ブラジルとブラジルのマーケティングあれこれ

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ジルマ大統領のアナウンス

2013-06-24 17:45:19 | 事件

金曜日にジルマ大統領の今回のデモについてのアナウンスが行われた。内容は概ね次のようなものだった。、

①民衆の声を聞くことの重要性。
②ブラジルの政治的後進性を解決する過程での示威運動である。
③暴力については厳しく対応する。
④石油のロイヤリティはすべて教育分野に振り向けるといった「公約」
④ワールドカップへの巨大な公共投資についての批判は無視して、「素晴らしい大会を行う」と宣言

①については今日の午後、MPL(Movimento de Passe Livere=今回のデモのオーガナイザーとされている団体)の代表を呼んでで会談をしている。しかし、デモの抗議のテーマは検察の捜査権を制限する憲法改正案(PEC37)、ワールドカップへの公共投資の巨大さ、教育その他に拡散しているので、僕にはもうデモのオーガナイズについては、すでのこの団体の手を離れ、統制が取れなくなっているように思われる。MPLはすべての公共交通を無料にすることを主張している団体であり、それが現実的ではないことは、高学歴の参加者にはわかっており、求心力ということでは勢いを失っていくだろうし、それらの分野で影響力をもとうという意志はないように思える。

②は来年の大統領選挙という権力闘争の中にあって、ジルマあるいはPT(労働党)が、いかにこの政治的リスクを切り抜けていくための戦略的言辞である。「私は大統領でも国会ではPTは過半数をもっていないし、政治というのは実際難しい。でも私は努力しているのよ」と問題のすり替えを行なっているように思える。しかし、①でシンボリックであっても対話を求めたのは、政治的な効果を生むであろう。また自分を含めて政府に向けられているデモを「ブラジルを変えるためのエネルギー」と表現するあたりは、問題のすり替えであっても、レベルの高いレトリックと感じた。

③は当初、暴力がない平和的なデモを望み、イメージダウンを避けるために機動隊などの出動を遅らせていたが、小売店に対する略奪、外務省への侵入などがおこりはじめると、統治者としてはこれに言及せざるを得ない。選挙の票をもっているのは、デモ参加者だけでないのである。うがった見方をすれば、暴力的であればあるほど、デモのイメージを悪くさせ、政府を助けるのである。

④では具体的な約束が述べられている。デモの早期の収束が最大の課題なので、「努力する」などといったメッセージは通用するものではない。この石油のロイヤリティの教育分野への振り分けは彼女自身が国会に提出している法案である。いわば自分のプロジェクトの宣伝もしているわけである。

⑤のワールドカップでは、すべての大会に出場している唯一の国である、過去5回優勝している、などといったブラジル人の琴線に触れるような(と勝手に思っている)メッセージに終わり、公共支出についての説明、あるいは釈明は何もなかった。

現時点で確実にいえるのは、来年の大統領選挙の行方は完全に不透明になったということだろう。



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