Entrance for Studies in Finance

インド(2008年)

インド 
 1991年の新経済政策以降顕著に経済好転。今後15年後(2020年頃)には中国に匹敵する政治経済大国になる可能性が高い。2006年度の成長率は9.4%。2007年度は9.0%と予測されている。通貨ルピー。
 ヒンズー教徒が多い。英語圏で高学歴の人材を多数生み出しているインド工科大学を始めIT専攻大卒者を毎年10万人以上輩出。その結果、世界のIT産業の拠点に変貌へ。IT産業の中心地バンガロール(中南部)。
 このほか主要都市としてチェンナイ(南部東海岸)、ムンバイ(中西海岸)、首都ニューデリー(中北部)。首相名はモンマハン・シン。チダムバラム財務相。財務次官にデュブリ・スバラオ氏(マクロ経済学者)
 なお社会主義国(共産党独裁)である中国に比べた魅力として世界最大の民主主義国。インドの人口は11億3440万(2006)。中国は13億1298万(2006)で人口規模で拮抗。一人あたりGDPおよそ700ドル(2005)。中国は1000ドル超えた(2005)。金融ではインド準備銀行(RBI)が中央銀行であり、最大手銀行は国営ステートバンクオブインデア。
 中心となる株価指数はムンバイ証券取引所BSEの株価指数SENSEX主要30社株価指数。

近況
08年1月8日  SENSEX 20873.33 ピーク PER 28倍台
08年1月17日  首相直属の経済諮問委員会 2007年度の経済成長率予測を8.9%(07年7月時点の予測は9.0%) 2008年度の予測を8.5%とした 先進国の景気減速やルピー高などの影響 
08年2月4日  SENSEX 18660.32 1月18日以来の高値 内需中心の経済でサブプライムの影響軽微との主張崩れる IT産業に影響不可避 海外機関投資家FIIの売り越し続く 1月だけで40億ドル 海外の個人投資家はインド政府の認可を受けた機関投資家を通じてインド株式投資を行っている
08年2月27日 インド財務省は2007年度のGDP成長率予想を8.7%とした(2008年度は9.6%)
08年3月24日 SENSEX 1万5289.40 PER19倍台に低迷(08年1月から下落) 米向け輸出の失調 内需ふるわず インフレ抑制のための高金利政策で耐久消費財 投資財ふるわず
08年5月16日 SENSEX 17434.94(2007年10月なみ) PERで21倍台
08年6月4日 統制小売価格見直し発表 ガソリン・軽油価格引き上げ10%程度と小幅にとどめる(予想される総選挙に配慮か)
08年6月11日 インド準備銀行はレポ金利を0.25%上げて年8.0%とする緊急利上げを発表 即日実施した 利上げは昨年3月以来1年3け月ぶり 急激な物価上昇に対処
08年6月20日 インド政府 6月7日時点の卸売物価指数発表 前年同期比で11.05%上昇(11%台にのるのは1995年5月以来 これまでは年率3-4%で推移 2月後半に5%突破)
08年6月24日 レポ金利を0.5%引き上げ年8.5%とする緊急利上げを決め即日実施した。預金準備率を7月に2段階上げて8.75%とすることも決めた。
08年7月10日 インド自動車工業会 新車販売減速へ 4月前年同月比21.2%が5月16.6% 6月は8.1%約12万9500台に
08年7月17日 インド証券取引委員会SEBI 17日までに年初来 海外機関投資家FIIの売り越しは70.65億ドル。2007年の買い越し170億ドルの半分近くが流出。
08年7月29日 インド準備銀行はレポ金利を0.5%上げて年9.0%にするとして即日実施 利上げは今年6月から3度目 物価上昇抑制目指し引き締め強化 預金準備率も0.25%引き上げて9%に sensexは急落
08年7月31日 SEBSEX 1万4355.75 7月半ばの1万2500台からは回復(08年1月はじめの2万台 PER28倍超えから下落) 年率12%近いインフレが懸念材料
08年8月6日 SENSEX 1ケ月半ぶりに1万5000台回復 1万5073.54
08年8月29日 インド財務省発表 4-6月期のGDP 実質前年同期比伸び率7.9%増加 1-3月期の8.8%に比べ減速。
08年10月6日報道 インドの経常収支急速に悪化 1-6月の経常収支赤字は前年同期比70%増の107億ドル 原油高による貿易赤字拡大(2004年以降赤字だが赤字幅拡大) 4-6月 海外直接投資は純増が続いたもののこれまで買い越しだった証券投資も売り越しへ SENSEXは年初の高値から4割下げている
08年10月11日 インド準備銀行 預金準備率を9.0%から7.5%に引き下げ
08年10月15日 インド準備銀行 預金準備率を7.5%から6.5%に引き下げ
08年10月20日 インド準備銀行 政策金利レポレート引き下げ
08年11月1日  インド準備銀行 政策金利レポレート0.5%引き下げ 7.5%へ
預金準備率は6.5%から5.5%に引き下げ       

インドの主な企業
インドの主な企業にはIT産業4社(タタ・コンサルタンシー・サービシーズTCS 従業員89000人08/4-6 売上15億ドル) インフォシス・テクノロジーズ(76000人 売上12億ドル)ウイプロ(75000人 08/4-6 売上14億ドル)、サティヤム(40000人 売上6億ドル)。IT企業は08年4-6月期のドル建て売上高が減速(ルピーの下落でルピー建てではみかけ増加)。欧米圏への過度の依存(売上の8-9割)見直し。非英語圏への進出が課題に。
 石油精製最大手インド石油(IOC)。インド最大の企業インド石油天然ガス公社(ONGC)は各地で油田開発・投資中。石油化学大手・化学繊維リライアンスインダストリーズ(インド最大財閥リライアンス)など資源関係。
 インド製鉄最大手タタ製鉄は新日本製鉄とインドで自動車用鋼板合弁生産で合意07/11生産開始2010稼動か。タタ製鉄は2007年英蘭コーラスの買収でも注目された。タタ自動車も商用車で6割のシェアをもつ最大手。なお商用車2位のアショックは日産と2010年から合弁生産へ。
 ミタルスチールは2006にアルセロールを買収して国際企業化(世界最大手)。通信最大手のバルティ・エアテルなど。
 インドの企業に日本の軽自動車メーカースズキの子会社マルチ・スズキが混じっていること興味深い。

スズキそしてインドの自動車市場 
 インドの自動車メーカーは最大手は商用車に強いタタ、続いて乗用車最大手のマルチ・スズキ、多目的スポーツ車SUVに強いのが3位のマヒンドラ・アンド・マヒンドラ。
 マルチ・スズキ(スズキの子会社)は乗用車で首位46.5%(2007/4-2007/9)。2台に1台はスズキといわれる。ところでスズキは2010年までにインドに2000億円追加投資を決めた。これは現地インドでの小型車開発体制整備を意味する。インドでの優位を確立する戦略とみられる。
 現在のマルチ・スズキの主力車マルチ800は二代前のアルトをベースにすることで開発費用を浮かせたもの。このような方法で60-80万円の低価格を可能にした。しかしさらなる低価格車の登場が近付いており、スズキは現地での開発体制整備に進む戦略に転じた。
 すでに2004年にルノーは最低価格5000ドルのロガンの販売を始めた。ルノー日産連合がインドの二輪車メーカー、バジャジオートと組んで2010年に予定するのは3000ドルカーである。インド現地のタタ自動車も3000ドルカー(2500ドル前後の世界最安値ともされる)を2008年にも販売開始するとし、インドに開発拠点を有する韓国の現代自動車も3000ドルカーの開発を進めている。
 2008年1月10日 タタ自動車は10万ルピー(約28万円)の超低価格車ナノを発表した。乗用車としては世界最安。スズキのマルチ800の半額。(安全性 排ガスなどで懸念の声あり)。年25万台の販売目指す。インドの乗用車販売は2002年度に70万台強。2007年度に150万台強。欧州のドイツ市場の半分の規模。
 また2008年3月末に正式に発表されたのはタタ自動車による米フォードからの英ジャガーと英ランドローバーの買収(23億ドル2300億円)。タタは欧州で通用するブランド力をえたことになる。なおこの資金をタタは日本を含む先進国金融機関からの協調融資30億ドルで調達した(みずほCorpoと三菱UFJを含む8行が主幹事となった)。
 ホンダも2010年以降、フィットを小型化した新車種をインドで生産する予定。トヨタは7000ドル前後、独フォルクスワーゲンは6000ユーロ(約97万円)の低価格車を2010年頃生産投入予定。
 このような競争の激化に対し、現地で開発体制整備という正攻法がスズキのインドでの巨額投資の背景にある。
 他方でスズキは静岡に建設中の完成車工場にも1900億円の追加投資している。
 国内でも巨額投資の背景には06年度に国内の軽自動車生産で2位のダイハツの追い上げ首位を奪われたことがある。輸出が好調で国内生産を減産したことと、ダイハツが燃費性能でスズキを上回る車種を実現して消費者の支持を得たことがある(06年12月発売のミラは1リットルあたり27Kmを実現。新型車投入数でもスズキを上回った)。3位のホンダも追っている。国内での投資により首位奪還を狙うが海外輸出比率も高める予定。
 なおすでに述べたがインドの商用車はタタ自動車が6割で首位。2輪車ではヒーローホンダが首位42.1%(2006/4-6)となっている。
低価格自動車の展開
日本企業のインドシフトとムンバイでのテロ事件

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
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