弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

衆院選 1票の格差違憲状態

2011年03月25日 | 政治、経済、社会問題

国会議員の定数を削減することは本当に難しいです。
投票する本人自身の利益と直接関係するからです。
しかしながら、人口が大幅に減少に向っている中で、しかも国の財政事情が
大幅に悪化し、人件費のような固定経費は大幅に削減する必要がある時代に
なっているにもかかわらず、今の定員を維持する正当性は
とっくになくしていると思います。

問題となっている1人別枠ですが、これは小選挙区制に移行するときに、
人口比のみに基づいて定数配分すると、人口の少ないところで急激に定数減となり、
当然、自らの首をしめるような制度改革に、議員さんたちが積極的に賛成するわけはなく、
そこで過渡的な措置として採用されたものです。
最高裁がいうように「時間的な限界があ」ったはずのものです。

しかしながら、いったん制度として定着すると、本来は時限的なものであったとしても、
安定した運用がなされればなされるほど、実際は、削減する方向での
改正は難しくなってくるのです。
議員さんたちは、自分の身分とは直接関係のない、公務員の削減については
バッサリと実行しますが、自分や仲間の首切りになるような制度など
バッサリとできるわけないのです。
このあたりは制度の自己矛盾ですね。

これまで、何度も最高裁まで持ち込まれていたのですが、10年以上経って、
違憲状態と判断されることになったのです。
そして、「できるだけ速やかに1人別枠方式を廃止し、投票価値平等の要請に
かなう立法措置を講ずる必要がある」としました。

しかしながら、議員さんの運命を決める法律という特殊性を考慮すると、
一気に違憲と判断すべきだったかもしれません。
2人の裁判官は「違憲」とはっきり認めました。
一人の裁判官は「過去の最高裁判決でも制度に関する疑問は指摘されていたのに
見直しに向けた検討の着手にさえ至っておらず、合理的是正期間を過ぎ」たからだと
いうのは、このような議員心理を見透かした上での判断です。
だからこそ、もう一人の裁判官の「判決主文で選挙の違法を宣言すべきだ」という
のは現実的な判断だと思います。
このくらいしないと、国会は動かないのではないかと思います。
「国会が速やかに同方式を廃止して立法措置を講じない場合、将来の訴訟で
選挙を無効にすることがある」というものもっともです。
これくらい追い込まないと国会は動かないのではと私は悲観的に思っています。

これを書きながら、ふと思ったのは、最近の政治主導も、案外、議員の延命措置
が狙いかもしれません。
これだけやることがあるじゃないか、議員は足りないことがあっても
あまっていることはない、などというためです。
ちょっと裏を読みすぎでしょうか。
公務員が本来やるべき仕事を副大臣などというわけのわからない人たちが取り上げ
るのも、こういう文脈で読むと意外にすっきり理解できるとおもいません?

しかし、最近の国会議員の質の低下をみると、兎に角頭を揃えることで
精一杯という感じです。
これは明らかに多すぎるからです。

焼け太りとならないような、真の改革をそろそろすべきときです。