユー・クイット・ナウ」「ザ・ジャージー・バウンス」「ニアネス・オブ・ユー」など全12曲、1989年録音。

『ハリウッドをカバンにつめて/サミー・デイビス・ジュニア著』(清水俊二訳:ハヤカワ文庫)に、
映画『アダムという男(原文のまま)』の短い記述がある。

* 偉大なるなつかしのジャズマン、
  ルイ・アームストロングが素晴らしいゲスト出演を
  してくれた。
* 私は人生の目的をみつけようとしている
  うらぶれたトランペット奏者を演じた…
  私たちみんなが知っている多くの
  ジャズ・ミュージシャンを混ぜ合わせて作った
  役だった。
* 批評家たちは私個人に対しては
  好意的だったが、
  映画そのものはまったく理解されなかった。
          (抜粋)

本書には敬愛するフランク・シナトラはじめ映画に係わるエピソードがいっぱい詰まっている。 

[〈とんび〉が〈たか〉を生む] というのは親より子が優れている〈たとえ〉だが、
ジャズやスポーツ界で〈たか〉になるのは、ほとんど例がない。
サミー・デイビス・ジュニアは、2歳のとき両親が離婚し、旅芸人の父にひきとられ、3歳にはもうタップダンスで舞台に上がって、6歳で映画にも出演している。
幼年時から、父と叔父ウィル・マスティンの3人で一座を組み各地を巡業。
タップダンス、ものまね、楽器演奏、歌と踊りで人気のボードビリアンになり、
60年代、ハリウッドで主演を演じられる数少ない黒人タレントの一人になった。
親のサミー・デイビス・シニアは、
映画『ベニー・グッドマン物語』(1955年:米/ユニバーサル)に、
フレッチャー・ヘンダーソン役で出ている。
グッドマンのコンサート会場に来て「アレンジを提供したい」というワンカットだった。
ほかに1本の出演があるみたいだが…
映画の出演回数で判断するのは〈どうか〉と思うけれど、
〈たか〉を超え…〈わし〉になった。
フランク・シナトラ・ジュニアは、
20世紀アメリカのショービジネス界に君臨したフランク・シナトラの子である。
親が〈はくとうわし〉だったら、
生まれた子は、大変だ。
歌手としては基準が違い過ぎる。
俳優でも比べるのは酷だ。
親は既に40本以上の作品に出演し、
1953年アカデミー賞8部門に輝いた「地上(ここ)より永遠に』で助演男優賞を受賞していた。
『アダムのブルース』は、
ある雑誌で、
[開巻からハード・バップ横溢、メル・トーメの快唱が白眉 !] と紹介されているが、
その一方で…難点はtp奏者になるフランク・シナトラ・ジュニア、彼に役者は無理… と。
サミー・ジュニアの文章でアメリカでの評価が推察出来るけれど、
ジャズ・ファンには興味ある映画だけに、ここでは、
彼の演技も〈捨てたものではない〉シーンを、二つ。
●ビンセントとクローディアの初対面シーン
♪オール・ザット・ジャズのテープに合わせてトランペットを練習しているビンセント。
その音に起こされたクローディアが怪訝そうな顔で入ってくる。
驚くビンセント。
ビ:「お名前は?」、ク:「クローディアよ、あなたは?」
ビ:「ビンセント アダムの親友さ」…「素敵な名前だね」
そのあと、ダディも起きてきて詰問する、ダ:「お前は?」
ビ:「ときどきトランペットを吹きに来るんです」(顔のアップ・ショット)
シナトラ・ジュニア、このとき22歳。
戸惑いの〈しぐさ〉が初々しい。
●レスの友情でアダム特別出演のシーン
トランペットを叩き折って悲鳴とともにダウンしたアダムを、
一番先に抱き起すビンセント、
ひざまずき、放心。
トランペットからマウスピースを大切そうに抜き、両手で握る。
焦点定まらない右目から涙が…
難しい演技だが、
出自(しゅつじ=家柄)の良さが滲んでいる。

クローディア役を演じたシシリー・タイソンは、後にマイルス・デイビス夫人になっている。
[はっきりとは思い出せないが、1966年か1967年に、リバーサイドパークで、シシリー・タイソンに出会った…]
マイルス・デイビス自叙伝から、拾い書きすると、
その日、マイルスはロスに住んでいる友人と歩いていて公園のベンチに座っているシシリーに気づいた。
マイルスはフランシス・テイラー(法律上最初の妻)と別居してから女性に関心が無くなっていたので、友人に彼女を紹介した。
だが、シシリーのほうが友人よりマイルスに興味を持って交際するようになる。
マイルスはその頃、どんな女にも構われたくなかったので、
初めはただの友達で長い間セックス抜きの付き合いだった。
そうしているうちにいつの間にかマイルスの心の中に彼女がいるようになった。
1967年に『ソーサラー』(CBS)を作ったときシシリーの顔をジャケットにしたことから、
それまで知らなかった連中に二人の付き合いが知られてしまう。

マイルス・デイビスのディスコグラフィーを見ると、1976年 3月から80年6月まで空白である。
自叙伝には、
[オレは、1975年から80年の初めまで、一度も、ただの一度もだ、トランペットを持たなかった。指一本、触れなかった] とある。
健康状態、レコード会社・ジャズ・クラブ経営者の人種偏見などで精神的に滅入って、酒やコカインに明け暮れていた頃、シシリーがよく会いにくるようになり、酒・ヤクを止める手助け、健康に良い食事を作ったりして面倒をみた。
シシリーとの恋が復活、1981年11月26日(感謝祭の日)に結婚した。
1983年録音の『スター・ピープル』(CBS…マイルスのイラスト・ジャケットで有名)に「スター・オブ・シシリー」という曲が入っているけれども、
スター女優になるにつれて、
マイルスが一番嫌っている〈男をコントロール〉していないと気がすまなくなってきた彼女との関係が、まずくなって…88年に離婚。

かつて、アメリカ三大テレビ局CBSに『エド・サリバン・ショー』という人気番組があった。
日本で未だに、汗臭いタレントや芸NO人を集めた馬裸絵低症(variety show と読んでくれると嬉しいな)と違って、演多帝面徒な名人寄席である。
1964年2月2日のEd Sullivan Show:Season16.Episode18に、
サミー・デイビス・ジュニアとエラ・フイッツジェラルドが登場…
NHK総合テレビで再構成して放送されたことがある。
*エド・サリバン(以下、エド)がエラ・フイッツジェラルド(以下、エラ)を紹介。
①♪「ゼム・ゼア・アイズ」
  エラがパワフルに唄い、スキャットも流麗。
  トランペット(ロイ・エルドリッジ)とのコラボレーションも鮮やか…
  彼女、豊麗の45歳。
  トミー・フラナガン(p)、キーター・ベッツ(b)、ガス・ジョンソン(ds)
*次にエドはサミー・デイビス・ジュニア(以下、サミー)を呼ぶ。
②♪「シェルター・オブ・ユア・アームズ」
  神妙な38歳のサミー、青春謳歌。
*エド再びエラを。
③♪「パーディド」
  エラ、〈おはこ〉中の〈おはこ〉、歌詞とスキャットの高速ラリー。
  トランペット・ソロとスキャットは異次元会話。
*エド、サミーとの出会いを語る。
④♪「ウイズ・アウト・ソング」
  スーツに着かえてサミーが歌う。
*エド、サミーにインタビュー。
  サ:「(この番組に出るので)大勢から“ことづけ”を頼まれましてね…」
  “…よろしく言ってよ”(ジェームズ・スチュアート)
  “…君はいい人だって言ってよ”(ジェームス・ギャグニー)
  “具合が悪いんでそっちに行けないんだ…”(ジェリー・ルイス)
  お得意の声帯模写で笑いをとり、
  エラと一緒に歌いたいと、頼む。
⑤♪「ス・ワンダフル」
  エラが先唱~“カムオン・サミー、一緒に歌って”
    サミーの歌にエラ絶妙の合いの手 “イエー”
  サ:「じゃスキャットで」 エラ:「いいわよ」
  サミー/エラ/サミー/エラ…
  エラのほっぺにキッス…コミカルな応酬。
  サ:♪イッツ・ワンダフル、エ:♪オー・イエー
  サ:♪イッツ・マーベラス、エ:♪イエー イエー
  最後は〈ノリノリ〉にハモって終わる。
*拍手しながら二人に近づきエド、
  「この番組を見ている若い人は、将来、この共演をみたことを自慢します
  よ」と、
  ♪ス・ワンダフルを、くちずさむ。
  エ:「あら、エドの歌 !」、サ:「スゴイ」、エド「今覚えました」
サミー、エラの手をひいて下手(しもて=舞台左)に下がる。

1989年11月13日、ロサンゼルス:シュライン・オーディトリアムで、
サミー・デイビス・ジュニア芸能生活60周年祝賀コンサートが行われ、
世紀のスターが続々登場した。
NHK総合テレビ『ショータイム』〈1990年5月4日)でその模様が放送されている。
 黒柳徹子さんの解説をまとめると、
[これだけの顔ぶれをそろえるのにプロデューサーは2年を要し、客席6300のチケットは通常の10倍以上にもかかわらず1日で完売。アメリカに42校ある黒人大学のチャリティーショーに賛同したからで、これを期にサミー・デイビス・ジュニア奨学金も創設された。出演者全員がサミーを愛し尊敬し、歌手は自分の持ち歌を替え歌にしてサミーに捧げた]
 

 司会:エディ・マーフィー(筆者注:コメディアン 俳優)
★ フランク・シナトラ
 祝辞「…君はたた者じゃないと思っていたけれど、ここまで大物になるとは思ってなかったよ、君を愛しているよ、兄弟みたいにね、それだけだ」
♪「ホェア・オア・ホェン」…“君の笑顔はあの時の笑顔、でもいつ、どこか思い出せない…”
☆ホイットニー・ヒューストン(歌手 女優)
 「私が世界中で、うたってきた歌を今夜ミスター・デイビスに捧げます」
♪「ワン・モーメント・イン・タイム」…途中、サミーのボックスの前で…“あなたは人生の勝利者になる、その一瞬を手に入れたなら…”
☆ クリント・イーストウッド
 「サミーにはあまり知られていない特技がたくさんあります、その一つは、彼は早打ちの名手だということです…60年代にBBCテレビが放送した番組の一部をお目にかけます…ダーティ・ハリーも彼だけは避けて通った理由がわかりますよ」
鼻歌まじりで鮮やかな〈ガンさばき〉の映像…サ:「ざっと こんなものさ」
☆ マイク・タイソン(WBC,WBA,IFB世界ヘビー級王者)
 タイソン「サミーの功績はヘビー級の中で唯一、僕が闘わない相手です、サミー、あなたは本当に不屈のチャンピオンです」
 マーフィー「ちょとっと待て!マイク、もう少しましにやれよ」…早口でしゃべらせようとする。
〈口〉が商売の司会と〈拳〉が職業のボクサーの漫才芸。
☆ ビル・コスビー(コメディアン:黒人エンターティナーの第一人者)
淡々と、しかし、ユーモラスに、サミーとの仕事の話のあと、
「サミー、これから60年間も今までどおりにやったください、私も前座でつきあいます、そうすれば僕も仕事にあぶれないから」
そのあと、サミーとグータッチ。
★ グレゴリー・ハインズ(タップダンサー)
 「いま胸にあふれるばかりの愛をこめて、あなたのために踊ります」…オーケストラとタップの競演。
ハインズがサミーにタップ・シューズを履かせて、ステージへ。
二人のスクランブル交差タップ芸が会場を沸かせる。
年老いてもサミーのサービス精神は若い時と変わらない。
このコンサートを後々に記憶させるハプニングが、
起こった。
《ハインズが急に跪いて、サミーの靴にキッス…右、左に…“やめてくれ~”と云わんばかりに動揺するサミー》
サミーは中腰にハインズを抱き、頬にキッス。
1階、2階席6000余人の大拍手。
☆ グレゴリー・ペック
 サミーの映画出演を解説し、特に、
「サミーの代表作はやはり〔ポギーとベス〕でしょう、〔スポーティン・ライフ〕はまさに〈はまり役〉でした」と語り、
アニタ・ベイカーを紹介する。
☆ アニタ・ベイカー(R&Bシンガー)
♪「サマータイム」…情感の階段をよじのぼるように唄う…サミーに投げキッス。
☆ボブ・ホープ
 ゆっくりステージ中央に来て、
「今夜は聖サミー・デイビスについてお話をしましょう」一息ついて「グッナイ(じゃあ、お休み)」と帰りかける…どっと、笑い。
アメリカ一のおかしい男のジョークが続き、
正常な(それはそれでおかしい)口調で、
出席を望みながら来られないジョージ・ブッシュ大統領(第41代大統領:ブッシュ・シニア)からのビデオ・メッセージを紹介。
《全米黒人大学42校すべてに寄付をしたサミー・デイビス・ジュニアに対して私、合衆国大統領からお礼を言います、ありがとう》
☆ シャーリー・マクレーン(女優)
 「サミー、舞台のすべてを教えてくれたことに感謝しています…人があなたを必要とする時、惜しみなく自分を与えてくれました…」
♪「イフ・ゼイ・クッド・シー・アス・ナウ」…最前列サミーのボックスの前に坐り語りかけるように唄う。
★ スティービー・ワンダー
 音楽的転換期にあったとき、自分の心に感じるままに進まなければいけないと思わせてくれたサミーの♪「アイ・ガッタ・ビー・ミー」…“ビー・ミー(私は私でいたい)”を万感込めて歌う。
つぎに、バック・コーラスをつけてゴスペル♪「トゥルース・イズ・ザ・ライト」…サミー夫妻も手拍子。
ステージと客席一体のパフォーマンス。
“サミー、おめでとう、あなたは世界の光だ”
☆ ディーン・マーチン
 「サミー、ラスベガスで一緒に映画作っていた頃を思い出すね、君と僕と…もう一人の名前は何て言ったっけ ?」爆笑を仕掛け、まじめな顔で〈祝電ネタ〉ギャグを連発。
★ マイケル・ジャクソン
 神秘なライトがシルエットを…ひときわあがる歓声。
♪「ユー・ワー・ゼア」
30歳のマイケル(私見だけれどこの時代のルックスが最高)が少年のような眼でサミーを見つめながら歌う。
驚きを隠せない真剣な表情のサミー。
“アイ・アム・ヒアー…(僕はここにいる、あなたが、そこにいてくれたから…)”
ここまで、〈雑色〉だった歓声が〈黄色〉に変わった。
涙目で拍手しながら舞台に上がったサミー…しっかと、マイケルをハグ。
☆クインシー・ジョーンズ
 祝辞「…歌い手こそ歌の命というほめ言葉がありますが、サミーの場合には、真実をついた言葉です。今夜はサミーの友達が集まって彼のヒット・ソングをメドレーで歌います」
「まずはダイアン・キャロルからです」と、指揮者台に。
☆ ダイアン・キャロル(歌手 女優)
♪「ワンス・イン・ア・ライフタイム」
 ※ ’35年ニューヨーク生まれ ’54年「カルメン」で映画デビュー 
   
’65年ミュージカル「ノー・ストリングス」 でトニー賞受賞 
    TV「ダイナスティ」にも出演し好評を得る。

   
        (※=NHKスーパーインポーズ)
☆ ネル・カーター(歌手 女優)
♪「ゴナ・ビルト・ア・マウンテン」
 ※ ’48年アラバマ生まれ 
   ’78年ミュージカル「エイント・ミスビヘイブン」でトニー賞受賞

   ’79年「ヘアー」で映画デビュー
☆ ディオンヌ・ワーウイック(歌手 ホイットニー・ヒューストンの従姉妹)
♪「フー・キャン・アイ・ターン・トゥ」
 ※ ’40年ニュージャージー生まれ 6歳からゴスペルを唄う
   ’62年プロ・デビュー「サンホセへの道」「愛のめぐりあい」
    「愛のハーモニー」など数多くの世界的ヒットをもつ
☆ デビー・アレン(女優 男性3人とダンシング・チーム)
♪「エイント・ネセサリリー・ソー」
 ※ ’79年ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド物語」で
    ドラマデスク賞受賞
    舞台演出・振り付け・歌手など幅広く活躍している。

最後、上手(かみて=舞台右)から、女性が、
マーフィーとマイケルにエスコートされて登場。
「エラ・フィッツジェラルド !」…
クインシー・ジョーンズが紹介…
全員、総立ち、拍手で迎える。
マーフィーとマイケルから両頬にキッスを受け、
♪「トゥ・クロース・フォア・カンフォート」
サミーのブロードウェイ・ミュージカル『ミスター・ワンダフル』の主題歌を、
72歳のエラが熱唱…もし、エド・サリバンが生きていたら、
♪ス・マーベラス…と歌ったかもしれない。

半年後、サミーは喉頭ガンで亡くなる…64歳だった。

               おしまい

 

《エド・サリバン・ショー⑤の映像は、ユー・チューブで見られます》
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