5月5日は夕方から雨の予報。マンション鯉のぼりも今日まで掲げる予定にしていたが、お昼に下げることにした。
「10日間、24時間風雨、太陽光に晒されたのだ。もういいよ。可哀想だ」
見に行けば、殆ど毎回、親子がマンション鯉のぼりを見上げていた。
今日は一番いい泳ぎだね。
鯉のぼり「鯉太郎」を下ろしに行ったら冬の花から夏の花へ植栽植え替えの親子イベントをやっていた。
時が過ぎればお役御免。
マンションの鯉のぼりという宿命か、聞けば、5月5日が過ぎれば捨てるという。
マンション居住者だけでなく、近隣親子にまで思い出のシャッターチャンスを提供していた鯉太郎&コイ美ちゃん。
「役目が終わればポイ捨てか・・・」
鯉のぼりを下ろし、ボロボロの鯉のぼりを労っていたら、一人のこどもが
「あっ!鯉のぼりが無い」と叫んだ。
地面にある鯉のぼりを見つめている。
「ご免よ。鯉のぼりは今日までなんだよ。写真は撮ったの?」
お父さんが
「何枚も撮りました。すごくよかった」と返してくれた。
「また、来年だね」
父親に手を引かれ、その子はいつまでも手を振っていた。
「捨てられないな・・・」
GW前から、ステイホームと陰鬱な雰囲気をばらまかれ、しかし親子に笑顔を与え続けた「鯉太郎」。
尾っぽは枝やロープに引っ掛かり、見るも無残な状態だ。
「尾っぽは少し切って、防虫剤をいれておこう。来年まで管理室に預ければいいさ」
「こういうのが捨てられねぇから昭和臭ぇって言われんだけどな」