弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

英語習得の必要性

2011年11月25日 | 生き方・人生

海外ドラマの法廷物は完全に理解したいと思います。

イギリスの新しい王室弁護士(QC)「SILK」の第1シーズン6話
がパイロット的に一挙放映されました。
2011年5月スタートですから、日英同時放映のようなものです。
判事ディードよりずっと新しく、パープル判事の紫の法服や
ハイコートジャッジの赤の法服も、新制度でぐっと簡素化されて
いるのがわかります。
また、今回の法廷はドッグといわれる被告人席はガラスで囲まれて
います(私の知っている法廷です。)。

素人の人や私のような弁護士でも、単に娯楽として楽しむだけなら
翻訳の字幕で十分かもしれません。
しかし、もっと突っ込んで理解しようとすると、字幕では無理です。
聞き取りに集中すると、かなりわかります。
そうするとプロとしても納得できます。

たとえば、シルクの第1話の冒頭に近い部分で、主役のマーサに翌日
2件の刑事事件が配転されます。
マーサは「法廷は同じなの」と聞いていますが、この部分は翻訳されていません。
答えの部分は「薬物事件は最初で10時から、もう一つは保釈審理の後
10時30分から」と訳されていました。
これでは理解できません。
マーサは、段取りを考えているのです。同じ法廷であれば問題はありません。
しかし、法廷が違えば移動しなければならないので、その移動時間を
考えておく必要があるのです。
実際には、一方は1号法廷であり、もう一方は9号法廷と言っていました。
ということは移動時間を考えると20分とか25分しか裁判で使える時間が
ないということになります。ですが、最初の事件ですから、時間通りに
開始するので、時間の計算がしやすいです。
もうひとつの事件は2番目で10時30分からということですから、
その進行状況によって影響をうけるわけです。
しかし、保釈の関係だと、極端に長引くとは考えられないので、
結局、一方の事件はできる限り早く済ませるしかないということになります。
(現実の世界では、1号と9号との法廷の位置関係も影響します。)
英語をそのまま聞き取ることができれば、一瞬にこのような計算ができるのです。
しかし、字幕の訳では、こういうことはわかりません。

実務がわかっていれば、翻訳のさいに、少なくとも「同じ法廷か」という
質問部分と答えの「1号、9号」は絶対に省略してはならないことはわかるはずです。

海外で実務をこなすには、こういう一見些細なことながら、行動のための判断には
絶対に必要な事実を正確に聞き取り、意味を理解することが絶対条件です。
そういう意味でファーストハンドの情報を得、これを現地人と同じレベルで
理解できることが不可欠なわけです。

世界共通語である英語だけは、最低限、習得する必要があるわけです。

また、そもそも概念が違うことがあります。
たとえば「aggravated burglary」ですが、burglaryというのは
イギリスでは「侵入窃盗」のことです。日本の場合は「侵入罪」と
「窃盗罪」の二つからなります。ただ窃盗の手段として侵入があるので
二つの犯罪は牽連犯として量刑にあたって特別な考慮がされるだけです。
それはそれとして、aggravated というのは加重されたという意味ですから、
普通はaggravatedの内容が知りたくなるわけで、実際にそう質問しています。
翻訳では「概要は」となっていました。わからないでもありませんが
どちらかというと「加重て何をしたの」ぐらいがいいかなと思います。
それに対して「torture・・」が答えですが、訳は「暴行」とassaultの翻訳と
なっていました。
しかし、tortureは拷問ですから、かなり意味が違います。
実際aggravated burglaryというのは、最初から、武器とか爆発物などの用具を
もって侵入した場合、もうひとつは、深刻な害をもたらした場合を
いうようです。暴行では深刻な害ではないので、やはり拷問となるのだと
思います。
弁護をするマーサとしては、事前に態様を知っておきたいので、こういうやりとりが
あるのです。

こいうことを理解するにもやはり翻訳をしてもらわなくてもわかることが
最低条件だと思います。
そこで、世界共通語である、英語程度は、わからなければいけないと思うのです。

何十年も英語に接しているにもかかわらず、一向に上達しないことに
最近、絶望的になっています。

公用語を英語にする会社があることについて批判的な意見もありますが、
世界で通用する会社になるためには、常に英語的発想をする場に
身を置くことが一番効果的だと思います。
公用語にするということは単に言葉だけの問題ではなく
考え方も含むと思うからです。