ブラジルとブラジルのマーケティングあれこれ

ブラジルで日々おこることをマーケッターの目で解説するページ。広告業界の情報も。筆者はブラジル在住29年目。

パウリスタにスタバが集中する理由

2017-01-04 22:12:23 | マーケティング

 

スタバが現在の103店舗から367店舗に拡大させるという発表をした。現在はサンパウロ州とリオデジャネイロ州に集中させているのを、ブラジリア、クリチーバ、ベロオリゾンテ各市を手始めに全国展開させていくという計画である。ただいつまでにということは報道記事には書かれていない。この商売、ブランドとロケーションの勝負だから、不況の今はいい場所に安く店舗を借りるにはチャンスかもしれない。

 

 ブラジルでのスタバの第一号店は2006年にモルンビ・ショッピングセンターだった。グループをブラジルに連れてきたのはピーター・レンデンベック(Cafés Sereia do Brasil Participações S.A)で、彼はマクドナルドを1979年にブラジルに上陸させた人物でもある。ブラジルのオペレーションをはじめるにあたって、スタバが49%、Cafés Sereia do Brasilが51%という資本構成だったという。実際にマネージメントしたのは妻のマリア・ルイザだったが、彼女は翌年にリオデジャネイロで事故死している。

 

 当時のレンデンベックのインタビューを見ると、材料、資材のブラジル内製化というのを強調している。当初輸入品が80%を占めていたのを40~50%まで下げたいと言っている。厳格にブランド、品質をコントロールしている本部としては抵抗も不安もあっただろう。実際、その目標がどの程度、実現されたのかはわからないが、最初のころやたら値段が高かったような気がするが、今では他のカフェチェーンと比べてそうでもないので、内製化にある程度成功しているものと思う。

 

 2010年に米国の本部はブラジルのオペレーションを完全子会社化することを決めて、Cafés Sereia do Brasilの持ち株すべてを買い取った(買収金額は探したけど見つからない)。そのときまでに店舗数は22店まで増えていた。4年で22店舗、買収後から今年までの7年で81店。展開は加速している。

 

 さて、しばらく前からパウリスタ界隈でやたら増えたなと思っていたので、ちょっと地図で場所と数を確認してみた。

 

 

 

コンソラソンの駅からパライゾまでの間に7軒、少し離れたフレイカネッカのショッピングの仲間で広げるともう2軒存在する。かなりの集中的な出店である。一方、もう一つのビジネス街であるヴィラ・オリンピアを見ると2軒しかない。洒落たレストランの集まる繁華街のイタインも2軒のみ。パウリスタは長いアヴェニューだからその影響もあるかと思ったが、店舗間の距離を見るとかなり近距離で出店されており、集中度はかなり高くなっている。それでいてそれぞれの店にはたくさんの利用者が出入りしており、カニバリがおこっているようには見えない。

 

このパウリスタへの集中的な出店はどういうことからくるのかな、と僕なりにヴィラ・オリンピアと比較して想像してみた。スタバはすべて直営店であるから、フランチャイジーの思惑というのは影響しないので、当たり前だが、すたばなんらかの意志、戦略が働いているはずである。

 

ヴィラ・オリンピアは新興ビジネス街だがこちらも大型ビジネスビルがにょきにょき立って、そこで働く人たちの数は相当なものである。昼飯時はあたりのレストランはいっぱいになる。ショッピングセンターもある。大企業も多いので働く人たちの所得水準も高い地域である。しかし、昼飯時が過ぎれば、みんなオフィスに戻って仕事にいそしむわけで、人通りはパウリスタと比べると少ない。また週末になると砂漠化するのである。

 

パウリスタにはパライゾまで含めると地下鉄の駅が4つあるので、それを利用してやって来る人は大量にいて、またバスもバンバン走っている。ショッピングセンター、大型書店その他、大小の店が多数存在し、ショッピングにも便利なところとなっている。つまりビジネス中心(アパートもあるが)のヴィラ・オリンピアと違って地域で働く人以外の消費者を集めている地域となっているのだ。一休みや人と会うときにスタバは便利な存在になっており、その結果、実際、道を歩いている人が多いのである。それが同地域への集中的な出店を促した、カニバリもおこっていない理由ではないかというのが、僕の仮説。

 

もうパウリスタなんて飽和状態ではないかと思っていたが、ここ5年以内でも新しいビルが建ち、ショッピングセンターもできたのを見ると、この地域はまだそうとうのポテンシャルを維持しているということがわかる。ヴィラ・オリンピアにも電車の駅があるけど、便数の多い地下鉄と比べるとやはり便利さは違う。

 

 

  



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。