東京 新宿 バイク修理 「探求」 ガレージUCGブログ

日々GARAGE-UCGで如何なる修理や探求が行われ、どんなガレージライフを過ごしているのだろうか?

ヤマハSDR ヘッドガスケット吹き抜け

2010年02月23日 | ガレージUCG探求作業

画像からだと問題発生箇所、ちょっとわかりづらいかな?今回は少し前に行った作業の話。

ガレージUCGは創業初期は品川区の西大井にあり、約二~三坪程度のとても小さなガレージでした。
そこから町工場で有名な大田区の糀谷に移り、糀谷ガレージからずっとお付き合いさせて頂いてる方のマシン。

このマシン=SDRは今でも根強い人気があり、ガレージでもこれまで何台もの作業をしてきております。
どうしても2ストローク車なので、長く乗れば何かしらエンジントラブルが発生し、開ける事もしばしば。

オーナーの方が譲り受けて乗り始めた当初から、このマシンは何かしら不具合を抱えていて、開けてみれば一目瞭然。組まれるべき部品が無かったり、うまく組まれていなかったり、おそらくはそんな譲り受ける前の仕業がいろいろと悪さを働いてました。

ある時に冷却水をラジエターキャップを外してチェックしてみれば、かなりオイリーな状態。
これはどこかシールが抜けてますね~という事でまず一度冷却水を交換し、エア抜き作業をする為にラジエターキャップを開けたままエンジン始動させ、軽くレーシングしてみると、その回転に連動したかのようにゴボッゴボッとオイリーな物体Xと共に水が噴き出します。しかもその瞬間に、排気音も微妙に雑音が混じる感じ。

どうやらヘッドガスケットが抜けている様子。他の箇所にダメージが発生していないかを確認しつつエンジン腰上をチェックし、ガスケット類を交換しトラブルは解消。

冷却水もこれでもうゴボゴボ吹き出したりしません。コスト的にも最悪のエンジンブローは避けられたので、かなりコストダウンに繋がったと思います。長距離走らせたりしてたのに、エンジンが致命的なダメージを受けなくて本当に良かった。

あれ?今日の走行はなんか、いつもと少し違う感じがする?何かおかしいな~ちょっとUCGに寄ってみようかな。

症状にも因りますが、大半のトラブルや異常には何らかの原因がある。
逆に考えれば、どうして現在生じているトラブルに至ってしまったのか?その理由が明確に判断出来れば、より確実な修理が可能となる。

カワサキ ZZR1400に乗る学生

2010年02月18日 | UC事総論

最新型のKawasaki ZZR1400がガレージに入庫。新車のこのマシン、なんとフレームナンバーは1番なのである。
オーナーの彼はまだ学ランを着ていた高校生の頃からガレージに顔を出してくれ、現在は大学生。
(自ら顔出しデビューを願い出たので今回ブログデビュー)

ミニバイクで一緒にサーキットに練習しにいったりする仲でもあります。
何気にアツいテイストを持つ、やる気に満ちあふれたナイスガイなのだ。この御時世に高校生の頃からバイクが好きっていうのは珍しい事なのかもしれない。

今回はUCG自身の学生時代の事を少し振り返りつつ、また久々に総論をお伝えしたい。
おいら=UCGが大学生だった頃は、譲り受けたボロボロのヤマハXS号で、まだ原付以外は免許も無く、それ以前に調子が悪くてエンジンすら掛からない状況だったというのに、高価な大排気量マシンに乗れるなんて羨ましい~とは言いつつも、彼もいきなりこのバイクに乗り始めた訳ではなく、格安バイクを手に入れつつステップアップして行ったのである。

バイク大好きな彼は、学生ならではの特権を生かして全国をバイクで旅してます。
そんな彼なので、慣らし運転もあっという間に終わらせて、えっ?もうそんなに走っちゃったの?という程に短い期間でオイル交換やら、その他いろいろなメニュー&作業をしにガレージに訪れます。寒い中ガレージUCGでの洗車も、もう日課だね。

私=UCGの周りの仲間は皆一様に口にする共通の合い言葉が有る。

「貧乏人ほど新車に乗れ。」

この言葉に間違いは無い。だって全ての部品が新品なのだから。タイヤだってエンジンだって・・・
消耗品が消耗していないのだ。
このメッセージ、私自身、このブログを熟読して下さる方々に伝えるつもりは無い。
だってそれぞれに愛するバイクがあるのだから。そして愛し方も皆違う。乗るのが好き、直すのが好き、眺めるのが好き、音が好き。鉄道マニアも同様。音楽も好きなジャンルの違いを見ればまた同様。

でも、過去の自分に「だけ」はその言葉を捧げたい。
おいらの人生は、我が愛しすぎてしまったXS号によって捩じ曲げられ、どう考えても遠回りしすぎた挙げ句に、散財しまくり、とてつもなく、ええ、それはもう結果として大型バイクが新車で購入出来る以上になってしまったから。

かつての学生時代のUCGにタイムスリップして出会えるならば、真っ先に言いたい。
お前、自分のこの先の人生を、その動かないバイクによって変えてしまうのか?と・・・
だけど、きっと学生時代の若いUCGには、そんな事は言ってもむだむだむだむだむだ・・・・
その事だけは教えてあげたかった。

そうは言っても、現在販売されている各メーカーの新車ラインナップ見ても、うーむ、欲しいバイクが見つからない。

自分が学生の頃は、自転車で東北地方を何百キロもキャンプ装備満載で走り続けたり、原付で佐渡島に行ったり(XS日記参照)バイク修理に時間を散々費やしたり、それはもう十分すぎる程にいろんな事を堪能したんだっけ。

今でもいろんなところをほっつき歩いたり、旅をするのは最高に楽しい。
国内であれ、海外であれ、初めて行く所への旅ほど、ワクワクする事は無いだろう。

しかし実は移動手段を変えて同じ目的地へ向かう旅も実は非常に面白い。
歩いて周り、自転車を漕ぎ、原付、そしてバイク、自動車、鉄道、飛行機・・・いずれの手段でも広がる視界は違う。
歩く中での目線や発見、自転車ならではの人力での移動速度、風を感じるバイクならではの速度、そしてまるで映像を見続けるかのような自動車の運転。各々に目的地が同じだったとしても流れる時間や空気、雰囲気は別世界であり、各々に新たな発見が見いだせる。

きっと学生の彼にとって、まだまだ知らないワールドは未来に向けて無尽蔵に広がっている。
さて、次はどこへ行こうか?どうやって行こうか?何で行こうか??

学生時代、たまたま譲り受けた興味も存在すらも知らなかったXS号との出会いのお陰で、どういう訳かこの世界で素晴らしい人々に出会い、メカニックとして全日本選手権のステージにプロ契約として立つ事が出来た事も、人生における一つの旅と言えよう。時代が不景気の波に押されていた事が残念です。

このバイクに乗る彼にはこの先、どんな人生の旅が広がり行くのだろう。

ヤマハSRエンジン その2 クラッチレリーズ探求とその他諸々

2010年02月14日 | SR400 SR500探求

↑泥や油でバラし始めはこのように脂ぎった感じ。でもこのエンジンはオーナー自身かなり奇麗に手入れをしていた為、遥かに状態が良く、もっと凄まじい状態のエンジンが大半。そこから長い長い下準備=洗浄作業は始まる。前回の記事とは順番が逆になってしまったが、これが作業開始直後の状態。

きっと依頼をすれば、さっくり部品を交換して作業完了すると思ったら大間違い。ひたすら洗ったり磨いたり、同じ作業でやっていると身体の負担も何気に大きい。もし何かしら作業を学んでみたいと思うなら、全ての作業において、ここから始まると言っても過言ではない。これまでにも自分のエンジンを自分で奇麗にしてみたいと言う方がいたので、何度か洗浄体験して頂いた事もあるけれど、皆、丸一日持ちませんでした。やっぱり任せますって・・・後半はバテバテ、ペースも落ちまくり。
でもメカニックにはそんな事を言ってる時間はありませぬ。

確かにブラスト等で処理すれば、瞬時に奇麗に出来るけれど、やっぱり何年間も接してきた風合いは捨てられないってそんな意見も多いのが事実。もちろんコスト的にもね。


↑前回記事で掲載し忘れたが、この部品、どこのどの部品だったか判ったら凄い!
この部品はもともと、ミッションの一番外側=ケース側(ベアリング)のシム。画像では二つの部品に見えるかもしれないがもとは単品のワッシャー=シムである。新車時から六万キロオーバーにての状態。
まるでシムの意味を成していない。初期の選定時に0.3mmシムを使用したのであろうか?それとも0.5mmシム?既にこの状態では判別不能。でもこのような状態になってしまった例は他でも確認しています。うーむ、何故でしょう。初期のクリアランス詰め過ぎ?それともシム自身の問題?このような問題もあったので、ミッションとケース間の調整には少々気を使いました。
うかつに素手じゃ触れません。下手したら、スパッと皮膚が切れちゃいます。


↑そしてお次はこの部品。今日の本題。きっと探求者ならば、この部品あたりは判るはず。例のアソコ=ウィークポイントです。そう、クラッチレリーズ。SR系のエンジンのある種ウィークポイント。画像では少し黒く映ってしまったが削れている所が確認出来る。走行距離が2~3万キロあたりになってくると決まってクラッチ切れが悪くなったり、エラくクラッチレバーの動作が悪くなってきたり・・・

はたまたある所まではクラッチレバーがフリーで動くけれど、一気に引っかかる感じになってズコッと一気に切れてしまったり、本当にシビアにクラッチをコントロールしながら走りたいステージ(峠道やワィンディング、はたまたスポーツ走行など)ではとても困る。

ある程度クラッチワイヤー注油をしていたりすればかなり動きは良いのだが、クラッチミートの感覚がどうにも掴みづらかったり、ほんのちょっとで一気にクラッチが離れてしまったり、半クラもぎこちなく、だけど強い押し出しトルクでギクシャク。

うーん、過走行したSRのあのクラッチの感触はどうにも好きにはなれない。
別のマシンで、油圧クラッチだったり、エンジン真横に直押しレリーズが装備されている車輛(XSやGX、その他多くのマルチエンジン等)であれば、その箇所にはスチールボール等も入っていてかなり感触も良いのだが、このただ横からグリグリ強制的に押し当てるタイプだと、遣れた状態になればなるほど、なんとなく削り押す感触が手でも判るようなあの感じ。うーむ、なんとかならないのだろうか。SRXやRZ-R等もこのような方式。余談になるがRZ-R系の場合、このクラッチの調整は右クランクケースカバーを開けての調整になるのでいつも、なんで?という気持ちになってしまう。

クラッチレバーのアジャスターで遊び調整が出来なくなってきた時、クラッチワイヤーの伸びの問題だけでは無く、このレリーズ痩せも疑わなければいけない。調整も限界になったらいよいよ新品交換。しかしこの部品、現在の価格は7000円程する。確かに複雑な形状を見れば納得ではあるが、えーっ、たったこれだけの減りでもう交換??そんな気分に違いない。

という訳で、今回はオーナーの了解を得て肉盛溶接し、面研修復。それと同時に内部の長いプッシュロッドの当たり面も長さを事前にチェックしておいてから鏡面研磨しフリクションを減らす。
肉盛溶接をすれば、同時にその部分の硬度は上がるので、中古部品再利用でも寿命が延ばせるのではないか?という所まで目論みつつ長い長い耐久テストの始まり。もし結果が駄目だったとしても、それならそれで当初から交換する予定だったと思えば問題無し。

クラッチが重い重いと良く言われるこのSRエンジンではあるが、このあたりをしっかり対策して組上げれば、グレイト!
かなり軽いじゃないですか。クラッチが切れる感触もレバーを握ればスーッと連続的な感触。

出力強化してあるエンジンなので、クラッチ板への負担や焼対策を考慮すればクラッチスプリングをそのままに動作を軽く出来るのでベストな選択&作業ではないだろうか。セミ油圧クラッチ化させていたりしても、結局の所、このレリーズ関連の問題を解消していなければスムーズなクラッチミートには繋がらないという事を忘れてはならない。

さらに話は続き、では何故、そこが重要なのか?という事であるが、レリーズが減っていけば行く程、僅かなクラッチレバーの移動でクラッチ自体のミートポイントを合わせる事がシビアになってきて、だがしかし、ライダー自身はその微妙な引きの中での調整を覚える。そうするとますますレリーズの単一箇所が酷使されそこがさらに削れる。その繰り返しで悪化していく。
そうなると引く力も大きくなってくるので、クラッチワイヤーのコンディションが良い状態であったとしても、それを受け止める力はクラッチレバーのピボット部に集中しクラッチレバーを固定するボルト穴が楕円に減り始めてグラグラ、最終的にはハンドルにクラッチレバーが間もなく接する周辺でしかクラッチが切れなくなってくるという悪循環に陥る。

エンジンを大幅に出力強化し、同時に強化クラッチスプリング等も組み込んである場合、どのバイクにも言える事なのだが、クラッチ操作系はしっかり見直さなくてはいけない。それを怠るとあっという間にクラッチレバーの支持部がグラグラになったり、ワイヤーが切れやすかったり、最悪の結果に繋がる。

さらにそのままクラッチが切りづらい状態になってくれば、当然ニュートラルにも入りづらくなってくる。
だがしかし、走行中は回転さえ合わせてしまえば変速は可能なので、何やらごまかしつつ走行出来ていても、やっぱり減速していくとニュートラルには入りにくくなり、より乗りにくくなる。

そうなってきても、大抵の場合、どのような状態になっているか乗り手にはわからないケースが大半なので、最近なんだか変速がしづらいとか、ニュートラルに入りにくいという問題が生じてくる。(もちろん全てがこのような原因では無く、ミッション関連に問題がある場合も有り)

最悪の場合、それすらも考えず、ギアチェンジが固いからと、チェンジペダルをガンガン踏み続けた挙げ句に、シフトシャフトがガタガタで齧りまくり、おまけにシフトフォークやその周辺も不必要な力が入力され自ら破壊の道へと突き進む事になるのである。

減ってしまったクラッチレリーズ、コストを下げつつ直せたらいいなぁ~って思う方は、ご相談下さい。
単品部品の修理代は現在の所、新品部品の半額よりも、もう少し飛び出すくらいです。
この部品だけ外して送ってもらえたら、ばっちりokです。もちろん車輛ごとでも別途にて対応します。


↑肉盛溶接後面研中。溶接した箇所はその他の所よりも削りにくいのでちょっと整形に手が掛かります。
画像ではわかりにくいが、もう少し研磨して面を整えて最後に磨きあげたら完成~
このエンジンをオーバーホールしたオーナーも車輛完成後のクラッチの結果に満足していただけました。
これぞまさに探求修理!

ちなみにXS&GX250/400系マシンのオーナーでクラッチが重いと悩んでいるならば、それに対してもばっちり秘策はあるのだ。困ったらガレージUCGホットラインまでどうぞ。

もう峠やロングツーリングで左腕パンパン病とはおさらばだ。
いや~今回も長く書きすぎた。(所要1時間半)

理由やら状態やら、いろいろと言葉で伝えるのはとても難しい、だがしかし、それを言葉で伝える事に探求の価値があり、ロマンがあり、Soulがぎっしり詰まっている。

自分自身でまさにバイク自身を操作する所だから、どんなバイクに乗っていたとしても本当に気を配ってほしい箇所なのである。

ヤマハSRエンジンフルオーバーホール その1

2010年02月13日 | SR400 SR500探求

今年の冬はいつになく寒い、そんな風に毎年同じ事を感じながらも、さらに寒く感じる今日この頃。
暇だった1月前半とは正反対にUCGは1月後半からは現在もエンジン格闘&探求に追われている。

そんな最中ではあるが、今回もばっちり長文一発攻勢が続くのだ。実はこのブログ、UCG以外にも影武者がいるってご存知?
どうやって判別するのか?それは秘密。でも文体からきっとわかるよね。話を続けよう。

4気筒エンジンのオーバーホールに比べれば、良かった~単気筒エンジンだよ~って少し心和んでしまうような気がしがちではあるが、結局バラし始めたら最後、エンジンがしっかり組み上がって始動するまでの緊張感は全く同じ。
例え何度同じエンジンを開けて同じ手順で組もうが、何回反復を繰り返そうが、結果が出るまではいつも組み忘れは無いか?自分が期待した通りの性能を発揮してくれるのか?気になって仕方が無いのがエンジンなのだ。

だから一日の作業もあっという間に時間が過ぎてゆく。
前半戦は何より大変なのはとにかく清掃作業と下準備、そして計測。
これだけでも膨大な時間を費やす。言葉で言うのは簡単。実際にやってみればその大変さはいつまでだって語り続けられる程・・・きっと初めて同じ作業を真似してみたら、うーん、多分真似出来ないに違いない。

各セクション毎の部品管理がこれまた重要なのである。
それと同時に、どれだけの距離を走ってきたのか?オイルの管理やこれまでの走行していた時のネガな要素=ギアが入りづらいとか、白煙が多かった等、それらの情報がまた新たなヒントとなり探求は続く。

前半戦が終われば大方の新品部品や各種加工に入る。
このエンジンに対してのオーナーからの要望は、安定した性能と長寿命。
その要望が素晴らしい。ストリート仕様の場合、実はこれが一番大切。
結局、いわゆるレーシングパーツてんこ盛り、ハイコンプ系のチューニングの場合、その瞬間瞬間や、限られた距離=レースシーンにおいては最高に特化したパフォーマンスを発揮させられるが、公道という、終わり&ライバル無き耐久レース?の場合エンジントラブルやブローによるリタイヤはあり得ない。(長く酷使し続けた後に調子が悪くなるのは別の話)
なのであまりにも過激な仕様はお薦めしない。(もちろん状況や目的に合致すればOK)

確かに高圧縮やら高回転やら、チューニングメニューを想像してみればニヤニヤしてしまう事は多い。
エンジンや排気のサウンドもまた同様に気持ちが良い。それより何より、その気にさせるその気分。

キャブのボアが大きい方が良いと思ったり、カムの形状が過激だったり、メインジェットはとにかく大きければ良かったり、サスペンションやらバルブスプリングは固い方に決まり!だったり、そーんな訳はないのである。

乗り続けてきたマシンがヤレてきているからこそ、プアな部分がより顕著に現れるからこそ、高価な社外品の性能がより際立って体感出来る事も多い。何故ならば、仮に新車で乗り始めて、何万キロも走行した後に、同じ仕様で機能部品全てをオーバーホールするケースはあまり無い事が多いからなのである。別に純正信者では無い事も付け加えておきます。その辺のこだわりは一切ありませぬ。

なんて言えば良いのだろうか、このあたりを文章で伝える事は非常に難しいが、何事もやりすぎると弊害が大きくなる事もまた事実。異様な程に始動が困難になったり、どこかでエンストすれば、再始動に汗をかいたり、はたまたエンジン寿命が短かったり・・・振動が増えて乗るのが疲れるから嫌になってしまったり・・・

様々な社外部品を追い求めて、想像を膨らませる事も重要ではあるが、その前に、ある程度の基準で作られた状態の物をさらに精度やバランスを突詰めて、純正+出来る限りのファインチューニングで気持ちよく走らせるなんて言う事は素晴らしい事ではないだろうか?

最高の素の状態。究極の素の状態+自分好みのセッティング、これを走りの面で知っている人は実は非常に少ないのではないだろうか?

このエンジンはオーナーからのそんな依頼を受けてUCGが延べ何日にも渡る作業を続け仕上げたエンジン。
クランクも芯出+バランス取り。シングルエンジンだってバランス取り直すと明らかに変わります。
でもこの辺の議論や仕上げはいろいろわかれる所なので多くは書きません。
とにかくサービスのし過ぎは禁物。いくつかの手直しで十分。

メーカー仕上げのなんだか素っ気ない仕上げでそのまま組む気にもならないシリンダーポートの仕上げや、バルブシートとの妙な段差。塗りたくってはみ出まくりの液体ガスケットを剥がす以上に面倒なカチカチの紙ガスケット剥がし。固く締まったスタッドボルトやら妙に錆びていたりするダウエル君の取外し、いずれも外すのが面倒というよりは、取れなかったら面倒だな~的な局面の作業ばかり。そのあたりの作業もなるべく難なくこなすノウハウ的な作業が多い所。
画像からはそれら一連の問題をクリアーしているのできっと伝わらないであろう。


↑ケース内に収まる部品を確認中。秘蔵クランクも、単体で持つと、やっぱり重い。


↑この画像を見たら、オーナーにもその奇麗さが伝わるはず。何気に奇麗にするの大変なのだ。
本当に奇麗に見えるけれど、これ全て手作業手仕上げ。それまで乗り続けてきた傷やら風合いは、オーナーと歩んできた証だもんね。既にいくつかのベアリングは交換済み。(ケース単品になった画像撮り忘れました。)


↑クランクをセットしない状態でケースを合わせミッションの動作を確認中。
何年&何万キロも走行してきたケースは奇麗に清掃するだけでも一苦労。


↑ケースにクランクをセットしていく過程。


↑ケースを組む前に忘れ物が無いかしっかり確認点検し、液体ガスケットを塗布したら、いよいよこれから合体だ~。

ポートは鏡面とかそんな風にするまでやる必要はなく、バリ取り+ちょっとした手直しで効果抜群。
レーシングキャブレターを装着していれば、ほんのちょっとのポートの手直しがさらにセッティングの変化に繋がり、燃費やらパワーに響いてきます。(特にXSやGX、SRなどなど)
とはいえ、ただやみくもに削ってサービス大ポート加工なんてのも、逆効果になる事もあるので要注意。

想像して頂きたい。必要以上に太いストローではドリンクは飲めないのだ。逆に細いストローでほっぺた痛くしながら吸い続けるのも辛い。マフラーの抜けもまた同様、抜けまくりでも詰まりすぎでも駄目なのだ。

さて話は変わり、どうにもこうにもこの縦割りクランクをセットしてケースを閉めたら、何かにつけて再度開けたり修正するのが非常に面倒に感じる。それに反して上下割りの場合、ミッションの調整等も便利では無いだろうか。その反面、プレーンメタル支持のクランクメタル合わせの事を考えれば、ベアリング支持のクランクは気が楽でもある。

このエンジンの場合、動作していた時には2速→3速あたりでたまにギアが抜けたりという問題が有ったので、特にその辺りを注意しつつ、ミッションを全バラし、手直しと部品の交換を行う。
ただやみくもにギア類を新品にするとかでは無く、このあたりは部品代節約&改善の見せ所。
どの辺をどう調整&交換し見直せばばっちりになるのか、その辺の目利きは実はマニュアルを眺めた所できっとわからないでしょう。でも、ちゃんと抑えるべきポイントはあるのです。(えっ?秘密??)

きっとそのミッションの感覚は、組上げた後に乗ってみて初めてオーナーが気づく感覚でしょう。あっ今までとはギアの入り方が違うって・・・そう感じてもらえたら、何時間も作業に費やした甲斐があります。

決して安くはないメニュー、それがエンジンオーバーホール。
いつの時も、想像以上に手間隙掛けて探求し、作成しています。
ああ、もっともっと、あのポートの隙間を流れる混合気の気持ちになってみたい。

これらの基は、もちろん修行していた頃から蓄積&学んできた事ももちろんのこと、計測や管理と目利き、そして何よりも大きいのは、社外部品が皆無で、しかも純正部品すらまともに揃わないXS&GX250/400エンジンをひたすらにファインチューニングしてきた事が大きいかもしれない。近年のスーパースポーツやレーシングマシンのエンジンの仕上げを見てみれば、それらの仕上げや処理からまた昔のエンジンをどのように仕上げたらより良くなるのかヒントも多く隠されている。

組上げた後はと言えば、えっ?これ純正のままのエンジン?こんなに吹け上がり軽いの?レスポンス軽かったの??
そこに走りの楽しさが凝縮されている。部品交換メインでオーバーホール作業を行うのでは無く、各部、細部に目を配らせて組上げたエンジンはまた素晴らしい結果にも繋がる。ハイカム入れる、高圧縮にする、そういったのは後の話、とにかく重要なのはクランクの仕上げに尽きる。

今回リメイクしたこのエンジンも、がんがん距離を稼いで、何万キロという遥か先の目的地に達した時に、内部がどのようになっているのかまた見てみたい。その時、きっとまた新たな問題点が見つかり探求が始まる。

さぁこれからまた新たな旅路に向けて出発だ!

組上げて休む間もなく、別依頼のXS号のエンジンオーバーホールへと続く。
こいつがまたほとんど新品部品が出てこないから、また腕の見せ所なのである。大丈夫、任しとき、頑張るぞ~
大抵のXSやGXのエンジンはヘッドのカーボン落しやらポートの修正やらで、粉まみれ、マスク&ゴーグル必携のデンジャラス作業が続くのである。

yamaha SR400 ステムベアリング交換

2010年02月06日 | ガレージUCG探求作業
普段、通勤や通学など毎日車両を使う人は多いと思いますが、普段からメンテナンスを欠かさず行っている人はあまり多くはないと思います。見える箇所の状態の確認や、オイル交換などは行えても、見えない箇所や少しずつ消耗していく箇所は、気づかないでそのままの状態になっていることが多いです。

写真のステムベアリングなどがよくある代表的な部分で、使い続けていくとレース(ボールベアリングを受ける皿の部分)部は均等には減らず、ボールの当たる位置にくぼみが発生することが多いです。清掃してグリスアップしようにも、フロント周りを全てはずさなければ出来ないし、ステムをはずす際にボールがポロポロ落ちてしまいボールが行方不明になり、捜索願を出さなければいけない状況になることもあり、とても大変です。

そこで、ボールベアリングからテーパーローラーベアリングに交換してあげることにより、グリスが切れにくくベアリングの寿命もながくなり、ボールの捜索願も出す必要がなくなります。


写真撮影用にグリスは少なめになっておりますが、写真撮影後はもっとグリスを塗っています


取り付けには少し加工が必要になりますが、ベアリング交換サイクルが長くなるので普段あまりメンテナンスが出来ない方にはお勧めかもしれません。

ステムベアリングの状態は、普段から使用している車両だと動きが渋くなっていても気がつかない方が非常に多く、お伝えしても、気にならないから大丈夫という方が多いのが現状です。

気にならないからじゃなく、気にしてください。

もっと乗りやすいハンドリングになり、いつもの交差点、いつものコーナーが怖くなく曲がっていける事でしょう。急な飛び出しなどの緊急回避にも役立ちます。

ちょっとした事で、安全性が上がることなので是非試していただきたい。