「必ず必要っていうわけではないけれど、あると便利かな~」というグッズに、コーリンベルトがあります。
自分で着物を着る時など、これがあると、衿合わせをして、おはしょりを一重にするのが、とても楽です。
また、衿合わせが崩れにくく、多少開いてきても、ベルトがそれ以上の開きを止めてくれるので、着慣れない方には安心です。
ただ…着付け師仲間で、「自装する時、コーリンベルト、使いこなせてる?」という話題が時々出ます。
このベルト、だいたい自分の肩幅くらいにゴムを調整して使うのですが、均等に衿合わせを留めたつもりでも、時間と共に片方だけ衿が入って来てしまったりするのです。
「ベルトがきつめなんじゃない?」という意見もよく聞くので、皆さんちょっとゆるめで留めてらっしゃるんですが、着る時は便利で楽ちんでも、その辺がどうも不満…という話しをよく聞きます。
わたしが通っている着付け教室の先生は、裏技で、もう一本を背中の両脇を留めて、2本コーリンベルトを使われるそうです。
元々、わたしが最初に着付けを習い始めた西陣和装学院では、便利グッズを一切使わない着付けを教えられたので、コーリンベルトも使いませんでした。
なので、長く使っていなかったのですが、最近、お茶のお稽古に着物を着ることが多いので、久々に使い始めました。
お茶席では、胸元に懐紙の束・帛紗・古帛紗・紙小茶巾入れなどを入れて、頻繁に出し入れしなければなりません。お茶事の時などは、亭主側と被らないように、3種類ほど古帛紗を持参した方が良いと言われます。それだけ胸元に入れていれば、最初にいくらきれいに衿合わせをしても、お茶席が終わった後には、上前の衿がどうしても開いてしまいます。
コーリンベルトを使えば、全く開いて来ないわけではありませんが、幾分はベルトの力で戻ってくれるような気がします。
その際、ベルトの長さは、個々人の体型によって多少の違いはありますが、やはりだいたい肩幅、ベルトの位置は、少し低めにして留めています。
コーリンベルトは、両脇にプラスチックか金属のピンチがついていて、下前の衿の幅をを2cmくらい折った場所を留めておはしょりを一重にし、身八つ口から出して背を回し、右の上前の衿幅やはり2cmくらい折ったところを留めます。
この時に、ピンチの位置が上すぎると、その後、伊達締めや帯をしめた時に、当たって痛いので、気をつけます。
ピンチの右と左の留める位置の高さも、揃えます。
着付けのお仕事の現場では、コーリンベルトの次に、いきなり伊達締めということは、まずありません。
確かに、コーリンベルトは一重上げするのに便利だし、振袖の伊達衿や留袖の比翼の幅を固定できるので、幅がきれいに出ます。
しかし、ぴっちりのベルトの長さで留めると衿が入って来てしまうので、どうしてもゆるめにしますから、たいていの現場では、コーリンベルトをして、更に胸紐をさせていただきます。
胸紐で衿合わせをするより、コーリンベルト1本分、紐類が多くなるので、無い方がいいかというと、そうでもなくて…。
やはり、便利なので、お客様がお持ちの際は、使わせていただきます。
ただし、胸紐も、念のためさせていただきます…と、お断りして、使わせていただいています。
世の中には、着付けの便利グッズがたくさんあります。
たいていは、着付けの学校が、それぞれの流派?のものを考案していて、習得した流派が違うと、いったいどうやって使うやら、わからないものが多いです。
実際には、その流派の中でしか通用しないものがほとんどです。
しかし、コーリンベルトは、おそらくこれらの便利グッズの中で、一番広く普及し、どの呉服屋さん、ネットの着物ショップなどでも扱っていて、どこに持って行っても着付け師は使い方を知っています。
コーリン社の商標で、創業者の方が考案されたものだと聞いています。
1社のアイデア商品だったものが、ここまで年月も流派も越えて生き続けているのは、やはり優れた発明だったのだと思います。
着付け師にとっては、そのコーリンベルトも、ちょっと要注意の点があります。
それは、長年に亘って親しまれ使われているヒット商品ならではなのですが、お母様、お祖母様が使っていらっしゃったような、古いコーリンベルトを持っていらっしゃるお客様があることです。
ベルト部分は必ずゴムを使った伸縮性のある素材、長さを調節する部分やピンチは、たいていプラスチックです。
輪ゴムが使っているうちに切れてしまうように、ベルトは時間と共に劣化して伸びてしまいます。
プラスチックも、実は劣化が激しい素材で、見た目は大丈夫そうでも、ぽきっと簡単に壊れてしまうのです。洗濯バサミ、使っているうちにけっこう割れちゃいますよね?プラスチックはいずれ劣化して割れてしまうものなのです。ピンチ部分のプラスチックが粉をふいたようになっていたら、まず壊れてしまうと思って間違いありません。
長年大切に保管されていても、素材の性質上、どうしても劣化して壊れやすくなるものなので、古そうなコーリンベルトをお持ちになった場合には、その辺をご説明して、壊れてしまう可能性もあるので、使うか使わないかをお客様とご相談させていただき、それでも使って欲しいとお申し出があれば、場合によっては破損してしまうこともありますということを、予めご了承いただかなければなりません。
オーソドックスなコーリンベルト。
コーリンベルトは、ある程度劣化する消耗品だと認識した方がいいと思います。
少なくとも、世代を越えて愛用…というのは、商品としての愛顧はともかく、個体としては現実的ではありません。
白いコーリンベルト。
礼装用に。
ピンチ部分が金具のもの。
耐久性は高いように思いますが、ベルト部分が劣化したら結局同じなので、プラスチック製の方が当たった時の痛みがマシなように思いますので、特にお薦めはしません。プラスチック製の方が小さめでなめらかな形状をしていますので、体に負担が少ないと思います。
かえって、ピンチ部分が金属だから半永久的に使えると勘違いされるとなぁ…
それくらいなら、ピンチがプラスチック製のものを、使う日よりだいぶ前に余裕をもってチェックして、傷んでいれば買い直す方がいいと思います。
このブログでは、時々、着付け小物などについて、使ってみた感じや商品の比較などを、自分で着物を着たり、お仕事の現場で使ったりした経験を基にしてご紹介しています。
便利グッズは、上手につきあうと、着物を着るのがぐっと楽になります。
正式な着物の着方がどれ!なんていうことはありませんので、ご自分が着やすい着付け小物を見つけられて、楽しく着物ライフを送りましょうね♪