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クッキ(菊熙)からトンイ(同伊)へ

2013-09-02 08:27:03 | Area Studies

クッキからトンイへ
 「クッキ」(1999)が映し出した太陽政策下韓国の政治状況

 「クッキ(菊熙)」(1999)は韓国の民間放送局MBCで放送されたテレビドラマで全21話。韓国では50%を超える高い視聴率を得たとされる。2006年4月から8月までNHKBS2で放送された。1930年代から現代にかけて韓国社会が変化する中で主人公が製菓業界で苦難を乗り越え成功してゆく姿を描いている。地味ではあるが、ビジネス成功物語としても興味深いドラマだった。ムチョン・ソンヒ脚本。イ・スンリョル監督。主人公を幼年時代はパク・チミ(1988-)成人後はキム・ヘス(1970-)が演じている。
 時代背景として対日関係や朝鮮戦争下の状況も描かれているため、日本がどう描かれているかが関心を呼ぶドラマだった。登場する日本人像も私たちからみて違和感はないものだった。これが中国のドラマだとしばしば日本や日本人が一方的に悪者に描かれていることがある。
 クッキが放送されていた当時のキム・デジュン(1925-)大統領(1998-2003)は日本とは親日政策をとり、北朝鮮とも太陽政策という融和路線を取っていた。

 クッキ wiki  その後のノム・ヒョン(1946-)大統領(2003-)President Roh Moo-Hyunは金大中の太陽政策は継承したものの、対日関係ではわざと反日を通すことで世論の支持を得て政権の延命を図っていると日本では指摘されることが多かった。キム・デジュン政権は概ねアメリカのクリントン政権(1993/1-2001/3)末期と対応するのにノム・ヒョン(2003/2-2008/2)が登場したときアメリカはブッシュ政権であり、2001年9月の同時多発テロ、2003年3月の対イラク侵攻と事態は推移した。

チャングム(2003-2004)の登場

 2003年9月から2004年3月まで韓国MBCで放送された作品であるが,毎回の視聴率は50%を超えたとされ驚異的な人気を博した。日本では「チャングムの誓い」が2004年から2005年にかけてNHKBS2で放映され、同様に人気を博した。チャングムを演じたイ・ヨンエ(1971-)の清純な姿やキン・ヨンヒョンの宮廷の人間模様や抗争を描く脚本も見事だった。ミン・ジョンホを演じたチ・ジニも人気を得た。このドラマは中宗(チョン・ジュン ドラマではイム・ホが演じた)(1488-1544)治世下での政争を背景としているが、それがかなり血なまぐさいものだったことはドラマで描かれているとおりで、そうした史実との関係がこのドラマの魅力でもあった。
 16世紀を描いたチャングムでは階級制度が厳しい封建制度のもとでの女性の生き方を描いている。また日本との関係では倭寇の問題などが、中国との関係では中国からの使節の接待の問題などが描かれている。 政治的にはノムヒョン政権の時期。盧武鉉の対日政策は2004年頃から硬化する。チャングムは対日政策が硬化する過程と時間的には重なっている。 

  チャングムの誓い あらすじ
  チャングム年表

 ノムヒョン(廬武鉉)政権下で生じた反日立法

 2004年3月2日成立 3月22日公布施行 親日反民族特別措置法

 2005年12月8日成立 12月29日公布施行 親日反民族行為者財産の国家帰属特別措置法

 2003-2004年は韓国映画の当たり年だった。テレビドラマ「チャングムの誓い」が韓国で放送されたのが2003-2004年だったほか、対北朝鮮政策の変更により政治的に抹殺されようとした684部隊の1971年8月の蜂起(決起した24人のうち20人が射殺され生き残った4人は死刑となった)に至る過程を描いた映画シルミド(2003)が公開されている。1950年の朝鮮戦争下の兄弟愛を描いた映画ブラザーフッド(2004)が公開された。朝鮮戦争では攻め込んだ北朝鮮側、またこれに対抗した韓国側その双方がいずれも結果として住民を虐殺する事件を起こしているがブラザーフッドではその悲劇が正直に描かれている。韓国映画の水準の高さとともに、これらの映画は戦後の韓国の苦難の歴史を改めて私たちに伝えてくれた。
また映画「大統領の理髪師」(2004)はイム・チョンサン監督、ソン・ガンホ主演で政治に翻弄される庶民の姿を描いた映画だったが、韓国の政治が日本、北朝鮮、中国そしてアメリカにより翻弄され、軍・特殊警察による強権が最近まで影を落としていたことを思い起こさせた。この映画は、韓国現代政治史とよく重なっており、イ・スンマンによる不正選挙(1960/03/15)、学生による糾弾蜂起(60/4/19)、パク・チョンヒによる軍事クーデター(61/05/16)、大統領暗殺を狙い北朝鮮の武装ゲリラ31人がソウルに進入(68/1/21 29人は射殺、1人は逃亡、1人を逮捕)、パク・チョンヒ暗殺(79/10/26)、チョン・ドファンによる軍事クーデター(80/05/17)、このクーデーターに抗議する学生・市民が正規軍により鎮圧され政府発表でも200名以上の死者を出した光州事件(80/05)など、韓国政治の暗部を思い起こさせた。こうした強権発動を繰り返す政治のもとで、政敵を逮捕拘禁するだけでなく、拷問やスパイ名目での処刑などが韓国ではつい最近まであったのである。そしてこうした非民主的な動きが正当化された背景に、北朝鮮との軍事的緊張があった。
 1980年代に入ってからも北朝鮮がチョン・ドファン大統領暗殺を狙ったされるビルマのラングーン市内アウンサン廟での爆破事件(1983/10/09 韓国・ビルマ両国の21人が死亡。ビルマ政府は北朝鮮の犯行と断定し北朝鮮と断交)。1988年のオリンピック開催を妨害するためとされるベンガル湾上での大韓航空機爆破事件(1987/11/29 韓国人を中心に乗客乗員115人全員が死亡)。などの許しがたい事件が起こっている。

2004-2005年:韓国が当面する社会問題の顕在化
   ところで2004年から2006年にかけて韓国社会が当面する2つの問題がはっきりしてきた。一つは少子化問題で2005年の韓国の出生率は1.08と2004年(1.16)に続き世界で最低になった。2006年には1.13と少し戻したものの、日本よりも低い数値となっている。背景には晩婚化、価値観の変化、教育費の問題が指摘されている。韓国は2020年からは人口の減少が始まるほか、国内消費の縮小も予想されている。そして今一つはウオン高である。この結果、国際的に競合メーカーの多い自動車などでは韓国企業は輸出競争力の低下に悩むようになった。比較的小さな経済圏しかもたない韓国が国際競争力をもつ企業をいかにして育てるのか、育てることができるのか。

チャングムから6年。トンイの登場(2010)
そしてトンイが登場する。トンイ(同伊)は2010年3月から10月まで同じく韓国MBCで放送されたもの。全60回。 トンイの視聴率は当初10%台と意外に低かったがそのご25%前後にまで上昇した。いち早く2011年4月から12年6月にかけてNHKBSで放送。その後2013年1月から再放送されている。こちらの舞台は17世紀末から18世紀にかけて。チャングムと同じく韓国宮廷の政争が中心。チャングムに比べると歴史的に分かっていることが多いようだ。時代は粛宗(スクチョン 1661-1720)の治世。官僚派閥である南人と西人の争いが背景。トンイとされるのはハン・ヒョジュ(1987-)が演じたスク・チョンの後宮スッピン・チェシ(1670-1718)。日本との関係では日本との交易などに触れているほか、中国との関係ではチャングムと同様に中国の使節の接待や中国によるセジャ(世子)の承認の問題などが描かれている。

 チャングムに比べて血なまぐさい場面は抑えた演出が目立つ。そこに韓国社会の成熟を確認できるようにも感じられる。時の政権はイミュンバク大統領(2008/02-2013/02)。 
     トンイあらすじ
     トンイ年表  

イミョンバク大統領の対日政策は政権後半に入った2011年後半あたりから硬化している。

具体的には 2011年12月14日 ソウルの日本大使館前に従軍慰安婦像が民間団体により設置されたのを黙認

         2012年8月10日 日本政府の中止要請を無視して竹島上陸を敢行 など

You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.  originally appeared in Mar.2008 corrected and reposted in Sept.2013

地域研究 ビジネスモデル 経営戦略 


Research: レアアースとレアメタル

2013-08-11 13:31:45 | Area Studies
レアアース rare earth(希土類)

 120種類ある元素の中で、原子核の周りの4f軌道に電子が詰まっていく元素で、材料に混ぜると材料の持つ性質を大きく変化させる。電子の方向がふぞろいになることで、磁力を強めたり、光の色を変化させる。当初希少と考えられレアアースと名付けられた。17元素ある。
 世界供給の97%が中国(中国は1990年代に安値輸出でシェアを伸ばす。2010年の輸出枠は昨年比4割減の3万トン) 2011年の輸出枠はさらに減ることになった(1万5000t弱)。中国政府の姿勢転換を受けオーストラリア、ベトナム等中国以外での開発も進む。双日、住友商事、三菱商事の3社で日本の輸入量の半分を扱う 三井金属 アドバンテストマテリアルジャパン。
rare earth wiki(English)
 中国政府は2010年に入り、採掘規制強化。2010年7月には輸出規制で同年輸出枠を3万tと前年比4割減少を、「突然」「強硬に」断行し、これには事実上の禁輸といった表現もとびかった。背景には内需拡大もあるとされる。さらに2010年12月の2011年の輸出規制では前年比35%減1万4446tに削減した(日本国内の在庫は急減 2010年10月末には9月末913tの半分の481t 価格高騰を招くほか 中小は生産にも支障の指摘)。
 たまたま尖閣問題が重なり中国政府は禁輸に近い措置をとる。しかしその結果 日本企業はレアメタル レアアースの確保に
より熱心に取り組むようになった。

 2011年4月 中国ではレアア-ス生産者に課す資源税を10倍以上に引き上げた(4月1日から1tあたり3元から30-60元に引き上げる 大手国有企業に採掘・生産を集中し中小業者の退出を促す狙いもあると推測されている)。
 2011年5月下旬 中国政府はさらなる生産・輸出管理強化を表明 一部の日本メーカーは生産拠点の中国移転に踏み切った。
 2011年7月5日 世界貿易機関WTOは 中国が鉱物資源(レアメタル9品目)の輸出を不当に制限しているとして米国と欧州が提訴している紛争について、米欧の訴えを認める小委員会報告書を発表した。
 皮肉なことにこの7月頃をピークにレアアースの価格は反落をはじめ、2011年10月末には7月のピーク時の5-8割まで下がった。その理由は複合的だが、欧米の経済事情の悪化による世界経済の減速が大きいのでは。⇒ 中国生産大手は一部あるいは全面的生産停止を実行 価格維持図っている。現在の低下傾向が続くかどうかは不明。生産の大半を握る中国の生産抑止の姿勢に変化はないと考えられ、他方で伝えられるほかの国でのレアメタルの生産がうまくゆくとしても、中国にすぐに代替できるとは思えない。しかし他方で、レアメタルを使わない技術が生み出されれる可能性もないとはいえない。
 レアメタルをめぐる2010年春以来の中国の「突然の」(その兆候は数年前からみられた)「強硬な」姿勢転換は、2010年9月に生じた漁船船長「逮捕」事件での日中対立とともに(あるいはホンダなど中国進出企業工場での賃上げスト(2010年5月)とともに)、中国に依存した経済モデルに潜む不安定な側面を露呈させたことは間違いない。
 その後 2013年7月 レアアースの価格はついに中国が輸出制限する前の価格(2011年7月)の高値の7分の1に戻った。日本側の省資源そして代替資源活用の努力。中国の経済成長ダウン。在庫の積み上がりなどが影響していると思われる。なお中国では乱掘による水汚染による健康被害も伝えられており、将来この健康被害の問題は大きなリスクとなる可能性もある。
 日本の企業としては安定的に供給できないものは、供給(調達)リスクがあるとして調達を控える行動を選択した。中国側はレアアースを対日戦略に使う側面があったが、結果としてこの戦略は、成功しなかった。日本の側が取った行動としては、異なる調達先の確保、使用量の削減努力、代替資源の使用、などがある。中国国内での乱掘により自然破壊の問題も絡んでいるが、中国側のこうした資源戦略は、中国に対する日本国内の警戒感を高める方向に働いた。
 自然破壊(地下水の汚染など)の問題については、中国の中央および地方政府が主体的に防止に努めるべき問題だが、日本は公害問題を経験した先進国として法制の整備、地域住民の健康管理・汚染を低減する技術開発・自然環境の回復などを支援する必要があるのではないか。
 他方 日本近海の海底に高濃度のレアアースが存在することが確認されている。比較的浅い海底でも確認されているので採掘コストが安くなる可能性も指摘されている。近海の海底ではメタンドレートも確認済み。問題は採取コストとされる。

 レアアース:17元素の総称
 磁石になりやすい 酸素とくっつきやすい 鉱石から取り出すのがむつかしいものが多い レアメタルの一種である。
 具体的には、
 セリウムCe 液晶ガラス基板の研磨剤や排ガス浄化材用触媒に使う 研磨剤国内大手 昭和電工 2010年7月から8月にかけて価格が2倍になる。在庫不足の声(2010年8月中旬)。2010年末 前年末比6-7倍に急騰。
 ネオジムNd ハイブリッド車のモーターなどの強力な磁石の原料に使う  2010年7月から8月で13%高 2010年秋までに昨年比4倍に高騰
      2011年5月から6月で4割高騰
      強力な永久磁石 主成分のため例外的に大量にネオジムを使う 電気自動車用モーター
      高性能磁石に使用 HDドライブのモーター用 中国で9割
 ジスプロシウムDy 磁石の耐熱性を高める 高温になっても磁力が落ちない効果がある 磁石原料 電気自動車用モーター
         ハイブリッド車の強力磁石に使う 2011年4月 1ケ月前に比べ3割上昇 1年前の6倍 
         2011年5月の取引価格キロ1200ドル 6月下旬3300ドル前後に跳ね上がる    
         ネオジム磁石にジスプロシウムを添加する 微細化による添加量削減が研究されている
         電気自動車の普及で需要拡大見込まれる 採掘規制が始まっている
         小さくて力が出せる磁性体 モーターや振動体の小型化に貢献。微量のディスプロシウムが必要。
         雲南省など中国南部にだけ鉱床。中国で2010年以降採掘規制強化 中国国内需要で輸出減少
         信越化学工業や日立金属 希土類磁石 
         愛知製鋼がジスプロシウムを全く使わない磁石の開発に成功。2011年春に量産へ。
 ランタンLa レンズの屈折率を上げるために必要 光学レンズ材料 光学ガラス 超電導物質 水素吸蔵合金
ユウロピウムEu 赤色蛍光体
イットリウムY 高温超電導物質 強力なレーザー
 スカンジウムSc 軽量高強度合金 球場の証明
 など

希土類(レアアース)の埋蔵量
 中国36% CIS19% 米国13% 豪州6% インド3%(豪州のほか ベトナム インドネシア カザフスタン ブラジル 南アフリカなど各国でプロジェクトが進行中)オーストラリア ベトナムなど各地
 世界の埋蔵量は9900万t 現在の採掘量は12万t程度?
 現在の生産量が中国の生産(2009年 12万t 世界の97% 生産量は2010年10万tに削減 規制逃れの生産があるともされる)に偏った理由 人件費の安さ 環境対策にコストをかけていないこと 中国の鉱床はレアアースが付着する粘土層が地表近くにあり低コストで取り出せる 米国では主力のマウンテンパス鉱山(米資源会社モリコープが保有 1952年生産開始 過去の在庫を保有 三菱商事を通じ国内販売 住友商事から出資交渉中 2010年7月NYSEに上場 生産再開に5億3000万ドル必要)が98年に閉山(1994年当時米国は3割ほどのシェアがあった。2003年に米国の生産はゼロに)、2012年生産再開にむけ準備中。ベトナム、中央アジアでも新たな鉱山開発進行中。
 輸出制限の背景には価値の高いレアアースがこのままでは20年以内に枯渇する恐れがあり生産制限をかける必要がでてきたとみられている。
 自国用に確保の面も指摘されている
 工場を先進国から中国に移転させて生産技術の流入を促す狙い 
 ⇒生産拠点の中国への移転(技術移転)を促す
 
生産量で9割以上の中国の対応
 中国に埋蔵量の36% 生産量は97%。埋蔵量の多い国はロシア19% アメリカ13% オーストラリア5% インド3% など(2009年の米議会調査局調査)。中国の中でも内モンゴル自治区包頭市が中国生産の6割を占める。残りは江西州等南部 北部は大手国有起用が生産販売を独占 生産規制も守られている 南部は中小業者乱立 違法な操業が後を絶たないとされている。
 1992年 小平が「中東に石油あり中国にレアアースあり」といったとか。
 1990年代 中国が安値で大量供給 米国などの鉱山が生産停止
 2007年1月 希少金属(レアメタル)や希土類(レアアース)の輸出に厳しい規制 輸出を許可制に 数量(非公表)を毎年削減する
 2007年6月 輸出税課税始める
 2010年に入り 南部で採掘権を持たない業者の取り締まり強化 江西省や広東省で採掘規制
 2010年4月 湖南省で排水浄化設備の設置強化が義務付け
 中国はレアアースの備蓄を始めているともされる(レアアース最大手 内蒙古包鋼希土集団高科技が2010年春から試行 供給管理 価格調整等の狙い 輸出抑制姿勢が鮮明)
 2011年4月 中国ではレアア-ス生産者に課す資源税を10倍以上に引き上げた(4月1日から1tあたり3元から30-60元に引き上げた 大手国有企業に採掘・生産を集中し中小業者の退出を促す狙いもあると推測されている) 
 2011年5月下旬 中国政府はさらなる生産・輸出管理強化を表明 
 2011年7月5日 世界貿易機関WTOは 中国が鉱物資源(レアメタル9品目)の輸出を不当に制限しているとして米国と欧州が提訴している紛争について、米欧の訴えを認める小委員会報告書を発表した。
2010年7月 輸出許可枠を前年比4割減らし約3万tにすると発表した前年比4割減少 事実上の禁輸といった表現もとびかう。背景に内需拡大。(このほかに採掘規制強化もあり鉱石供給量が大幅に減少 2009年の生産量12万t 2010年以降は10万t以下に抑える)
 輸出枠を5年前の半分以下の3万トンに抑制したことは価格上昇招く 投機マネーも流入
2010年9月7日 尖閣列島で中国漁船が海上保安庁の警備艇に衝突。9月24日に船長を釈放するものの日中関係悪化。レアアース輸出が滞り一部のレアアースの価格が4-6倍にはねあがる。
 2010年9月 中国国務院がレアアース開発業者の合併・再編を促進する方針を明らかにした
2010年12月14日 中国財務省は一部のレアアースの輸出税を2011年1月から引き上げると発表した。
 2010年12月の輸出規制では前年比35%減1万4446tに削減(日本国内の在庫は急減 2010年10月末には9月末913tの半分の481t 価格高騰を招くほか 中小は生産にも支障の指摘)
 2011年4月 中国ではレアア-ス生産者に課す資源税を10倍以上に引き上げた(4月1日から1tあたり3元から30-60元に引き上げる 大手国有企業に採掘・生産を集中し中小業者の退出を促す狙いもあると推測されている)
 2011年5月下旬 中国政府 生産・輸出管理強化を表明
 2011年5月19日 レアアース産業育成指針を公表 北部の内モンゴル自治区だけでなく江西省でも中小生産者を統廃合する方針
         7月からレアアース含有率の高い鉄合金(レアアースと鉄の混合物)を輸出枠の対象に加える(規制対象にする)
 2011年6月   生産管理の強化から8月にも生産中止命令が見込まれる
2011年夏    レアアース価格高騰(7月がピーク ジスプロシウムは7月末に前年同月の7-10倍の高値をつけた)
 2011年9月 酸化セリウムの価格は2010年4月の16倍 ネオジムの価格は同8倍
 2011年10月末 7月ピーク時の5-8割まで下がる ⇒ 中国生産大手は一部あるいは全面的生産停止を実行 価格維持図る
 2011年秋    7月をピークに下落(11月には5月時点程度まで下がる)
        採掘規制を守っていない業者による在庫処分
        レアアース使う省エネエアコンの中国での販売伸び悩み
        電機自動車の販売 磁石に使う鉛の問題で販売鈍化
        投機マネー流出 レアアースあまり使わない新技術開発も進む
        ネオジム、ジスプロシウム
 2012年12月27日 中国商務省発表の2012年前期の輸出枠は24,904トン。これは年間の80%とされるので通年の輸出枠は3万トン程度と2011年なみになった。ただし2012年からは、セリウムなど軽希土と、ジスプロシウムなど中重希土を分別管理することとし、後者は4000トンに限定した。2011年に日本は、中国からジスプロシウムを1000トン、ジスプロシウム合金を1万トン輸入する見込み。こうした中国の厳しい規制、そして2012年の新たな輸出規制が日本経済にどのような影響を与えるかは注目される。

日本政府 および日本企業の対応

調達源の多様化
 日本 米国 豪州 カザフスタン ベトナム インドなどと連携  開発に協力 調達源の多様化を進める
    このほかモンゴルでの探査事業着手もある(2010年10月)

使用量の削減
 エオコカーに必要なネオジム磁石。ネオジム磁石をつくるときのネオジムの使用量を3割、ジスプロシウムの使用量を半分似減らせる新技術を開発。2013年から新技術で量産するとのこと。将来的にはシスプロシウム使用量をゼロにするとも。
 三菱電機がレアアースの使用全廃したモーターを開発した。
 TDKはジスプロシウムを使わない駆動モーター用磁石の実用化にめどをつけた。
 東芝もジスプロシウムを使わない磁石の開発を進めている。
 インターメトリックス(三菱商事 大同特殊鋼と連携 ネオジム磁石の生産でジスプロシウムの使用量を2割へらす需要開始) 
        インジム(液晶表面材の原料の一つとなる)
        大量に使う液晶テレビ パソコンの販売低迷が影響
        スマホ向けは伸びているがスマホ向け需要は大型液晶テレビやパソコンに比べてはるかに少ない
        画面が小さい分必要ない
生産拠点の中国への移動
 一部のメーカーは拠点を中国に
 日立金属 2013年ニネオジム磁石の生産を中国で始め方針(中国政府の思惑 産業高度化に乗っている面もある)。日立金属はネオジム磁石で日米欧でシェア5割の最大手。 
  米モリコープと長期契約。米国でネオジム磁石生産も検討。
  これまでは熊谷製作所のみで生産。調達の多角化だけでは限界。 
 磁石用合金を生産する昭和電工も、高性能合金の一部生産を2011年7月に江西省の合弁製造会社に移管した。


 2010年後半 中国からの輸入が一時停止した。
    代替品を使う
    使用料を減らす
    家電から回収する
 2011年7月4日 英ネイチャージオサイエンス 東京大学などの研究チームが太平洋の海底にレアアースの巨大鉱床を発見
    水深3500-6000m 多くは公海 推定埋蔵量約1000億トン ⇒ 南鳥島近海が有力ともされている
 2011年10月29日 日本政府は日印外相会議でインドのレアアース共同開発推進で一致 インドは世界生産で2位 埋蔵量で世界4位と潜在力がある
 2011年10月31日 日越首脳会議でレアアース共同開発計画で合意 
 2011年末 オーストラリアのライナス社(双日などが出資)が生産開始 2012年に1万1000トン体制
    このほか米モリコープが閉鎖鉱山を2012年再稼働(中国のピーク時の価格提示に日本国内は反発強い 品質が悪いとも) 2013年には両社あわせて6万トン
    ベトナム アフリカ南部からも調達計画が進行中

信越レア・アース
中電レアアース
豊通レアアース

レアメタル(希少金属)について
 レアメタルは埋蔵量が少ない金属という分類で科学的な分類ではなく、経済産業省ではレアアース17品目を含めて47元素をレアメタルに指定している(レアアース全体を1元素として31元素ということもある。すなわち30+1(=17)である)。したがってレアメタルの議論にレアアースの議論が混じっている。
レアメタル wiki(日本語) なおレアメタルは和製英語。minor metalsといった方が外国人には通じるようだ。
 もともと生産量の少ないレアメタルの確保ができなければ、思わぬ成長制約となりかねないという意味でレアメタルが広く注目を集めている。また価格の高騰も悩みの種になっている(参照 商品市場)。
 たとえば白金(プラチナ)は排ガス浄化用触媒に欠かせない。自動車1台あたり約3グラム必要。次世代燃料電池車では80グラムから100グラム必要で現在価格で40万円超が必要とされる。しかし白金は南アフリカでほぼ8割が生産されている。超硬工具に使われるタングステンに至っては、中国での生産が9割を超える。液晶パネルの電極にはインジウムが使われるが、これは中国で5割以上が生産されている。
日本は世界の中でもレアメタルの使用量が多く、世界で生産されるインジウムの6割、プラチナの2割を消費している(N07/06/21;07/08/20NE)。
 より使用量を削減する技術の開発、安い金属に代替させる技術の開発、さらにはリサイクルによる確保などが進められている。
 レアメタルは電気自動車等のエコカーやハイテク製品の生産に不可欠。
 価格の高騰により調達難だけでなく企業収益の影響も懸念される。
 レアメタルの取引価格が一段と上昇している(N11/02/09)
 このレアメタルについても中国政府が輸出枠の削減姿勢を示している。日本としては調達源の多様化を急いでいる。
    ポルトガル(タングステン)、カナダ(モリブデン)、チリ(モリブデン)

レアアース以外のレアメタル
アンチモン(アンチモニー)  難燃助剤(合成樹脂を燃えにくくする) 中国が供給の9割 主生産地:湖南省で2010年4月環境規制で中小生産者の操業が長期間停止 鉱山の操業規制が強化され鉱石の供給減っている 2010年11月初旬 年初比価格は91%上昇 2011年2月前年同期比2.1倍
インジウム 液晶テレビの電極 大型化で使用量上昇 液晶パネル 5割以上中国55% リサイクルが有力(再生品活用で値下がりへ)
ゲルマニウム 中国7割
コバルト   主産国はコンゴ民主共和国 リチウムイオン電池材 小型2次電池 年初比1.4倍タングステン 自動車の生産にかかせない超硬工具に使う 中国8割 中国でも消費が拡大 輸出枠削減 生産抑制進む
ジルコニウム 自動車排ガス用触媒に使う 2010年末に比べ2011年2月には6割高 原料はジルコンサンド 主産地 オーストラリア 南アフリカで販売抑制 埋蔵量減少
タングステン 中国で8割生産 超硬工具に使う 2010年10月上旬 中国が税関検査強化 2010年年初に比べ42%価格上昇(2010年11月上旬)
チタン    航空機需要 発電所向け溶接管 プラント重要など(価格ノピークは2008年。2010年まで価格は下落。2011年は2010年比5%程度上がる。) 
バラジウム  南アフリカ5 自動車用触媒
マグネシウム 中国8割(中国は5割とも) パソコンの外枠に使う 年初比2倍 08年10-12月 3年ぶりに反落 7-9月比27%下落 景気後退で供給過剰 携帯電話 パソコンの外装材 軽量化が進む自動車ノアルミ合金向け 東日本大震災後 中国と日本で自動車生産は減速 価格高騰が一服 6月の頭 トン3135ドル(5月上旬比90ドル安い 昨年末比260ドル高い)  
マンガン   自動車用バッテリー
モリブデン  製鋼原料 特殊鋼用需要好調 鉄に添加すると高い強度得られる。鋼材の強度を高める役割。
タンタル   パソコン基盤
プラチナ(白金) 需要の4割は自動車排ガス用浄化触媒 自動車の排出ガスをきれいにする触媒 南アフリカに生産集中8割 08年10月23日 一時786.1ドル 04年7月7日以来の安値 ピークは08年3月の2251.1ドル
ニッケル   蛍光灯の電極に使う
リチウム   電気自動車、ノートパソコン向け電池 現在(2009年)は日本はチリから全体の86%を輸入している。ボリビアのウユニ塩湖(リチウム埋蔵量は世界の半分、世界1とも)の開発計画 日本(住友商事 三菱商事)のほか韓国も囲い込み急ぐ モンゴルにもリチウムを豊富に含む塩湖があり注目されている

 最近では銅やニッケルなど大量に入った非鉄金属、ベースメタルにも不足感が波及(新興国の消費増加 中国は銅の世界消費量の3割を占める インドネシアやタイなど東南アジアが2割強:自動車や家電など銅を使う工場の集積を反映 インド 電気自動車は車種によってはガソリン自動車の3倍銅を使う)。価格が高騰している(鉱山の開発 低品位鉱石の利用拡大に合わせて精錬技術の向上 精錬メーカーが鉱山開発を確保する動きをしている なお鉱山開発は巨額の資金が必要である一方リスクも高い)。
 DOWAホールデイングス 非鉄金属大手 非鉄精錬事業の売上高が約5割 世界各地に銅鉱山等の権益
 住友金属鉱山 銅のほかニッケル鉱山保有
 輸出(価格面のメリットが少ない場合でも) 稼働率の改善 需給引き締め効果
 ファウンダリー(半導体の受託生産) 1980年代後半は日本の天下。しかしいまでは台湾(TSMC)・韓国(サムソン電子)などにシフト。
 国内生産が減るとともにリサイクルの市場も海外に。海外で発生。国内で金属を回収。再び海外向けに金属材料再生。
 他方では景気の低迷=需要の減少、円高による輸入価格減少は価格の押し下げ要因

アドバンスト・マテリアル・ジャパン
日下レアメタル研究所
鈴木産業株式会社

Originally appeared in Oct.29, 2010
Corrected and re-posted in August 13, 2013

Financial Management Pt.1 Fin. Manangement Pt.2 Modern Fin. System Fin. Management Reference
East Asia Business Model Business Strategy 




中国と台湾の政治と経済:2008年6月

2013-01-16 09:21:28 | Area Studies
日本の台湾統治について(日治時期大事回顧)(2009年のテレビ番組 大話新聞)
 日治時期大事回顧 了解台湾的歴史 0113 日本統治期の主要事を回顧して台湾の歴史を理解する
 日台戦後比一比 戦勝国反不如戦敗国 0213 日本と台湾の戦後を比較する 先勝国が戦敗国に及ばなかったのはなぜか
 日治台湾再尋根 重視歴史真実面貌 0513 日本の台湾統治を再び検証する 歴史の真実を重視する 落地生根
統治心態看償値 日人KMT大不相同 0713
 治台心態求長久? 日人未当自己過客? 0813 台湾を治めるには長期的心構えが必要
 治台建設 歩快 日人奠定现代基础 1013 日本人が現代の基礎を固めた

1.中国(本土)の政治(2008年6月稿)
 2001年までの中国は江沢民主席President Jian Zemin(1926-)、朱鎔基首相の時代。江沢民は、愛国教育を進め反日運動の要因をつくりだした点で、それまでの中国の指導者と対日姿勢に違いがあると日本側には映っていた。また上海出身で上海を特別扱いしたことから、景気引き締め政策などの面で上海が中央政府の指導に従わない要因を作ったことには中国内にも批判もあった。
 2002年に胡錦濤President Hu Jintao(1942-)、温家宝首相Prime Minister Wen Jiabao(1942- 首相就任は2003)というコンビに移ると、江沢民派の上海をいかに制するかは中央政府の大きな課題となった。胡錦濤は清華大学出身で共産青年同盟を経た英才とされるが、1980年代末から1990年代にかけての難局に反乱の危険のあるチベットに対する統治にあたった経験をもつ。2006年9月に胡錦濤は上海市党委書記の陳良宇Chen Liangyuの解任を行い、江沢民派の上海閥との政争が表面化した。陳は現代中国の指導者には珍しいことだが英国バーミンガムに留学経験がある。しかし社会保障基金の不正流用などの問題があったとされている。その後2007年3月には陳の後任に改革派で知られまた次世代の中国政府幹部候補の一人習近平(堅実な生活ぶりで知られ清華大学出身 法学博士 浙江省党書記)を任命した。習は江沢民に近いとされ、やはり上海は江沢民派から切り離した人事はむつかしいようだ。しかしわずか7ケ月後の2007年10月に習は政治局常務委員(党務=書記)に転出。代わって上海市党書記には兪正声湖北省党書記が就任した(ハルビン軍事工程学院卒で実力者として知られる)。兪氏は習氏とともに江沢民と近いとみられている。2007年4月に来日した温家宝は天津の南開大学出身でさらに北京地質学院の大学院で学んだ。勤勉誠実な人柄が知られる。なお2007年10月の常務委員人事では、胡錦濤と同じ共産主義青年団出身の李克強も常任委員に選ばれている。李は北京大学経済学院卒の経済学博士。習にせよ李にせよ、中国の次世代の指導者が押し並べて中国のトップ大学で博士号を取得した高学歴の人たちで固められつつあることは注目されてよい。なお政治局常務委員は総書記を含め9人。習と李が50歳代前半であるのを除くとほかの7人は60歳代である。
 中国では周恩来と毛沢東が1976年に相次いで亡くなったあと中国内の権力争いは熾烈になった。1月の周恩来の死後、周恩来を追悼する動きの中で天安門広場で騒動が生じ(第一次天安門事件)、小平が事件の責任をとって失脚させられる。9月に毛沢東がなくなるといわゆる4人組とこの4人組に反対する人々との抗争は激化した。そして華国鋒が主席になるとともに4人組の逮捕に踏み切り、1960年代半ばから10年近くに及んだ文化大革命はようやく終息をみた。文化大革命は、革命後の経済政策がうまく行かず、権力を次第に失いつつあった毛沢東の復権運動だったというのが、今日の大方の評価であろう。文革初期に権力を追われ、1973年に復権したものの1976年に再度失脚した小平が1977年に復権したことにも、この点は伺える。つまり文革は、毛沢東の退場を確定するプロセスに対する毛沢東サイドのゆり戻しだった。小平はその後一貫して中国の開放政策を推進し、1997年に亡くなった。なお小平は経済的に開放政策を取ったが、1989年6月の第二次天安門事件への武力鎮圧方針に見られるように政治的に党の支配を弱めるもの(政治面での近代化要求)には弾圧を加える側面もあった。結果として、自ら登用した、胡耀邦(1915-1989)や趙紫陽(1919-2005)を、相次いで失脚せしめ、残した李鵬についてもその経済政策の保守性を嫌って政権中枢からは排除した。
 このような経済の開放性と党支配の重視という政治手法は1990年代に入っても続き、魏京生(1950-)や王丹(1969-)らの政治の近代化などの主張を中国国内では抑え込む面があった。1992年の第12回中国共産党大会は小平の理念である「中国の特色のある社会主義」を指導理念とすることを明確化。経済面で中国は解放・改革へカジを切ったが、政治面での保守性は維持された。このような小平ら党の政治的保守派の意向を受けて、趙紫陽失脚のあと、経済開放政策の推進と一党支配の継続という矛盾した政策を続けたのが、江沢民、朱鎔基であった。2002年の第16回党大会では、社会生産力の発展、文化前進、幅広い人民の利益など3つを、共産党は代表するという「3つの代表論」が党規約に盛り込まれた。これは経済成長を優先させてきた江沢民理論を正当化するもので、すでに経済成長優先の中での矛盾が拡大していた中国国内には批判もあった。
 中国は急速に近代化した反面、中国内部の地域的なまた国民内部の所得や資産の格差は深刻になっている。生み出される様々な矛盾や不満が公開の政策論争や法律的諸制度を経て解決されるシステムが明確でないことは大きな不安定要因になる。また賄賂や汚職なども絶えない。それは中国への投資を考える外国資本にとっても大きなリスクとなっている。2007年10月の中国共産党第17回党大会は、胡錦濤総書記の指導理念である「科学的発展観」を党規約に盛り込み、経済成長優先路線を修正し貧困や環境の問題に配慮した持続的成長を目指す考え方を明確にした。しかし中国的な民主化があるにせよ、政治面・思想面での一層の自由化・開放化なしに、路線の修正が円滑に可能かは、予断を許さない。中国社会の円滑な民主化・経済の発展は日本にとっても重要であり、中国社会の変化を私たちは常に注視する必要がある。
 なお文化大革命についてのいくつかの映像をみている。一つは池谷薫監督の延安の娘Daughter from Yan'an」(NHK2002)。延安の下放した青年の間に生まれた少女海霞が、辿った困難と真実を明らかにするための北京への旅が描かれる。この映画はその後各地で自主上映が続いている。もう一つは文化大革命のとき黒龍江省でカメラマンだった李振盛が保存していた写真。そしてその写真の被写体の現在と出会う旅の様子を写した文化大革命40年目の証言」(NHK2006)である。
ひたむきに前に向かって進んでいる一人一人の中国人の姿は尊い。それを映した何本かのドキュメンタリーも記憶に残る。小留学生」(2000)は民放のフジテレビが放送したドキュメンタリーで中国からの小さな留学生張素をめぐる物語。フジテレビが2000年5月に放送。製作は張麗玲(1967-)そして協力者たち。このドキュメンタリーシリーズに出てくる中国の人たちはみな前向きで他人に甘えず自立して必死に生きている。日本人はこのようなひたむきさを中国人から学ぶべきではないかという反省がこみあげる。また製作に奮闘する張麗玲と彼女を支えた家族の姿は「中国からの贈りもの」として2002年12月に放送された。シリーズ最後との触れ込みで2006年11月3日夜家在我心中」(1999)がフジテレビから「泣きながら生きて」と題して放送された。

2.台湾(中華民国)の政治と経済(2008年6月稿)
 台湾(中華民国)では2000年に第二次大戦後初めて国民党が下野し、独立志向がある民進党の陳水扁Chen Shui-bianが政権を取った。そもそも台湾では大陸から台湾に渡ってきた外省人と1945年以前から台湾に住む本省人の反目は激しいものがあった。なかでも有名な事件は1947年2月28日に起きた暴動に対する国民党政府による弾圧事件で、本省人1万ないし2万人以上が虐殺されたとされる。この暴動の背景については未解明な点があるが、暴動を台湾独立を目指した反乱とする情報に対して国民党が正規軍を投入し本省人を一方的に連行し虐殺したとされる。この事件は現在でも台湾社会に深い傷を残している。その後1949年に蒋介石は南京にあった国民党政府を台湾に移すが、この虐殺事件は国民党によるその後の統治に暗い影として残ることになった。
 その後、台湾は蒋介石(1887-1975)の息子の蒋経国(1910-1988)総統時代(1978-1988)の1987年にようやく戒厳令が停止され、本省人(臺灣出身)である李登輝総統の時代(1988-2000)に入り、ようやく民主的議会制度が定着するに至った(1996年に総統直接選挙導入)。なお1987年は韓国で民主化宣言が行われ、軍事政権に終止符が打たれた年でもある。しかし李登輝総統の時代に台湾の独立志向が高まったことから、中国政府は李登輝をことあるごとに露骨に批判してきた。そしてこのような中国政府の態度は陳水扁にも向けられてきた。
 他方、国民党は堅い組織票とともに中国との人的パイプを武器に、台北市長でもある馬英九Ma Ying-jeou主席のもと2008年の選挙で再び政権への復帰を狙った。中国の民主化を条件に中台の統合を主張する馬の主張はよく知られている。
 これに対し民進党は2004年の立法院選挙で過半数取得に失敗。2005年末の地方選挙でも敗北した。背景には台湾経済界が独立志向の陳総統に失望して距離を取り始めていることがあるとされる。2006年に入ってなお「積極管理、有効解放」など独立志向の言動を繰り返す陳総統に対し、身辺のスキャンダル事件を契機に、陳総統辞任要求が高まった。民進党でも蘇貞昌行政院長は中台の関係拡大に前向きとされ陳総統の求心力は急速に低下した。こうした中で行われた2008年1月の立法院選挙で、民進党は大敗。国民党は6年ぶりに単独過半数を制した。定数225議席を113議席に半減した上で争った今回の選挙で国民党は81議席全体の72%を占めた。民進党は27議席24%で退潮は明らか。中国との関係で緊張を高める民進党の対中政策が台湾の民心の多数を得ていないことは否定できない。台湾住民の多数は、台湾にとっての利害を中心に問題をたてているのではないか。利益があれば大陸とも付き合うのだ。
 もちろん台湾の経済界にも中国に傾斜した投資リスクへの警戒感はある。中国へは比較的簡易な生産と人手による組み立て工程が移り、技術的に高度な部品に限って台湾で生産して中国で組み立て輸出する形となった。台湾で受注・設計して中国で製造・輸出する形である。これは数字の上で台湾の輸出が減り、中国の輸出を増やすことになった。台湾のメーカーはEMS(electronic manufacturing service:電子機器の受託製造サービス)、ファウンドリ-サービスfoundry service:EMSのうち半導体の受託製造サービス)に特化することで日米欧のメーカーとの関係を強化し規模を拡大し、生産コストの引き下げを実現してきた。代表的な企業としては、半導体LSIでは台湾積体電路製造(TSMC、ファウンドリーの世界最大手)、聯華電子(UMC、ファウンドリ-で世界2位)、電子機器OEM*の鴻海精密工業(EMSで世界最大 広東省新線圳市に生産子会社 iPodの製造代行で有名 アップルのLSI受託生産で有名)、液晶パネルで世界第3位の友達光電(AU Optronics)、奇美電子、パソコン最大手が宏碁(エイサーAcer)、ノート型PCのOEMでは世界最大手の広達電脳(Quanta)、同じくOEMの仁宝電能(Compal パソコン受託生産大手)など。工学レンズ供給の大立電子。このほか素材産業に台湾塑膠工業集団(台塑石化、台湾塑膠工業など)、中国鋼鉄。また食品最大手の統一企業は中国に進出して業績を伸ばしている。
 大陸における国内半導体産業の育成は衰えている。国内最大は上海市の中芯国際集成電炉製造。売上高で見て中国企業の10分の1どまり。
 たとえばソニ-の注文はQunataで富士通の注文はQuantaやCompalで受注している。ただし台湾の生産は中国に移っているので、輸出は中国から行われる。
*orginal equipment manufacturerとは相手先ブランドによる生産を受け負うメーカーを意味するが、そうした生産方式を指すこともある。受け負うもののデザインについてこのメーカー側の機能が高まると、OEMはoriginal design manufacturer:ODMに発展する。また生産者側と利用者側がデザイン段階から協力する方法をデザインインと呼んでいる。下請の技術者がデザイン段階から協力することで生産性やコストで改善しやすいことが背景にある。
AUOはサムソン、LGフィリップスとほぼ互角の液晶パネルメーカーである。2006年10月に台湾の広輝電子を合併し世界3位世界シェア19%となった。
 パソコン大手Acerは2007年8月27日、米国のGateway買収で合意したと発表した。買収金額は約7.1億ドル(約824億円)。Lenovoを抜いて再び世界シェア3位となった(シェア8.1%)。なお1位はHewlet-Packard。2位がDellである。
中国への先端工場進出抑制策もあって、台湾内に先端工場が集積し、その集積による素材調達効率が上がるようになった。集積効果の具体的中身としては、調達あるいは輸送経路が短いこと(=納入期間コストの低さ)、研究開発における連携の容易さなどがある。他方で中国本土での人件費上昇で技術者の確保がむつかしくなってきたことなどから新たな中国投資に自然な形でブレーキがかかりつつある。他方では先行して進出している台湾企業は利益を中国で再投資して投資規模を増やしている。
 また内外の進出企業には法人税の減免措置や研究開発費の補助など、手厚い施策が取られている。これを受けてたとえば日本のエルピーダメモリは、力晶半導体と組んで瑞晶半導体(レックスチップスエレクトロニクス)を設立、台湾に工場を新設した(2007/7量産開始)。
 他方で国民党は2005年4月そして2006年4月に歴史的な国共会談を北京で実現。合せて中国政府は、台湾産果物の輸入品目拡大、一部の野菜や魚への関税免除など優遇策を打ち出した。一時、民進党にも流れたもともと国民党寄りの台湾の経済界は、急速に国民党支持に戻りつつある。中国は他方で2005年3月の全人代では反国家分裂法(反分裂国家法)を制定。台湾との平和的統一の可能性が失われたときには非平和的方法による統一を辞さないとした。硬軟組み合わせた政策で、台湾に親中国の政権が生まれることを期待しているといってよい。
 ところが馬英九主席の金銭スキャンダルが発覚、馬は2007年2月に党主席辞任に追い込まれ2008年3月の総統選の行方は再び不透明になった。ただ馬氏は歴史認識や尖閣列島の領有権問題などで中国の共産党政権に近い認識をたびたび表明しているため、日本の自民党政権は必ずしも馬氏を歓迎していなかった面もある。他方で2007年5月に民進党は総統選挙候補に謝長廷前行政院長(首相)を内定している。なお2007年8月14日台北地裁は馬氏に対して、資金使途は公的なものであり市にも損害を与えていないとして無罪を言い渡した。検察側控訴の可能性はあるものの、再び馬氏が攻勢を強めるとみられる。
では逆に国民党は敵対していたはずの中国共産党と見解はすべての面で同一なのか。実は台湾の独立を否定する点では国民党は中国共産党と立場は重なる。しかしそれも台湾住民多数の意思とは離れているようだ。台湾の多くの人は独立については民進党を支持し、中国(大陸)との緊張を和らげる点では国民党を支持しているのではないか。
 そして中国の民主化を、中国の嫌う内政の問題を堂々と主張できる点で、国民党が果たすべき役割は大きい。

Written by Hiroshi Fukumistu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
originally appeared in June 22, 2008
attached with new contents and reposted in January 16, 2013

中国社会への評価を下げる人権への弾圧

2013-01-15 12:17:45 | Area Studies
 中国で人権派とされる人たちへの「弾圧」が続いている。このような締め付けは、中国社会が政府への自由な批判を許さない「怖い社会」だという印象を広げている。言論・思想の自由とその制約の問題は、確かにアメリカでも日本でも存在する。しかし暴力的につまり武装して社会秩序の転覆を図るといったものでない限り、言論・思想の自由は、広範に認められるべきだ。政府とは異なる考え方を述べそれを広めようとしただけで(言論活動をしただけで)、投獄され実刑を科されるといった事態は、中国社会への評価を下げるだけで大変残念だ。

ただアメリカにもテロということを名目にした人権抑圧の動きがあることも事実だ。それと同じではないか。という批判も考えられる。
 アメリカにおける テロへの加担がうかがわれる人についての令状なしの逮捕・無期限拘留
 グアンタナモ基地における非人道的取り調べについて テロ防止という名目のもとでの人権抑圧の加速

 どこが違うのだろうか。はっきりしていることはどちらのやり方にも賛成はできないということだ。2013年1月になって表面化した「南方周末」をめぐる記事改ざん事件は、正月3日に予定されていた、憲法に基づく民主的な政治、自由、平等の実現を求める記事が、広東省共産党委員会宣伝部の指示で無難な内容に書き換えられたこと。これに対して、編集者・記者の不満が爆発しスト体制に入ったとされる。これに対して各地の新聞が、当局が指示した記事の転載を拒むなどの形で抵抗。騒動が拡大した。背景には同紙だけで年間で1000本を超える記事が差し止め書き換えにあっているほど厳しい検閲にあっていることがある。
 2012年秋に発足した習近平体制が、この問題をどう決着させるか注目された。記事書き換えの指揮をとったのは庹震・宣伝部長自身(2012年5月に赴任)。これに対して、地元のトップである胡春華(1963年生まれ 前モンゴル自治区党書記 広東省という全国に先駆けて改革開放路線がとられ、住民の権利意識も高いところで、早速、難題にぶつかった形)・広東省書記が抗議した現場の編集関係者を処罰しない方向で事態を収拾し、結果として南方周末は1月10日通常通り発行された。
 2011年9月には発生した高速鉄道事故の原因を究明しようとした「新京報」「京華時報」が共産党委員会管理下に置かれる事態があったばかり。 

 今回の問題の処理もそうだが、言論・思想の自由については、中国社会や共産党の指導者の中にこの点でさまざまな考え方があることが伺える。それだけに中国共産党の次の指導者たちが、ただ社会の安定を目指すだけでなく、言論・思想の自由と、さまざまな思想に開かれた社会の構築を目指すことを期待したい。
 問題はアメリカの場合も同じだが、形式的には正しい社会の安定論がしばしば拡大解釈されて人権の抑圧に結び付くことだ。それを防ぐためには、人権を守ることを厳守することが極めて大事だ。テロを許さないということと、人権を守り尊重することは本来両立するはずである。

 このほか中国では、土地収用をめぐるトラブルでは、地元政府と住民が激しく対立する構図も見られる。土地は国有で各地方政府が管理しているとの考えかたで、地元政府によりわずかな補償金で土地収奪が横行。地元政府と一体化した開発業者が開発を計画。開発利益を地元政府と開発業者が分け合う構造とされる。
 本来、住民の利益を守るべき地元政府(地元の党幹部)が、業者と一体化して土地の収用を強行。反対する住民を警察を使って抑え込むといった構造は、乱脈の極みである。本来は司法制度によって住民の権利が守られるように法治国家の実を上げるべきであろう。住民の側に立つ活動家や弁護士を抑圧したのでは、法治国家の担い手を政府自身が潰しているともいえる。国の在り方について、中国政府は自身の考え方を変える必要があるだろう。そのための第一歩は、一連の人権抑圧政策をできるだけすみやかに止めることではないだろうか。
 このような人権抑圧は、地方政府幹部により地域住民に対して、経営者により労働者に対して、警察により街頭の人々に対して、徴税官により零細な経営者に対して、日常的に生じている。2011年に中国各地で生じた血なまぐさい人権抑圧が、暴動を各地で生み出している。中国政府は、民衆を取り締まるよりは先に、このような地方幹部、経営者、警察官、徴税官をまずは捕まえて厳罰に処するべきだろう。
 2011年 中国各地で暴動発生

陈西氏(1954-)
2011年12月26日 貴州省の貴陽市中級人民法院で懲役10年の実刑が言い渡されたとのことであるが、インターネットでの言論活動が問題視されたとのこと。
陈西文集

陈衛wei氏(1969-)
天安門事件の学生指導者の一人。2011年12月23日 四川省の遂寧市中級人民法院で懲役9年の実刑が言い渡されたとのこと。海外サイトへの投稿が問題にされ2011年3月29日に逮捕されていた。

高智晟氏(1966-)
5年の執行猶予が取り消され懲役3年の刑に服することになった。法輪功の弁護を手掛け書簡を公表したことなどから政権転覆罪に問われた。2010年以来行方不明となっていたが2012年に入ってウイグルで収監されていることが判明した。

劉暁波氏(1955-)
懲役11年を言い渡され服役中
100名中国知識人発表声明支持劉暁波 2010年10月14日
到全国人民代表大会常務委員会公開信:公民言論出版自由的公開信 2010年10月11日
中国維権律師関注組要求釈放劉曉波 2010年10月11日

劉暁波wiki(日文)
劉暁波 我的最后陳述 2009年12月23日
零八憲章(中文他) 2008年12月10日
六四事件(中文wiki)

辻さんの以下の記事で、中国共産党内のリベラル派が言論出版の自由を求めていること、また温家宝首相らによる政治改革の試みあったことと、現在それらが、既得権益派により抑え込まれている構図を紹介している。
辻康吾「中国指導部の重大な状況」『エコノミスト』2010年11月23日号, pp.45-47.

originally appeared in Oct.18, 2010
corrected and reposted in Jan.16, 2012 and Jan.15, 2013


2012年12月19日の韓国大統領選挙を控えて

2012-12-08 23:02:37 | Area Studies
 韓国の大統領選挙(2012年12月19日投開票 11月27日選挙戦開始)は与党セヌリ等のパク・クンヘ(朴槿恵)候補と、野党民主統合党のムン・ジェイン(文在寅)候補(ノムヒョン前大統領の盟友 盧武鉉政権では主席秘書官 秘書室長)の事実上の一騎打ち。争点は財閥改革のあり方だとされる。文氏は循環出資構造(中核企業を先端に系列企業の出資関係がA-B-C-Aというように循環構造となっているとのこと)の3年以内解消(新規は禁止 既存は3年で解消)を主張している。

 なお現職の李明博大統領の評判は竹島上陸強行移行、日本では下がる一方だが、韓国内では、野党がウオン安誘導政策など大企業を念頭に置いた政治を展開したなどの批判をしているようだ。ウオン安政策については、急激な変動を回避するスムージングオペレーション(過度な評価を適正ラインに戻すものの範囲内)との主張が政権側にはあるとされる。また企業よりとされる規制改革にしても、雇用拡大を意図したものとの弁明があるようだ。
 とはいえ実兄など側近が不正資金をめぐる疑惑で逮捕された点は弁明の余地がない。実兄逮捕から1ケ月後の2012年8月10日 現職大統領として初めて竹島上陸を強行して日韓関係を意図的に悪化(緊張)させた行為は、政治的窮地に陥った自分を救うために禁断の外交カードを切った疑問が残る。竹島に自筆の石碑を残したことにも、政治的窮地にあった自分を国民的支持の高い「竹島(ドクト)上陸」で転換し、さらに自分の名を残そうという売名(政治的打算)の匂いを感じ、評価はできない。竹島問題については、両国国民とも妥協を望んではいないが、同時に緊張を高めることも望んでいない。
 李明博政権下では所得格差は拡大したとの批判もある。李明博は2007年の大統領選挙で就任。任期は2013年2月までに迫った。彼が廃止した出資総額規制(出資に使える金額を純資産の一定割合に抑えるもの)を、野党大統領候補のムン氏は復活させると主張している。

 これに対して与党候補の朴氏は財閥を正面から規制するのではなく、独占禁止当局の独立性強化(公正取引関連法の強化 循環出資については新規出資の禁止)、商店街や中小企業の保護を主張している。
 対北朝鮮政策では対話再開で両候補は一致するも、ムン氏の方が融和姿勢が強いとのこと。
 対日関係では韓国内では、1965年の日韓国交正常化交渉は、軍事政権の朴正煕大統領のもとであったとして、経済協力を得るために十分な過去の清算が行われなかったとの批判が韓国内では強く(なお1998年 金大中大統領と小渕敬三首相との間で日韓共同宣言 過去の歴史への反省とお詫びが記されている)、誰が大統領になってもこうした国民感情から離れた対応はむつかしいようだ。
 第二次大戦後の日韓関係は、朝鮮戦争直後の1952年に、李承晩ラインの設定の一方で国交回復交渉が始まったが、韓国側から損害賠償請求が行われたのに対して、日本側が没収財産の返還を求めて難航した。1961年に朴正煕はクーデターを起こし、1963年に大統領に就任した。朴は、近代化資金を得るため対日交渉を進め、1965年日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約を締結した。これにより3億ドルの無償供与 2億ドルの有償供与を日本政府が韓国政府に行い、別に日本企業が3億ドルの資金協力を行った。これに対して韓国政府は対日請求権を放棄した。条約には明白な謝罪の言葉を含まれていなかったので、これらの無償有償の資金協力の「性格」には曖昧さが残された。この1965年当時、朴正煕が進めた対日交渉について、韓国民の間では不満が強いとされる。
 そのお詫びの言葉はその後1998年 金大中大統領と小渕敬三首相との間で日韓共同宣言で過去の歴史への反省とお詫びが記されるなど繰り返されているものの、この1965年条約で、過去の清算をあいまいに決着した歪みは、対日関係で本当の意味での清算が終わっていないという、わだかまりを多くの韓国人に残す結果になっている。先ほども述べたが誰が大統領になってもこうした国民感情から離れた対応はむつかしいようだ。

地域研究論 Area Studies Business Models Business Strategies 

インド スズキのマネサール工場で暴動(2012年7月18日夜)

2012-08-22 16:58:06 | Area Studies
2012年7月18日夜 マルチ・スズキのマネサール工場(北部ハリヤナ州 暴動前の従業員規模は正規社員等直接雇用の従業員が2150人。契約社員が1800人。合計3950人とのこと。正規社員の初任給は月1万1530ルピー(日本円で1万6000円ほど))で暴動が起きた。
 午後7時ころ100人以上が工場の建物に乱入。製造ラインを管理するパソコンが破壊された。事務所が放火され人事担当のインド人が死亡(両足を骨折したインド人幹部が逃げ遅れて死亡したとされる)。日本人幹部2人を含む100人以上が負傷したとのこと。
 現地警察は首謀者12人を逮捕(委員長 書記長含む12人の組合幹部全員を含む)。
 操業停止により日1700台の生産止まる(1日あたりおよそ10億円の売り上げが失われる)とされ、スズキの業績への影響が心配された。

 なお8月21日(火) マネサール工場は1ケ月ぶりに再開した。州政府は工場内外に警備部隊500人を配備した。
 捜査当局は154人を逮捕。会社側は暴動に関与した社員546人を解雇した(直接雇用のものの4分の1にあたる)。派遣業者から派遣される契約工について問題があったとの判断があるようで、今後は組み立てラインに従事する工員を直接雇用に切り替えてゆくとしている。当初の再開予定水準は、300人体制で生産能力の10分の1程度の日産150台程度。段階的にフル操業に戻し、正規工8割、契約工2割の割合を目指すとのこと。しかし21日の出社した工員は予定の4分の1にあたる約75人。騒動の原因がなお解明されず、大量解雇や大量逮捕が不満を煽っている可能性もある。生産の回復が順調に進むか予断を許さないのではないか。
REUTERs, Aug.21, 2012
Bloomberg, Aug.17, 2012

Asiancorrespondent, July 19, 2012 けが人は管理職40人以上。組合側は60人以上が拘束された。
AP July 19, 2012 直接の原因は水曜日の朝、一人の管理職に労働者が暴行を加えたこと。組合は労働者への処分を阻止しようと出入口を閉鎖。話し合いが決裂したあと、管理職者たちへの暴行が始まった。逮捕者は88人に及んでいる。
Truth & Hype: Multi, Trouble at the Plant, posted on Oct.23, 2011 厳しい労働環境への不満が昨年の労働争議の背景にあったこと。日本的労務管理に現地従業員が反発していたことが伺える。

 これまでもたびたび労働争議
 2006年マネサール工場稼働
 2011年6月 スト 月内に収束
 2011年8月 一部従業員が怠業 会社側がロックアウト
 2011年10月 スト再燃 月末に収束

 この工場については201年度半ばに拡張計画があった(年25万台のラインの追加)。ハリヤナ州にはグルガオンにも工場がある。
 現在の能力は年150万台。
 2012年6月2日の発表で西部グジャラート州に年25万台の新工場建設を発表(2015年度に稼働予定)。投資額400億ルピー:
560億円
 すべてあわせて200万台体制。スズキの予想では、2011年度に261万台のインド乗用車販売市場は中期的に400万台に。
 そこで現在と同じ約5割のシェアを維持する構えだった。

 なおインドでは7月30日から31日にかけて北部で大停電があった(1時間に1-2度の停電は日常茶飯事 日系進出企業は自家発電で対応している ただ自家発電の比重が増えると燃料代でエネルギコストが上昇するのでやはり望ましくはない)。発電設備 送電設備の老朽化で送電ロス 貧しい人による盗電
 王子製紙が巻き込まれた排水管問題2011年のタイの水害。そして電力。これらはいわゆるインフラ問題。さらに労働争議と、新興国事業のコストが目立ってきた。今回のトラブルでは、インドへの土着化で知られるスズキの労務管理が実は日本的労務管理の移植に過ぎず、必ずしも成功していないことが見えてきたことが注目される。

originally in Aug.8, 2012
corrected and reposted in Aug.22, 2012

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王子の南通工場 排水問題で住民が市庁舎占拠(2012年)

2012-08-06 00:41:05 | Area Studies
中国 王子の南通工場 排水問題で住民が市庁舎占拠(2012年7月28日)
王子製紙 江蘇省南通市で王子製紙が利用を予定していた配水管に対して大規模な抗議行動起きる。現地政府は工事の排水管工事中止を発表した。
デモの発生            7月26日午前
デモ隊により市庁舎が占拠される  7月28日(土)早朝
王子製紙 南通工場の操業を停止  7月28日(土) 
地元政府の排水管工事取りやめ発表 7月28日(土)
治安部隊が侵攻          7月29日(日) 
王子製紙 31日操業再開表明    7月30日(月)
南通抗議爆発 新唐人TV 20120725 現地住民に十分な説明をしないまま工事が強行されようとしていたとの報道。中国語 排水管が完成すれば毎日60万トンの排水により黄海が汚染されるとある。
新唐人ニュース 2012年7月28日 詳報 中国語 28日朝6時過ぎに集まり始めた民衆は6時18分警察の警戒線を突破 市庁舎前をうめつくした。あらゆる階層の数万の民衆が集まった。市の党書記は民衆から反汚染のTシャツを与えられた。市長は警察とともに逃亡した。
市庁舎前を埋め尽くした群衆の映像 20120728
工事の中止をテレビで発表する南通市長の映像 20120728
The Telegraph,Jyly 28, 2012 集まった群衆の数は5万あるいは10万とも。市長舎のなかからは贈賄で使われる高級アルコールやタバコが大量に見つかった。なおこの記事は工場建設自体が中止と誤報している。
LiveLeak com July 28, 2012
石涛评述 20120728
揚子江を汚染中国語 ettoday 20120730
The China Post, July 30, 2012 日曜日(29日) 数千の治安部隊が派遣された。人々は家に閉じこもっている。中止声明が人々の不安を解消するに十分かはわからない。
王子製紙 発ガン性物質排出は根拠がないとの声明を出す 7月30日中国語 搜狐 20120731
王子製紙 声明 2012年7月30日(日本語)
Radio Free Asia, July 30, 2012 1年以上住民は反対の交渉をしていたが当局はなんら対応しなかった 市党書記は反汚染のシャツを渡されたが着るのを拒否した 計画の中止の声明により人々は解散した 王子製品(ネピアなど)のボイコットを呼びかける声がある。 
The China Post, July 31, 2012 少なくとも死者が3人でた(殺された) 数万の民衆が集まった。
南通市が計画の取り消しを表明 漁業への影響が懸念されていたとのこと 中国語 全国环境保护网 20120801

この事件は北越製紙買収事件を想起させる。社会に対してソフトに出るということが王子製紙はとても下手な会社だと思う。北越製紙買収では敵対的企業買収を強行して生まれた悪い印象は日本では現在も消えていない。あのときもそうだったが王子製紙は、自分の行動が相手にどう見えているかに無頓着な企業だ。まるでわがままな子供のようだ。今回も自分は無実の第三者であるかのように環境基準を守っているという声明を出している。しかし住民の矛先は王子に向かっている。企業として、自分のブランドイメージを守るために何をするべきか。基本的な間違いがあるように思える。私の意見を言わしてもらえば、たとえば排水の水質について化学的データを示してはどうか(また今後も継続的に開示すると宣言してはどうか)。しっかりしたデータを開示して、環境配慮の姿勢で中国社会の先進例になってはどうか。そうすれば中国人民は王子を支持するだろう。

この事件の一月ほど前 四川で汚染の環境汚染の原因となっている工場の問題で、住民の大規模の抗議活動がおこり、警察と軍が出て鎮圧する騒ぎが起きたばかり(2012年7月2日)。

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台湾の陳水扁前総統の逮捕(2008年11月)そして無罪判決(2011年8月)

2012-07-08 16:46:32 | Area Studies
 2008年11月12日陳水扁前台湾総統が、台湾の検察当局によって総統府の機密費流用の疑いで逮捕されたことは驚きであった。1994年の台湾市長選挙や、2000年の総統選挙など選挙であまったお金を海外に送金して蓄財をはかっていたとされた。2008年10月25日には台北で民進党が組織した大規模な反中デモ(背景には経済不振とメラミン混入問題)が成功した直後で、5月からは親中融和政策を掲げる国民党の馬英九総統の政権下での逮捕。10月28日と11月4日には民進党の知事(県長)が汚職で逮捕されることも重なった。政権交代直後に前総統が逮捕されるというのは、政治的報復の疑いが残り不透明な印象を与える。
 陳氏に不利なのは、民進党の支持者の対応が分裂していて、蔡英文主席が陳氏を全面的に擁護していないことだ。陳氏をめぐる機密費流用疑惑は、いまだ陳政権下の2006年11月に夫人が起訴されたことが発端であり、さらに夫人起訴以前から、子息や娘婿など一族をめぐるスキャンダルが続いていたことが背景にある。結局、この疑惑問題で陳氏は党主席を引責辞任。08年3月の総統選は、謝長廷氏(台湾大学法学部から京都大学大学院)と馬英九氏(台湾大学法学部からハーバード大学大学院)との間の戦いとなった。
 
2011年8月26日 台湾の高等法院は機密費流用については、逆転無罪。他方、マネーロンダリングについては有罪の判決を下した。この判決に対して検察側が控訴したとのこと。この判決どおりであれば、発端の2008年11月の逮捕劇は何を意味するのだろうか。いずれにせよ、一連のプロセスには不透明なものを感じる。陳水篇氏は謝長廷氏とともに、美麗島事件(1979)の弁護団の一員として、古くから民主化闘争を戦ってきた人物の一人。また台湾の政治的自立を強く主張してきた代表的な政治家の一人。その逮捕がそもそも正当なものではなかったのか、あるいは腐敗は実際にあったのか。結論が気になるところだ。

二二八事件(1947)
霧社事件(1930-1931)
西来庵事件(1915)

Area Studies
originally appeared in November 14, 2008
corrected and reposted in July 8, 2012

梁振英が香港行政長官に就任(2012年7月)

2012-07-02 14:55:08 | Area Studies
 2012年7月(返還15周年の節目に) 香港政府のトップに親中派の梁振英(対立候補の唐英年は父親が江沢民と近く太子党系 梁氏は共産主義青年団に近いとも)が選ばれて(3月25日投票 方法は38の職能別団体の代表である選挙委員計1200人による間接選挙 2017年に普通選挙への移行が議論されている 2007年末に全国人民代表大会が2017年には実施してもよいと決定)行政長官に就任した。

香港株式市場について
 中国への投資資金の受け皿となっている。(香港交易所が香港証券取引所を運営)
 上海市場に比べて外国人の動向の影響うけやすい 海外市場の混乱・株価水準など 欧州あるいは東南アジア など
また個人投資家に解禁される前から中国当局の目をくぐって人民元も香港に流入している(香港在住の知人を経由 あるいは香港現地法人を窓口にするなど)。背景には重複上場株の割安感がある。
 なお上海市場は、現在でも海外資金による売買が制限されている(例外を除くとファンドを通じての投資になる)。

中国復帰後の年譜
1997年7月1日 中国に復帰
2003年春 新型肺炎 SARSで観光客激減
2003年6月 中国政府香港と経済緊密化協定調印
2003年7月 中国政府 本土住民に香港への個人旅行解禁
2007年1月 香港ドルと人民元の価値が逆転
2007年1-3月 コンテナの取扱量で上海に抜かれる  
2007年5月 中国では銀行を通じて個人投資家が香港株を一部購入できる制度が導入された
2007年7月 深圳と香港を結ぶ新大橋が開通
2007年8月 中国政府は個人投資家の香港株解禁を発表した
2007年末には香港市場の時価総額に占める中国本土系銘柄の割合は6割に達した 
したがって中国の政策に大きな影響を受ける
参照 中国の経済と株式市場 2006年ー2007年
2011年6月末 上場企業数は1448社 時価総額21兆香港ドル(約210兆円) 世界7位
中国証券市場略年譜(1976-2011)

香港市場は海外企業の上場誘致に成功している
 2011年5月25日 スイスの資源商社グレンコアが上場
 2011年6月16日 米サムソナイトが上場 最大117億香港ドル、1230億円調達
 2011年6月24日 イタリアのプラダが香港で新規上場 最大203億香港ドル、2100億円調達
 2011年内に米コーチ(NYSEにすでに上場)も重複上場を目指すとのこと(2011年6月段階の報道)
規模を支えるため巨額のシステム投資をしている
上海取引所 深圳取引所 との提携交渉が進んでいるとのこと(2011年8月)3証券取引所の合計時価総額は500兆円を超える

ハンセン指数 恒生指数が算出している 48銘柄 現在は半分が中国企業 残りは英国系企業 香港の地場有力企業など
香港市場全体の4割
 2011年9月21日現在は46銘柄

H株指数 大企業の香港ドル建て株式40銘柄で構成 中国企業40銘柄で構成(構成銘柄の多くが上海市場に重複上場)
2012年9月5日9010 年初来安値を更新 年初からの下落率は9% 外国投資家の中国株への見方を反映
欧州連合は中国企業にとってアメリカとならぶ主要輸出先のため中国株は欧州連合の景気悪化の影響を受けている
ハンセン指数が昨年末を上回っているのに比べ不振明らか
 2011年9月21日現在は40銘柄
中国工商銀行などの国有銀行3行 石油・保険の大手企業5社(中国石油天然気など)で指数の4割強 重厚長大企業が多い特徴

香港ドルは米ドルと連動する事実上のペッグ制 そのため米ドル高となると香港ドル建て資産が割高となり香港株は売られやすい

レッドチップ指数 中国政府系資本が入っているが中国以外で登記された企業。要するに香港で上場するため本社を香港で登記した
中国本土株。
 2011年9月21日現在は25銘柄
 中国移動(チャイナモバイル)
 中国海洋石油(CNOOC)
 聯想集団(レノボ)

2008年12月 中国人民銀行利下げ
2012年4月16日 中国人民銀行が人民元のドルに対する変動幅を従来の0.5%から1%に拡大
2012年6月15日 香港取引所 ロンドン金属取引所(非鉄金属取引で世界最大)買収を発表 13億8800万ポンド(約1700億円)
2012年5月12日 中国人民銀行 18日からの預金準備率引き下げを発表 2011年12月と2012年2月にも準備率引き下げ

主な上場銘柄
中国建設銀行(2005年10月に香港上場 資金調達額は92億ドル) 中国銀行(2006年6月1日 香港に上場 資金調達額は97億ドル) 中国工商銀行(2006年後半に香港に上場) 中国農業銀行(2010年7月香港にも上場) 中国本土系銀行
中国の大手石油株 中国石油天然気など
中国の不動産大手(万科企業)
華潤創業
恒安国際集団
金沙中国
パソコン大手のレノボ
代表的内需関連銘柄 金威ビール
香港の不動産大手(長江実業集団 会長 李嘉誠:香港の超人 時価総額2500億香港ドル 世界最大の華人企業とされる 傘下に海外事業を担うハチソン・ワンポア 香港の電力会社香港電灯 など)
新世界発展
常基兆業地産
九龍倉集団
恒基地産
新鴻基地産発展
香港の商社(利豊 リーフォン 主要輸出先はアメリカ 時価総額1400億香港ドル 2010年にセブンイレブンと業務提携 サンリオに資本参加)
英金融大手系HSBCの株価 欧州の債務問題を反映 欧州事業の比重高い ハンセン指数に占める比重は15%超とも

香港ドル
香港ドル 米ドルと連動するペッグ制
1983年以来約30年続く通貨制度
民間の3銀行が中央銀行に相当する香港金融管理局に預けた米ドルに見合う量を発行
1米ドル 7.8香港ドルを中心値に7.75-7.85香港ドルの変動幅
小幅ながら変動余地
株価上昇 ⇒ 資金流入 香港ドルは高値に
株価下落 ⇒ 資金流出 香港ドルは安値に
金融政策の裁量余地なく輸入インフレや資産バブル対策が限られる。
(インフレ 資産バブル之原因ともされている:2012年6月12日に発表された任志剛香港金融管理局HKMA前総裁の論文)
複数の通貨と連動するバスケット制 変動幅の拡大などが検討課題

貧富格差が激しい香港
2011年4月 香港トマカオの政府は市民全員に現金支給を決めた 低所得層のインフレへの不満をかわす狙い 潤沢な財政が背景
 香港:2011年度内に永久権をもつ満18歳以上の市民全員約610万人に一人6000香港ドル(6万6000円)を支給 予算は約370億香港ドル
 マカオは4年連続の支出 2011年後半に永住権保有者には3000パタカ(3万2000円)永住権を持たない保有者にも1800パタカを支給。すでに年前半に永住権保有者には4000パタカを支給すみで合計は7000パタカ。
2011年5月1日 時給38香港ドル(約300円)の最低賃金制度導入される 背景には激しい貧富格差 ジニ係数は0.434は国際的にみて高い(2009年の国連開発計画の発表数値) 0.3-0.4が標準 香港では2006年には0.533まで上昇したことも もともと香港はジニ係数が高い 1980年代後半も0.45以上。

証券市場論 前期 証券市場論 後期 現代の証券市場 証券市場論教材
財務管理論 前期 財務管理論 後期 金融システム論 財務管理論教材

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2011年 中国各地で暴動?  11月には金融政策の微調整

2012-01-16 16:22:56 | Area Studies
高まる不満 各地で暴動が頻発した2011年
2011年6月1日 広東省潮州市で、未払い賃金の支払いを求めて父親と抗議に向かった青年が、父親とともに工場で乱暴され、手足を切断され重傷を負った。1万人以上の群衆が犯人の処分を求めて、市当局・警察を取り囲む騒ぎになった。
広東省増城市での暴動 2011年6月10日勃発 以後数日にわたり続く 地元の警官(警備員)が四川省出身の妊婦に乱暴したことが原因で、胎児が死亡したという噂が流れたことから群衆が警察を取り囲む事態になった。騒動は数日に及び、集まった群衆の数は10万を超え、軍隊が投入されて鎮圧を図ったとされる。

湖南省長沙市では2011年6月13日 土地収用強行をめぐり、これに反対する地元住民およそ1000人が市長舎前に集まったとのこと。

NHKの解説 暴動頻発 中国共産党90年の課題 2011年6月30日

2011年8月14日 大連で起きた住民と武装部隊との衝突 住民が抗議のため地方政府前に集まっていたところに続々と武装部隊が集結。やや暗くなったところで、群衆を解散させようと実力行使に至っている。化学工場の移転を求める住民の抗議とのこと1万2000人を超える人々が集まったとのことで、大連市当局の失政といえるだろう。
このような化学工場の有毒物質の問題は中国各地で生じている。2011年8月16日 江西省蓮花県では、化学工場への抗議とその操業停止を求めて数千人の住民が問題を起こしている化学工場前に集まったとのこと。

広東省東部の沙尾市陸豊市烏坎村では村幹部の不正を糾弾する動きがあるが、抗議する住民側のリーダー格の人物の急死の真相究明を住民は求めている。この騒ぎは2011年9月以来3ケ月続いているとのこと(9月21日以来。12月20日現在係争中)。
抗議活動をする中心格の人物が不慮の死を遂げる事件は2010年12月に浙江省楽清市でも生じている。同年12月25日、長年にわたり火力発電所建設に伴う土地収用をめぐる住民の不満を代弁してきた村長が建設業者のダンプカーにひかれ死亡した。地元警察はこれを交通事故として処理している。

浙江省湖州市での暴動(2011年10月28日) 2011年10月に発生したこちらの暴動では、税金の引き上げの問題、徴税当局の役人が、増税の抗議にきた経営者を乱暴した問題が伝えられている。抗議する人を理不尽に乱暴することで、怒りに火を付け暴動が起きる構図が共通している。また警察当局あるいは軍隊が、民衆の側にたたず、理不尽な行為をした経営者や市当局を守らされている構図も共通している。しかしどちらが悪いことをしているかは、明白であり、乱暴した工場経営者、乱暴した警察官、乱暴した徴税官、こうした人たちをまずは厳罰しなければ、人々の怒りは収まらないのではないか。

 また広東省東部の汕頭市では石炭火力発電所の増設に反対する多数の住民と警官が対峙する事態が12月に入り続いている(12月20日から23日まで連日。23日現在係争中)。中国政府は、汕頭市全域を経済特区にすることを2011年5月1日にきめたとのこと。汕頭市は華南4都市のひとつとして、他の都市とともに経済特区の指定を受けた。他の3都市については2010年に市全域が経済特区とされ汕頭市に比べると発展が進んでいるとのこと。

暴動を背景にストライキも頻発
 そうしたなか広東省深圳市で香港系の黛麗斯集団の工場(11月21日)、台湾系の精模電子科技で(11月22日)で待遇改善を求めるストが起きていたが、12月に入ると日立製作所のHDDの部品工場でも半月に及ぶストが続いている(12月20日現在)。
 深圳市では昨年2010年 ホンダの工場で賃金をめぐる紛争が発生した。深圳市は中国国内で最も最低賃金水準が高いとのこと(中国人事社会保障省の発表 2011年10月25日)。月額1320元(15,800円である)。
 沿海部を中心に工場労働者の不足が深刻。地方政府は出稼ぎ労働者の待遇改善を試みている。(現地戸籍を与えて子供を公立小中学校に受け入れる。あるいは戸籍がない場合も受け入れるなど。公務員や公的機関職員に採用する。)
 反面 人件費上昇で企業が倒産することも。新興国が余剰労働力を失い賃金水準があがるポイントを
「ルイスの転換点」と呼ぶ。他方、新興国が人件費上昇でコスト競争力失う問題は中進国のワナとよばれている。2010年の日本貿易振興会の調査では中国製造業作業員の平均基本給は月303ドル、フィリッピンは213ドル、ベトナムが107ドルとのこと。
 しかしベトナムでも企業の進出とともに賃上げが波及している。2010年の賃金上昇率は20%とも。2015年を境に中国の人口は減少へ転ずる。
そこで意識的に製造業から、サービス・ハイテク産業に産業構造を転換する政策をとり、モデル地区がつくられており、たとえばマカオに近い地区(珠海市横琴)に法人税減税区(25%⇒15%)を設けたり、香港・マカオから働きにくる人を対象に個人所得税の軽減策(実質最高20%に制限)も導入されている(深圳市前海)とのこと。

貧富の差 言論の自由がないことへの不満
 背景に貧富の差が拡大することへの不満(ジニ係数は0.48倍程度)。そして言論が自由でないことへの不満。中国は「開発独裁国」とも揶揄される。生産額の8割は国有企業によるものということも、富の偏在が崩しにくい要因とみられるが、民衆の間の不満が高まっているとの指摘も多い。
 中国社会への評価を下げる人権への弾圧 中国における言論・思想の自由
 中国政府が自国民を信頼して、思想・言論の自由を大胆に認めること。民衆を取り締まるのではなく、不正を犯した経営者、官僚を取り締まり公正かつ厳正に裁くことなどが必要であろう。
 
金融引き締め策は微調整(2011年11月末)
 このような騒動の背景に最近の経済情勢が関係している。とくに輸出の減速、物価の上昇に注目。物価の上昇は低所得層を苦しめていると考えられるからだ。
 外部環境としての欧米の経済情勢を受けた輸出の減速。輸出の前年同月比伸び率は35%強(2011年3月)が15.9%(2011年10月)まで減速。11月の13.8%は春節要因の2011年2月を除けば2年ぶりの低さ。3ケ月連続の低下。他方で加工貿易の国柄を反映して輸入も減速している。10月が28.7%。11月は22.1%。輸入の伸びの減速が少し遅れて輸出の伸びの減速につながっている。
 国内環境としては物価高(CPIについてピークは2011年7月の前年同月比6.5%上昇 8月は6.2%。9月は6.1%。4ケ月連続で6%台。高止まり。1-9月累計では5.7%。ただこれは前年同月が低いことの反動とも解説されている。この要因のはげ落ちもありその後3ケ月連続で低下。2011年10月は5.5%。11月4.2%。)。
 物価上昇は個人消費の減速につながり、物価高を受けた金融引き締めももたらした。中国人民銀行は2010年秋以来2011年12月までに政策金利を5回、預金準備率を12回それぞれ引き上げてきた(物価上昇の鈍化は金融引き締め政策の転換への期待を高めた)。そして引き締めは企業の減速につながった。
 なお不動産の引き締め。これは住宅バブルを懸念する政府が2軒目目の住宅ローンを規制するなど投機目的の購入を制限したことによるもの。その結果 不動産価格の下落が進んでいる(2011年11月)。2010年10月の統計では主要70都市中で前月比下がった都市は34。これは9月より倍増している。もっとも前年同月比で下落した都市2都市にとどまる(4-6月には3都市 7月に1都市 8月にゼロなど前年同月比で高止まりは明らか)。2011年11月の統計では前月比下落した都市は49都市。全体の7割に広がった。
 これがさらに鋼材価格の下落、鉄鋼の減産につながっている。不動産市況の悪化は、拡大している不動産関連融資の不良債権化につながりかねないことも注目される。
 7-9月期のGDPは実質で前年比9.1%増。2年ぶりの低水準。(1-3月が9.7% 4-6月が9.5%と9%台を保ちつつ連続で鈍化)
以前に比べて国内消費のGDP寄与度があがり輸出の減速の影響を和らげている。(2006年には4割 2011年には5割程度に上昇)
 温家宝首相が10月下旬、マクロ経済政策の微調整に言及したことは政策転換が近いことを印象付けた。
 2011年11月8日には1年物中欧銀行手形の発行金利が2年4ケ月ぶりに引き下げられた。
2011年11月30日 中国人民銀行は預金準備率を12月5日から0.5%引き下げるとした(大手行で21.0%か)。
同引き下げは2008年12月いらい。2010年秋以来の金融引き締め政策の転換ともいえるが、中国政府は
なお不動産価格抑制 物価抑制の姿勢は崩していない。


不動産価格の抑制策など引き締め策は堅持
 株価は2011年後半から下げが目立った。とくに上海総合株価指数は9月30日には年初比16%下げ 2年半ぶりの安値を記録している。ハンセン指数は9月から10月にかけてとりわけ大きく下げた。欧州債務問題が中国景気の先行きの懸念材料であることを示す結果になった。
 2011年11月末の金融緩和決定後、香港ハンセン指数がすぐに反発している。株式市場にはこの金融緩和への転換で、調整局面が終わり株価が上昇局面に入ることを期待する声があった。中国政府の中にも江沢民前国家主席は成長重視派だとされるなど、政府内にも
路線をめぐる議論があるようだ(市場重視派には朱鎔基前首相、経済成長の確保はすべての任務に優先するとする王岐山副首相の名前も)。毎年新規労働力が2000万人。雇用を確保するには8%の成長が必要。したがって8%台に下がると景気浮揚論が力を増す可能性。
 しかし実際には中国政府は、12月上旬 不動産価格抑制政策の継続を発表(住宅都市農村建設省が全国11都市に対して
住宅購入規制継続を指示 2軒目の頭金比率を60%など。具体的規制は各都市で異なる)。不動産価格上昇に
厳しい見方を示した。確かにCPIがなお抑制目標の4%を大きく上回る状況にも変化はない。
 こうした状況から11月末野預金準備率引き下げの判断は、政治経済の安定に向けて(5年に一度開かれる2012年秋の党大会に向けて)、引き締めをさらに調整する、微妙な調整と考えられ、本格的金融緩和とはいえないと思われる(不動産バブル抑制の責任者は住宅価格抑制政策堅持を唱える李克強副首相。2013年春に温家宝首相の後継とみなされている)。
 経済成長率が8%台に落ちてきたところで、おそらく政策が転換されるのではないか。

originally appeared in December 28, 2011
corrected an reposted in January 16, 2012

中国社会への評価を下げる 人権への抑圧
East Asia Business Model Business Strategy
Higher Education 


タイの水害の日本企業への影響(被害拡大)について(2011年10月)

2011-12-16 15:03:08 | Area Studies
Hiroshi Fukumitsu

 タイには日系企業約7000社が進出している(タイの基幹産業は自動車 生産額はGDPの約1割 自動車生産台数で世界で12位 日系メーカーノシェアが約9割 2011年の生産台数は前年比11%減の145万台 しかし2012年には過去最高の200万台見込む タイのコンビニ最大手はセブンイレブン 今回の被災ではタイセコムが被災工場の見回りで活躍)。日本企業はアジアの輸出拠点の中核、リスク分散先の拠点としてこれまでタイを重視してきた。タイについては、政治面での不安定さはあるものの、充実したインフラ(道路など)・産業集積で高い評価が存在した。しかしそのタイで、2011年10月 水害が各地の工業団地におよび日系企業の被害が拡大、注目されている。その結果、中長期では、今回の水害で日本企業によるタイへの投資集中の流れに見直しが入るかも注目される。タイにとっても日本は最大の投資国である。しかし現地の報道をみて驚いたのは、現地の人々(従業員に加えて軍や付近の住民など)が必死になって、工場を守ろうとしている姿だった。結果として工業団地は冠水し、労働者には事前に退避命令が出されるのだが、このようなタイの人たちの努力を見ると、その努力を無にしないためにも、水害後、タイの工場のすみやかな復旧を進むことを期待したい。しかしそれと同時に、こうした水害を再発させない国造りが急がれる。というのもタイの水害は、毎年の恒例行事になっているからだ。タイの水害に示されたような天災への脆弱性は、あるいはほかのアジア諸国にも共通する問題だろう。自社工場は守れても、部品の供給先が被災すれば操業を停止せざるを得ないという問題が、今回の水害でも示された。この水害を機に反省すべきことは多い。タイ証券取引所は1974年の設立 2011年末で545社が上場 時価総額は268億ドル。代表的な株価指数はSET株価指数。メーンボードの全銘柄致傷 時価総額加重平均方式。
 1997年の通貨危機 タイのバーツ安 ⇒ 輸出基地へ
 リスク対策として周辺国からの部品調達拡大が課題

なお水害の拡大は、たまたま新政権発足直後。この政権に与える影響も注目点。
(7月3日に総選挙 タイ貢献党:低所得層・農民が支持が過半数 定数500中264 民主党:富裕層が支持は160にとどまる 8月5日発足 インラック政権 タクシン元首相の実妹のインラック・チナワット 法定最低賃金の引き上げ+法人税率の引き下げ ) 内需主導型経済への転換掲げる(現在は7割を輸出に依存 高い輸出はリスクが大きい)

今回の洪水については 天災と人災之複合が指摘されている。今回7月中旬から長期にわたる洪水 天災とされるのは、降雨量は例年の1.4倍 ダムが放流量増やす チャオプラヤ川下流で水害拡大 過去50年で最悪の洪水。でも昨年も過去数10年で最悪の洪水といっていた。See Reuters News Oct.27, 2010 つまり水害が常態化しているようだ。 今回は工業団地に被害が及んだことが特徴的で、防水堤が破られたことは衝撃的だったのではないか。
人災というのは、2006年の軍事クーデターでのタクシン(2005年6月に閣議決定したインフラ整備事業のなかで治水計画を立案)失脚以降 治水計画進まなかったこと 森林破壊(1961年には国土の51%が森林。しかし1985年には28%に低下。現在はカンボジアやミヤンマーで猛烈な勢いで森林が消えている。カンボジアでは年20万ha ミヤンマーで年40万haの勢いとも。)なども背景ともされる。

日本企業の被害の特徴:東日本大震災と同様に直接の浸水被害がなくても、部品供給の途絶などサプライチェーンの寸断により操業停止に追い込まれた。部品メーカーの集積度の高さ(効率性の高さ)が被害の拡大につながることが示された。なお幹線道路も寸断されており、う回路も渋滞なども生じた。

洪水のタイ経済自体への影響:産業界に大きな打撃。8月上旬に発足して間もないインラック政権に試練。また発足直後のインラック政権に課題:賃上げやコメ高値買取など人気とりでなく治水事業を求める声が高まろう。

2011年10月4日以降の経緯
 10月4日 サハラタナナコン工業団地(中小メーカーが入っている)が最初に浸水(丸順 芝浦電子 カルピスなど)
 10月4日  ホンダ アユタヤ ロジャナ工業団地に4輪車工場(年産24万台) 部品調達難で操業停止
 10月6日  ニコン 主力工場が浸水で操業停止 一眼レフの9割以上 レンズの6割以上を生産
       ⇒ 年末商戦に向け影響必至
       ⇒ 生産集中のリスクの露呈
 10月7日 ハイテク工業団地(中部アユタヤ県 キャノン HOYA ソニー 味の素など100社近い日系企業が入居) 浸水の恐れから事実上閉鎖
 10月7日 政府 米の高値買い上げ開始 従来に比べ4割高値で買い上げ 市場価格を押し上げか すでに7月上旬からの豪雨で 5月に比べ品種によっては35%程度上昇していた。⇒ 農家の収入を増やす半面 カンボジア ベトナムに米輸出のシェアを奪われるとの指摘もあり
 10月9日 バンコクの北70キロ ロジャナ工業団地(ホンダ ニコン パイオニア フジクラ 日立金属 OKI TDK 日本電産 ケーヒンなど日系企業135社が入居)(日本通運や近鉄エクスプレスの倉庫が浸水) 6.5mの防水壁乗り越え浸水(団地内 水位は最大で4M超 なお1M超上昇する見込み) 退避命令 被害は拡大 操業停止長期化 雨季の10月中の排水は困難 日本電産ではHDD用モーター工場などが被災 日東電工では工業用テープ生産工場が被災 東北パイオニアは車載用オーデイオ部品の工場が浸水により操業を全面停止
フジクラ:フジクラはスマートフォンなどに使われるフレキシブル・プリント基盤で世界3位(前工程の生産がタイに集中)
 ホンダ:シビックやシティを生産(設備の大幅な入れ替え必要 工場の再稼働は来年春か)
 ローム:ナワナコン(ロジャナから南に25キロ)にも工場。各種電源用IC カーオーデイオあるいはカーナビゲーション向け制御用LSIを生産 ⇒ 電子部品の不足 日本の自動車メーカーの生産に影響(東日本大震災時のルネサスの被災で車用のマイコンが不足した問題に似ている)
 10月9日 ホンダ 自社工場も浸水
 10月10日 トヨタ タイ工場操業休止(工場は3ケ所 2010年には世界生産の8% 63万台を生産)
 10月11日 ホンダ バンコクの2輪車工場のラインを停止 治水対策・部品不足
 10月11日 いすず自動車 操業停止
 10月11日 ソニー ハイテク工業団地にあるデジタルカメラ工場(レンズ交換式ミラーレス 一眼デジカメのほぼ全量を生産)の操業を停止→11月11日予定の新製品の発売開始は延期か
 10月11日 トヨタ タイ東部 タイ国内3工場(年産能力62万台)の操業の全面停止を公表
      中部アユタヤ県の2工業団地浸水で部品供給途絶
 10月12日 パナソニックのバンコク近郊の工場(冷蔵庫向け熱交換機を生産)が操業停止
 10月12日 中部アユタヤのハイテク工業団地(キャノン HOYA ソニー 味の素など100社近い日系企業が入居)(日本通運の倉庫も浸水) 防水壁破損 浸水
 10月13日 プロードプラソプ科学技術相がチョプラヤ川の防水堤が決壊したとしてバンコク北部等一部地域に避難警報をテレビ会見を通じ発令 → その後 プラチャ法相が政府は警報を発令していないと警報を取り消す
 Thailand floods threaten Bangkok, Oct.13, 2011 
 10月13日夜 三菱自動車 部品不足のため 完成車工場(チョンブリ県)の操業を停止
 10月14日 古河電気工業 ロジャナ工業団地にある光アンプ用レーザーの工場が浸水被害を受けたと発表。光ファイバー通信の安定を保つのに欠かせない部品でタイだけで生産。
 10月14日 バンガデイ工業団地でソニー SGホールデイングス 日本電産 東芝などが操業停止(操業停止要請による)
 10月14日 日野自動車 操業停止
 10月14日 タイ中央銀行は経済損失が1000億バーツ(2500億円)に達しさらに膨らむ恐れと発表。
 10月14日夜 バンパイン工業団地(中部アユタヤ県 入居84社 米ウエスタンデジタルほか 日系は30社 日本電産 帝人 明電舎 など)の防水堤壊れ浸水始まる 日本電産ではHDD(ハードデイスク駆動装置)の外装(トップカバー)の生産工場が被災 ウエスタンデジタルはHDD大手(世界シェア3割) 同社生産の6割占める中核工場が被災 そのほかのメーカーと合わせ世界のHDDの半分hタイで生産。
 ウエスタンデジタル:同社の生産の6割を占める主力工場が被災(被災前の生産能力に戻るには半年かかる。)⇒ノートパソコン 録画再生機 カーナビなどに影響
 10月15日朝 中部アユタヤ バンパイン工業団地全域が冠水(水位最大で1M)
 10月15日深夜 ファクトリー工業団地 防水堤壊れ水の侵入始まる


10月16日 ファクトリーランド工業団地(中部アユタヤ県 日系含む中小メーカーが入居)が冠水(中部アユタヤ県では県内の5主要工業団地すべてが冠水 300社を超す日系企業が被災)
10月17日朝 ナワナコン工業団地(バンコク北郊外パトムタニ県 東芝 パナソニック NEC等日系104社が入居)(郵船ロジステイクスの倉庫が操業停止)で防水堤壊れ浸水始まる
Floods force workers from Thai factory park, Associated Press, Oct.17, 2011
 10月17日 財務省 今回の水害被害はGDPを最大1.7%押し下げ(1%-1.7%)と発表
 10月17日 政府と労使が2012年1月に予定していた法定賃金引き上げの3ケ月引き上げ 引き上げ率の圧縮で合意(1日159-221バーツから300バーツを 一律40%に圧縮)(賃金の急上昇には企業業績の悪化による株式相場冷え込みをもたらし インフレとバーツ高を加速する懸念が指摘されていた)(→ 法人税の引き下げ案 現在30% 2012年23% 2013年20%に引き下げをどうするかは報道がない。)
 10月18日午後 ナワナコン団地 全域が冠水(最大2M)
Japanese factory flood in Thailand, Oct.18, 2011
 10月18日 マツダ フォードとの合弁工場を19日から操業停止へ。
 10月18日 ミネベア(現在は4工場が停止) アユタヤの2工場の操業を20日から部分再開。
 10月19日 ホンダ バンコク北部のラッカバン工業団地(日系企業49社が入居)にある工場での二輪車の生産を再開
 10月19日 バンコク(人口1200万人 GDPの25%を占める)の都知事が、バンコク東部地区に浸水の可能性を認めて住民に避難準備を求める
 10月19日 タイ中央銀行は利上げ見送りを決定(政策金利 翌日物レぽ金利を年3.5%に据え置き 2010年12月以来2011年8月まで7回連続利上げで消費者物価上昇率を抑え込んできたが 世界景気の減速 国内の深刻な洪水被害に配慮 6月7月8月は連続して0.25%ずつ引き上げ2.75%から3.50%に。)
 10月19日 アイシン精機 パントムタニ県の工場(エンジン部品を製造)で浸水を確認 操業停止
 10月19日 三菱ふそうトラックバスの工場は19日午前操業停止
      日産自動車は操業停止期間を28日までと決めた(同社工場は被害を受けていないが部品供給が困難)。
 10月20日 ソニー 11月11日に予定していたデジタル一眼カメラ7の発売日を未定に変更
 10月20日 タイ政府の発表によれば同日までに洪水による死者は330人に達した。
 10月20日夕方 インラック首相はバンコク市内の水門の開放(水門の閉鎖は北部の被害拡大や北部で水が引かない原因になっている)を指示。
 10月21日 ソニー バンカデイー工業団地にあるソニーの半導体工場屋内に浸水始まる 
 10月21日(土) バンコク北部で一部が浸水
 10月21日(土) 災害予防緩和法により首相が全指揮権を掌握(野党の民主党出身のスクムパンバンコク都知事は政府命令に反して運河の水門すべての開放を拒否)
 10月21日(土) HOYA(メガネレンズで国内で40% 海外で10%のシェア)(タイから世界に輸出していた) パトムタニ県にあるメガネレンズの主力工場を生産停止
 10月21日(土) 三菱自動車 チョンブリ県にある4輪車工場の操業を来週24日から29日までも操業停止とした。
      トヨタ 完成車3工場の稼働停止を28日までに延長することを決定。 
 10月22日 日系企業被害拡大のおそれ(Reuters News)
 10月22日(日)夕刻 バンコク 中心部の防水堤の一部が決壊 都心部の一部で浸水
 10月24日(火) 日本の外務省はタイバンコクへの危険情報を「十分注意」から「渡航の是非を検討」に引き上げ
10月25日午後7時 国内便に使われているDon Mueang空港の閉鎖が宣言された。
 10月24日 トヨタ自動車 タイ洪水の影響で日本国内の工場で残業をなくすなど生産調整 10月24日から28日まで トヨタ本体の4工場 グループ会社5社の工場
 10月26日(木) 三越伊勢丹HDはバンコク伊勢丹を27日ー31日休業すると一度発表。しかしその後、洪水の影響を見極めると修正。
10月28日(土) バンコクの水害は今週末に山場を迎えると思われる。
 10月26日(木) トヨタ自動車 タイ洪水の影響で北米で4工場の10月29日午前の操業停止を発表
 10月26日(木) トヨタ自動車 タイ洪水の影響で一部の部品在庫が月内にも切れる見通し公表(生産調整長期化か)
 10月28日(土) タイ中央銀行による経済見通し(7月から変更)
      2011年実質経済成長率 4.1% → 2.5%
2012年         4.2% → 4.1%

始まった操業正常化(2011年11月中旬)
11月7日
 東芝 冷蔵庫と電子レンジの生産をタイ東芝電子工業社(ノンタブリ県)で一部操業再開

11月14日操業再開
 三菱自動車(部品不足で10月20日から完全停止。14日初日からフル操業 想定を上回る早期回復) 日産自動車(一部車種から) マツダ(フォードとの合弁工場 21日からフル操業へ) 日野自動車
 早期復旧のカギ 部品共通化・設計共通化(車種車台共通化 代替ききやすい)(部品の代替 品質評価 搬送ルート決定)
11月21日操業再開
 トヨタ自動車(タイに3つの完成車工場 56秒に1台生産 豊田市にある堤工場なみの最速工場 全世界で工場約50あるなかで)
トヨタ自動車(最悪シナリオ回避)
 11月21日 タイの工場再開(完成車3工場 部品調達停滞により10月10日より停止 日本から代替調達 12月中旬めどに正常化) 日本の工場も通常稼働に戻る 19日までの影響台数はタイを中心に約19万台

 いすず自動車 

スズキ
 12月1日 タイの二輪車工場の操業を再開(部品調達停滞により10月12日より稼働停止 少しずつ操業度引き上げる予定)

ホンダ(ロジャナ工業団地 11月7日排水開始)が再開できていない
 10月4日操業停止。浸水被害受けた四輪車は復旧のメドつかず 排水作業は12月までかかり生産再開は2012年春か 日系8社のうち自社工場が浸水したのはホンダだけ 2012年4月再開方針 排水後 機械の入れ替え必要) 部品不足の影響で国内 マレーシア フィリピン 北米 ブラジルなど世界各地の工場に影響
 11月14日二輪車の一部モデルについて生産再開

日本電産(タイでHDD用モータの6割を生産 中国 フィリッピンなどで代替生産)
 11月14日 タイ国内で工場を借りて代替生産開始
 11月22日 ロジャナ工業団地の部品工場(10月8日に浸水 浸水しなかった2階部分)の操業を再開
 12月1日 最大のロジャナ工場が復旧(バンガデイ工場は復旧準備中)
 12月9日 中部アユタナ・バンパイン工業団地にあるHDD用小型精密モーター部品工場が生産再開(残る3工場もタイ内の他地区などで代替生産中)
12月15日 ロジャナ工業団地内電力供給回復(タイ国営電力公社より融通 団地内の火力発電所の復旧は2012年夏)

ローム(ロジャナ工業団地 自動車向け半導体) 稼働・生産回復は来春か。
 ナワナコンとロジャナに工場。12月に復旧。2012年2月のフル稼働目指す。フィリッピン・韓国の自社工場 国内の協力工場に代替生産を依頼。
 11月27日までに ナワナコン工場(パトムタニ県)で浸水免れた2-3階で生産再開 自動車用のLSI トランジスタなど電子部品
ロジャナ工場(家電向け電子部品生産)の生産再開準備進める

ニコン(ロジャナ工業団地)11月中にも水抜き作業完了。
 2011年11月末 タイ国内の協力工場でデジタル一眼レフカメラ(全体の9割をタイで生産)の代替生産開始
 2012年1月 部分再開
 2012年3月末 通常生産体制に復旧予定

タイ洪水の年末商戦への影響
ソニー ニコン キャノンの一眼レフが品薄に。キャノンのインクジェットプリンターも。洪水の影響を受けなかったセイコーエプソン売れる(エプソンはタイでの販売が減り 部品不足の影響も受けるとしている)。シャ-プのレンジ。東芝洗濯機。にも不足機種が。
  

水につかった機械は制御部分の故障 本体にサビが発生する。工場で化学物質が溶け出し 部品交換 大がかりな修繕も必要。

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
Originally appeared in Oct.22, 2011
Corrected and reposted in Nov.28, 2011 and Dec.16, 2011

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財務管理論 現代の金融システム
ビジネスモデル 企業戦略論 東アジア論



インド経済(2011-)

2011-09-28 06:40:33 | Area Studies
インフレ抑制のためインド準備銀行は繰り返し利上げをおこなっている。海外投資家の中には景気減速を嫌って資金引き上げの動きもある。
インド タタの低価格自動車と農民の反乱 2008年9月
2008年のインド
インド経済(2008-2010)

 2011年1月10日 三井住友銀行がインドのインフラ投資基金の設立を発表。6月までに3億ドル集めるとのこと。
 2011年1月14日 12月の卸売物価指数前年同月比8.43%上昇
    1月25日 インド準備銀行(RBI)利上げ継続 0.25%上げて 6.50%と5.50%
    2月1日 インド株式市場 1月の海外投資家売り越しに転じる 1月月間の株価指数の下落は11%
 2011年2月16日 日印EPA署名 中国けん制のねらいも
2011年2月28日 2010年10-12月実質成長率 8.2% 7-9月の8.9%から減速 1月の卸売物価指数は前年同月比8.2%上昇
         中東の混乱 原油価格上昇は景気之押し下げ要因
 2011年3月   2010年10-12月期決算 自動車 消費財 素材企業で原材料高 価格競争の影響で減益企業現れる    
 2011年3月17日 インド準備銀行の利上げ(2010年3月以降8回目各0.25%)年6.75% 預け入れ金利であるリバースレぽ金利も引き上げ年5.75%
 2011年4月8日 2010年度の新車販売台数 前年度比28.7%増の319万6829台 300万台超える
         欧米車のシェアは2005年度(6%)の2倍強の13%(スズキのシェアは52%が45%に減少)
2011年4月14日 中国の三亜(海南島)でBRICSと南アフリカの5ケ国が首脳会議(BRICsからBRICSへ) 欧米と一線画す(リビアについてNATO中心の武力行使と異なる平和的解決を主張 ドル中心の国債通貨制度改革の必要性 SDRの推進を主張)
 2011年4月15日 3月の卸売物価指数8.98%上昇(2月の8.31%から加速)
2011年5月3日  インド準備銀行利上げ0.50% 年7.00%に(9回目)
 2011年5月30日 コクヨがインド文具大手カムリンを年内にも買収(報道 買収金額50億円超)6-8月にTOB。7月に第3者割当増資
 2011年5月31日 インド政府 2010年度(4月―3月)の経済成長率8.5%発表(2011年度予想は9%)
銀行の貸出金利は平均で9.7%で上昇気味
 2011年6月7日 ストックホルムのSIPRIによれば、2006-2010年5年間の通常平均輸入量でインドが中国を抜き世界1になった。
2011年6月17日 インド準備銀行 政策金利0.25%引き上げ年7.50%に(10回目)
 2011年7月 インド政府 成長見通しを9%から8.6%に修正
 2011年7月13日 2008年にテロがあったムンバイで再び連続テロ(死者18人 負傷者133人)
  2010年2月 プネで死者10人以上を出す事件発生
  2008年11月26日 ムンバイで同時多発テロ 死者166人 負傷者304人
インド ムンバイのテロ事件(2008年11月27日)
 2011年7月26日 インド準備銀行 政策金利を0.5%(0.25%より大きく)上げて年8%(11回目)
 2011年8月 日本 インド経済協定発効
 2011年9月 8月の卸売物価指数 7.78%
2011年9月11日 インドで乗用車シェア1位のスズキと、ドイツVWの提携解消が表面化
2011年9月16日 インド準備銀行 政策金利を0.25%引き上げ年8.25%に(12回目)

SENSEX30指数 ムンバイ証券取引所(ボンベイ証券取引所が正しい 1875年に設立で東証より古いアジア最古の証券取引所 2005年株式会社化に際して改称)
 最大手行 ステートバンクオブインデイア(SBI)
 鉄鋼大手 ジャイプラカシュ・アソシエーツ
 建設大手 ジャイプラカシュ・アソシエーツ
 ITサービス タタ コンサルタンシー・サービス(最大手TCSとも)
        インフォシス(インフォシスとTCSは日本でM&A検討中とのこと、2010年11月)
        ウイプロ 
 携帯電話最大手 パルティ・エアテル

証券市場論 現代の証券市場 証券市場論リンク
財務管理論 現代の金融システム 財務管理論リンク
ビジネスモデル 企業戦略論 東アジア論



         

上海証券市場について

2011-09-21 17:50:10 | Area Studies
上場企業数
 上海は900社 石油・金融など国有大企業中心 銀行は国有大企業優先
 深圳は1200社 時価総額は7兆8000億元で上海の4割程度 規模小さな製造業中心
  賃金上昇 原材料上昇 人民元上昇 金融引き締め(融資審査厳格化)等の影響受けやすい
 そのためか深圳A株指数は上海A株指数に比べて不振
 
上場企業数(上海と深圳の合計)
2010年末2176社(前年に比べ340社増加)

純利益(2010年12月期決算)
1 中国工商銀行 1651億元 28%増
2 中国石油天然気 1398億元 35%増
3 中国建設銀行 1348億元 26%増

2010年8月6日 創業板に3社が新たに上場 上場社数は100社に達した。6日の終値の時価総額は
 4150億元 上海のA株市場16兆2106億元の3%程度

2010年7月 中国農業銀行が上海(15日)と香港(16日)で新規株式公開 資金調達額は221億ドル(1300億元 約1兆9000億円)過去最大

2010年4月16日 上海の金融先物取引所で株価指数先物取引が開始された。初日の取引量は5万8000枚
 (約600億元 8200億円)

2009年末の上海と深圳の合計
人民元建てA株の時価総額24.3兆元(約318兆元)東京証券取引所の308兆円を上回る

2009年12月 上海の株式売買代金 11月までで31兆元(400兆円)を超えた。年間で世界3位になる見込み。

2009年10月 深圳証券取引所は創業板を開業(10月30日取引開始 28社が上場 全社が上場初値が公募価格上回る 株価高騰を受け当局は
全銘柄について売買を一時停止措置 一部は公募価格の3倍 総売買高219億元は上海の2割弱に相当)

2009年9月末 適格海外機関投資家QFIIの投資枠を8億ドルから10億ドルに拡充

2009年9月27日 中国工商銀行の非流通株がすべて市場で売買可能な流通株に転換される

2009年8月 上海総合指数は3400台後半まで回復(株価そのものは乱高下)

2009年7月13日 中国建築工程(中国建設最大手)の上海市場上場(2008年9月の金融危機後 初の大型上場)
      最大120億株発行 約426億元(5960億円)を調達

2009年6月下旬 人民元建て債券の発行を解禁 HSBC と 東亜銀行 が香港で人民元建て債券を発行

2008年10月 上海総合指数が過去最高値を記録した(6000を超えていた)

2007年 上海の年間の株式代金 30.5兆元を記録した
    このバブルとされた年に中国天然気(ペトロチャイナ)も上場されている

2007年9月25日 中国建設銀行の上海市場上場

2007年2月27日 上海株急落 日本・米欧に連鎖する

2006年 中国工商銀行のIPO 過去最大の219億ドルを調達 

非流通株制度 1990年代前半に導入 全体の6割程度 
 一部の株式について市場での売買を禁止しているもの
 国は支配権維持 
⇒ 長期株安の主因として改革に本腰
 また弊害としては
 大株主:株価に無関心になる
 一般株主:経営チェック機能が阻害される

2005年の株式市場改革で国や国有企業集団が保有する国有企業株は上場して一定期間後に
市場で売却可能とされた
 手続きとしては株主総会での承認手続き(個人や機関投資家など流通株主の3分の2の賛成)がいるようだが これが否決・可決されたと
いう報道が2005年から2006年にかけてみられる 流通株主の不満への代償として株式あるいは現金を与えるものがあった 
 非流通株を保有するのは国 国有法人など。上場企業の統治へのマイナスの影響が指摘
される。逆に区別の解消は、流通株数が増えるので株価にはマイナスの影響が考えられる。
 証券監督管理委員会では合わせて株価対策として流通株の買い入れ消却を促す規定 非流通株主に流通株の取得を認める通知を整備している(2005年6月)
 
2004年6月 深圳に中小企業板

参照 中国の経済と株式市場 2006年ー2007年
中国証券市場略年譜(1976-2011)

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ブラジル 利下げに転換(2011年8月31日)

2011-09-08 12:22:22 | Area Studies
ブラジルという国について

人口2億近い(2008年の国連推計で1億9400万人) 中南米の人口の3割 
人口と国土面積 世界で5位
面積851万平方キロメートル 日本の22.5倍
世界有数の鉱物資源国 鉄鉱石 ボーキサイト レアメタル 石油など
人口1億9076万人(2010年調査 世界5位) 原語ポルトガル GDP2兆900億ドル(2010年 世界7位)
1822年 ポルトガルから独立

BRICSの中でも個人消費はじめ内需の比率高い 輸出動向に左右されにくい
高金利のための大量の海外資金の流入が見られる
経済規模8位 2008年の金融危機後経済は急回復 2010年の実質経済成長率は7.5%

現在GDP順位は7位 10年以内に5位とも 
2014年 サッカーワールド杯
2016年 リオデジャネイロ 夏季五輪
を契機にさらなる飛躍が見込まれる

ジルマ・ルセフ大統領(労働党政権 ブラジル初の女性元首)ではあるものの賃金抑制 財政支出削減に動く

2011年に入りブラジルレアルは上昇基調(2011年1月中旬ー8月中旬)。この間、物価上昇(6月の消費者物価上昇率は前年同月比6.71%)もあり中央銀行はたびたび金利を引き上げる。また財務省は融資規制。
6月8日 4回目の利上げ0.25%引き上げて年12.25%
7月20日には5回目の引き上げで(計1.75%引き上げ)政策金利は12.50%に。景気過熱の鎮静が期待される
  1-3月 実質GDP前期比1.3%増(前年同期比4.2%増)
  4-6月 前期比0.8%増(前年同期比3.1%増)
レアル相場の上昇により株価は2011年に入ってから大きく下げるが、レアル上昇の一服感から回復期待も(8月中旬)
2011年8月31日 ブラジル中央銀行は約2年ぶり に政策金利引き下げ0.5%引き下げ12.0%にするとの決定 景気減速懸念 レアル高防止の狙いもある。従来のインフレ抑制重視の利上げから一転、米欧のリセッション(景気後退)への対応は注目された。

利上げ 景気失速懸念を生む面も
日本では レアル高 高利回り ブラジル債券投資信託が人気
レアル高終わると 逆風
またレアル高はブラジル製造業にはマイナス

1960年代後半
1970年代前半 ブラジルの軌跡
1980年代   対外債務問題
1990年代前半 ハイパーインフレの時代

 物価上昇 高金利 通貨高
高金利 投資マネー レアル高 国内産業には打撃
利上げには製造業の抵抗強い

輸出品目 鉄鉱石(同国の埋蔵量は480億トン 最近新たな鉱床が発見された)など天然資源多い(国営石油会社ペトロブラス 資源大手ヴァーレ 鉄鋼ゲルダウ)携帯電話オイ 海外企業の進出続く
南米1の工業国 自動車生産で世界6位 航空機(リージョナルジェット)で強い
2007 大規模なインフラ整備計画PACを発表(2007-2010)
2010年3月PACの第2段(2011から4年間)
製造業は競争力低下
 1999年 変動相場制に移行
 南米諸国連合UNASURを主導
 ベネズエラ主導の米州ボリバル代替統合構想ALBAをけん制
複雑な税制 高金利 
 レアル高 2006年以来 実質4割上昇との指摘がある
 ブラジル之株価指数(ボベスパ指数 サンパウロ取引所の代表的株価指数 米国市場と取引時間重なるため
米国市場の影響強くうける)
 西側の超低金利政策の裏になっている側面
 景気過熱を抑える措置
 懸念材料としてインフレがある。インフレ圧力 
2010年の実質経済成長率は7.5% 1986年以来24年ぶりの7%台(2011年3月3日 )地理統計院発表
2009年はマイナス成長(マイナス0.2% マイナス0.6%とも いずれにせよマイナスは1992年以来17年ぶり 2009年の物価上昇率4%台前半) 政府の景気対策により2010年は7.5%増 24年ぶりの高成長
GDP規模で世界7位のイタリアなみ
GDPの6割は個人消費(内需に依存した経済構造に特徴)⇒(中国は4割以下 インド ロシアは5割台) 消費は年率8%程度の伸び
物価上昇率は6%程度(11年3月頃)

2011年9月6日 1ドル1.657ドルのレアル安で取引終わる
2011年8月31日 ブラジル中央銀行 0.50%引き下げ決定 引き下げは約2年ぶり 市場予想を覆す決定(インフレ抑制より内需下支えの姿勢を鮮明にする) レアル急落へ(高金利狙いの投機資金に一矢報いる レアル高は国内製造業には負担 インフレ圧力高まる恐れ)
2011年7月20日 0.25%引き上げ決定12.50%(世界最高水準の政策金利) ⇒ 大幅な利上げで景気に悪影響の懸念
2011年6月8日  0.25%引き上げ決定12.25% 
2011年4月20日 0.25%引き上げて年12.00%
2011年3月2日 中央銀行0.50%利上げ年11.75%
2011年1月の消費者物価上昇率5.99%(前年同期比) インフレ目標は4.5%を基準に上下2%以内
2011年1月19日 中央銀行 半年ぶりに0.50%利上げ 年11.25%
2011年1月 ルセフ大統領就任 (就任後たびたび中央銀行に利下げによる利下げ求める)
2010年の消費者物価指数上昇率前年比5.91%上昇(2004年の7.60%以来)
2010年9月1日 中央銀行通貨政策委員会 年10.75%に据え置く
2010年12月3日 中央銀行 預金準備率引き上げ 当座預金などについては8%から12%へ
2010年4月28日 中央銀行 0.75%引き上げ 年9.50%
2010年3月17日 中央銀行(通貨政策委員会) 年8.75%に据え置き
 
2009年10月 外国人投資家による債券投資等に関する金融取引税(いわゆるトービン税)復活(再導入)
            2%から4%へ(株式はそのまま)
      背景 内外金利差 大量之海外資金の流入 通貨レアル高 国内インフレ 


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日米国債が相次いで格下げ(2011年8月5日そして8月24日)

2011-09-08 10:41:05 | Area Studies
6月30日 米で量的金融緩和第二弾QE2が終了

7月13日 ムーデイズ 米国債を短期間内に格付けが変更されるウヲッチリストに入れる。
7月14日 S&P 米国債ヲクレジットウヲッチ(90日以内に格付けを引き下げる可能性が50%以上ある)に指定

8月2日 ムーデイズは米国債の格付けヲ最上位Aaaで維持すると発表(債務上限引き上げ法が成立して米国のデフォルトリスクがほぼ排除されたため」)格付け見通しを安定的からネガテブに変更
8月2日 フィッチレーテイングも米国債の格付けヲトリプルAに据え置くと発表

8月4日 日銀が金融緩和

8月5日(金)昼過ぎ S&P 財務省に格下げの意向つたえる
   格下げ公表前の米10年物国債利回りは2.5%前後
   米財務省 S&Pの資料を精査 将来の財政赤字見通しに2兆ドル近い計算間違いを発見
8月5日(金)夜 S&P 米国債を始めて格下げ AAAからAA+に1段階引き下げ
(発行残高は2010年度で13兆ドル1000兆円 日本の投資家の保有残高は70兆円 他方中国の保有高は1.2兆ドル100兆円規模とみられる)
   → 次はフランスとの観測 フランスの金融機関が財政悪化国の国債や民間への融資残高を多く抱えていることが
     フランスへの不信につながった。参照 武田洋子「危ういフランス経済」『エコノミスト』2011年9月13日, pp.86-88

8月8日 米10年物国債利回り2.3%台に低下
8月9日 米FOMC 低金利政策長期化を表明

8月24日午前 ムーデイズが日本国債を1段階格下げAa3へ
 なおムーデイズは引き下げ方向での見直しを2011年5月に発表。
 東日本大震災による日本経済の悪化 国内政治の混乱で財政健全化が進みにくいと判断
Aa2(イタリア スペイン)からAa3(中国 チリ サウジアラビア)へ 
しかし直後に国債金利は一時小幅上昇し1.030% 円相場は76円台後半
スペインやイタリアの長期金利が5%前後なのに日本1%台 
金利差がこれだけあるのに信用力が劣るわけがないとして格下げに疑問の声もある
8月26日 バーナンキFRB議長が景気下支えのため9月のFOMCで追加緩和策検討を表明

参考 The Tricky Business of Rating Uncle Sam Bloomberg Businessweek, 2011/08/08, 43-44
リスクフリーではなくなった米国債のデフォルトフリー後の課題 金融財政事情2011/08/15, 6-7
    同時株安で市場が見据えた救世主なき世界経済 エコノミスト2011/08/30, 20-24.
トリプルA復帰は最短でも9年 エコノミスト2011/08/30, 25
目前に迫る国債格下げ エコノミスト2011/08/30, 26-27. 


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