今回は、着付けの仕事について、ちょろっと。
わたしは、ホテルでの結婚式の列席の着付け、成人式、卒業式、通し矢の着付け、卒業式の袴レンタルの受注会の仕事などをしています。
ここ数年、仕事の現場で感じることの一つに、
「胸高にもほどがあるぞ」
があります。
元々、年齢が上がるほど帯の位置は低めに、若い方ほど胸高に帯を結ぶという法則があります。
七五三の子供の着付けは、女の子の帯も男の子の袴も高い位置で、それが肩と腰の揚げと相まって、あどけなくかわいらしいものです。
成人式のお嬢さんは、前は胸高、後も高めに帯結びをして、若々しさを強調します。
ミセスになると、少し帯の位置を下げて落ち着いた雰囲気を出し、年輩の方は低めに帯を締めます。
勿論、その法則が全てというわけではなく、体型によって帯の高さや帯結びの形を変えたりします。
背の高いお嬢さんの帯結びを、あまり胸高に高く高く結ぶと、まるでマッチ棒みたいに見えてバランスが悪いですし、背の低いお嬢さんの帯結びをごちゃごちゃと派手に大きくすると、子供が大きい荷物を背負っているようで、より背が低く見えて美しくありません。
何事にもバランスというものが大切です。
いろいろ、着付けや帯結びの本がありますが、その体型別の着付け方の例が、とてもわかりやすくて良かったのが、この本。
少し前の出版ですが、安田多賀子さんは、雑誌の『振袖記念日』や、山野愛子ジェーンさんとの共著でもおなじみの着付け師さんで、帯のバリエーションだけでなく、体型別のバランスを丁寧に解説して下さっているのが、他の帯結びの本ではない特色です。
ついつい派手な帯結びに目が行きがちだけど、本当に大切なのは、お客様一人一人に合った着付けと帯結びの、トータルなバランスなんだなぁと気付かせてくれます。
さて、これから、本題の「胸高にもほどがある」です。
ここ数年、卒業式の袴のレンタルの受注会で、レンタル各社のパンフレットを手にして比較して、年々、袴の位置が高くなっている傾向に気づきました。
最近は極端で、まるでチマチョゴリかと思うほどの高さです。
チマチョゴリは、それはそれで、とても美しい民族衣装だと思うのですが、着物の袴は袴でしょう。着方が違うし、だいたい、袴をあの高さで着つけようと思うと、バストのトップあたりを半幅帯で潰し、その上から袴の紐を締めることになって、痛いと思うのですよ。
足を長く見せたいという女性の要望に応えた傾向かとは思うのですが、ものには限度と言うものがありまして。
また、すっきり見せる為か、袴の紐を、袴上部の芯の真上で結んでいる例が多かったのも気になりました。
芯の上からでは、いくら紐を締めても締まらないので、袴が下がって来てしまいます。芯より下で紐を締めるのが普通です。
ブーツは短めに袴を着付け、草履の場合は長めに着付ける原則も、最近は崩れてきていて、足袋を履いた足が、袴からにょっきり生えているような着付けも、目にします。
去年だったか、Eテレで放映された『美の壺』での卒業式の袴特集の際も、足元もにょきにょき足が生えた着付けで、袴と言うよりはプリーツスカートのようでした。
最近の極端な胸高傾向は、見栄えだけ重視して、着せられる人の体の負担を無視した、非現実的な着付けだと思います。
こんなの、袴だけのことかと思っていたら、今年の春、えらいものを見つけてしまいました。
レンタル衣装屋さんの店頭で、ご自由にお持ち下さいという別冊ジェイジェイ『JJだけの振袖BOOK』というのを見つけ、参考に1冊いただいて、家でぱらぱら見ていたところ、振袖の帯結びが異様に高いのなんの!
背の高い八頭身のモデルさんなんて、帯がみぞおちより上にあるから、おはしょりが浮いて下がぱかぱか。P22のモデルさんなんて、まるで妊婦さんみたい。
話しのタネに、和裁の先生にこの本を見せたら、「なんや、子供が肩揚げしてるみたいやなぁ」。
言われてはっと気付いたのですが、折り紙みたいにぴしっときれいに着つけているつもりなのか、バストの左右にとった大きなタックが、まるで子供の着物の肩揚げみたいに見えるのです。
2014年の『振袖日和』を引っ張り出してみたら、こちらはモデルさんにしっくり合った帯の高さで、「さすが『振袖日和』、無茶苦茶なことはしてないな」と安心しました。
表紙のモデル・菜々緒さん、中のグラビアでもクールな感じの素敵な振袖姿でした。
と思っていたら、今年の『振袖日和』、やっちまったか!
高い!高いよ!帯、高すぎるよ!!
両脇きちきちに帯揚げきてるやん!
ええっ!? 着付け担当変わってる?と思って二度見したけど、去年と同じハクビさんでした。
一体、どうしたの???
…結婚式の列席の振袖の着付けの時に、時々袖付けが綻びてるお客様がいるんですよ。
振袖なんて、そんなに袖付け痛むほど着尽すわけないのに、何で?と思っていたんですが、なんとなく理由が分かった気がしました。
成人式の時に、きゅうきゅうに高く袖付けぎりぎりに帯を締めて、袖付けが傷んで綻びたんではないかと。
花嫁さんの打ち掛け姿の掛け下は、大きく衣紋を抜き、とても胸高に帯を締めます。抱え帯があるから、そんなに上過ぎるようには見えませんけど。
胸紐も高く締め、伊達巻でぐるぐるなだらかに平らになるように補正して、それであんなに高く結べるのです。
だいたい、あれは、仕立て方から普通の着物とは違っています。
和裁の先生も、「こんなに胸高に帯締めるんやったら、仕立てから変えなあかんよ」とおっしゃっていました。
帯も三本紐も帯枕の紐も帯揚げも、みんなバストのトップより上で締めて、苦しくないわけがない。
着物も傷む。
くるところまで来たという胸高ブームですが、まぁ、これ以上上に締めようがないので、これからは落ち着いてくれるといいなぁと思うのですが(-人-;)
怖いのは、こういう本を目にしたお客様が、「振袖はこれだけ胸高じゃないとおかしい!」と思いこまれること。
着物の柄、本人の体型やヘアにもよって、着付けは微妙に変わってきます。
その辺を、一律に「胸高!、胸高!」って言われると、ほんとに困る。
『振袖日和』さん、毎年読んで参考にさせてもらってるんだから、来年はお願いしますよ、ほんとに!!
わたしは、ホテルでの結婚式の列席の着付け、成人式、卒業式、通し矢の着付け、卒業式の袴レンタルの受注会の仕事などをしています。
ここ数年、仕事の現場で感じることの一つに、
「胸高にもほどがあるぞ」
があります。
元々、年齢が上がるほど帯の位置は低めに、若い方ほど胸高に帯を結ぶという法則があります。
七五三の子供の着付けは、女の子の帯も男の子の袴も高い位置で、それが肩と腰の揚げと相まって、あどけなくかわいらしいものです。
成人式のお嬢さんは、前は胸高、後も高めに帯結びをして、若々しさを強調します。
ミセスになると、少し帯の位置を下げて落ち着いた雰囲気を出し、年輩の方は低めに帯を締めます。
勿論、その法則が全てというわけではなく、体型によって帯の高さや帯結びの形を変えたりします。
背の高いお嬢さんの帯結びを、あまり胸高に高く高く結ぶと、まるでマッチ棒みたいに見えてバランスが悪いですし、背の低いお嬢さんの帯結びをごちゃごちゃと派手に大きくすると、子供が大きい荷物を背負っているようで、より背が低く見えて美しくありません。
何事にもバランスというものが大切です。
いろいろ、着付けや帯結びの本がありますが、その体型別の着付け方の例が、とてもわかりやすくて良かったのが、この本。
![]() | 安田多賀子の振袖の帯結び―ひだで飾る、ドレープで装う (婦人生活家庭シリーズ) |
安田 多賀子 | |
婦人生活社 |
少し前の出版ですが、安田多賀子さんは、雑誌の『振袖記念日』や、山野愛子ジェーンさんとの共著でもおなじみの着付け師さんで、帯のバリエーションだけでなく、体型別のバランスを丁寧に解説して下さっているのが、他の帯結びの本ではない特色です。
ついつい派手な帯結びに目が行きがちだけど、本当に大切なのは、お客様一人一人に合った着付けと帯結びの、トータルなバランスなんだなぁと気付かせてくれます。
さて、これから、本題の「胸高にもほどがある」です。
ここ数年、卒業式の袴のレンタルの受注会で、レンタル各社のパンフレットを手にして比較して、年々、袴の位置が高くなっている傾向に気づきました。
最近は極端で、まるでチマチョゴリかと思うほどの高さです。
チマチョゴリは、それはそれで、とても美しい民族衣装だと思うのですが、着物の袴は袴でしょう。着方が違うし、だいたい、袴をあの高さで着つけようと思うと、バストのトップあたりを半幅帯で潰し、その上から袴の紐を締めることになって、痛いと思うのですよ。
足を長く見せたいという女性の要望に応えた傾向かとは思うのですが、ものには限度と言うものがありまして。
また、すっきり見せる為か、袴の紐を、袴上部の芯の真上で結んでいる例が多かったのも気になりました。
芯の上からでは、いくら紐を締めても締まらないので、袴が下がって来てしまいます。芯より下で紐を締めるのが普通です。
ブーツは短めに袴を着付け、草履の場合は長めに着付ける原則も、最近は崩れてきていて、足袋を履いた足が、袴からにょっきり生えているような着付けも、目にします。
去年だったか、Eテレで放映された『美の壺』での卒業式の袴特集の際も、足元もにょきにょき足が生えた着付けで、袴と言うよりはプリーツスカートのようでした。
最近の極端な胸高傾向は、見栄えだけ重視して、着せられる人の体の負担を無視した、非現実的な着付けだと思います。
こんなの、袴だけのことかと思っていたら、今年の春、えらいものを見つけてしまいました。
レンタル衣装屋さんの店頭で、ご自由にお持ち下さいという別冊ジェイジェイ『JJだけの振袖BOOK』というのを見つけ、参考に1冊いただいて、家でぱらぱら見ていたところ、振袖の帯結びが異様に高いのなんの!
背の高い八頭身のモデルさんなんて、帯がみぞおちより上にあるから、おはしょりが浮いて下がぱかぱか。P22のモデルさんなんて、まるで妊婦さんみたい。
話しのタネに、和裁の先生にこの本を見せたら、「なんや、子供が肩揚げしてるみたいやなぁ」。
言われてはっと気付いたのですが、折り紙みたいにぴしっときれいに着つけているつもりなのか、バストの左右にとった大きなタックが、まるで子供の着物の肩揚げみたいに見えるのです。
2014年の『振袖日和』を引っ張り出してみたら、こちらはモデルさんにしっくり合った帯の高さで、「さすが『振袖日和』、無茶苦茶なことはしてないな」と安心しました。
![]() | 振袖日和 2014 (SHINCHO MOOK) |
クリエーター情報なし | |
新潮社 |
表紙のモデル・菜々緒さん、中のグラビアでもクールな感じの素敵な振袖姿でした。
と思っていたら、今年の『振袖日和』、やっちまったか!
![]() | 振袖日和 2015 (新潮ムック) |
クリエーター情報なし | |
新潮社 |
高い!高いよ!帯、高すぎるよ!!
両脇きちきちに帯揚げきてるやん!
ええっ!? 着付け担当変わってる?と思って二度見したけど、去年と同じハクビさんでした。
一体、どうしたの???
…結婚式の列席の振袖の着付けの時に、時々袖付けが綻びてるお客様がいるんですよ。
振袖なんて、そんなに袖付け痛むほど着尽すわけないのに、何で?と思っていたんですが、なんとなく理由が分かった気がしました。
成人式の時に、きゅうきゅうに高く袖付けぎりぎりに帯を締めて、袖付けが傷んで綻びたんではないかと。
花嫁さんの打ち掛け姿の掛け下は、大きく衣紋を抜き、とても胸高に帯を締めます。抱え帯があるから、そんなに上過ぎるようには見えませんけど。
胸紐も高く締め、伊達巻でぐるぐるなだらかに平らになるように補正して、それであんなに高く結べるのです。
だいたい、あれは、仕立て方から普通の着物とは違っています。
和裁の先生も、「こんなに胸高に帯締めるんやったら、仕立てから変えなあかんよ」とおっしゃっていました。
帯も三本紐も帯枕の紐も帯揚げも、みんなバストのトップより上で締めて、苦しくないわけがない。
着物も傷む。
くるところまで来たという胸高ブームですが、まぁ、これ以上上に締めようがないので、これからは落ち着いてくれるといいなぁと思うのですが(-人-;)
怖いのは、こういう本を目にしたお客様が、「振袖はこれだけ胸高じゃないとおかしい!」と思いこまれること。
着物の柄、本人の体型やヘアにもよって、着付けは微妙に変わってきます。
その辺を、一律に「胸高!、胸高!」って言われると、ほんとに困る。
『振袖日和』さん、毎年読んで参考にさせてもらってるんだから、来年はお願いしますよ、ほんとに!!
これは着せられる方にとってはしんどいと思うんですよね。
胸高ブーム?は中高年にも押し寄せているような気がします。この間母が行事で着付けをしてもらったときにそう思いました。
あと、胸高に着つけた場合、お端折りが短いですよね。wれは下腹を強調するように思うのは私だけでしょうか^^;
そうなんですよ~!
もう、なんでも高けりゃいいのか!って感じで。
ただでさえ腰紐の1本もしんどい若いお嬢さん、バストを締めつけて、痛くないわけないだろって、突っ込みどころ満載です(゜Д゜;)
お母様も胸高にされちゃったんですか?そりゃひどい(・_・;)
おはしょり、上過ぎて、本来帯の下に隠れる部分がおはしょりとして出てるから、柄が無い部分がおはしょりにきて、下の柄とのつながりが悪いんですよねぇ。
JJの22ページのモデルさん、ほんとに妊婦さんが上の方に帯してるみたいに見えますよ。腰をしなっとしてつけたポーズが、更に仇になってしまって、もう、どうしようもないっす(>_<)
着付けを習い始めて2年、娘の成人式に振袖を着付けます。教室では、とにかく胸高を言われますU+1F613タックも七五三のごとく取るように言われU+2753と思うこともあります。
流行なんですね~!
はじめまして。
「振袖は胸高に」は、かねてから言われていたことですが、ものには限度があるよ、人間一人ひとり体型が違えば、一律に言えないよということです。
七五三みたいなタックを指導されましたか(^_^;) ちょっとびっくりです。
お嬢さんの体型に合った着付けをしてあげて下さいね♪
お母さんに着つけてもらう成人式、きっと思い出に残りますよ~(*^_^*)
私は日常的に着物を着るのですが、やはり最近の振袖は寸胴で更に帯位置が以上に高いのでマッチ棒のようです。舞妓さんでも意識しているのでしょうか、本当に肩上げをしているように思います。本当に物には限度がありますよ。
異常に胸を潰しさらに着なれてないときつく着付けされますからあたりまえのように振袖のイメージは「きつい、苦しい」になりますよね。お尻も強調されますし。
一番良いのはマスコミが最近の振袖の異常性を訴えてくれることなのでしょうけど絶対ないですよねー…。
日本の文化が崩れていかない様、伝えていかないといけませんね。
まるでチマチョゴリみたいだと
変なお辞儀の仕方が流行っているのと何か関係があるのでしょうか…
ああもう日本はダメだわ…と嘆いていました。
毎年成人式や卒業式のシーズンに
「振袖 帯の位置 高すぎる」と検索して、指摘されている方がいないか探していました。
そしたら10年前からちゃんとご指摘なさっていた方がいらっしゃったと今更発見しまして。
ついついこんなところにコメントさせて頂きました。