メガリス

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いまさら『龍馬伝』第46回「土佐の大勝負」

2016年03月14日 21時20分31秒 | NHK大河ドラマ『龍馬伝』

 殆ど史実無視の作り話なのに何故か話のスジや登場人物の言動が支離滅裂な稀代のアホ大河ファンタジードラマ『龍馬伝』(鈴木圭チーフプロデューサー)

 放送時には観るのを挫折したが、物事を途中で投げ出すのを嫌う性格ゆえ、レンタルDVDで鑑賞を再開。それでもまた挫折しそうだが最終回まで何とか頑張りたい。
 前回第45回「龍馬の休日」をDVDで観て感想みたいなのを書いたのがほぼ1年前の平成27年2月。何とか頑張って今年中に最終回に辿りつきたいがどうなることやら。。。

 第45回「龍馬の休日」で、”薩摩・長州・土佐、この足並みがバラバラでは徳川には勝てん。わしらは一心同体だ”ということを何故か長州の木戸に訴えに行った其の舌の根も乾かぬうちに、今度は、土佐の大殿様=前藩主山内容堂に大政奉還策受け入れを訴えに行くと言い出した、相変わらず言うことがクルクル変わる情緒不安定なNHK龍馬クン。いよいよ地元土佐で大政奉還実現の為に奔走するらしいが、大事なところで人格転換起こすなよ。
 さて、第46回「土佐の大勝負」

----------------番組内容開始

 土佐に入国した龍馬。土佐藩に最新式ミニエー銃1000丁を持参する。
 龍馬は土佐藩参政後藤象二郎の家に迎えられる。龍馬は後藤に頼む。「薩長は(武力倒幕決行を)もう待ってはくれない。大殿様に会わせてくれ。」
 実家に帰った龍馬。後藤象二郎の取り計らいで大殿様に会うつもりだという話を家族にする。「大出世」だと喜ぶ家族。「そういうわけではない」と否定する龍馬。

番組内容終了----------------

 土佐藩におけるNHK龍馬の立場・身分がサッパリ判らない。
 史実の龍馬は土佐海援隊設立時に2度目の脱藩の罪を許され土佐藩士の身分に復しているが、NHK龍馬は「土佐と対等の立場」ということになっているので浪人のままなのだろう。しかし、堂々と土佐に入国し藩参政後藤の家を訪問しているところをみると、現代の「社外取締役」のようなエライ立場に遇されているらしい。NHK龍馬クンは謙遜しているが、確かに「大出世」したように見える。
 だが、この後に龍馬とその友人らが浜辺で「上士」連中に絡まれ龍馬がひざまずいて見せる場面があるが、そこで龍馬は「下士が上士にひざまずく。土佐ではまだこんなバカなことをやっているのか?」と言っている。龍馬はまだ「下士」らしい。支離滅裂、ワケが判らない。

 史実では、この時期、後藤象二郎は京都で大政奉還策運動中であり土佐に居ない。ここで龍馬と会っているというのはフィクション。
 ミニエー銃1000丁をNHK龍馬は土佐藩に献上しようとしているのだが、史実では最初から土佐藩に購入を求め土佐藩要人と交渉のすえ商談を纏めている。

----------------番組内容開始

 山内容堂に龍馬と面会することを懇願する後藤象二郎。
 「今の世の中の流れを作ったのは坂本龍馬です。憎み合う薩長を結びつけ、土佐と薩摩との盟約を取り持ったのは龍馬です。」

番組内容終了----------------

 ”憎み合う薩長を結ぶ付けることを坂本龍馬が思いつき、彼の仲介で両者が手を結んだ”という「薩長提携発案仲介伝説」は作り話
 ”土佐と薩摩との盟約を龍馬が取り持った”という言い方をしたら其れも作り話というしかない。会談の席に龍馬が陪席しており、関係はあったが、彼が「取り持った」とは言い方は無理である。

----------------番組内容開始

 山内容堂と面会する龍馬。
 龍「幕府も藩ももう要りません。この国は新しく生まれ変わらないといけない。それが大政奉還です。」
 容「将軍も大名も消してしまうというのか?」
 龍「はい。武士という身分も恐らく無くなります。」
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 龍「ここに新しい日本の形が書かれてあります」といって一巻の巻物(多分「船中八策」)を差し出す。
 容「答えろ、坂本。武士も大名も無くなったこの世に何が残る?」
 龍「日本人です。異国と同等に渡り合う日本人が残るのです。」

番組内容終了----------------


 「大政奉還」とは徳川家が持つ政治的実権を朝廷から預けられているものと考え其れを返上することを指す。
 大政奉還しても、徳川慶喜が将軍職であることに変わりはない。幕府はともかく、将軍や藩や大名や武士の身分の存否と直接は関係無い。なんでいきなりそんな話に飛躍するのか。支離滅裂、ワケが判らない。 

 「船中八策」は明治になってからの捏造と観る研究者が多い。
 理由1.龍馬本人の自筆も、彼からそれを聞いたとされる長岡謙吉の自筆も信用できる写本も存在しない。
 理由2.龍馬と関わった人たちの同時代の証言や記録等に一切登場しない。土佐海援隊の日誌にさえ言及が無い。なのに、明治になってから坂本の親族だという人物が書いた『阪本龍馬』(「坂」ではなく何故か「阪」)という伝記に突然登場する。
 理由3.後年の龍馬自筆が現存する『八義』(所謂『新政府綱領八策』)よりも、先行するはずの『船中八策』の方が内容が充実している。 

 “当時の人間がみな薩摩人や長州人や土佐人でしかなかったのに、龍馬だけはそういった枠を超越した唯一の「日本人」だった”という「当代唯一日本人伝説」は司馬遼太郎の空想歴史小説『竜馬がゆく』で生まれた作り話に過ぎない。『龍馬伝』は其れを良く考えもせず安易に踏襲してしまったので、物語の無理や破綻の原因の一つになっている。
 さっきも書いたが史実の龍馬は土佐海援隊成立時に2度目の脱藩の罪を赦され土佐藩士の身分に復しており、山内家と土佐藩に御奉公するするつもりでいる。彼は地元土佐への愛着を捨ててはおらず死ぬまで土佐人としての意識を持っていたはずだ。

 史実では、土佐に帰った龍馬は山内容堂とは会見していない。


----------------番組内容開始

 山内容堂は大政奉還建白書を自ら書き、龍馬と再度面会する。
 容「お前の持ってきた鉄砲を9000両で買い上げる。」
 容堂が大政奉還建白書を龍馬に差し出す。
 容「わしがこれを書くと信じていただろう。どうしてだ?」
 龍「大殿様が武市半平太の牢に来たと聞いています。武市さんと同じ地べたに座り、お前は良い家来だったと(言われた)。武市さんは涙を流して喜んでいました。」

番組内容終了----------------

 山内容堂が、武市の牢を訪れて同じ地べたに座り「良い家来だった」と労い、また龍馬の大政奉還策(と言うより国家体制一新策)を簡単に受け入れるような奇特な人物である理由は何なのだろう?そこが全く描かれていない。元々あの時代としては変わった思想を持つ人物だったのだと言うならそういう伏線を張っておくべきだが、他の場面での容堂はそれとは全く正反対の人間として描かれてきている。ずっと欠かさず『龍馬伝』を観てきた私は武市の牢の場面やこの場面をすんなり受け入れることが出来ない。支離滅裂、ワケが判らない。

 (容堂と武市の会見の様子を龍馬は誰から聞いたのだろう?もしかすると、そういう場面があったかもしれないが、私は全然覚えていない。)

 容堂と龍馬が会見する場面での背景音楽。どこかで聞いた覚えがあると思ったら、映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の音楽とソックリ。確認したら両方とも音楽担当は佐藤直紀氏だ。幾ら同じ人の仕事とはいえ、余りにも似たような音楽になるのは如何なものだろうか。

----------------番組内容開始

 海辺で姉乙女と話す龍馬。
 ”来年の春にお龍と蒸気船に乗って一家みんなを迎えにくるので、一緒に世界を見に行こう”という龍馬。

番組内容終了----------------

 蒸気船や渡航費用等のあては全く無いはず。脱藩前の若造時代ならいざ知らず、いい年をしてまだそんな実現性皆無の妄想を抱いているのか?私のようなオジサンには只のアホとしか映らない。もしかすると「いろは丸には鉄砲等を積んでいた」という大ウソで3万両程余計に騙し取れることが決定済である紀州藩からの賠償金を独り占めにしようとしているのかな?
 坂本家御一同様全員で脱藩する気らしいが、次男坊の龍馬の場合と違い坂本家当主(杉本哲太)の脱藩は大罪。そう簡単に口に出せる話ではない。
 僅か数か月後の来年春には全く新しい世の中になっていて従来の「土佐藩」というものが無くなっていれば問題無いわけで、NHK龍馬クンは「大政奉還」によって忽ちそうなると思って言っているのだろう。驚くべきお気楽ノーテンキ男だ。

----------------番組内容開始

 龍馬伝紀行。
「(高知に帰郷した)龍馬は混乱する土佐藩の藩論を纏めようと、五台山吸江庵で藩の重役と会談するなど、大政奉還実現の為に奔走します。」

番組内容終了----------------

 ドラマ部分とは異なる「龍馬伝紀行」内でこういうことを言ったら「フィクション」では済まない。「ウソ」「虚偽」というしかない。
 高知に帰郷した龍馬が土佐藩重役と会見したのは持参した鉄砲1000丁の販売交渉の為だ。
 後藤象二郎が大政奉還運動に関する全権委任を山内容堂から得て京都で「大政奉還実現の為に奔走し」ている最中であり、土佐藩の公式な藩論としては大政奉還策推進ということで既に纏まっている。少なくとも龍馬なんぞが「土佐藩の藩論を纏め」る為にノコノコ出て来る幕など無い。そもそも龍馬という人物にそんな力は無い。
 この頃の龍馬は後藤の運動が成果を上げつつあることを知らず、高知を離れ京都に出て来てから初めて其のことを知り驚くのだ。

 次回第47回「大政奉還」の予告編で龍馬が「新しい日本の夜明けぜよぉぉおお」と叫んでいた。
 ドボンゲーム「坂本龍馬が言いそうなことトップ10」で”これを言ったら終了のNGワード”に選ばれそうな言葉だ。アホくさ。

 あと残り2回。頑張れ、オレ。


 


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