≪手を動かさねばっ!≫

日常で手を使うことや思ったこと。染織やお菓子作りがメインでしたが、病を得て休んでいます。最近は音楽ネタが多し。

ジャック・ケルアック 『 スクロール版 オン・ザ・ロード 』

2010-11-11 11:33:32 | 本 (ネタバレ嫌い)


大変な本に手を出してしまった。
この本を読むのに1ヶ月半かかってしまったのだ。

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ジャック・ケルアックが1951年4月2日から22日のあいだ、3週間で一気に書き上げた話。
広いアメリカ大陸を車で何度も横断する話。 すごいスピード感が身上。
さる筋ではとても有名な本だそうだが、わたしはちっとも知らなかった。
村上春樹が影響を受けた、ということを小耳に挟んだ程度。
うっかり手を出して、酷い目にあった。

スクロール版があるということは、そうでない版もあるわけで、
そちらは長らく出版され愛されているらしい。
スクロール版はあまりにも生々しくやばい内容だから、
改行も入れ実名を別名に代えあちこち直した版が、紆余曲折を経てやっと57年に出版されたわけだ。
その50周年でスクロール版がアメリカで出版され、(関係者はおおかた死んだろう、ってことか!?)
その翻訳がこの本だ。
という記念すべき本で、皆さん思い入れが強いらしく、
402ページの本文のあとに、その筋4人!の解説が130ページもある。
訳者あとがきは別ね。 大層な本だ。


スクロールって?
巻物状の原稿なんだそうだ。 なんと、改行がない!!
ええっ!? 改行がないページもある本 ―金枝篇― なら読んだことあるけど、
このスクロール版は、一切 改行がない。
どのページどのページめくってもめくっても、字が ぎっしり …。
改行だらけで字も大きくて白っぽい、今風の小説と対極。

一気に最後まで読むことはないから、どこかでけりをつけて本を閉じようとするが、
その取っ掛かりがつかめない。
頭の中でも話の区切りをつけることが難しい。
それに慣れるのに80ページかかった。

無遠慮に登場人物が増える。 アメリカを旅してどんどん地名が出てくる。
それについていけない。
面白い、と思ったのは200ページを過ぎてから。
さっきも書いたが、本文402ページの本です。

とにかく最後まで目を通そう、という精神でページを繰っていったから、
面白いと思って読み終わったにもかかわらず、
読み終わってもいまひとつ分かっていない。 ああ不完全燃焼。
悔しくて、もう一回読むことにしてしまった。 これが運の尽き。
今度は地図帳とノートを隣に開いてだぜ! アホかい!?

出てくる地名をいちいち地図帳の索引で探し、地図のマス目の中で探す。
出てくる人物で気になるのは、ノートにいちいち書く。
ほら、時間がかかるわけだ。
しかも、一行で三つも地名が出てきたりするもんだから。
オン・ザ・ロード地図が欲しいよ、と思った。(先がわかってしまう地図も困るか。)

でも時間がかかった一番の理由は、書き抜きなんかしてしまったことだ。
この本でなにが一番心動かされたかというと、
描写 だ。
なんでこんな言葉を使えるんだろう!?
とそのセンスにいちいち驚くような文がひょいひょい出てきてしまう。

青山南の翻訳も、原文の味わいを失わないような言葉選びをしているんだと思う。
とにかく、読みながら唸ってしまうのだ、ときどき。
そんなのをいちいち書き写してしまうもんだから、ほら、やたらと時間がかかるのは当たり前。
そういう描写は200ページを過ぎたあたりからぐんと増える。


p.158
平和はいきなり来る。だから、来ても気がつかない、わかるか、おい?

p.251
歩道に幽霊がいるような気分だった。僕は窓の外を見た。やつが入り口のところで一人で立って、通りをじっとながめている。苦情、叱責、忠告、訓戒、悲哀―そういうのが全部やつの後ろにくっついて回る。しかし、やつの前方に広がるのはピュアに存在していることのざらりとしたエクスタシーの歓びだ。
(太字にしたのはわたし)

p.275
面倒は、蝶々たちが舞いあがるように、もちあがってきた。
等々


ああ続きが気になって…、なんてかんじで本を手に取るんではなく、
もう格闘みたいになってしまった。
負けないぞ、最後まで喰らいついて、得るものは逃さない!
存分に浸り、くたびれました。 ゴールに到達した心境。
ふー。 へー。


話の中で、ジャズ が大きな要素になっていた。
大学時代にビッグバンドジャズをやっていて本当によかった、と思った。
だけど話の中では、
40年代後半、つまり第2次世界大戦が終わってから数年のあいだのジャズの話で、
うちにあるCDはその10年後あたりが主なんだよなぁ。
ジャズのCDは夫が買ったものも多いので、こんなのもあったっけ?
と思いながら、端からかけまくった。
少しはありました、40年代後半も。 そこらで思った話はまた別の記事にするつもり。


それにしても、アメリカって…、と呆れるようでもあった。
「ハックルベリー・フィンの冒険」 を読んで呆れたのと同じようかも。
どのように呆れるのか、というと、恐れずいえば 野蛮 ということ。
生き急ぐ、明日の心配をしない など。
いのちみじかし、こひせよをのこ ?
現代の日本の若者と、正反対!?

わたしにはこのような生き方はできない、と思うけれど、想像したり夢見たりすることはできる。
この話はそういう生き方をリアルに教えてくれた、ボカボカ頭を殴りつけて。


ところで↑写真は、10月17日、川場の道の駅で撮ったもの。


人生のどこかで読んでみてもよい本だ。
 覚悟してね。



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