昼は札幌マラソンに出場した後輩の応援へと向かう。
2人がハーフマラソンに参加しているはずで、
僕は12キロ地点の河川敷に佇み、
彼らがやってくるのを今か今かと待ち構えていた。
しかし。
参加者6,000人。
ものすごい数のランナーたちが時速10~12キロ以上のペースで
目の前を通過していく。
僕は視力低下の著しい眼を忙しく動かし、
2人の姿を探し続けた。
しばらくすると、
数多(あまた)いるランナーの流れの中で、
辛うじてノブちゃんの姿を見つけることができた。
180㎝超の長身な彼は
数珠つなぎで流れる人波の中からアタマひとつ抜きんでていたため、
目深(まぶか)にかぶった帽子姿ながらも僕は彼に気がつくことができた。
「ノブ!がんばれ!いいピッチだ!」
突然の声援に驚いた表情のノブちゃんではあったが、
僕のことに気がつくと、
照れ気恥ずかしそうな表情を浮かべ、
小さく頷きながら素早く手を振り、走り去っていった。
洗いざらしの白Tシャツに短パンのイデタチで走るノブちゃん。
僕はレース前の、会社での彼のこんな言葉を思い出した。
「所詮、僕なんかはストイックに週末走るでもないし、
マジで走っている人には申し訳ないくらい準備不足で。
でも、ちょこっとだけ頑張りたいんですよね。
・・・
何て言うか、格好悪い自分を知っているから
走っている自分の姿は鏡で見たくないんですよね。
・・・
最近、走っている人たちって、みんな流線形のサングラスをかけて、
i pod を聞きながらだし、着ているウェアもシューズもオシャレだし。
見られている自分、鏡の中の自分を意識しながら走っていますよね。
・・・
でも走っているときって、そんな周囲の目線を気にしている隙間って
自分にはないんですよね、キツくって。
・・・
なんか気恥ずかしいじゃないですか。
『ライバルは自分』みたいなスポーツなわけですから、
(そうじゃない、俺はそこまで向き合って走ってない)っていう
気持ちなんですよ。
いや、向きあっちゃっているワケですけど。
そう思われたくないんですよね、大したタイムで走るわけでもないし。
・・・
だからウェアも、普通のTシャツに短パンという、
口笛吹きながら買い物にでも行っている風を装いたいんですよ。」
* * *
民主党の前原国交省大臣がテレビに出まくっている。
テレビが持つメディアパワーを十二分に熟知しているからこその、
PR戦略だ。
したたかである。
前原大臣の言葉の一言一言には無駄がなく、
意志の強さを感じる。
それでいて、決して驕った風をみせない、
謙虚で慎ましやかで、気恥かしさも内包したハニカんだ表情をみせる。
案外、長期政権になるのではないだろうか。