西武が『妖怪ウォッチ』のスタンプラリーを実施するのは必然だった――。
鉄道各社が行っている夏休みのスタンプラリー。毎年恒例となったJR東日本の「ポケモンスタンプラリー」のほかにも、東武鉄道が沿線の春日部を舞台 にした漫画『クレヨンしんちゃん』とタイアップしたスタンプラリーを初めて実施。さらに、特撮ヒーロードラマ『烈車戦隊トッキュウジャー』のスタンプラ リーを京急・都営地下鉄・京成・北総鉄道の4社合同で開催するなど、スタンプラリーが例年以上に“熱い”年となっている。
そんな中、この夏一番の話題のスタンプラリーといえば、西武鉄道が7月19日から開催している「妖怪ウォッチスタンプラリー」だ。スタンプラリーと同時にラッピング電車も運行を開始した。
スタート直後から多くの子どもが殺到。あまりの人気ぶりに、10の駅に設置しているスタンプ台では順番待ちの列ができている。一部の賞品が一時的に 品切れとなり、当日に引き替えができない事態も起きた。「予想を大幅に上回る売れ行きに、担当としてビックリしている」と、スタンプラリーを企画した西武 鉄道スマイル&スマイル室の担当者はうれしい悲鳴を上げる。
「アニメ=西武」というイメージ
そもそも、なぜ西武が空前の人気を博している妖怪ウォッチのスタンプラリーを獲得できたのか。事情通は「人気が出る前に話があったが、それに担当者 が早い段階でゴーサインを出した」と言う。それでも、西武に早い段階からオファーが舞いこんだのは、「アニメといえば西武」というイメージがあるからだろ う。
西武が開催するアニメ関連のイベント数は少なくない。最近では、アニメファンの間で大きな話題となった作品とのコラボレーションも多い。
沿線の秩父を舞台にし、テレビアニメや映画が大ヒットした『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』では、2013年の劇場版公開に合わせてスマ ホを利用したスタンプラリーの開始やラッピング電車の運行を実施。興行収入が20億円を突破した『劇場版 魔法少女まどかマギカ』(2013年公開)でも、東急電鉄と合同でスタンプラリーを開催。限定ボイスなどの特典を求めて、多くのファンが参加した。
8月6日からは、世界的なヒットとなっているアニメ『進撃の巨人』とコラボレーションし、「進撃の西武鉄道 スマホスタンプラリー in 秩父」を開催している。作品中に登場する「紅蓮の弓矢」を特急“レッドアロー”号とかけたキャッチコピーや、「ウォール・チチブ」など遊び心満載でファン を取り込む狙いだ。
このほかにも、アニメキャラクターのラッピングトレインなども走行しており、『銀河鉄道999』のデザイン電車は2009年から走り続けている。車 内・駅構内のマナー啓発のキャラクターには、2000年代にヒットしたアニメ『ケロロ軍曹』の登場人物を2010年から起用。西武鉄道専属のキャラクター 「スママ」を登場させて、親近感のわくマナー広告作りを展開している。
西武がアニメに強いワケ
西武鉄道がアニメに強い背景の1つは、沿線に多くのアニメスタジオやアニメ・漫画のゆかりの地があるという点だ。その規模は中央線沿線と双璧をなし ており、日本動画協会の調べによると、全国に約420社あるアニメ製作会社のうち、沿線自治体の練馬区に79、杉並区に70、西東京市に30と集積してい る(2011年)。
たとえば、池袋線の大泉学園駅には『ワンピース』や『プリキュア』シリーズでおなじみの東映アニメーションの制作拠点、大泉スタジオがある。新宿線 の上井草駅には『ガンダム』やケロロ軍曹、『アイカツ』を制作するサンライズが本社を構える。同線の田無駅には『ドラえもん』、クレヨンしんちゃんのシン エイ動画が、『鉄腕アトム』などでおなじみの手塚プロダクションの本社は高田馬場駅に近い。
そうした縁を生かし、駅の発車メロディーにはアニメソングを採用している。大泉学園駅では原作者・松本零士氏のゆかりの地であることから銀河鉄道999が、上井草駅はガンダム、椎名町駅は『怪物くん』のテーマ曲が流れる。
始まりは「レオ」だった
ただ、西武とアニメの深い関係は、沿線のアニメスタジオの存在だけによるものではない。西武自身も昔からアニメに対する理解が深かった。その端的な例が「レオ」だろう。
手塚治虫氏が沿線に住んでいたこともあり、1979年シーズンから『ジャングル大帝』のレオをプロ野球・埼玉西武ライオンズのマスコットキャラク ターとして採用。現在も変わらず、使い続けている。1981年には妹「ライナ」が、手塚治虫氏の手によって誕生。球団のマスコットキャラクターとしてだけ でなく、会社のシンボル的存在となっている。
今でも「レオカラー」と呼ばれる白地に青赤緑帯のバスや鉄道車両が、沿線を走っている。また、西武遊園地と西武球場を結ぶ山口線には「レオライナー」という愛称がある。アニメキャラクターを愛称にした路線の元祖ともいえるだろう。
西武グループはアニメを生かしながら、沿線価値の向上、地域貢献を図っている。2007年にアニメの業界団体である日本動画協会と、「アニメの活用 による社会貢献活動」の協力体制を構築。沿線のアニメ会社で制作するキャラクターを使って、沿線自治体の環境に対する取り組みを紹介する環境マガジン「ア ニッコ」の無償配布などを行っている。
広義での市場規模は約1.3兆円に達し、海外輸出などで今後の発展が期待されるアニメ産業。その拠点の多くが集積する西武沿線のアドバンテージは大 きい。長年にわたって培ってきた西武鉄道とアニメの良好な関係が「アニメの西武」という評判を作り出し、ひいては沿線価値の向上につながっているのは間違 いない。
リサーチ:テック サイバーファーム ウェア 半田貞治郎
理由として、アンパンマンではなくセーラームーンの方が世界中に広く知られていることと、アンパンマンのアニメで「顔がぬれて力が」というシーンが1500形や新1000形ステンレス車の事故を連想させて不吉・不適切なことと、京急沿線にはアンパンマンやワンピースがきらいでセーラームーンやプリキュアが好きな人が多いためです。