具体的なエピソードについてではなく、弁護士としての戦い方の姿勢に
ついて、同じ弁護士として参考になることがあります。
脳動脈瘤のせいか、幻覚をみるようになり、あるいは未来を予言するようになり、
法廷で急に歌ったり、急に変な行動にでるイーライという弁護士が主役です。
ですが、とても優秀なんです。
一つの例は、法廷で歌を歌ったということで、弁護士の適性が疑われました。
脳動脈瘤が原因などということはできません。手術は危険でできないのです。
死の危険が常にあるのです。
そういう弁護士に依頼したいとは普通は思わないだろうということで、隠していたのです。
弁護をお義理で引き受けてくれたボス弁にも内緒です。
ところが、訴訟の過程でばれてしまいます。
案の上、そこを突かれます。激しく攻撃されます。
重要な事実を隠していたことがわかり、ボス弁も怒りでいっぱいです。
ですが、その瞬間に、勝てる道(争い方)に気がついたのです。
ボス弁も極めて優秀な弁護士なのです。
最大の弱点と思っていたところが、逆に、攻撃の武器になることに、激しく糾弾されて
悟ったのですね。
本人は、この病気がわかってから弱い者のための弁護をするようになったのです
(それまでは金持ち相手の仕事)。
優秀だし、やる気満々なのに、ただ病気でときどき奇行があるからといって、
弁護士の仕事を取り上げるなんて、酷いと思うわけです。
おそらく誰もそう思うでしょう。病気が重症であればあれほど、同情もかうでしょう。
勝てる事実はわかったのです。
ただ、それだけでは勝てません。勝てる理論構成に料理しなければなりません。
勝ちました。どう料理をしたのでしょうか?
その主張とは、障害者差別法に違反するというものです。
数々の奇行は脳動脈瘤という不治の病気が原因である。
脳動脈瘤という不治の病気を持っているものは障害者である。
その障害を理由に、弁護士として不適格と決めつけるのは、差別というわけです。
どうです。これなら勝てることはわかりますよね。
わかってみるとなんということもないようにみえますが、
勝てる理論構成をみつけられるかは、本当に腕がよくないと難しいのです。
訴訟というのは、そういう風にして戦うものなんです。ただし、こういう戦い方が
できるのはいうまでもなく、アメリカでも極めて優秀な弁護士だったからなんです。
もうひとつは、仕組まれたときです。いわゆる嵌められたときです。
こういうときは、不可能にちかいです。
もちろん「仕組まれたもの」ということが証明できればいいですが、仕組まれた
方は、何の疑いもなく踊らされていたわけですから、証拠となるようなものに
気がつきません。
ですから、形勢が不利なことは、いたいほどわかります。
これは優秀だとして紹介された医者が、実際は欠陥医師だったようなのです。
欠陥医師であり、それを押しつけたということを証明しなければいけないわけです。
ところが、法廷に出るのは優秀な医者だったという証拠ばかりです。
ところが、イーライはやり手ですから、法廷でのやり取りを通して、
まだ負けたわけではない、勝てるチャンスがあるというのです。
そして、やっぱり勝ちました。
巧妙な証人尋問技術です。もちろん、ねりにねって作戦をたて準備してあったのです。
そして、気が付いたら言わされていたというわけです。
本当に証人尋問て大事なのです。
ただ漫然と聞くだけではだめなんです。
狙ったところにストンと落ちてくれると、ホント爽快です。
これもイーライのように超優秀な弁護士ならできることです。
ということで、優秀な弁護士とは、の弁護実務の勉強になっています。
こういうふうに鑑賞できるのは、実はこのシリーズ2回目だからなんです。
去年は、ミュージカル仕立てのような、ちょっとおふざけの弁護士ものと軽くみていたのです。
同じものを2回目となると、筋もすぐに思い出しますので、意外性がありません。
そのかわり、ちょっと冷静になって分析的に見てしまうことになるようです。
それはそれで、結構おもしろいです。
イーライ役のジョニー・リー・ミラーですが、元アンジェリーナ・ジョリーの夫なんですって。
明らかにミスマッチのような気がします。
なんか言葉で表現できませんが、ちょっと変わったタイプです。もちろん見かけがですが。
イギリス人とわかって、少々納得したかも?