あるフォトジャーナリストのブログ

ハイチや他国での経験、日々の雑感を書きたくなりました。不定期、いつまで続くかも分かりません。

ハイチ詩人 クリストフ・シャルル

2010年08月03日 | 日記
 
8月1日、詩人集団の「詩人会議」に招かれて、「核兵器はいらない 沖縄を返せ!」のつどいに参加した。ハイチから詩人クリストフ・シャルルさんがゲスト参加するということで、私は会場でミニ写真展とスピーチをお願いされた。
今回で2度目の来日となるクリストフさんは、ハイチで大学教授、ジャーナリスト、出版社の経営、ジャーナリストなど、多彩な顔を持つ詩人だ。また過去に、上院議員に立候補した経験を持つ(残念ながら、選挙で落選したが)。
 スピーチの前にクリストフさんの詩の朗読が行なわれた。予め配られていた日本語訳を見ながら、彼のフランス語の詩を聞いた。Goudou Goudou Goudouと題された地震の詩だった。Goudouとは、ハイチのクレオール語(元はフランス語かもしれない)で地震の揺れを表す擬声語であるが、現在では「Goudou Goudou」は、1月12日のハイチ地震を表す語になってしまっている。
クリストフさんのGoudou Goudou Goudou(グゥドゥ グゥドゥ グゥドゥ)の連呼がまるで呪文のようにも聞こえ、その響きと共に1月に訪れたポルトープランスの光景が目に浮かんだ。
残念ながら、クリストフさんの朗読をここでお聞かせすることはできない。その代わりにパンフレットにあった、対訳を載せた。

ゴードーゴードーゴードー(Goudou Goudou Goudou)

ゴードーゴードーゴードー
大地は震え
僕たちは その大地に脅えた

ゴードーゴードーゴードー
建物が崩壊していく
その下敷きになるんじゃないかと
不安で一杯だ

ゴードーゴードーゴードー
建物が ゆらゆら揺れている
自動車が空中に浮かんでいる

ゴードーゴードーゴードー
僕たちは ぶるぶる震え
今にも大地に呑みこまれそうで

ゴードーゴードーゴードー
ビルディングが跪いている
まるで 従順な馬のように

ゴードーゴードーゴードー
死体が積み重なり
瓦礫の山が僕たちを生き埋めにする

ゴードーゴードーゴードー
大地が口を開け 僕たちを呑みこみ
そして津波が・・・

ゴードーゴードーゴードー
まるで この世の終わりだ
地獄の果てだ

            訳 森井香衣 今村三恵子

クリストフさんと彼の家族は無事だったが、経営する出版社の建物は崩れた。また、私のクレオール語の聞き取りが正しければ、妹が倒壊した大聖堂の下敷きとなって、亡くなった。現在の復興の様子を尋ねると、「遅れている」と、そして最後に「困ったよ」と、大きなため息をついた。
日本滞在中は、8月6日の広島の平和記念式典に参加し、長崎にも行く予定だ。ハイチで地獄絵図を目撃したクリストフさんは、広島と長崎で何を感じ、どんな詩を書くのだろうか。