東京 新宿 バイク修理 「探求」 ガレージUCGブログ

日々GARAGE-UCGで如何なる修理や探求が行われ、どんなガレージライフを過ごしているのだろうか?

ヤマハSRエンジンフルオーバーホール その1

2010年02月13日 | SR400 SR500探求

今年の冬はいつになく寒い、そんな風に毎年同じ事を感じながらも、さらに寒く感じる今日この頃。
暇だった1月前半とは正反対にUCGは1月後半からは現在もエンジン格闘&探求に追われている。

そんな最中ではあるが、今回もばっちり長文一発攻勢が続くのだ。実はこのブログ、UCG以外にも影武者がいるってご存知?
どうやって判別するのか?それは秘密。でも文体からきっとわかるよね。話を続けよう。

4気筒エンジンのオーバーホールに比べれば、良かった~単気筒エンジンだよ~って少し心和んでしまうような気がしがちではあるが、結局バラし始めたら最後、エンジンがしっかり組み上がって始動するまでの緊張感は全く同じ。
例え何度同じエンジンを開けて同じ手順で組もうが、何回反復を繰り返そうが、結果が出るまではいつも組み忘れは無いか?自分が期待した通りの性能を発揮してくれるのか?気になって仕方が無いのがエンジンなのだ。

だから一日の作業もあっという間に時間が過ぎてゆく。
前半戦は何より大変なのはとにかく清掃作業と下準備、そして計測。
これだけでも膨大な時間を費やす。言葉で言うのは簡単。実際にやってみればその大変さはいつまでだって語り続けられる程・・・きっと初めて同じ作業を真似してみたら、うーん、多分真似出来ないに違いない。

各セクション毎の部品管理がこれまた重要なのである。
それと同時に、どれだけの距離を走ってきたのか?オイルの管理やこれまでの走行していた時のネガな要素=ギアが入りづらいとか、白煙が多かった等、それらの情報がまた新たなヒントとなり探求は続く。

前半戦が終われば大方の新品部品や各種加工に入る。
このエンジンに対してのオーナーからの要望は、安定した性能と長寿命。
その要望が素晴らしい。ストリート仕様の場合、実はこれが一番大切。
結局、いわゆるレーシングパーツてんこ盛り、ハイコンプ系のチューニングの場合、その瞬間瞬間や、限られた距離=レースシーンにおいては最高に特化したパフォーマンスを発揮させられるが、公道という、終わり&ライバル無き耐久レース?の場合エンジントラブルやブローによるリタイヤはあり得ない。(長く酷使し続けた後に調子が悪くなるのは別の話)
なのであまりにも過激な仕様はお薦めしない。(もちろん状況や目的に合致すればOK)

確かに高圧縮やら高回転やら、チューニングメニューを想像してみればニヤニヤしてしまう事は多い。
エンジンや排気のサウンドもまた同様に気持ちが良い。それより何より、その気にさせるその気分。

キャブのボアが大きい方が良いと思ったり、カムの形状が過激だったり、メインジェットはとにかく大きければ良かったり、サスペンションやらバルブスプリングは固い方に決まり!だったり、そーんな訳はないのである。

乗り続けてきたマシンがヤレてきているからこそ、プアな部分がより顕著に現れるからこそ、高価な社外品の性能がより際立って体感出来る事も多い。何故ならば、仮に新車で乗り始めて、何万キロも走行した後に、同じ仕様で機能部品全てをオーバーホールするケースはあまり無い事が多いからなのである。別に純正信者では無い事も付け加えておきます。その辺のこだわりは一切ありませぬ。

なんて言えば良いのだろうか、このあたりを文章で伝える事は非常に難しいが、何事もやりすぎると弊害が大きくなる事もまた事実。異様な程に始動が困難になったり、どこかでエンストすれば、再始動に汗をかいたり、はたまたエンジン寿命が短かったり・・・振動が増えて乗るのが疲れるから嫌になってしまったり・・・

様々な社外部品を追い求めて、想像を膨らませる事も重要ではあるが、その前に、ある程度の基準で作られた状態の物をさらに精度やバランスを突詰めて、純正+出来る限りのファインチューニングで気持ちよく走らせるなんて言う事は素晴らしい事ではないだろうか?

最高の素の状態。究極の素の状態+自分好みのセッティング、これを走りの面で知っている人は実は非常に少ないのではないだろうか?

このエンジンはオーナーからのそんな依頼を受けてUCGが延べ何日にも渡る作業を続け仕上げたエンジン。
クランクも芯出+バランス取り。シングルエンジンだってバランス取り直すと明らかに変わります。
でもこの辺の議論や仕上げはいろいろわかれる所なので多くは書きません。
とにかくサービスのし過ぎは禁物。いくつかの手直しで十分。

メーカー仕上げのなんだか素っ気ない仕上げでそのまま組む気にもならないシリンダーポートの仕上げや、バルブシートとの妙な段差。塗りたくってはみ出まくりの液体ガスケットを剥がす以上に面倒なカチカチの紙ガスケット剥がし。固く締まったスタッドボルトやら妙に錆びていたりするダウエル君の取外し、いずれも外すのが面倒というよりは、取れなかったら面倒だな~的な局面の作業ばかり。そのあたりの作業もなるべく難なくこなすノウハウ的な作業が多い所。
画像からはそれら一連の問題をクリアーしているのできっと伝わらないであろう。


↑ケース内に収まる部品を確認中。秘蔵クランクも、単体で持つと、やっぱり重い。


↑この画像を見たら、オーナーにもその奇麗さが伝わるはず。何気に奇麗にするの大変なのだ。
本当に奇麗に見えるけれど、これ全て手作業手仕上げ。それまで乗り続けてきた傷やら風合いは、オーナーと歩んできた証だもんね。既にいくつかのベアリングは交換済み。(ケース単品になった画像撮り忘れました。)


↑クランクをセットしない状態でケースを合わせミッションの動作を確認中。
何年&何万キロも走行してきたケースは奇麗に清掃するだけでも一苦労。


↑ケースにクランクをセットしていく過程。


↑ケースを組む前に忘れ物が無いかしっかり確認点検し、液体ガスケットを塗布したら、いよいよこれから合体だ~。

ポートは鏡面とかそんな風にするまでやる必要はなく、バリ取り+ちょっとした手直しで効果抜群。
レーシングキャブレターを装着していれば、ほんのちょっとのポートの手直しがさらにセッティングの変化に繋がり、燃費やらパワーに響いてきます。(特にXSやGX、SRなどなど)
とはいえ、ただやみくもに削ってサービス大ポート加工なんてのも、逆効果になる事もあるので要注意。

想像して頂きたい。必要以上に太いストローではドリンクは飲めないのだ。逆に細いストローでほっぺた痛くしながら吸い続けるのも辛い。マフラーの抜けもまた同様、抜けまくりでも詰まりすぎでも駄目なのだ。

さて話は変わり、どうにもこうにもこの縦割りクランクをセットしてケースを閉めたら、何かにつけて再度開けたり修正するのが非常に面倒に感じる。それに反して上下割りの場合、ミッションの調整等も便利では無いだろうか。その反面、プレーンメタル支持のクランクメタル合わせの事を考えれば、ベアリング支持のクランクは気が楽でもある。

このエンジンの場合、動作していた時には2速→3速あたりでたまにギアが抜けたりという問題が有ったので、特にその辺りを注意しつつ、ミッションを全バラし、手直しと部品の交換を行う。
ただやみくもにギア類を新品にするとかでは無く、このあたりは部品代節約&改善の見せ所。
どの辺をどう調整&交換し見直せばばっちりになるのか、その辺の目利きは実はマニュアルを眺めた所できっとわからないでしょう。でも、ちゃんと抑えるべきポイントはあるのです。(えっ?秘密??)

きっとそのミッションの感覚は、組上げた後に乗ってみて初めてオーナーが気づく感覚でしょう。あっ今までとはギアの入り方が違うって・・・そう感じてもらえたら、何時間も作業に費やした甲斐があります。

決して安くはないメニュー、それがエンジンオーバーホール。
いつの時も、想像以上に手間隙掛けて探求し、作成しています。
ああ、もっともっと、あのポートの隙間を流れる混合気の気持ちになってみたい。

これらの基は、もちろん修行していた頃から蓄積&学んできた事ももちろんのこと、計測や管理と目利き、そして何よりも大きいのは、社外部品が皆無で、しかも純正部品すらまともに揃わないXS&GX250/400エンジンをひたすらにファインチューニングしてきた事が大きいかもしれない。近年のスーパースポーツやレーシングマシンのエンジンの仕上げを見てみれば、それらの仕上げや処理からまた昔のエンジンをどのように仕上げたらより良くなるのかヒントも多く隠されている。

組上げた後はと言えば、えっ?これ純正のままのエンジン?こんなに吹け上がり軽いの?レスポンス軽かったの??
そこに走りの楽しさが凝縮されている。部品交換メインでオーバーホール作業を行うのでは無く、各部、細部に目を配らせて組上げたエンジンはまた素晴らしい結果にも繋がる。ハイカム入れる、高圧縮にする、そういったのは後の話、とにかく重要なのはクランクの仕上げに尽きる。

今回リメイクしたこのエンジンも、がんがん距離を稼いで、何万キロという遥か先の目的地に達した時に、内部がどのようになっているのかまた見てみたい。その時、きっとまた新たな問題点が見つかり探求が始まる。

さぁこれからまた新たな旅路に向けて出発だ!

組上げて休む間もなく、別依頼のXS号のエンジンオーバーホールへと続く。
こいつがまたほとんど新品部品が出てこないから、また腕の見せ所なのである。大丈夫、任しとき、頑張るぞ~
大抵のXSやGXのエンジンはヘッドのカーボン落しやらポートの修正やらで、粉まみれ、マスク&ゴーグル必携のデンジャラス作業が続くのである。


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