ブラジルとブラジルのマーケティングあれこれ

ブラジルで日々おこることをマーケッターの目で解説するページ。広告業界の情報も。筆者はブラジル在住29年目。

ポンテプロンタ広告ブログ

ブラジル、サンパウロで活動する広告会社のブログです。展示会、イベント、マテリアル製作、調査・マーケティング・コンサルティングの分野で、主に日本の企業、政府関係機関の業務のお手伝いをしています。日本語とポルトガル語のバイリンガルでアテンドいたします。 www.pontepronta.com.br

イタリアの日本食

2017-10-27 21:24:38 | その他

 日本のある外食チェーンのコンサルティングのために、先月のはじめにイタリアののミラノに行ってきた。外食のグループなので、やはり食事には気を使ってもらい、イタリアンのほか日本食のお店も何軒かアレンジしていただいた。長年、ブラジルにいるといっても、ほとんど日本食で生きているので、連日イタリアンというのはさすがに辛いです。
 
 さて、そういう中で食べたイタリアの日本食だけど、いわゆるフュージョンというのはこういうもんだというのがわかり、勉強になった。日本食で使われる食材をイタリア式(他の国ではそこの)に解釈してクリエイティブに作り込むということだが、例えば大変素晴らしい蟹肉があれば、それを使う時、サラダ様にして、イタリアだとオリーブ油をきかして、醤油をアクセントにする、そういう方向性をフュージョンだと僕は理解してしまった。日本の素材をイタリア式に処理するか、反対にイラリアの素材を日本的にこなすということかな。要するに素直ではないのだ。でもこの視点を軸に世界のいろんなフュージョンを食べて歩くのは面白いと思ったけど、スポンサーが必要だね。
 
 たしかに素直ではないのだが、美味しいのである。聞いてみるとほとんどのそういう日本食レストランの経営者は中国人だそうだ。理由はよくわからないのだが、中華料理がイタリア人にあまりうけず、本来なら中華レストランをやっているはずの中国人が、こぞって日本食の分野に進出したという。駐在員を除けばミラノに日本人移住者、定住者というのは数えるほどしかいなくて、ブラジルのように日系コミュニティをオリジンとする日本食のマーケットなんて存在しようがないので、数の多い中国人が活躍するのだと思う。
 
 中国人がやるなら味のセンスも安定しているし、日本職の伝統のスタイルへのこだわりなどもなく、またミラノ、イタリアの美食の文化に鍛えられた人たちだから、クリエイティブで美味いと思う創作日本食が出てくるのも当然かもしれない。ブラジルでの「フュージョン」と比べると、かなり差がついているのは間違いないと感じた。
 
 ミラノを見た後で、我がブラジルの日本食市場を振り返ると、私たちの国の日本食レストランは味のレベルを度外視すると、まったく正統派であることがわかった。フュージョンもどきをやっている店はあるけど、少数派であり、多くは日本の料理にできるだけ近づこうとして、そして多くは失敗はしているが、目指すものは日本のそれである。努力して少しでも日本と同じものを作れば、それで評価されるという世界である。一方、ミラノはそのこだわりがなく、自由にやっていると僕には見えたのである。もちろん日本人駐在員が3000人くらいいる街だから、その人たち対象の日本食屋はあり、それらは「正統」を実現しているけど、イタリア人向けにやっているところはそういう傾向であると思われる。
 
 イタリアは自分たちの食文化に絶対的な自信をもっていると現地で聞いた。たしかにそうだと思われ、素晴らしい料理を上から下まで一様に楽しんでいると、何気なく入った大衆レストランのパスタや前菜を食べながら理解できた。それだからこそ他国の料理(もっとも遠いと思われる日本食さえ)を飲み込んで、アレンジしてしまうのだろう。自国の料理に対する絶対的な自信とアレンジする技術、これがブラジルとの最も大きな違いだと思われ、それが日本食にも表れているというのが、この旅での僕の感想。


サンパウロでA5の和牛

2017-10-16 22:05:59 | マーケティング

 10月はじめにサンパウロで開かれた、日本食向けの食材やシーフードの展示会の「Asian & Sea Food Show」でA5の和牛を試食する機会に恵まれた。炙り寿司、蒸し野菜の上にのせたものに加え、薄切りを生で食べさせてもらった。やっぱりさっと口の中で溶ける、素晴らしい肉だった。

 展示会での試食イベントの目的は当然、こちらでの販路開拓だが、どう考えても末端価格はキロ数百ドルになる。さてこの肉をどう売るか。牛肉大国らしいブラジルの分厚いステーキはどう考えても無理だろう。あの脂を最後まで飽きずにブラジリアンサイズのステーキで食べるには相当頑強な胃袋と分厚い財布が必要だ。
 
 現実的な線でこちらの日本食マーケットを見渡すと、あの肉を使いまわすことができるのは、高級寿司店だと思われる。薄切りでスキヤキとかシャブシャブというのは、それらをきちんと用意してお客に食べさせるところがほとんどないので厳しい。「ナンチャッテ・スキヤキ」に使うにはもったいない。寿司店はピンからキリまであり、サンパウロでも高級店はそこそこまともに握るようになってきているし、最近ではスペインの畜養マグロの大トロなんていうものも出回っている。だから炙ったり、あるいはそのままで寿司ネタにして出せば、少々高くなるが、高級店のお客なら手が出せる値段で収まるだろう。また、薄いのを二、三枚シャブシャブにしてポン酢で食べさせるのも一品料理としてはいけると思う。
 
 やっぱり日本の肉は日本のやり方で食べるのが一番だろう。ブラジルの肉はブラジルのやり方で。