ザ・クレードルのルーツともいうべき戦前の映画のポスターを紹介します。
そもそも、クレードルのオーナーにして名物ママだった椎名たか子さんのお父様は、戦前の映画がサイレントからトーキーに移行する時期の映画監督・青山三郎氏(1903-81)です。
彼は1931年(昭和6年)から日本が太平洋戦争に突入する直前の1941年まで約10年間に48本もの映画を監督しています。現在フィルムは残っていないようですが、今回展示するポスターや青山監督の撮影シーンを記録した数々の写真は当時の映画の状況を知る上で貴重な資料です。
これらの中で特に興味を引くのは、映像左側の「戯れに恋はすまじ」(日活・1933年公開)のポスターとその右側の宣伝用ポスターです。
ともにレトロな雰囲気が最高ですが、この作品は日活のオールトーキーの第一作目。主役は当時人気の二枚目スター鈴木伝明と日本初の清純スター夏川静江です。
そして、右側は当時人気たった赤坂のダンスホール「フロリダ」で行われた映画公開に先立つキャンペーンポスターです。
主演俳優はもちろん、同名の主題歌を歌ったデビュー間もない東海林太郎(1898-1972) と「あの日のチョコレート」を歌った刈谷絹子(1909- ?)が参加。
ブラジル珈琲(当時ダンスホールはアルコール禁止だからでしょうか)と明治チョコレート(当時の高級品で映画の主題歌にもチョコレートが歌われていたためでしょうか)の接待(提供?)の文字。そして「スペシャルダンスエンタテイメント」のうたい文句がカッコ良すぎです。
当時の最新の音響技術と人気の俳優を使い、話題の新人歌手が主題歌を歌い、人気のダンスホールを使っておしゃれな珈琲とチョコレートでキャンペーンを行うという、現代にも通じる映画製作の監督を勤めた若き青山三郎(そのスタイルやファッションは驚くほどモダンでカッコ良く)の人気のほどがうかがえます。
ところで、今回のポスター展の開催期間に限りバー「ザ・クレードル」ならぬ、
カフェ「ザ・クレードル」をギャラリー内にオープンします。
映画「戯れに恋はすまじ」のキャンペーンにあやかって、「珈琲」と「チョコレート」を使ったクッキーなどで「接待」いたします。
貴重なポスターやそれにまつわる映像や音楽などとともに、ごゆっくりお楽しみください。
詳しくは、
『伝説のバー「ザ・クレードル」のポスター展』をご覧ください。