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埼玉県比企郡嵐山町地域史誌アーカイブ

寄居町に新名勝地・玉淀が誕生 1931年

2009-02-05 23:07:58 | 大里地方

   寄居新名勝命名せらる
 県下大里郡寄居町は、秩父鉄道と東武鉄道東上線の接続地で、加ふるに最近八高線の通過に依つて、武蔵野の交通要路たる位置を占むるに到ったので、同町有志は町将来の発展を考慮し、荒川沿岸の雑木林を伐り払ひ、正喜橋を中心に約三十丁の遊覧道路を開鑿(かいさく)し、之れに桜並木を仕立て自然の風光に一段の雅致(がち)を発揮せしめ、前囘(かい)秩父の翠岱(すいたい)を背景として、天然の要害たりし鉢形城趾の岩壁を望み、荒川の碧潭(へきたん)に面し眺望頗(すこぶ)る絶佳(ぜっけい)、加ふるに象ヶ鼻(ぞうがはな)の奇岩、宗像(むなかた)三神を祀る神社、霊蹟藤田(ふじた)の聖天等古来有名なものがある。洵(まこと)に清遊好適の一大勝区を成す。此新勝地の命名に就(つい)て本県史蹟名勝天然記念物調査会委員鹽谷俊太郎氏肝煎(きもいり)となり、同会長たる松平本県学務部長に懇請の結果、松平会長は同所を玉淀(たまよど)と命名されたに就て、町民は四月廿九日天長の佳節を卜(ぼく)し、命名披露祝賀会を催し一同感喜して左のビラを配布して、今後一層設備の完成に努むる筈であると云ふ。

     寄居名所が
    天長節のよき日に
      命名されました
     玉淀(たまよど)と
    天長節のめでたい日に
      命名されました。寄居名所が玉淀と。

   玉淀の四季(短歌)
  花吹雪散る花ひらのおもしろく
        うかひ流るる玉淀の春
  山水の流れも清き荒川に
        あゆの香高し夏の玉淀
  なくむしの声は流れて涼風に
        月照り渡るたまよとの秋
  見渡せば鉢形あたり常盤木の
        いろまさり行く冬の玉淀

     『埼玉史談』2巻5号 1931年(昭和6)5月
碧潭(へきたん):青い水をたたえた淵。
常磐木(ときわぎ):松、杉などのように、年中その葉が緑色をしている樹木。常緑樹。冬木。
          玉淀観光協会の観光パンフレット(戦後)
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