『男はつらいよ(第28作)』は、1981年冬に公開されました。
旅先の宿で家出娘愛子(岸本加代子)と相部屋になった寅さん、愛子と一緒に旅をします。縁日で商売をしていたら、テキヤ仲間の常三郎の妻光枝(音無美紀子)と知り合うことに。常三郎が病気であると聞いた寅さん、さっそく見舞に福岡県朝倉市秋月に向かいます。
【映画】 コスモスが咲く秋らしい風景のなか、寅さんが石橋を渡って来ます。
【現在】 この石橋は江戸時代に架けられた目鏡橋で、秋月の入口にあります。撮影の際、左に寄るのは、これがいっぱい。映画の角度での橋の撮影は、できませんでした。
【映画】 まっすぐ伸びた秋月の通りが映し出されます。
【現在】 この通りは江戸時代、秋月藩の商家が軒を連ねていた通りです。右の建物は、和菓子処廣久(ひろきゅう)葛本舗。看板の位置が少し手前に移動していました。
【映画】 その先にやって来た寅さん、タバコ屋で常三郎の家を尋ね十字路を左折します。
【現在】 タバコ屋さんの販売は自販機に、向かいの江藤商店はアンティークショップになっていました。
【映画】 常三郎の家に来たところに偶然、光枝が出てきます。言葉を交わし、光枝は寅さんを家に招き入れます。
【現在】 タバコ屋の十字路を左折すると、野鳥(のとり)川が流れています。その川沿いを下って来たところに、常三郎の家はありました。石垣の手前ですが、すでに取り壊されていました。
【映画】 常三郎を見舞った寅さん、光枝に見送られて帰って行きます。
【現在】 二人が歩いていたのは、秋月城跡の西側の杉の馬場です。馬場の右にお堀があって、その右にお城がありました。堀に架かっている橋のようなものは、瓦坂といいます。秋月藩の時代、瓦坂をのぼってお城に向かうと、奥に大手門がありました。
【映画】 左上の中学校が常三郎の母校と聞いた寅さん、「野郎、もう少ししっかり勉強すりゃ、ちったぁ、ましな人間になったのになぁ」。光枝は、うれしそうに笑います。
【現在】 秋月城の石垣の上にあった秋月中学校は、少し東に移築されたため、杉の馬場から校舎を見ることはできませんでした。
【映画】 野鳥川に沿って細い道があります。そこを二人は、白い土塀の先の道まで歩いて行きます。
【現在】 二人が歩いた道は整備され、地元では「寅さんロード」と呼ばれていました。
【映画】 別れ際、光枝から常三郎が長くないと聞いた寅さん、泣きながら去って行く光枝を見送ります。最後は、悲しい別れとなりました。
【現在】 野鳥川に架かった今小路(いまこうじ)橋に立つと、整備された「寅さんロード」の様子がよく分かりました。
ちびとらさんたち先達の情報をもとに、2月に秋月のロケ地を回って来ました。
秋月には江戸時代、福岡黒田藩の支藩・秋月藩があり栄えました。ただ明治になって交通の幹線から外れたこともあって、今でも昔の面影を留めています。ロケからすでに40年経ちますが、おかげでロケ現場の多くを確認することができました。