簡単で分かりやすい派遣の書類作成と運用方法

派遣事業における個別契約書などの関係書類の作成方法や期間制限の延長手続きなどの運営方法について分かりやすくお伝えします

2020年4月改正 労働者派遣法(派遣先均等・均衡方式 待遇に関する説明(雇入れ時))

2019年10月31日 | 2020年4月 労働者派遣法改正


2020年4月1日から労働者派遣法が改正されます。



派遣労働者への待遇に関する説明については2020年4月の労働者派遣法改正後、

次の通りとなっています。

【労働者派遣法改正後(2020年4月~)】

  ・雇入れ前の待遇に関する説明(労働者派遣法第31条の2第1項)

  ・雇入れ時の待遇に関する説明(労働者派遣法第31条の2第2項)(改正)

  ・派遣時の待遇に関する説明(労働者派遣法第31条の2第3項)(改正)

  ・派遣労働者から求めがあった場合の待遇の相違に関する説明

                (労働者派遣法第31条の2第4項)(改正)



前回は、「雇入れ前の待遇に関する説明(労働者派遣法第31条の2第1項)」

についてお話させていただきましたが、今回は「雇入れ時の待遇に関する

説明(労働者派遣法第31条の2第2項)」
についてお話させていただこうと

思います。



「雇入れ時の待遇に関する説明(労働者派遣法第31条の2第2項)」については

2020年4月1日の改正事項となります。





内容については、文字通り、下記の事項について派遣労働者を雇用する際に説明

しなければいけないということになります(派遣先均等・均衡方式の場合)。



【派遣労働者に文書を渡さなければいけない事項】

  ・昇給の有無

  ・退職手当の有無

  ・賞与の有無

  ・協定対象派遣労働者であるか否か(協定対象派遣労働者である場合には、

   当該協定の有効期間の終期)

  ・派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項

   (派遣労働者からの苦情の申出を受ける者、派遣元・派遣先における

    苦情の処理方法、派遣元と派遣先がとの連携体制)

記載例は以下のような感じになります。



   ※ 拡大した画像は当事務所ホームページにてご覧いただけます





【派遣労働者に口頭にて説明しなければいけない事項】

 (書面の活用等によりできるだけわかりやすく説明すること)

  (均等待遇の場合)

    ・派遣先に雇用される正社員と派遣労働者との間で差別的な取扱いを

     しない旨(派遣法30条の3の規定により講ずる措置)

  (均衡待遇の場合)


    ・派遣先に雇用される正社員と派遣労働者との間で不合理な相違を設

     けない旨(派遣法30条の3の規定により講ずる措置)

    ・派遣労働者の賃金について、職務の内容、職務の成果、意欲、能力

     又は経験その他の就業の実態に関する事項のうちどの要素を勘案

     しているのか(派遣法30条の5の規定により講ずる措置)

記載例は以下のような感じになります。





 ※ 拡大した画像は当事務所ホームページにてご覧いただけます









http://haken-higashitani.com/









(資料)
 厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2020年4月1日以降)」

 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020other.html

 厚生労働省 「平成30年労働者派遣法改正の概要<同一労働同一賃金>」

 https://www.mhlw.go.jp/content/000469167.pdf

 厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」

 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf

 厚生労働省 「労使協定方式(労働者派遣法第30条の4)「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」について」

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html

2020年4月改正 労働者派遣法(派遣先均等・均衡方式 待遇に関する説明(雇入れ前))

2019年10月30日 | 2020年4月 労働者派遣法改正


2020年4月1日から労働者派遣法が改正されます。



前回は、派遣先から派遣元(派遣会社)へ「比較対象労働者の待遇等に関する

情報の提供」を受けて、派遣元による派遣労働者の賃金等の決定方法について

説明しました。



今回は、派遣元(派遣会社)から派遣労働者への「雇入れ前の待遇に関する説明」

についてお話させていただきます。





派遣元から派遣労働者への「待遇に関する説明」については2020年4月1日の労働者

派遣法の改正前と改正後で以下のような違いが生じることになります。



【労働者派遣法改正前(~2020年3月)】


  ・雇入れ前の待遇に関する説明(労働者派遣法第31条の2第1項)

  ・賃金決定等における配慮した内容の説明義務

                (労働者派遣法第31条の2第2項)



【労働者派遣法改正後(2020年4月~)】


  ・雇入れ前の待遇に関する説明(労働者派遣法第31条の2第1項)

  ・雇入れ時の待遇に関する説明(労働者派遣法第31条の2第2項)(改正)

  ・派遣時の待遇に関する説明(労働者派遣法第31条の2第3項)(改正)


  ・派遣労働者から求めがあった場合の待遇の相違に関する説明

                (労働者派遣法第31条の2第4項)(改正)




雇入れ前の待遇に関する説明については、労働者派遣法第31条の2

第1項に次のように規定されています。

「派遣元事業主は、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、

 厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者を派遣労働者として

 雇用した場合における当該労働者の賃金の額の見込みその他の当該

 労働者の待遇に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項を説明

 しなければならない。」



つまり、派遣労働者が登録に来た際や、派遣労働者を雇い入れる前に、

賃金の見込み額、各種保険の加入の有無、派遣会社の会社の概要、

派遣制度に関する制度の概要、均衡待遇確保のために配慮した内容等

について説明をしなければいけません。



これは、今回の派遣法の改正前と同じ規定となるので、改正に関する

事項ではないのですが、次回以降に改正後の事項である「雇用時の

待遇に関する説明」等について説明させていただくので、おさらいと

して説明させていただくことにしました。



具体的には、以下のような書類を派遣会社が派遣労働者となろうとする

者に交付し、説明することで足ります。



  ※ 拡大した画像は当事務所ホームページにてご覧いただけます









http://haken-higashitani.com/









(資料)
 厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2020年4月1日以降)」

 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020other.html

 厚生労働省 「平成30年労働者派遣法改正の概要<同一労働同一賃金>」

 https://www.mhlw.go.jp/content/000469167.pdf

 厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」

 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf

 厚生労働省 「労使協定方式(労働者派遣法第30条の4)「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」について」

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html

2020年4月改正 労働者派遣法(比較対象労働者の情報提供は最初だけでいいよね?)

2019年10月26日 | 2020年4月 労働者派遣法改正


2020年4月1日から労働者派遣法が改正されます。



前回、派遣先から派遣元へ「比較対象労働者の待遇等に関する情報の提供」を

行う場合の、提供する情報の内容について説明しました。



「比較対象労働者の待遇等に関する情報の提供」で、よく勘違いされるのが、

「この情報の提供は最初に派遣契約を締結した時だけでいいんでしょう?」

というものです。



これは間違いです!



「比較対象労働者の待遇等に関する情報の提供」は労働者派遣法第26条7項に

規定されていますが、そこには以下の通り記載されています。

 『労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、第一項の規定により労働者

  派遣契約を締結するに当たって
は、あらかじめ、派遣元事業主に対し、厚生

  労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣に係る派遣労働者が従事

  する業務ごとに、比較対象労働者の賃金その他の待遇に関する情報その他の

  厚生労働省令で定める情報を提供しなければならない。』



この『労働者派遣契約を締結するに当たっては…」とは、派遣契約の新規の契約

はもちろんのこと、派遣契約の更新も含まれています。



従って、「比較対象労働者の待遇等に関する情報の提供」については、派遣契約を

更新する都度、派遣先から派遣元に毎回、情報を提供しなければいけないので、

ご注意ください。








http://haken-higashitani.com/









(資料)
 厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2020年4月1日以降)」

 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020other.html

 厚生労働省 「平成30年労働者派遣法改正の概要<同一労働同一賃金>」

 https://www.mhlw.go.jp/content/000469167.pdf

 厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」

 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf

 厚生労働省 「労使協定方式(労働者派遣法第30条の4)「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」について」

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html

2020年4月改正 労働者派遣法改正(派遣先均等・均衡方式 比較対象労働者の情報の内容

2019年10月25日 | 2020年4月 労働者派遣法改正

2020年4月1日から労働者派遣法が改正されます。



前々回、①の派遣先均等・均衡方式の場合の「比較対象労働者の待遇等に関する

情報の提供」における「比較対象労働者の選定方法」についてお話をさせていただき

ました。



今回は「比較対象労働者の待遇等に関する情報提供の内容」についてお話をさせて

いただきます。



2020年4月1日以降、労働者派遣法が改正されますが、派遣契約書(個別契約書)

の内容も以下の2つの項目を追加で記載しなければならないこととなりました。

 ① 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度

 ② 労使協定方式の対象となる派遣労働者に限るか否か

派遣契約書(個別契約書)の記載例は以下のような感じになります。



   ※ 拡大した画像は当事務所ホームページにてご覧いただけます









②の「労使協定方式の対象となる派遣労働者に限るか否か」という項目では、

文字通り派遣労働者を労使協定方式の対象となる派遣労働者に限るか否かに

ついて記載するのですが、



 ・派遣労働者を労使協定方式の対象となる派遣労働者に限る場合は、

   ① 派遣先が当該派遣契約に係る教育訓練を派遣先の直接雇用の労働者

     に実施しているか否か及び実施している場合はその具体的な内容

   ② 派遣先が派遣先に直接雇用されている労働者に対して利用させている

     給食施設・休憩室・更衣室について、それぞれの利用の機会の付与の

     有無及び利用時間等の具体的な内容

  について派遣先から派遣元に「比較対象労働者の待遇等に関する情報の提供」

  を行います。記載例は以下のような感じになります。

  

  ※ 拡大した画像は当事務所ホームページにてご覧いただけます





 ・派遣労働者を労使協定方式の対象となる派遣労働者に限らない場合は、


   ① 比較対象労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲

     並びに雇用形態

   ② 比較対象労働者を選定した理由

   ③ 比較対象労働者の待遇のそれぞれの内容(昇給、賞与その他の主な

     待遇が無い場合には、その旨を含む)

   ④ 比較対象労働者の待遇のそれぞれの性質及び当該待遇を行う目的

   ⑤ 比較対象労働者の待遇のそれぞれについて、職務の内容、当該職務

     の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇に係る

     決定をするに当たって考慮したもの

  について派遣先から派遣元に「比較対象労働者の待遇等に関する情報の提供」

  を行います。記載例は以下のような感じになります。



  ※ 拡大した画像は当事務所ホームページにてご覧いただけます







http://haken-higashitani.com/









(資料)
 厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2020年4月1日以降)」

 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020other.html

 厚生労働省 「平成30年労働者派遣法改正の概要<同一労働同一賃金>」

 https://www.mhlw.go.jp/content/000469167.pdf

 厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」

 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf

 厚生労働省 「労使協定方式(労働者派遣法第30条の4)「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」について」

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html

2020年4月改正 労働者派遣法(派遣先均等・均衡方式 派遣労働者の待遇の決定)

2019年10月24日 | 2020年4月 労働者派遣法改正


2020年4月1日から労働者派遣法が改正されます。



前回は派遣先均等・均衡方式における比較対象労働者の情報提供の内容について

説明しました。今回は、その内容を元に派遣会社(派遣元)がどのように

派遣労働者の待遇を決定するのかを説明したいと思います。



個別契約書の「派遣労働者を協定対象派遣労働者に限定するか否かの別」の項目

で、「協定対象派遣労働者に限定しない」とした場合は、比較対象労働者の賃金等

の待遇について下記のような詳細な情報を派遣先から派遣元に提供しなければ

いけません。



  ※ 拡大した画像は当事務所ホームページにてご覧いただけます



この情報を元に、派遣元は派遣労働者の賃金額等の待遇を決定していきます。



派遣労働者の賃金額等の待遇を決定していく際は、基本給や賞与、手当、

退職金、賃金以外の待遇について、派遣先からの情報を元にひとつひとつ

検証していきます。





【通勤手当】

例えば、比較対象労働者(派遣先の正社員)には『通勤手当』が支払われて

いるが、今回派遣しようと考えている派遣労働者には『通勤手当』が支払わ

れていない場合の考え方は次の通りとなります。

手順①:通勤手当の「性質・目的」を把握する。

  ・派遣先から収集した情報により、派遣先では、職場に来てもらうために

   必要な交通費として支給していることが確認された。実際に、この

   派遣先では、通勤にかかった費用を補てんするため、自宅の最寄り駅から

   勤務先の最寄り駅までの定期券代を支給している。

手順②:手順①を踏まえ、待遇差が不合理か否かを判断するに当たってどのような

    考慮要素があるか、考えてみる


  ・通勤手当の「性質・目的」が、通勤にかかった費用を補てんするということ

   なので、「業務の内容」や「責任の程度」や、転勤や移動の有無・範囲と

   いった事情は、通勤手当の支給の有無や支払いの仕方にあまり関係がない

   ことが判明。

  ・また、この派遣先では、他に「その他の事情」として、通勤手当の支給の

   有無や支払いの仕方に影響を及ぼすような事情はない。

手順③:派遣労働者に通勤手当が支給されていないことについて、不合理で

    ないと整理し、派遣労働者が納得するような説明ができるか?


  ・勤務先に通勤するということは、比較対象労働者でも派遣労働者でも

   変わらない。

  ・その上で、待遇差が不合理か否かを判断するに当たって考慮しなければ

   ならない事情もない。

  ・従って、通勤手当について派遣労働者に支給しないことは、

   「不合理ではない」とは言えず、改善に向けた取り組みを進めていく

   必要がある。






【役職手当】


比較対象労働者(派遣先の正社員)には『役職手当』が支払われているが、

今回派遣しようと考えている派遣労働者には『役職手当』が支払われて

いない場合の考え方は次の通りとなります。

手順①:役職手当の「性質・目的」を把握する。

  ・派遣先から収集した情報によると、この派遣先では、役職手当が支払われて

   いる比較対象労働者は、主任や店長など、一定の役職に就いている社員だけで

   あった。役職に就いている比較対象労働者は、それ相応の責任がある業務を

   こなしており、また、部下の業務の管理などもしている。一方で、派遣労働者

   は、主任や店長などの役職に就くことは想定されていない。

手順②:手順①を踏まえ、待遇差が不合理か否かを判断するに当たってどのような

    考慮要素があるか、考えてみる


  ・役職手当の「性質・目的」が、役職に就く者としての責任の重さを評価

   して支給するということだとすると、社員の「業務の内容」や「責任の

   程度」が、役職手当の支給の有無や支払いの仕方に影響を及ぼすものと

   考えられる。

  ・また、この派遣先では、他に「その他の事情」として、役職手当の支給

   の有無や支払いの仕方に影響を及ぼすような事情はなかった。

手順③:派遣労働者に役職手当が支給されていないことについて、不合理で

    ないと整理し、派遣労働者が納得するような説明ができるか?


  ・派遣労働者と比較対象労働者との間には、主任や店長などの一定の役職

   に就くかどうか、それ相応の責任のある業務を行うかどうかなどについて

   違いがある。

  ・派遣先の労働者の中でも、そうした責任の違いによって支給の有無が

   分かれていることを考えると、役職に就いていない派遣労働者に役職手当

   を支給しないことは「不合理ではない」と考えらえる。






【皆勤手当】


比較対象労働者(派遣先の正社員)には『皆勤手当』が支払われているが、

今回派遣しようと考えている派遣労働者には『皆勤手当』が支払われて

いない場合の考え方は次の通りとなります。

手順①:皆勤手当の「性質・目的」を把握する。

  ・派遣先から収集した情報によると、この派遣先では、出勤する運転手を

   一定数確保する必要があることから、皆勤を奨励する趣旨で支給している。

手順②:手順①を踏まえ、待遇差が不合理か否かを判断するに当たってどのような

    考慮要素があるか、考えてみる


  ・皆勤手当の「性質・目的」が、出勤する運転手を確保するため皆勤を

   奨励する趣旨であるので、「業務の内容」が、皆勤手当の支給の有無に

   影響を及ぼすものと考えられる。

  ・また、この派遣先では、他に「その他の事情」として、皆勤手当の支給の

   有無や支払方法に影響を及ぼすような事情はない。

手順③:派遣労働者に皆勤手当が支給されていないことについて、不合理で

    ないと整理し、派遣労働者が納得するような説明ができるか?


  ・この派遣先では、比較対象労働者と派遣労働者との間では、「業務の内容」

   は同じであった。

  ・「業務の内容」が同じであれば、出勤する者を確保する必要性は同じで

   あり、その必要性は、「職務の内容・配置の変更の範囲の違い」により

   異なるものではない。

  ・従って、皆勤手当について派遣労働者に支給しないことは「不合理ではない」

   とは言えず、改善に向けた取組を進めていく必要があると考えられる。






【福利厚生・教育訓練・安全管理】

比較対象労働者(派遣先の正社員)には『滑り止めの付いた長靴の支給』が

行われているが、今回派遣しようと考えている派遣労働者には『滑り止めの

付いた長靴の支給』は行われていない場合の考え方は次の通りとなります。

手順①:『滑り止めの付いた長靴の支給』の「性質・目的」を把握する。


  ・派遣先から収集した情報によると、この派遣先では、工場内で水産加工に

   従事する社員が水に濡れた床で滑って転倒することを防止するために、

   滑り止めの付いた長靴を支給している。

  ・法律上求められる安全衛生上の措置は、比較対象労働者も派遣労働者も区別

   なく講じられる。

手順②:手順①を踏まえ、待遇差が不合理か否かを判断するに当たってどのような

    考慮要素があるか、考えてみる


  ・滑り止めの付いた長靴の支給の「性質・目的」が、工場内で水産加工に従事

   する社員の転倒防止であるので、工場内で水産加工を行うという「業務の

   内容」が、滑り止めの付いた長靴の支給の有無や支給の仕方に影響を及ぼす

   ものと考えられる。

  ・また、他に「その他の事情」として、滑り止めの付いた長靴の支給に影響を

   及ぼすような事情はない。

手順③:派遣労働者に滑り止めの付いた長靴が支給されていないことについて、

    不合理でないと整理し、派遣労働者が納得するような説明ができるか?


  ・手順②で確認したように、水産加工の業務に従事する社員の転倒を防止

   する必要性は、比較対象労働者であっても派遣労働者であっても変わらない

   ので、水産加工に従事する派遣労働者に滑り止めの付いた長靴を支給しない

   ことは「不合理ではない」とは言えず、改善に向けた取組を進めていく必要

   があると考えられる。






【賞与】

比較対象労働者(派遣先の正社員)には『賞与』が支払われているが、

今回派遣しようと考えている派遣労働者には『賞与』が支払われていない

場合の考え方は次の通りとなります。

手順①:賞与の「性質・目的」を把握する。

  ・派遣先から収集した情報によると、この派遣先では、企業の業績に対する

   功労報償のために賞与を支給している。実際に、この派遣先では、派遣先の

   労働者・派遣労働者を問わず、販売に対する目標は存在しないが、比較対象

   労働者には販売実績に応じ、基本給の1~4か月分(販売実績が低調な人で

   あっても最低基本給の1か月分を保証)の額の賞与を支給している。

手順②:手順①を踏まえ、待遇差が不合理か否かを判断するに当たってどのような

    考慮要素があるか、考えてみる


  ・賞与の「性質・目的」が、企業の業績に対する功労報償であり、支給基準が

   販売実績であるとすると、従事している「業務の内容」や「その他の事情」

   である販売実績が、賞与の支給の有無や支払の仕方に影響すると考えられる。

  ・また、販売に対する目標はどちらも存在せず、他に「その他の事情」として、

   賞与の支給の有無や支払の仕方に影響を及ぼすような事情はない。

手順③:派遣労働者に賞与が支給されていないことについて、不合理でないと

    整理し、派遣労働者が納得するような説明ができるか?


  ・派遣労働者でも、販売の業務に従事し、販売実績へ何らかの貢献をしている

   と思われる。

  ・その上で、販売実績のある派遣労働者に対して、賞与を支給しない理由も

   あまり考えられない。

  ・従って、賞与について派遣労働者に支給しないことは「不合理ではない」

   とは言えず、改善に向けた取組を進めていく必要があると考えられる。






このように、派遣先均等・均衡方式の場合は、派遣労働者の待遇の決定に

ついては、派遣先からの情報を元にひとつひとつ検証して決定していかな

ければいけません。

詳しくは、

 ・「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」p47以降を参照

   https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf

 ・「同一労働同一賃金ガイドライン」p15以降を参照

   https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf


を是非ご参照ください!





http://haken-higashitani.com/









(資料)
 厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2020年4月1日以降)」

 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020other.html

 厚生労働省 「平成30年労働者派遣法改正の概要<同一労働同一賃金>」

 https://www.mhlw.go.jp/content/000469167.pdf

 厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」

 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf

 厚生労働省 「労使協定方式(労働者派遣法第30条の4)「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」について」

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html