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ヤマハSRエンジン その2 クラッチレリーズ探求とその他諸々

2010年02月14日 | SR400 SR500探求

↑泥や油でバラし始めはこのように脂ぎった感じ。でもこのエンジンはオーナー自身かなり奇麗に手入れをしていた為、遥かに状態が良く、もっと凄まじい状態のエンジンが大半。そこから長い長い下準備=洗浄作業は始まる。前回の記事とは順番が逆になってしまったが、これが作業開始直後の状態。

きっと依頼をすれば、さっくり部品を交換して作業完了すると思ったら大間違い。ひたすら洗ったり磨いたり、同じ作業でやっていると身体の負担も何気に大きい。もし何かしら作業を学んでみたいと思うなら、全ての作業において、ここから始まると言っても過言ではない。これまでにも自分のエンジンを自分で奇麗にしてみたいと言う方がいたので、何度か洗浄体験して頂いた事もあるけれど、皆、丸一日持ちませんでした。やっぱり任せますって・・・後半はバテバテ、ペースも落ちまくり。
でもメカニックにはそんな事を言ってる時間はありませぬ。

確かにブラスト等で処理すれば、瞬時に奇麗に出来るけれど、やっぱり何年間も接してきた風合いは捨てられないってそんな意見も多いのが事実。もちろんコスト的にもね。


↑前回記事で掲載し忘れたが、この部品、どこのどの部品だったか判ったら凄い!
この部品はもともと、ミッションの一番外側=ケース側(ベアリング)のシム。画像では二つの部品に見えるかもしれないがもとは単品のワッシャー=シムである。新車時から六万キロオーバーにての状態。
まるでシムの意味を成していない。初期の選定時に0.3mmシムを使用したのであろうか?それとも0.5mmシム?既にこの状態では判別不能。でもこのような状態になってしまった例は他でも確認しています。うーむ、何故でしょう。初期のクリアランス詰め過ぎ?それともシム自身の問題?このような問題もあったので、ミッションとケース間の調整には少々気を使いました。
うかつに素手じゃ触れません。下手したら、スパッと皮膚が切れちゃいます。


↑そしてお次はこの部品。今日の本題。きっと探求者ならば、この部品あたりは判るはず。例のアソコ=ウィークポイントです。そう、クラッチレリーズ。SR系のエンジンのある種ウィークポイント。画像では少し黒く映ってしまったが削れている所が確認出来る。走行距離が2~3万キロあたりになってくると決まってクラッチ切れが悪くなったり、エラくクラッチレバーの動作が悪くなってきたり・・・

はたまたある所まではクラッチレバーがフリーで動くけれど、一気に引っかかる感じになってズコッと一気に切れてしまったり、本当にシビアにクラッチをコントロールしながら走りたいステージ(峠道やワィンディング、はたまたスポーツ走行など)ではとても困る。

ある程度クラッチワイヤー注油をしていたりすればかなり動きは良いのだが、クラッチミートの感覚がどうにも掴みづらかったり、ほんのちょっとで一気にクラッチが離れてしまったり、半クラもぎこちなく、だけど強い押し出しトルクでギクシャク。

うーん、過走行したSRのあのクラッチの感触はどうにも好きにはなれない。
別のマシンで、油圧クラッチだったり、エンジン真横に直押しレリーズが装備されている車輛(XSやGX、その他多くのマルチエンジン等)であれば、その箇所にはスチールボール等も入っていてかなり感触も良いのだが、このただ横からグリグリ強制的に押し当てるタイプだと、遣れた状態になればなるほど、なんとなく削り押す感触が手でも判るようなあの感じ。うーむ、なんとかならないのだろうか。SRXやRZ-R等もこのような方式。余談になるがRZ-R系の場合、このクラッチの調整は右クランクケースカバーを開けての調整になるのでいつも、なんで?という気持ちになってしまう。

クラッチレバーのアジャスターで遊び調整が出来なくなってきた時、クラッチワイヤーの伸びの問題だけでは無く、このレリーズ痩せも疑わなければいけない。調整も限界になったらいよいよ新品交換。しかしこの部品、現在の価格は7000円程する。確かに複雑な形状を見れば納得ではあるが、えーっ、たったこれだけの減りでもう交換??そんな気分に違いない。

という訳で、今回はオーナーの了解を得て肉盛溶接し、面研修復。それと同時に内部の長いプッシュロッドの当たり面も長さを事前にチェックしておいてから鏡面研磨しフリクションを減らす。
肉盛溶接をすれば、同時にその部分の硬度は上がるので、中古部品再利用でも寿命が延ばせるのではないか?という所まで目論みつつ長い長い耐久テストの始まり。もし結果が駄目だったとしても、それならそれで当初から交換する予定だったと思えば問題無し。

クラッチが重い重いと良く言われるこのSRエンジンではあるが、このあたりをしっかり対策して組上げれば、グレイト!
かなり軽いじゃないですか。クラッチが切れる感触もレバーを握ればスーッと連続的な感触。

出力強化してあるエンジンなので、クラッチ板への負担や焼対策を考慮すればクラッチスプリングをそのままに動作を軽く出来るのでベストな選択&作業ではないだろうか。セミ油圧クラッチ化させていたりしても、結局の所、このレリーズ関連の問題を解消していなければスムーズなクラッチミートには繋がらないという事を忘れてはならない。

さらに話は続き、では何故、そこが重要なのか?という事であるが、レリーズが減っていけば行く程、僅かなクラッチレバーの移動でクラッチ自体のミートポイントを合わせる事がシビアになってきて、だがしかし、ライダー自身はその微妙な引きの中での調整を覚える。そうするとますますレリーズの単一箇所が酷使されそこがさらに削れる。その繰り返しで悪化していく。
そうなると引く力も大きくなってくるので、クラッチワイヤーのコンディションが良い状態であったとしても、それを受け止める力はクラッチレバーのピボット部に集中しクラッチレバーを固定するボルト穴が楕円に減り始めてグラグラ、最終的にはハンドルにクラッチレバーが間もなく接する周辺でしかクラッチが切れなくなってくるという悪循環に陥る。

エンジンを大幅に出力強化し、同時に強化クラッチスプリング等も組み込んである場合、どのバイクにも言える事なのだが、クラッチ操作系はしっかり見直さなくてはいけない。それを怠るとあっという間にクラッチレバーの支持部がグラグラになったり、ワイヤーが切れやすかったり、最悪の結果に繋がる。

さらにそのままクラッチが切りづらい状態になってくれば、当然ニュートラルにも入りづらくなってくる。
だがしかし、走行中は回転さえ合わせてしまえば変速は可能なので、何やらごまかしつつ走行出来ていても、やっぱり減速していくとニュートラルには入りにくくなり、より乗りにくくなる。

そうなってきても、大抵の場合、どのような状態になっているか乗り手にはわからないケースが大半なので、最近なんだか変速がしづらいとか、ニュートラルに入りにくいという問題が生じてくる。(もちろん全てがこのような原因では無く、ミッション関連に問題がある場合も有り)

最悪の場合、それすらも考えず、ギアチェンジが固いからと、チェンジペダルをガンガン踏み続けた挙げ句に、シフトシャフトがガタガタで齧りまくり、おまけにシフトフォークやその周辺も不必要な力が入力され自ら破壊の道へと突き進む事になるのである。

減ってしまったクラッチレリーズ、コストを下げつつ直せたらいいなぁ~って思う方は、ご相談下さい。
単品部品の修理代は現在の所、新品部品の半額よりも、もう少し飛び出すくらいです。
この部品だけ外して送ってもらえたら、ばっちりokです。もちろん車輛ごとでも別途にて対応します。


↑肉盛溶接後面研中。溶接した箇所はその他の所よりも削りにくいのでちょっと整形に手が掛かります。
画像ではわかりにくいが、もう少し研磨して面を整えて最後に磨きあげたら完成~
このエンジンをオーバーホールしたオーナーも車輛完成後のクラッチの結果に満足していただけました。
これぞまさに探求修理!

ちなみにXS&GX250/400系マシンのオーナーでクラッチが重いと悩んでいるならば、それに対してもばっちり秘策はあるのだ。困ったらガレージUCGホットラインまでどうぞ。

もう峠やロングツーリングで左腕パンパン病とはおさらばだ。
いや~今回も長く書きすぎた。(所要1時間半)

理由やら状態やら、いろいろと言葉で伝えるのはとても難しい、だがしかし、それを言葉で伝える事に探求の価値があり、ロマンがあり、Soulがぎっしり詰まっている。

自分自身でまさにバイク自身を操作する所だから、どんなバイクに乗っていたとしても本当に気を配ってほしい箇所なのである。


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