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2011年 中国各地で暴動?  11月には金融政策の微調整

高まる不満 各地で暴動が頻発した2011年
2011年6月1日 広東省潮州市で、未払い賃金の支払いを求めて父親と抗議に向かった青年が、父親とともに工場で乱暴され、手足を切断され重傷を負った。1万人以上の群衆が犯人の処分を求めて、市当局・警察を取り囲む騒ぎになった。
広東省増城市での暴動 2011年6月10日勃発 以後数日にわたり続く 地元の警官(警備員)が四川省出身の妊婦に乱暴したことが原因で、胎児が死亡したという噂が流れたことから群衆が警察を取り囲む事態になった。騒動は数日に及び、集まった群衆の数は10万を超え、軍隊が投入されて鎮圧を図ったとされる。

湖南省長沙市では2011年6月13日 土地収用強行をめぐり、これに反対する地元住民およそ1000人が市長舎前に集まったとのこと。

NHKの解説 暴動頻発 中国共産党90年の課題 2011年6月30日

2011年8月14日 大連で起きた住民と武装部隊との衝突 住民が抗議のため地方政府前に集まっていたところに続々と武装部隊が集結。やや暗くなったところで、群衆を解散させようと実力行使に至っている。化学工場の移転を求める住民の抗議とのこと1万2000人を超える人々が集まったとのことで、大連市当局の失政といえるだろう。
このような化学工場の有毒物質の問題は中国各地で生じている。2011年8月16日 江西省蓮花県では、化学工場への抗議とその操業停止を求めて数千人の住民が問題を起こしている化学工場前に集まったとのこと。

広東省東部の沙尾市陸豊市烏坎村では村幹部の不正を糾弾する動きがあるが、抗議する住民側のリーダー格の人物の急死の真相究明を住民は求めている。この騒ぎは2011年9月以来3ケ月続いているとのこと(9月21日以来。12月20日現在係争中)。
抗議活動をする中心格の人物が不慮の死を遂げる事件は2010年12月に浙江省楽清市でも生じている。同年12月25日、長年にわたり火力発電所建設に伴う土地収用をめぐる住民の不満を代弁してきた村長が建設業者のダンプカーにひかれ死亡した。地元警察はこれを交通事故として処理している。

浙江省湖州市での暴動(2011年10月28日) 2011年10月に発生したこちらの暴動では、税金の引き上げの問題、徴税当局の役人が、増税の抗議にきた経営者を乱暴した問題が伝えられている。抗議する人を理不尽に乱暴することで、怒りに火を付け暴動が起きる構図が共通している。また警察当局あるいは軍隊が、民衆の側にたたず、理不尽な行為をした経営者や市当局を守らされている構図も共通している。しかしどちらが悪いことをしているかは、明白であり、乱暴した工場経営者、乱暴した警察官、乱暴した徴税官、こうした人たちをまずは厳罰しなければ、人々の怒りは収まらないのではないか。

 また広東省東部の汕頭市では石炭火力発電所の増設に反対する多数の住民と警官が対峙する事態が12月に入り続いている(12月20日から23日まで連日。23日現在係争中)。中国政府は、汕頭市全域を経済特区にすることを2011年5月1日にきめたとのこと。汕頭市は華南4都市のひとつとして、他の都市とともに経済特区の指定を受けた。他の3都市については2010年に市全域が経済特区とされ汕頭市に比べると発展が進んでいるとのこと。

暴動を背景にストライキも頻発
 そうしたなか広東省深圳市で香港系の黛麗斯集団の工場(11月21日)、台湾系の精模電子科技で(11月22日)で待遇改善を求めるストが起きていたが、12月に入ると日立製作所のHDDの部品工場でも半月に及ぶストが続いている(12月20日現在)。
 深圳市では昨年2010年 ホンダの工場で賃金をめぐる紛争が発生した。深圳市は中国国内で最も最低賃金水準が高いとのこと(中国人事社会保障省の発表 2011年10月25日)。月額1320元(15,800円である)。
 沿海部を中心に工場労働者の不足が深刻。地方政府は出稼ぎ労働者の待遇改善を試みている。(現地戸籍を与えて子供を公立小中学校に受け入れる。あるいは戸籍がない場合も受け入れるなど。公務員や公的機関職員に採用する。)
 反面 人件費上昇で企業が倒産することも。新興国が余剰労働力を失い賃金水準があがるポイントを
「ルイスの転換点」と呼ぶ。他方、新興国が人件費上昇でコスト競争力失う問題は中進国のワナとよばれている。2010年の日本貿易振興会の調査では中国製造業作業員の平均基本給は月303ドル、フィリッピンは213ドル、ベトナムが107ドルとのこと。
 しかしベトナムでも企業の進出とともに賃上げが波及している。2010年の賃金上昇率は20%とも。2015年を境に中国の人口は減少へ転ずる。
そこで意識的に製造業から、サービス・ハイテク産業に産業構造を転換する政策をとり、モデル地区がつくられており、たとえばマカオに近い地区(珠海市横琴)に法人税減税区(25%⇒15%)を設けたり、香港・マカオから働きにくる人を対象に個人所得税の軽減策(実質最高20%に制限)も導入されている(深圳市前海)とのこと。

貧富の差 言論の自由がないことへの不満
 背景に貧富の差が拡大することへの不満(ジニ係数は0.48倍程度)。そして言論が自由でないことへの不満。中国は「開発独裁国」とも揶揄される。生産額の8割は国有企業によるものということも、富の偏在が崩しにくい要因とみられるが、民衆の間の不満が高まっているとの指摘も多い。
 中国社会への評価を下げる人権への弾圧 中国における言論・思想の自由
 中国政府が自国民を信頼して、思想・言論の自由を大胆に認めること。民衆を取り締まるのではなく、不正を犯した経営者、官僚を取り締まり公正かつ厳正に裁くことなどが必要であろう。
 
金融引き締め策は微調整(2011年11月末)
 このような騒動の背景に最近の経済情勢が関係している。とくに輸出の減速、物価の上昇に注目。物価の上昇は低所得層を苦しめていると考えられるからだ。
 外部環境としての欧米の経済情勢を受けた輸出の減速。輸出の前年同月比伸び率は35%強(2011年3月)が15.9%(2011年10月)まで減速。11月の13.8%は春節要因の2011年2月を除けば2年ぶりの低さ。3ケ月連続の低下。他方で加工貿易の国柄を反映して輸入も減速している。10月が28.7%。11月は22.1%。輸入の伸びの減速が少し遅れて輸出の伸びの減速につながっている。
 国内環境としては物価高(CPIについてピークは2011年7月の前年同月比6.5%上昇 8月は6.2%。9月は6.1%。4ケ月連続で6%台。高止まり。1-9月累計では5.7%。ただこれは前年同月が低いことの反動とも解説されている。この要因のはげ落ちもありその後3ケ月連続で低下。2011年10月は5.5%。11月4.2%。)。
 物価上昇は個人消費の減速につながり、物価高を受けた金融引き締めももたらした。中国人民銀行は2010年秋以来2011年12月までに政策金利を5回、預金準備率を12回それぞれ引き上げてきた(物価上昇の鈍化は金融引き締め政策の転換への期待を高めた)。そして引き締めは企業の減速につながった。
 なお不動産の引き締め。これは住宅バブルを懸念する政府が2軒目目の住宅ローンを規制するなど投機目的の購入を制限したことによるもの。その結果 不動産価格の下落が進んでいる(2011年11月)。2010年10月の統計では主要70都市中で前月比下がった都市は34。これは9月より倍増している。もっとも前年同月比で下落した都市2都市にとどまる(4-6月には3都市 7月に1都市 8月にゼロなど前年同月比で高止まりは明らか)。2011年11月の統計では前月比下落した都市は49都市。全体の7割に広がった。
 これがさらに鋼材価格の下落、鉄鋼の減産につながっている。不動産市況の悪化は、拡大している不動産関連融資の不良債権化につながりかねないことも注目される。
 7-9月期のGDPは実質で前年比9.1%増。2年ぶりの低水準。(1-3月が9.7% 4-6月が9.5%と9%台を保ちつつ連続で鈍化)
以前に比べて国内消費のGDP寄与度があがり輸出の減速の影響を和らげている。(2006年には4割 2011年には5割程度に上昇)
 温家宝首相が10月下旬、マクロ経済政策の微調整に言及したことは政策転換が近いことを印象付けた。
 2011年11月8日には1年物中欧銀行手形の発行金利が2年4ケ月ぶりに引き下げられた。
2011年11月30日 中国人民銀行は預金準備率を12月5日から0.5%引き下げるとした(大手行で21.0%か)。
同引き下げは2008年12月いらい。2010年秋以来の金融引き締め政策の転換ともいえるが、中国政府は
なお不動産価格抑制 物価抑制の姿勢は崩していない。


不動産価格の抑制策など引き締め策は堅持
 株価は2011年後半から下げが目立った。とくに上海総合株価指数は9月30日には年初比16%下げ 2年半ぶりの安値を記録している。ハンセン指数は9月から10月にかけてとりわけ大きく下げた。欧州債務問題が中国景気の先行きの懸念材料であることを示す結果になった。
 2011年11月末の金融緩和決定後、香港ハンセン指数がすぐに反発している。株式市場にはこの金融緩和への転換で、調整局面が終わり株価が上昇局面に入ることを期待する声があった。中国政府の中にも江沢民前国家主席は成長重視派だとされるなど、政府内にも
路線をめぐる議論があるようだ(市場重視派には朱鎔基前首相、経済成長の確保はすべての任務に優先するとする王岐山副首相の名前も)。毎年新規労働力が2000万人。雇用を確保するには8%の成長が必要。したがって8%台に下がると景気浮揚論が力を増す可能性。
 しかし実際には中国政府は、12月上旬 不動産価格抑制政策の継続を発表(住宅都市農村建設省が全国11都市に対して
住宅購入規制継続を指示 2軒目の頭金比率を60%など。具体的規制は各都市で異なる)。不動産価格上昇に
厳しい見方を示した。確かにCPIがなお抑制目標の4%を大きく上回る状況にも変化はない。
 こうした状況から11月末野預金準備率引き下げの判断は、政治経済の安定に向けて(5年に一度開かれる2012年秋の党大会に向けて)、引き締めをさらに調整する、微妙な調整と考えられ、本格的金融緩和とはいえないと思われる(不動産バブル抑制の責任者は住宅価格抑制政策堅持を唱える李克強副首相。2013年春に温家宝首相の後継とみなされている)。
 経済成長率が8%台に落ちてきたところで、おそらく政策が転換されるのではないか。

originally appeared in December 28, 2011
corrected an reposted in January 16, 2012

中国社会への評価を下げる 人権への抑圧
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