東京 新宿 バイク修理 「探求」 ガレージUCGブログ

日々GARAGE-UCGで如何なる修理や探求が行われ、どんなガレージライフを過ごしているのだろうか?

ありとあらゆるキャブレター探求。

2013年06月24日 | キャブレター修理&探求
今回のUCGブログも恒例の長い長い話は続きます。久々に原点回帰、キャブレターの話し。

FI=フュエルインジェクション仕様(電子制御)によるオートバイが市場の多くを占めるようになってきた昨今、未だにアナログ制御であるキャブレター仕様のバイクに魅了されるバイク乗りは非常に多い。立ち上げた当初から、UCG自身、キャブレターをしっかり見極められる事がキャブ車の基本であると思ってます。それほどキャブレターは調整一つでも調子が変わる所なのです。

実際にガレージには何十年も前のキャブレターの修理も非常に多く、本当に毎回手を焼く事例が多いのが事実。
一般的にキャブレターオーバーホールが必要だと判断されて、依頼を受ける事が多いのですが、皆様が想像されるオーバーホール=クリーニング=清掃だけでは本来のパフォーマンスを発揮出来ないような状態になっているキャブレターボディーが本当に数多くあります。一概にそれらをどのような判断や区別で一般的なオーバーホールと区別されるのか、きっととても興味ある事だと思われます。ありとあらゆるキャブに関する依頼の場合、まず内外面共にしっかり洗浄し、クリーニングする事から検証は始まります。

もし、ご自身や他のお店でクリーニングやオーバーホールされていたとしても、我々自身の目で確認する為にクリーニングから作業は始まります。
(明らかに新品のキャブレターであったりする場合は除きます。)

大抵の場合、キャブレターの基本構造や原理はどれも似たような物なので、まず始めに一般的に考えられる範疇で清掃や消耗品の交換を行い、実際にエンジンに組み付けて動作させて状態を判断します。ここで問題が解消されれば作業は終わりますが、基本状態=純正のセッティングでも著しく調子がおかしかったり、アフターorバックファイヤーが出たり、回転の落ちが悪かったり、そのような状態をしっかりと見極め、再度キャブレターを外し、実際にどこが悪いのか何度も何度も検証&修理を重ねます。多い時には10~20回も着脱し修正しつつ状態を完璧な方向へ持って行きます。一台の車輛に対して丸一日費やしても終わらない時すらあります。納得出来る状態になって初めて完成に至ります。なのでコストもそれなりには掛かってしまいます。安く修理出来ればそれが一番なのですが、そんなに簡単には修理出来ない事も多く、厳しい予算制限があってしまっては問題がクリア出来ない事もあるのも事実です。

またキャブレター単体だけでも全国各地、時には同業者からも送られてきます。なので、やはり通常の心構えでは解決出来ないような問題が潜んでいる事が非常に多いのも事実。それと同時に、キャブレターが悪いと思い込んでしまい、実際には全く別の問題で調子を崩しているという事も多々あります。



画像は日々の作業上のほんの一例。スズキTS125空冷ハスラー(ミクニ製キャブ)そしてヤマハXV750スペシャル(日立製キャブ)、それらよりもっと古い遥か昔のホンダCB450(ケイヒンキャブレター)のオーバーホール中の画像です。一日に数台分のキャブレターをまとめて作業する事もあります。でも一日で全ての作業が完了する事は実際にはほとんど無く、毎日何度も何度も、組んで外してを繰り返して、試運転も何度も重ねます。

メーカーからの消耗品が販売終了になっている事も多くあり、本当に熾烈を極めます。でも純正仕様のままでしっかり修理して乗りたい気持ちはとても理解出来ます。
そこにはメーカーが開発した結果がぎっしり詰まっているからです。

良く有る依頼は、自分でキャブレターを分解し、オーバーホール&クリーニングしてみたけれど、調子が悪いと言う相談。
やっぱり付け焼き刃ではどうしても本来の調子が出せない事が多く、また車輛的にも比較対照出来るマシンがもう一台ある訳ではなく、本来の調子をいかにしたら発揮出来るか困り果てて連絡が来る場合が非常に多いです。

なので一台一台、本当にベストな状態を探るのに手間も時間も、そしてサービスマニュアルをいくら見ても載っていないようなトラブルシューティングが必要とされるのです。それらの抑えどころは、これまで通算何百基以上も見て来た経験や勘所が本当に調子を左右します。

エンジンがある程度良好だったとしても、またキャブレターをしっかりした状態に仕上げたとしても、今度はエンジンに取り付けた後のセッティングや調整で如何なるようにも調子を左右させます。一体どこがベストな状態なのかを探る事は本当に難しい事なのです。

一台の作業に対して、何十回ものキャブレターの着脱や分解、修正が求められる事も多く、同時に古い車輛は、ポイント点火だったり、カムチェーンの調整が手動式だったりと同時にチェックしなければいけない箇所も多々あるからこそ、トータルで見直す必要も発生します。

今回の話しは主にキャブレターをクローズアップした話しではありますが、それ以前に大前提としてはエンジン(主にクランク、ピストン周り&燃焼系)がしっかりした状態であってはじめて、キャブレターをしっかり見直す事の重要さが問われてきます。

だから乗り手であるオーナーの方がキャブレターが悪いからキャブレターだけを修理して欲しいと言われても、状態によって、それだけでは完調にはならない事もあり、他の箇所をチェック&修正しなければならない事も多くあるのです。

だからこそ、簡単には直らないし、お手上げだと言われてしまう事も多々あるのではないでしょうか?
はたまた予算制限があまりにも厳しくて完調まで仕上げられないケースだってあります。どうしても壊れてしまった乗り物を直すのにはコストが掛かってしまうものです。
機能部品に関する相談、どんな事でも連絡下さい。100%完璧に直せるか?と問われれば、YESとは率直に答えられません。たまたま今までの依頼には高い確率で上手に修理出来ていただけの事かもしれませんし、はたまた次の依頼は修理不能だと答えるしかないかもしれないからです。

日々のガレージには街中ではほとんど見かけないバイクや外車が入庫している事が多いです。

人気のある旧車や外車は名立たる専門店が多くあるので、そういうお店にはノウハウがたくさんあると思いますし、スムーズに事が進むケースも多くあるでしょう。
ストック部品もたくさんあると思いますので、間違いは無い事と思われます。

しかし、一方でマイナーな車輛だったりすると、どこに相談すれば良いか、迷う事も多いと思います。
あるいは、大カスタムをしてマシンを作成したけれども、どうしても調子が悪くて走らせるのにストレスを抱えている車輛も多いのではないでしょうか?
ガレージは狭い上に、全てが手作業なので、一日に出来る作業はたかが知れてます。なので予約作業のみの対応になります。時に多くの依頼が重なりお待たせする期間が長くなる事も多々ありますが、何をやっても結果が伴わず、行き詰まってしまい、なんとかして良い状態にする必要があるならば、御相談下さい。

時にオーナー様と二人三脚で進めなければどうしても解決出来ないような事もあります。それくらい古い車輛やデーターの少ない車輛の修理もあるのです。

時間は充分に下さい、いつでも最大限の力で探求&協力致します。

祝!RT森のくまさん ST600クラス#11横江竜司選手 九州オートポリス初優勝!!

2013年06月23日 | 全日本ロードレース選手権

↑祝!横江竜司選手 表彰台にて

久しぶりの更新になってしまいました。日々、ガレージ業務と全日本メカ出張業務へ全力で向き合っている事、お察し下さい。
久々ではありますが、UCGブログ恒例の?長い長~い話が続きます。

本当は語りたい事、新たな修理探求の事、街中ではまず見かける事が無いバイクが絶えず入庫して修理に向き合っている事、数え切れない程に伝えたい事はたくさんあるんです。

日々直接ガレージに依頼をして下さる方々と、レース現場での出張業務を第一に向き合わなければならないので、どうしてもブログの更新が遅くなりがちです。申し訳ありません。

さて、前置きはこのくらいにして、皆さんに大変嬉しい御報告をさせて下さい。

私=UCGが現場でメカニック担当させていただいております「RT森のくまさん佐藤塾」の横江竜司選手が2006年シーズン、2ST250cc(GP250)クラスで前人未到の全勝優勝を飾って以来、全日本ロードレース選手権ST600クラス(マシンYZF-R6)にて7年振りに優勝致しました。(4ST転向後初)


↑優勝のチェッカーを受ける瞬間、ピットウォールに集まる森くま軍団へ向けてガッツポーズ!!を決める横江選手

思い起こせば、スタッフとして加えて頂いたのが、横江選手JSB1000ccクラスYZF-R1時代(2008年)からなので、全日本レースメカとしてRT森のくまさん佐藤塾に加入してから6年の月日が流れました。小学校に入学してから、間もなく卒業という期間が6年であると言う事を考えると、本当に心にグッと込み上げるものがあります。

それ以前は、一人の観客として見ているだけの世界で、あのステージで仕事をしているメカニックの人達が本当に雲の上にいるような存在に思ってました。

特にJSB1000cc時代(YZF-R1 2007~2009)のRT森のくまさんチームはヤマハサテライト(セミワークス)体制だったので、全ての面において国内バイクレースにおいて最高の状態で挑み続けた事は忘れもしません。計り知れない緊張や限られた時間にいつも追われ、その中で完璧な作業を行わなくてはならない世界でした。

時に転倒したり、トラブルに見舞われたマシンをサーキットのピット内で、セッション内に応急修理を行ったり、翌日の出走時間までにフレーム交換やエンジン交換、修理したり、想像を超える本数のタイヤを空気圧や温度管理したり、頻繁なピットイン時の迅速なタイヤ交換、ディメンション変更やサスセッティングをベストを探るため、何度も行い、はたまた炎天下、台風での強風が凄い中での走行、豪雨や激寒、雪がちらつくようなコンディションの中でも行ったりして、テスト&レースを通じ、いかなる状況でも、優勝の2文字を信じてチーム一丸で活動を続けて参りました。

とにかくハードだったJSB時代の経験は、その後のST600になって、より大きな経験となった事は言うまでもありません。

しかし、レースの世界は本当に厳しいもので、どれだけ気持ちの上で強い意志を持ち合わせても、簡単に優勝には手が届きません。全ての条件が究極の条件として折り合わなければ成り立たないという厳しさをいつも現場で痛感しておりました。そして優勝チームの盛大な喜びを横目に見ながら、森くまライダーの横江選手はもちろんのこと、チームスタッフ皆で絶対に優勝してやると言う気持ちを心の中に潜め何度奥歯を噛み締めたでしょうか?

チーム内でメカニックに課せられる役割を充分以上に絶えず考えながらベストなコミュニケーションを図り、いかにしたら、ミスやトラブルが無くなるのか?タイムがもっと詰められるのか、どのようなセッティングや修理、メンテナンスを行えば最適なのか、毎回毎回、何度も何度も、それはまるで計算ドリルを何度も反復練習するかの如く練習や実戦を重ねました。

それでもレースの世界には「完璧」と言う言葉は有りません。唯一あるとすれば、優勝と言う結果が出た時のみ許される言葉かもしれません。
あるいは優勝を経験して、振り返って初めてそう思える事かもしれません。


↑出走直前、全ての整備完了! 現場でのマシン整備はT統括とメカUCGの二人で行います。
何度もチェックとセッティングを重ね、安全と最高の結果への気持ちを込めてマシンを横江選手に渡します。



↑雨が降る中、決勝スタート直前のグリッドにて。

レースの現場の右も左もわからないまま全日本メカとしてデビューして以来、気持ち的には、「もう6年も過ぎてたのか!あっという間だった。」と言うのが本音です。
まだまだこの世界には、選手もメカも大御所の方や大ベテランの方、そして勢いに乗った若手が大勢居るからこそ、自分自身もどんな時でも努力や練習を怠る事は出来ないし、しっかり集中しなくてはなりません。一瞬の油断やミスが大きな事故に繋がります。

2013全日本シーズン真っ只中、雨が降りしきる厳しいコンディションの中、九州オートポリスにてのチームの、そして横江選手の優勝は、現場にてメカニックを務める上で正直な所、言葉にならない喜びに満ちております。そして何より、横江選手の闘志溢れるスタイル=ライディング&優勝という偉業から本当に自分自身も元気や勇気をもらいました。



↑RT森のくまさんメンバー優勝記念写真


↑最終ラップ、サインボードに「1」を掲げて最終コーナーを走り抜けて来るのを待ち続ける数十秒の短いようで長~い時間。レースウィークもテスト期間も、灼熱の太陽が照りつけようと雨が降ろうとピットウォールで毎周サインボードが掲げられます。このサインボードはかつて8耐でも使われた由緒正しきサインボードです。でも実は結構重いんですよ。強風時は支えるのが大変なのです。全国のサーキットの中で1分も無い間に周回を重ねる筑波サーキットが一番ボードを出すのは大変です。

ガレージUCGという自分にとっての道場でオートバイをメンテナンス&修理する活動に向き合って10年目になりますが、かつて立ち上げた当初、まさか全日本ロードレース選手権という国内最高峰のレースの現場で、メカニックとして横江選手の優勝を、チームスタッフ皆で喜びを分かち合えたなんて、今でも信じられないくらいの事です。

まさに自分の人生においての財産とも言える経験です。ガレージUCGを立ち上げた当初から、自分自身に課していた「飽くなき探求」という言葉、まだまだレースでもガレージ内でも自分自身の最大課題として続く事は言うまでもありません。

いつ、いかなる状況になろうとも、慌てる事無く冷静に「初心忘るべからず」「飽くなき探求に終わりは無い」「同じ失敗を二度繰り返さない」という事を胸にしっかり刻み込んで、この先も頑張ります。

またサーキットの現場で観戦に来て下さる方から「UCGさんですか?ガレージUCGサイト見てますよ」と声を掛けて下さった事もありました。
あたたかいお言葉を頂ける事、とても嬉しく、また本当に励みになります。
いつも現場では慌ただしい事が多く、あまり多くお話しする時間も無く、ニコニコ笑顔では無い時が多いかもしれませんが、私=UCGは大変嬉しく、とても喜んでおります。お声掛け、ありがとうございます。

さて、話しは変わり、古いバイクも、新型のバイクも、レーサーも街乗りバイクも、もちろんスクーターも、同じ二輪車である事に変わりはありません。
一度走り始めたら最後、バイクとは孤独な乗り物なのである。絶対壊れないと断言出来ない機械を人間が操るのです。だからこそ、少しでも安全性を高めるべくメンテナンスや修理が非常に大切なのである。それでもやはり事故やトラブルを完全に防ぐ事が出来ないのは、やはり転ぶ可能性がある二輪車の宿命です。
だけど、乗って走るとやっぱりバイクは楽しいし、そう簡単には降りる事は出来ません。

また他で断られてしまったり、修理不能で迷宮入りになってしまいそうな案件ほど、修理してやろうじゃないか!というチャレンジ精神がムラムラと湧いてきます。(もちろん出来ない事だって依頼内容や技術的な問題によって多々あります。)

レースの現場でも、ガレージ内でも、実際にトラブルシューティング&修理やメンテナンスをしっかり行う事は頭も身体もとても疲れる事です。時にはなかなか良い結果や、技術面、はたまた予算面等で解決に繋がらず嫌になる時もあります。ですがいつも踏ん張りを効かせ、諦めないで作業に向き合ってます。

2013年の全日本ロードレース選手権はまだ折り返し地点にも来ておりません。次戦(6月30日 日曜日)は都内からも一番近い筑波サーキットで開催されるので、興味ある方は是非一度、足を運んでみて下さい。

古いバイクに乗っているから、通勤やツーリング主体だから、レースはねぇ~興味ないんだよ、なんて意見もあるとは思います。かくいう私もそんな風に考えた時代(20代半ば)がありました。でもそれは大きな誤りだと今は思ってます。本気で真剣に向き合う競技なのです。だからより楽しくなるし、はたまた想像の中だけで考えるレースと言うイメージに確信的&実際的な事はあまり無いのかもしれない。百聞は一見に如かず。

実際に目の前で迫力有る世界を見れば、改めて「バイクってすげぇ~」と考えも変わる可能性もあるでしょう。オートバイという一つの乗り物を通じて、探求心&好奇心を持ちながら、いろんな可能性にチャレンジしてみたいと私は常に考えています。

そしてレース経験の有る方々は、サーキット内での過ごし方は当たり前の習慣になっている事が多いですが、街中をメインにバイクに乗っている方々にレースメカニックとしての観点からいろんな話しをする事が出来たら素晴らしいという気持ちで、このブログに書き記しております。

もちろん横江選手の今回の優勝は2013年レースシーズン中の1ステージの結果であり、最大の目標はシーズンチャンピオンになる事なので、「RT森のくまさん 佐藤塾」スタッフ一丸となって絶えずベストを模索し挑戦を続けます。



いつもRT森のくまさん佐藤塾、そしてガレージUCGを応援して下さる皆様、本当にありがとうございます。
また6月最終週は、全日本レースウィーク(筑波戦)出張業務の為、臨時休業&ガレージに不在の事がありますので、よろしくお願い致します。

(6月28日 金曜日は臨時休業致します。)