8月15日の夜、東京の南大塚ホールで開催されたKIA(Kachin Independent Army、カチン独立軍)の写真展を見た。KIAとはビルマ北部のカチン州に住むカチン族の反政府組織、カチン民族機構(Kachin Independent Organization)の軍事部門のことである。写真家は長年、カチンを取材する米国人のRyan Lybreさん。会議室を借りた3時間だけの開催だったが、今年5月にLybreさんがNIKON Salonで開催した「Portraits of Independence: Inside the Kachin Independence Army(カチン独立運動の内側から)」の中から数十点の写真を展示していた。「夕刻、焚き火にあたる兵士」、「地雷で負傷した兵士を治療する医師」、「洗礼を受ける人びと」など、良質な写真と貴重な情報が多く、現在のカチンの状況を知るうえで良い写真展だった。
1961年、カチン州で学生たちを中心に結成されたKIOは、民族の権利と自治権の獲得を目指して、ビルマ国軍と激しい戦闘を続けてきた。だが、1994年3月、ビルマ政府と停戦協定を結んだ。以来、不安定ながらも、停戦は保たれている。
今年11月に総選挙を予定したビルマ軍事政権は、KIOを含む停戦中の各反政府武装勢力に対し、国境警備隊として参加することを要求している。だが、民族の権利と自治を護るために戦ってきた彼らが、国軍の一部になるような、そんな申し出を受け入れることはないだろう。
実は、私も1993年の冬、友人のフォトジャーナリストと一緒にカチン州のKIOの解放地域を取材したことがあった。タイのバンコックから中国の雲南省へと飛び、それから3日かけて、ビルマのカチン州に入った。国境に隣接する司令部をベースに、前線基地や、新兵の訓練所や、野戦病院などを訪ね歩いた。
不慣れな山歩きで、遅れがちになる私たちを気遣いながら、護衛し、荷物を持ってくれたのは、20歳前後の若い兵隊たちだった。夜、彼らは焚き火を囲みながら、Rod StewartのSailingを歌っていたのを、今でも覚えている。
彼らは今どうしているのだろうか…。
Libreさんの写真に写る若い兵隊たちの姿を見て、ふと思った。
写真は 前線基地から当たりを見下ろすカチン軍兵士(上)、木製の銃を持って、整列する訓練中のカチン軍新兵(中)、焚き火を囲みながら歌うカチン軍兵士たち(下)1993年