あすにゃん日記

500字程度のエッセイを書きます。

精霊の守り人:003 世界観と神話体系を創作に活かす

2019-04-28 06:00:00 | 守り人シリーズ
 実際に火を付けたことで、(星読博士のひとり)カガイはごまかせましたが、聖導師と
 弱冠はたちのシュガはごまかされませんでした。皇子には、水妖が取り憑いているという話になります。

 この話のときに、聖導師がどれだけ権力を持っているか、という話が挿入されているんですが、権力の背景にある暗い部分も、シュガは知ることになります。

 それと同時に、ナクーと呼ばれる先住民の話も出てました。

 上橋菜穂子がうまいのは、世界背景の説明を、飽きさせず、センス・オブ・ワンダーな語り口で表現している部分でしょう。水妖とヤクーの関係、帝と星読博士の関係、そして帝とヤクーの関係を、端的な言葉でグイグイ読ませてくれます。

 そこから現実を振り返れば、いまの天皇は、出雲の先住民から『国譲り』されたことになってます。この物語でも、スサノオの八岐大蛇退治を思わせるエピソードが挿入されています。
 全世界的にも、英雄が国を作るという類型が広がっております。
 たとえば旧約聖書では、ダビデが敵のペリシテ人をやぶって国の王にまで上りつめますし、ギルガメシュ叙事詩では、暴君でもあるギルガメシュのさまざまな英雄的な物語が語られています。

 上橋菜穂子は、そのような神話の類型を下地にしながらも、和風ファンタジーにふさわしい、独特の世界観を提示しているのです。並大抵の才能ではありません。 



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