二人は、その位置状態のまま、緊張感いっぱいの空気でピリピリさせていた。その緊張感漂う空気のまま、静かに時が流れていく。
カール「・・・・今日は、満月の夜だ・・・これが何を意味するか分かるか・・・・?」
レイ「・・・・さあ・・・・♪?」
この後、カールは再び不敵な笑みを浮かべる・・・・。
カール「・・・・それはな・・・・」
こんなセリフを吐きながら、カールの表情が、不敵な笑みを浮かべつつも、攻撃的なものとなる。そして・・・・。
カール「圧倒的に俺が有利ってことだ。そして・・・・」
こう言いながら、カールは、自らの聖騎士団専用の剣を抜く。それに応じるかのように、レイも同じく聖騎士団から支給された同じ型の剣を鞘から抜く・・・・。
カール「今日が!!貴様の命日ってことだ!」
こんなセリフを吐きながら、カールは後ろ向いたままのレイに対して、左手の掌から満月によって強化された、『月光』属性の気功術の光球を複数放出しながら、レイに向かって、ジャンプして間合いを急速に詰めようとする。それに対して、レイは、自分から見て前方に跳び、急速に間合いを詰められないようにしつつ後ろに向き、それと同時にカールと同じように左手の掌から『光』属性の気功術による光球を複数放ち、カールの『月光』属性の気功術による光球を一つ残らず正確に打ち落とす。しかし、カールは剣撃によってレイを仕留めようとするが、レイもその斬撃に対して、自らの剣で応じ、カール斬撃を悉く防いでいく・・・・。
カール(・・・・一筋縄にはいかないか・・・流石は、聖騎士団の元ナンバー2・・・・)
そのままの状態で、レイとカールの二人は、着地し、その後も、剣で互角の戦いを繰り広げる・・・・。
レイ(・・・・なかなかやるわね・・・・)
こうして互角の戦いを繰り広げていくものの、互角だった剣による戦いが、少しずつ少しずつ、レイが押し始める。そして・・・・。
レイ「はあ~!!!!」
次の瞬間、レイの斬撃が、カールの胸元を掠る・・・・。
カール「!!くっ!!!!」
こんな声が漏れた後、カールは、舌打ちをし、一旦間合いを取ろうと後方に跳ぶがするが、レイは、それを追って前方のカールを追って、追い打ちをかけるように跳び、剣撃戦を続ける・・・・。
カール「くそっ!!!!」
レイ「逃がさないよ」
そんなレイに対して、カールは、右手に持った剣で、レイとの鍔迫り合いのに持ち込んで、左手の掌の方に気功術の気を集める・・・・。
レイ「!?ヤバッ!!!!」
こんなカールの様子を見て、今度はレイの方が、カールとの間に距離を空け、間合いを取ろうとする。そんなレイに対して、カールは左手の掌に集めた『月光』属性の気を全て、光砲として放つ・・・・。
レイ「くっ!!」
レイは、跳んだ状態のまま咄嗟に、自らの『光』属性の気功術で、光の壁を作り、カールの『月光』属性の光砲を防ごうとする・・・・。
レイ「・・・・もう・・・ダメ・・・・」
そんな、レイの光の壁もたっぷり、気を集める余裕のある上に、『月光』属性の気功術の使い手の特徴である、月の満ち欠けによって、効果の強さが変わる特性なのだが、今夜の満月の状態で、強さMAXである光砲は威力を弱める事はできたものの、全ては防げず、真面に食らってしまった・・・・。
カール「そのまま!!叩かせてもらうぞ!!!!」
こう言いながら、カールは、『月光』属性の気をため、再び光砲を放つ。剣での勝負では勝ち目がないのと、今夜は満月のため、自分が有利と判断したためである。だがレイは、カールのいる方向に向かって、そんな『月光』属性の気功術の光砲ギリギリ上を跳び越して、あっという間に、カールのすぐ上にいた、左手には『光』属性の気功術を集めている状態で・・・・。
カール「!?しまった!!!!」
レイ「隙だらけね♪♪」
この後、レイは、左手の掌にためた、『光』属性の気による光砲を攻撃後で完全無防備なカールに向かって放ち、真面に食らう・・・・。
カール「ぐはああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
この攻撃後、そんなカールの上をも通り越し、カールの後方に着地し、攻撃を食らったカールの方に向きなおる・・・・。
レイ「・・・・残念ね・・・満月ってだけで・・・私は仕留められないわよ・・・・」
この後、カールは、関心など全くしてない様子で、ふざけて拍手する・・・・。
カール「いやぁ~、目出度い。今だにそう思っているとはな・・・・」
レイ「事実、あなたの方がダメージはでかい・・・・」
この後、カールは、大声で笑う・・・・。
カール「今夜は満月なんだ!!必ず逆転するね!!!!」
これを聞いて、レイは、不敵な笑みを浮かべる・・・・。
レイ「それはどうかしら♪」
カール「やってみれば分かるさ」
レイ「それは楽しみね♪」
この後、レイとカールは、対峙するように立っていて、周囲は緊迫した空気に包まれていた・・・・。
ここは、あの『聖騎士団』への登竜門とも呼ばれている、グレア帝国の『筆頭機動戦士隊』の訓練所。ここでは様々な訓練のできるのだが、そんなここで、ひたすら様々な筋トレを黙々としている男がいた。
筆頭機動戦士隊隊員「よおっ!!バダス!」
筋トレしている男「!?何ッスか??サダさん」
サダ「歩兵部隊の者が顔出してるぞ」
バダス「!??歩兵部隊????」
サダ「ああっ何でも、お前に頼みごとがあるそうだ」
これを聞いて、バダスは、筋トレをやめる。
バダス「?頼みごと??俺に????」
サダ「そうだ、話だけでも聞いてみるか?」
これを聞いて、バダスは、何となくダルそうに立ち上がる・・・・。
バダス「・・・・とりあえずな・・・・」
サダ「じゃっ!こっちだ」
これでも、バダスはダルそうである・・・・。
バダス「・・・・へいへい・・・・」
バダスは、ダルそうながらも、サダに付いて行く・・・・。そのまま進んで行くと、一人の歩兵部隊員の姿が目に入った。どうやら話を持ちかけたのは、この歩兵部隊員らしい・・・・。
サダ「やあっ!マルクス。彼がバダスだ」
歩兵部隊員「マルクスです!!よろしくお願いします!!!!」
バダス「・・・・バダスです・・・よろしくお願いします・・・・」
こうして、マルクスとバダスは、互いに頭を下げた・・・・。
バダス「・・・・マルクス君だっけ?・・・歩兵部隊のお前が、僕に何の用なんだ・・・・??」
マルクス「はいっ!!!!実は、とある者らを討伐するのに協力して欲しいのです」
バダス「・・・・ほおぉ~・・・・」
マルクス「・・・・引き受けて・・・頂けますか・・・・??」
バダス「・・・・それは、どんな奴なんだ・・・・??」
これを聞いて、歩兵部隊員のマルクスは、『しまった!!』って感じの表情になる・・・・。
マルクス「これは!!失礼を!・・・・実は、そいつらは三人なのです」
バダス「?三人??」
マルクス「はい、一人は、我が国が滅ぼしたレアル王国のナンバーワン剣闘士で、元レアル王国王の右腕とも言えるルイス・・・・」
バダス「・・・・あぁ~、レアル王国の生き残りか・・・だがっそいつらは、亡国王女ミリアを含めた二人組じゃなかったか??・・・・」
マルクス「・・・・実は最近、もう一人加わったんです・・・・」
バダス「!?まだ生き残りがいたのか!??」
バダスは驚きを隠せなかった・・・・。
マルクス「・・・・いえっ・・・それは違います・・・・」
バダス「?じゃあ、誰だ??」
この後、マルクスは、一息つく・・・・。
マルクス「・・・・そいつは、最近まで『ヴァレック』近辺で生息していた、通称『黒い悪魔』と呼ばれていた鎧型獣人です。つまり、人ではありません・・・・」
これを聞いて、バダスは、つい苦笑してしまう・・・・。
バダス「・・・・なるほど・・・鎧型獣人・・・通称『黒い悪魔』・・・か・・・・」
マルクス「・・・・引き受けて・・・頂けますか・・・・?」
これを聞いて、バダスは不敵な笑みを浮かべる・・・・。
バダス「・・・・ああっ♪・・・面白そうだな♪・・・・」
これを聞いて、マルクスは、歓喜の表情を浮かべる・・・・。
マルクス「ありがとうございます!!!!」
こう言いながら、マルクスは、勢い良く、深々と頭を下げる・・・・。
バダス「・・・・さてっと・・・・」
こう言いながら、バダスは、歩き始める・・・・。
マルクス「?どちらへ??」
バダス「・・・・もう一人、仲間に声かけてくる・・・・」
これを聞いて、マルクスは更に、歓喜の表情を浮かべ、再び深々と、頭を下げる・・・・。
マルクス「本当に!!!!ありがとうございます!!」
バダス「・・・・いいよいいよ・・・・」
こう言いながら、バダスは、歩きながら、適当に右手を振って応えた・・・・。
ここは、目的地である『ミミアート』付近の夜の森の中、この森の中で、カズヤ、ミリア、ルイスの三人は、取り囲んだ真ん中の焚き火で、ご飯を食べていた。今日は、シチューである・・・・。
ミリア「さすがルイスだね♪♪」
ルイス「お口に合って良かったです。どうです?カズヤさんの方は」
カズヤ「・・・・うまいな・・・・」
ルイス「それは良かった!!」
ミリア「おいしいよねぇ~♪ルイスの料理♪♪」
カズヤ「・・・・ああ・・・こんなうまいもの初めて食べたな・・・・」
ルイス「いやぁ~♪お世辞でも嬉しいなぁ~♪♪」
カズヤ「いや!!いや!いや、お世辞じゃねぇ~よ!」
ルイス「それなら♪なおさら♪♪」
こうして、楽しい時が過ぎていき、カズヤは、初めて、大勢での食事は楽しいものだと知ったのであった・・・・。
再び場面は、レイとカールが戦っている夜の草原へ。レイとカールは、常に移動しながら、左手から放つ光球で牽制し合っていた・・・・。
レイ(・・・・気功術による攻撃では、満月の夜だと、『月光』属性の向こうが有利・・・どうにか隙を作らないと・・・・)
カール(満月の夜だと、満月の力を借りている、こっちが有利なんだ。このまま、相手を削り続けるも良し、向こうが焦って、隙をつくも良し)
いくら、レイが、剣術が得意でも、気功術が強くても、このフィールドでは、やはり、精神的余裕があるのは、カールであった・・・・。