うちの母は、山口県出身です。
じいちゃんばあちゃんちは山口市内、従兄弟もそう、じいちゃんは元々防府の方から入り婿したそうです。
なので、夏休みにじいちゃんばあちゃんちに行くと、母も叔母も山口弁に戻り、山口弁に囲まれて楽しい夏休みを過ごしたものです。
買いだしは粽屋、海水浴は光、みんなで萩や秋吉台に行ったり、地域のお地蔵さんのお接待(関西で言う地蔵盆みたいな感じ)や盆踊りに参加したり。
小さい頃の楽しい思い出は、みんな山口にありました。
親戚遠縁の家には、抹茶茶碗といえば必ず萩焼の茶碗が一つはあり、外郎といえば名古屋ではなく山口!我が家は特に御堀堂がお気に入りで、以前、華道の家元が御堀堂の外郎がお好きで、できたての外郎をその場で頬張る姿をテレビで見て、「わたしもできたて食べた~い!!」と地団太踏みました
何の拍子か、先日Youtubeで見つけた動画。
う、うわぁ~、懐かしい!
じいちゃんばあちゃんたちは、「~っちゃぁ」とう言い回しは使わなかったですが、「はぁ」という合いの手とか「ちょる」「~いね」「~じゃろ」「~そ」「~かね」という言い方は、よく言ってました。
しかし、外郎にバナナいれちゃいけん!!
そして、よく従兄弟が口にしていた「ぶち」が出て来ないなぁと思って、関連動画を見てたら、ありました
「ぶち」は「とっても」とか「すごく」とか強調の意味です。
あと、母は「せせろしい」、「ぞびく」、「わけにする」等を駆使していました。
従弟の一人が裾の長いパジャマを着ていて、「ぞびいてるから『ぞびちゃん』」とニックネームを進呈されてたなぁ。
「わけにする」は、「残す」という意味らしく、わたしは小さい頃からお茶碗にご飯粒をちょっとでも残すと「猫わけしちゃだめ!」と叱られて育ったので、「猫わけ」というのは標準語だとばかり思っていて、大人になってから初めて山口だけで通じる言葉だと知りました。
それにしても、猫って、お茶碗をぴかぴかにするくらい舐めてきれいにご飯を平らげるのに、「猫わけ」って言いがかりじゃない?
キャットフードじゃなくて、お米のご飯にお魚の煮汁やお味噌汁や鰹節をかけてあげていた時代の言葉なんだろうな~。
101歳で亡くなった、明治生まれのひいおばあちゃんは、これらの動画よりももっとゆっくりとした丁寧な方言を使っていて、活字にすると「ようおいでなさりました」みたいに標準語っぽいけど、イントネーションが独特な喋り方をしていました。
この辺は、小京都と言われたはんなりした感じを残している喋り方だったようです。
昔、NHKのドラマで『国語元年』という、日本初の日本語でありながら字幕付きのドラマがありました。
明治維新後に標準語を制定するまで、国内の言葉は各大名の領地ごとにお国言葉でバラバラ、意思の疎通も難しいという状態だったので、「全国共通はなし言葉」を制定すべしと言う指令に従い、暗中模索する役人が主人公で、明治維新の薩長連合+土佐肥前が官吏を占めた為、上司、家族、使用人に至るまで、みんな言葉がバラバラで、そのままでは全く話がわからない。
で、字幕付身きというわけです。
主人公が山口出身だったので、母は「ちょっと違うなぁ」と文句を言いつつ、嬉々として毎回見ていたのを覚えています。
わたしは、親の転勤であっちこっち行った上に、それぞれ鳥取と山口出身の両親が標準語に近い言葉を家庭でしゃべっていたので、関西弁も板につかず、「ご出身は関東?」と聞かれます。
いいえぇ、箱根はおろか、関ヶ原の向こうに住んだことは無いですよ
旦那は福岡生まれで、お義父さんが転勤族だった為、釧路、鹿島、京都と転校を重ね、やはり板につかない関西弁をしゃべっています。
大分と宮崎の両親を持つので、血統的には完全な九州人ですが、大分のおばあちゃんからの電話はわたしにはちんぷんかんぷん。旦那にも「1/3しかわからん
」でした。
それでも、仕事でお客さんと話している時に、お客さんが九州出身の方だと、いくらエセ関西弁で喋っていても、「あんた、九州出身やろ」と見破られてしまうそうです。
そんなこんなで、わたしは自分の根っこが無いコンプレックスが強く、自分の故郷、お国言葉を持っている人が、とてもうらやましい。
だから、わたしにとっての懐かしい言葉は、子供の頃を過ごした香川県の讃岐弁と、母たちの話す山口弁なのです。
子供たちは、やはり親が家庭で滋賀弁をしゃべっていないので、ちょっと標準語っぽい関西弁。
それでも、娘が「におぐ」と言った時には、「は~、ある程度は、育った場所の言葉をちゃんと習得するもんなんやなぁ」と感心しました
「におぐ」は、「匂いを嗅ぐ」という意味で、「匂いを嗅いだ」は「においだ」と言います。これは、関西でも京都から滋賀の一部でしか使いません。
わたしの周りでは、お茶の先生や滋賀育ちの着付けやお茶の先輩方は、「~さけぇ」「~やからよぅ」を、よく語尾につけられます。
滋賀でも、湖西は京都弁に近く、湖北に上がると福井弁と似てるんだなぁと、NHKの連ドラ『ちりとてちん』観てて思いました。
方言の温かみが見直されてきて、若い人たちが好んで方言を取り入れる現在。
山口弁も、もっと健闘してもらいたいものです