糖質、脂質、タンパク質を「多量栄養素」とよび、ミネラル、ビタミンを「微量栄養素」
とよぶ。
ビタミンやミネラルのような微量栄養素は、それ自体が子不ルギーを供給することはない。
多量栄養素が子不ルギー・源となる。
ただし、それは、微量栄養素が十分に摂取されている場合にかざる。
(そこで、余談だが、多量栄養素をとり入れた食事をろくにとらず、栄養的に十分でないイ
ッスタットーラーメンかなにかを食べて、そのあと、ビタミンのカプセルや錠剤をひとつか
み口に投げこんで、栄養をとったと思っているのは、ナンセンスそのものだということがお
わかりであろう)
生命を守る四〇の鎖
いま、多量”微量”という言葉が出てきたが、それでは、どれをどれくら
れをどれくらい微量にとったらよいのか?
い多量に、どその大体の分量は学問的に決定づけられている。しかし、中には、必要であることはわかつているけれども、その分量がはっきりしていないものや、いまは一応決定されているが、
将来、変更される可能性のあるものなど、いろいろである。 、
しかし、いずれにしてもこれらの栄養素は、「必須栄養素」あるいは「不可欠栄養素」とよ
ばれ、一つでも欠けると、われわれの生命維持は不可能になる。
ウィリアムズ博士は、これら必須栄養素の一つ一つを「環」とみたとき、栄養素とは、こ
の環がつなかってできた鎖のようなものだといっている。
四〇の環をつなぎ合わせた鎖が、たとえどの環の一つでも弱かったら、その鎖はそこから
切れてしまって、鎖は役に立だない。他の三九の環がどんなに強靭であっても、一つの環が
切れたら、それはもう鎖ではない。
それはまた、こういう例えもできるだろう。
ここに四〇枚の板からできあがったタルかおるとする。
四〇枚の板のどれ一枚でも、必要量のレベル以下の部分に穴があると、すべての栄養素は、
そのレベル以下になってしまって、欠乏するのである。
だから、必要量はみなちがうけれども、必須栄養素はそれぞれ必要量のI〇〇八Iセット
をみたさなければならないのである。つまり、タルに穴をあけてはいけないのである。
だが、必須栄養素のすべてを、毎日の食事の中で、必ず、必要量をみたすということは、
容易なことではない。そのためには、なんらかの工夫が必要である。
どうしたらよいのか? それについては、あとでくわしくのべることにしよう。
タンパク質の重要性
さきにのべた通り、炭水化物、脂肪、タンパク質が、「三人栄養素」とよばれているのは御
承知の通りであるが、私の実践栄養学では、タンパク質を主体として構成される。
なぜ、タンパク質を主体とするかというと、理由はかんたんで、われわれの身体の構造を基本的につくつているものが、タンパク質だからである。
鏡を見てみよう。
鏡にうつっている自分の姿から見えるものとして、皮膚、髪の毛、筋肉、瞳など、これらすべて、タンパク質でできているのである。直接、見ることのできない血液やリンパ液、心臓、肺、脳『、神経は、いずれもタンパク質からできているか、あるいは、タンパク質にそれに、生物に必須の化学反応を触媒する酵素も、クンパク質でできている。
食物としてとり入れられたタンパク質は、タンパク消化酵素によって、アミノ酸にまで分解され、小腸の内壁から血液中にとり入れられる。そして「門脈」という名の太い血管を通って、肝臓にたどりつく。
肝臓はそれを、自分自身の組織タンパクに同化する一方、血清タンパクを合成する。あまったアミノ酸はそのまま肝臓をはなれ、血中アミノ酸として全身をめぐる。そしてその部はアミノ基をうばわれて、糖質や脂質となり、あるいは子不ルギー化するのである。
われわれが、牛肉を食べて、その牛肉のタンパク質がそのまま体内にとり入れられて、筋肉になるのではない。牛肉のタンパク質は消化管内で、構成成分であるアミノ酸にまで分解されたのち、体内に吸収されるのである。
生物の体は、これらとり入れたアミノ酸を、自分の持つ遺伝情報(DNA)に従ってつなぎ合わせ、自分固有のタンパク質を合成するのである。だから、虎の肉を食ったからといって、虎のように強い筋肉や心を持つことはできないし、コブラやハブをいくら食ったからと
いって、コブラやハブの力を持つことを期待するのはナンセンスなのである。要するに、虎もコブラも、そのアミノ酸を活用するだけのはなしである。
このように、食品のふくむタンパク質は、アミノ酸にまで分解して血液中に入り、さまざまな形ではたらくのであるが、その分解作用をするのが酵素である。まさに、酵素がなくてははじまらないのだが、その酵素がまたタンパク質なのである。
また、タンパク質の重大なはたらきの中に「抗体」がある。
抗体は血液中の重要なタンパク質で、感染や病気から、われわれを守るはたらきをする。
抗体をふくむ免疫組織というのは、風邪の原因であるウイルスの猛攻撃とか、侵人してく
るバクテリア(細菌)にたいする体の中での防御体制である。
私たちの周囲を、何十億という有害な微生物がとりまいており、抗体はつねにたたかっているのである。
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