ふたばようちえん日記 2 (園長の雑記帳)

このブログでは、幼稚園で子どもたちとかかわる中で、園長が日頃考えていることや大切にしていることを不定期に綴っていきます。

他者の気持ちの理解の育ち

2021-03-30 18:27:22 | Weblog
 「人の気持ちを考えなさい!」

 子どもを育てていると、子どもが自分勝手な行動をしているのを見てそう言いたくなる場面がよくあると思います。相手の気持ちを考えたらそんな行動はできないはずなのに、どうしてこの子は。そのように感じた時、相手の気持ちを考えるように言うと思います。

 それは、子どもが自分勝手な行動をするのは、相手の気持ちを考えていないからであって、相手のことを考えるように促し、相手の気持ちを考えることが習慣になれば、自分勝手な行動はしなくなると考えているからだと思います。

 一定の年齢以上の方が自分勝手な行動をしている時は、この考えは当てはまることもあると思いますが、小さな子どもの場合はどうなのでしょうか。

 ある心理学の実験の結果が参考になると思います。

 ある時、太郎君がおやつのドーナツを後で食べようと思って戸棚に仕舞い、遊びに行ってしまいました。その部屋に弟の次郎君が入ってきて戸棚に入れてあったドーナツを見つけ、冷蔵庫に入れました。しばらくして遊びから帰った太郎君は、ドーナツを食べようと思いました。太郎君はどこを開けるでしょう?

 そのような質問を投げかけると、3歳の子どもの多くは、冷蔵庫と答えます。太郎君は、次郎君がドーナツを移動させたことを知りませんから、戸棚と答えるのが正解ですが、3歳の子どもは、自分が知っていることと他者か知っていることを区別して考えることがまだできません。この問題に正しく答えることができるようになるのは、おおよそ5歳ぐらいと言われています。

 この実験は、「こころの理論」と呼ばれる有名な研究ですが、子どもの育ちを考える上で、重要な視点を与えてくれます。小さな子どもは、人の気持ちを考えていないのではなく、考えることがまだできないのです。

 どのようになると人の気持ちが理解できるようになるかについては、まだ明確にはわかっていませんが、兄弟がいるなど人とのかかわりが多い環境にあるほど、理解できるようになるのが早いことがわかっています。おそらく、人と人とのかかわりを数多く経験した上で、年齢的に成熟してくると、理解できるようになるのだと思われます。周りの大人がガミガミ言えばいいというものではないということですね。

 子育てや教育は、大人の子どもへの働きかけが重要なのは言うまでもありません。しかし、子どもが育つ環境を整えることと、その上で育ちをじっくり待つことも重要だということになります。

 子どもたちには、人の気持ちを理解したり考えたりできるように育って欲しいと思います。そのためにも、子どもの育ちというものをしっかり理解していきたいと思います。

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