1983年に日本テレビ系列で放送された
倉本 聰脚本、実相寺 昭雄監督
(「ウルトラマン」の監督もしている)
のドラマの音楽。
ドラマは、戦争によって引き裂かれた
ハワイ日系移民家族の姿と、それぞれの想いを描く(Wikipedia)。
ドラマもとても感動的で、涙なしに見られないものだが
(山田太一さんの「異人たちとの夏」を連想した)、
この曲を含む武満さんの劇伴音楽が破格に素晴らしい。
武満徹さんといえば、現代音楽の作曲家として、
自然の音にインスパイアされたような無調的な音楽や、
日本の楽器とオーケストラを融合させた作品が有名だが、
特に後期には、とても美しい調性音楽も作っている。
正直、「ノヴェンバー・ステップス」などの音楽は、
コンセプトやアイデアの素晴らしさを頭ではわかるものの、
音楽として楽しめるか、というと、
メンタルも含む体調次第のところがある。
しかし、この曲や、あるいは、「小さな空」、
谷川俊太郎さんの詩に曲をつけた歌曲、
詩の朗読にオーケストラの伴奏を加えた最晩年の
「系図 : 若い人たちのための音楽詩 : 語りとオーケストラのための」、
などはみな、いつでも楽しめて、元気が出る。
形は違えど、武満さんのこの世界への「愛」、
この宇宙への「郷愁」が感じられる。
そういう意味では、武満さんもまた外星人的で、
実際、その風貌もあいまって、
周囲の人々にもそういうふうに言われていたらしい。
さらに、余談だが、「波の盆」のメインテーマは、
東京オリンピック 2020/2021 の閉会式でも
死者を悼む場面で使われて、少し話題になったのだが、
オリジナルサウンドトラックの CD が廃盤?のため、
中古品がかなり高い値段で取引されている。
ドラマの DVD も同様だ。
いずれも、YouTube で視聴はできるが、
音質、画質はあまり良くはない。
ぜひ、再販売して欲しいものだ。
しかし、このアンサンブル・ノマドの演奏は
オリジナルサウンドトラックよりも
しっとりとしていて好きだ。
メインテーマが現れるところの弦楽器の入りからして、
毎回ため息が出るくらい美しい。
フレーズごとに間をとって進行してゆくのも
静かに寄せて、一旦とまり、そして返ってゆく波の動きを思わせる。
以下は、東京混声合唱団の規範的演奏の
「〇と△のうた」と「小さな空」。
そして、ベトナム戦争への反戦歌だったという
「死んだ男の残したものは」。
◯と△のうた 小さな空 / 武満徹(Toru Takemitsu)
武満徹:「死んだ男の残したものは」【東京混声合唱団】
「波の盆」もそうだが、ウクライナでの戦争を想ってしまう。
石川セリさんや、小室等さんが歌っている CD もある。
「系図」の最近の録音では、「あまちゃん」で有名になった
のんさんが語りをしたものもある。
以下は、最も調性的な最終曲の「とおく」。
ここで使われている主旋律は、武満徹が、ジム・ジャームッシュ監督の映画
「Night On Earth」のために依頼されて作曲したのだが、
映画のテイストに合わずに結局使われなかった、というものらしい。
武満徹:「系図」より とおく
武満徹さんは、この「系図」を完成させた直後に、
残念ながら、2013年に 65歳で亡くなられた。
そのとき、NHK が、立花隆さんの構成した
「武満徹が残したものは」という追悼番組を放送した。
2時間にわたって、世界中の音楽家へのインタビューと
武満さんの楽曲、映像が集められている。
こちらも YouTube で全編を見ることができる。
最後に、立花さんが感極まって泣くところで、
いつも一緒に泣いてしまう。
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