先日、牛丼屋に行きました。
わたしがモリモリ食べていたところ、一人のオジサンが入ってきてこう言っているのが聞こえました。
「ギンギンに冷えたビール、ある?」
そりゃあビールは冷やしてあるでしょうが、それが「ギンギン」かどうかというのは、あくまで個人の主観であり、いくら冷えていてもその人がギンギンだと認めない限りギンギンではないのです。
そして、こういうことを言ってくる人と言うのは、得てして
「ギンギンだと言ったのにギンギンではない。なぜならば冷凍庫からではなく冷蔵庫から出てきたからだ」
のように、理路整然と私的でありながら否定しにくいクレームをつけてくるタイプだったりするのよね。
店員さんは、「ギンギンかどうかは分かりませんが・・・。冷蔵庫で冷やしてはあります。ちょっと確認してきますね」といった風に絶妙な責任逃れをして奥に行きました。
私もそうする。
しかし、哀しきかな、牛丼屋。
奥で相談しているところまで丸見えです。
相談がまとまったらしく、瓶ビールを手にして出てくる店員さん。
触って確認してもらうことにしたようです。
「馬鹿野郎、確認させるまでもないだろう、こんなの、ギンギンではない。日本語知ってるか、ギンギンの日本語」
なんてクレームすら想像できますが、私もそうすると思う。
ある種の緊張感が漂います。
おやおや、どうやらギンギンのオジサンは冷蔵庫の冷えで納得したようです。
しかし、恐怖はそれだけではありませんでした。
「とろろを、みっつ。」
ああああーーー、さらなる緊張感が店内を覆います。
牛丼屋で、とろろをみっつ。
ビールのアテに、とろろをみっつ。
一人で、とろろをみっつ。
相容れない!!!!
しかし、お客様の言うことは絶対なのです。
できるだけさりげなく、とろろみっつを確認しなくては。
「とろろみっつですね。」
「あたりまえじゃないか、そう言っているだろう!!!!!!とろろみっつ食っちゃいけねえってのか!!!!!!!」
といったパターンも考えられますが、もしかしたら逆で、何かの聞き間違えであり、とろろをみっつ持っていったら
「牛丼屋でとろろみっつも食うわけねえだろう馬鹿野郎」
もしくは
「とろろでビールが飲めるか馬鹿野郎、しかもみっつだと」
もしくは
「一人でみっつもとろろ食うわけねえだろう馬鹿野郎」
もう、想像だけで震えあがります。
しかも食券制なのに、気付いていない。
もしあれが、とろろみっつで正解だったとして、今度はとろろみっつを小鉢のまま持っていくのか、大きな入れ物にまとめるかで、また悩まなくてはならないだろう。
なにしろとろろみっつが小鉢みっつで出てくるのが当たり前なのか、ひとまとまりにして出てくるのが当たり前なのかは、人に寄るでしょうが、とにかくどちらかが当たり前なのでしょうから。