Law&Orderは18シーズンからは必ず見るようにしています。
「これをみずしてアメリカを語れない」というドラマだからです。
ニューヨークは人種のるつぼであり、ウォール・ストリートに象徴される
ように、経済、財政では世界一です。
金の集まるところ、欲も集まります。
皮膚の色も考え方も違う、いろいろな人の、想像もできないようないろいろな欲が
クモの巣のように絡んで、想像もできないような複雑な世界で、
殺人が起こります。
したがって殺人の動機や背景を追っていくと、底知れない暗闇が待ち受けて
いるようです。
そういう社会で、警察、特に検察は、正義を実現していくわけです。
(今問題になっている日本の検察とは大違いです。)
法廷で裁判官にお任せしていては、正義の実現などあり得ません。
(これも日本と大違いです。裁判員制度の導入で少し変わっていますが)
犯人は何とか処罰を逃れようとして、嘘をつきます。他人に罪をなすりつけようと
します。
そういう中で、自白させようとすると、宥めすかし、脅したりと、あらゆる手段を
使わざるをえません。
どうぞ、ご自由にお話ください、などという態度では供述は得られません。
より大きな犯罪のためには小さな犯罪には目をつむる、すなわち、取引を
するというのは現実的な方法です。
Law&Orderをみていると、大義のために、取引をする、つまりは交渉を
するわけですが、この知恵比べの具体例のオンパレードです。
いかに相手を追い込んでいくか、死力を尽くして活動しているのが
よくわかります。
それは、法廷の活動においても同じです。
ここで大事なことは、優先すべき大義とは何かを間違わないということです。
これを間違うと、逆の結果になってしまいます。
それでも限界はあります。
7話の「ずるい女」(Quit Claim)はいわゆる、嘘のうまい女性が被告人です。
自分の弁護士すら「女性の武器」でうまく利用してしまう、
嘘を暴いたと思うとまた次の嘘(お涙ちょうだいの嘘です)です。
担当検事のマイケル・カッターは何としてもその嘘を暴きたいと
悪戦苦闘するのですが、マッコイも相棒検事のコニーも、
どうすることもできないと途中で降りてしまいます。
真実発見のためにもがき苦しむマイケルに対して、自分が助かるために
協力を弁護士が申し出てきます。
冷静にみれば、嘘の供述だとわかるわけです。
最後にはマイケルも諦めます。
人をだますのがうまい人っていますね。みんなが騙されるというのは、
それだけ嘘がうまいというわけです。
そういう人の嘘を暴くためには、有無を言わさぬ客観的な証拠が必要です。
それには、時期を待つ必要があることがあります。
欲求不満が残る感じがしますが、Law&Orderは、そういうことも含め、
不条理な現実社会を映し出しています。
これが大変勉強になります。
日本の社会はきれいごとの建前の社会です。
しかし、現実の人間は日本人だってアメリカ人や他の国の人と同じです。
実際と建前が全く逆の日本のような社会では、
どろどろした人間社会を裁いたり、律することにはできないので
不正義がはびこることになります。
何が正義かを見極め、それを実現するために、手段を選ばず?
交渉をする、
刑務所に入るかどうかを巡っての交渉ですから、真剣なものにならざるを
得ません。
Law&Orderをみていると、アメリカは交渉社会だということがわかります。
交渉ですからうまくいくこともあればそうでないこともあります。
それでも、何か問題があるかぎり、交渉するしかないわけです。
それは、問題に目をつむらず、何とか解決しなければいけないという考えが
あるからです。
交渉社会というのは、現実に真正面から立ち向かう社会でもあるのです。
これがダイナミズムをうみ、世界の共感を得るのだと思います。
そういう意味でLaw&Orderはおもしろいです。