バロックな話

バロック音楽/バッハとチェンバロ演奏、あるいは音楽のいびつな雑感

バッハのトランスクリプション

2010年02月04日 | バッハ

 バッハの曲はその普遍性から、他の楽器や編成に編曲して演奏される(これをトランスクリプションと言う)ことがしばしばある。

 例を挙げれば、「フーガの技法(楽器未指定だがチェンバロが一般的)」の弦楽四重奏やオルガン版、「ゴルトベルク変奏曲(チェンバロ)」のオルガン版、「平均律クラヴィーア(チェンバロ・クラヴィコード)」の弦楽四重奏やオルガン版、「イタリア協奏曲(チェンバロ)」のリコーダーアンサンブル(室内楽)版、「無伴奏ヴァイオリン」のチェンバロ版(これはバッハが自ら行った版がある)などなど、枚挙にいとまがない。

 そんななかで、最近、驚愕のトランスクリプションのCDを手に入れた。「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」を、何とチェロで演奏してしまう演奏家がいたのである。その名は、Norbert Hilgerというチェリストだ。無伴奏ヴァイオリンは、ブラームスがピアノの左手のための「シャコンヌ」でトランスクリプションを行っているのが有名だが、私は昔、ギターで随分弾いた曲でもあり、もしもチェロで演奏するとどうなるか、昔からとても興味があったのだ。

 この曲はヴァイオリンでも相当高度な演奏技法が要求されているにも関わらず、はるかに大きな楽器であるチェロあってもそのハンデを全く感じさせず、自然な音楽が展開されている。まるでチェロのために作曲されたかの様な饒舌さもあり、とても心地よい。彼は無伴奏ヴァイオリンを熟知し、チェロへのトランスクリプションを完全に成功させている。素晴らしい演奏だ。録音も良い。(CDの批評になってしまった。。。)

 欲を言えば、逆をやって欲しい。つまり、無伴奏チェロソナタを、ヴァイオリンで弾いてほしい。誰か、頼みます。オリジナル楽器の演奏を極めるのも大切ですが、バッハの音楽の新たな可能性を発見できるトランスクリプション、最高です。


3 コメント

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バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパル... (ogawa_j)
2010-02-06 11:24:33
バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータをチェロで弾いた演奏、興味深いですね。
その逆の例に言及しておられますが、ヴァイオリンではありませんが、それと似た構え方をするヴィオロンチェッロ・ダ・スパッラという楽器で、無伴奏チェロのためのパルティータ全曲を演奏したCDを、「私的CD評」で紹介しましたので、ご興味がおありならご一読ください。URLは:
http://blog.goo.ne.jp/ogawa_j/e/f61294087afb28fe407f8f66bd8aa42d
です。
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ogawa_jさん、コメントありがとうございます。ヴァ... (ぶっち)
2010-02-06 16:33:01
ogawa_jさん、コメントありがとうございます。ヴァイオリンソナタは(特にフーガで)重音奏法が多用されていますので、さすがにチェロだと重たくなります(特にテンポの速い曲)が、この演奏はそれでも巧みなアーティキュレーションで上手く緩和していると思います。お勧めです。
ogawa_jさんのblogの記事はもちろん読ませて頂いてますよ!クイケンもこの楽器でCDリリースしていますよね。どちらがお勧めでしょうか。
MHKの番組でこの楽器を使っているクイケンの演奏を見たことがあります。
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ジギスヴァルト・クイケンと寺神戸亮の無伴奏チェ... (ogawa_j)
2010-02-06 18:54:40
ジギスヴァルト・クイケンと寺神戸亮の無伴奏チェロソナタ:
私は寺神戸亮の演奏しか聴いていないので、何とも言えません。ただくらんべりぃさんの「The Art of Bach」で、クイケンの演奏について触れられています。URLは:
http://cranberry.be/bach/2009/02/bwv1010_4.php
です。ご参考までに。
私もNHKで放送された、ラ・プティ・バンドの演奏で、クイケンがヴィオロンチェッロ・ダ・スパッラを演奏しているところを見ました。あのように全員が立って演奏する様な場合、本来は座らなければならないチェロ奏者が、立って演奏出来るのは、良いかもしれませんね。
しかし私は、「私的CD評」にも書きましたように、低音の量感がなく、あまり好きではありません。
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