バロックな話

バロック音楽/バッハとチェンバロ演奏、あるいは音楽のいびつな雑感

リコーダーの魅力

2010年08月02日 | 音楽

 最近、バロック音楽の通奏低音と伴う形式、つまりコンチェルトやソナタを特に好んで聞いている。リコーダーは今まであまり関心が無かった楽器だけに、あまり多くを聞いていなかったが、聞いてみると、結構好みの曲も多いことに気付いた。

 リコーダーはバロック時代の代表的な楽器の一つであることは間違いないだろう。しかしバッハはカンタータ等の声楽曲の伴奏やブランデンブルク協奏曲の一部にしか使用を指定していない楽器であることは、とても不思議なことに思える。バッハはリコーダーの名手に出会えなかったのだろうか。同じドイツではテレマンやヘンデルがリコーダーのための曲をいくつか残しているが、他の作曲家は今後調べてみることにします。

 一方、イタリアではコレッリ、マンチーニ、マルチェッロ、ヴェラチーニ、バルサンティ、チーマ、A.スカルラッティなど、多くの作曲家がリコーダーのための曲をたくさん残しているようだ。どの曲も私から見れば超絶技巧の難曲ばかりに聞こえるが、さすがにプロの演奏は素晴らしく、難曲をそうとは感じさせずに、さりげなく弾きこなしている。

 リコーダーは発音原理がパイプオルガンのある種のレジスターと全く同じであるが、送風は演奏者の肺と口によって行われ、音程、つまりパイプの長さも人の指で調整されるところが全く異なっている。単調なオルガンの旋律とは全く違う音表現の可能性がここにある。その大きな差として、リコーダーの音が非常に身近に感じられるのは私だけであろうか。まるで人が語るかの様な発音に、思わず頷きながら曲に聞き入ってしまうこともしばしば。

 あの素朴な音色で「ポーッ」っとロングトーンを奏でるだけでも、何とも言えない「ゆらぎ」を感じる。また、2つのリコーダーによる和音や、ヴァイオリン等との対旋律による掛け合いにも、音の分離が良いために明快な旋律の主張が伝わりやすく思える。長調と短調の曲を演奏したときの陰影の変化も他の楽器にはない魅力に思える。そんな訳で、暫くリコーダーにはまってみます。そのうち楽器を手に取るかも?