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デルヴォー「ジュール・ヴェルヌへのオマージュ」

2005-03-18 19:43:19 | 絵画
所用で行った福島県立図書館の隣の美術館で偶然、ポール・デルヴォー展を開催中だった。
かんりにんにとっては、思いがけない特典だ。
図書館の用事を速攻で済ませ、美術館へ移動。

夜景に白く浮き上がる女性たち。走り去っていく鉄道。コートを着たあやしげな男たち。骨格。
観るたびにこちらの気持ちを落ち着かない気分にさせてくれる画家だ。

大作は「ジュール・ベルヌへのオマージュ」「噂」「魔女たちの夜宴」「フルート奏者」「海辺の夜」「青い長椅子」「見捨てられて」「砂の町」「テラス」「ディオスキュール」など。

その中から1971年の作品「ジュール・ヴェルヌへのオマージュ」をとりあげてみたい。
ジュール・ヴェルヌは言わずと知れたフランスのSF作家。作品はどれも古典となって、あの岩波文庫に入った時にはさすがに驚いた。ヴェルヌにじゃなく、岩波に。

絵のかたわらにデルヴォーのコメントが。
「私は突然、ジュール・ヴェルヌの世界を復活させてみようと思い立った。オットー・リーデンブロックやパルミラン・ロセットや船や蒸気機関車を登場させて。一番主要な人物にスポットライト(両方の意味で)があたるようにした。彼女と赤い帽子がなければ、この作品は成り立たない。右端には学者の姿で自画像を描き入れた」

ジュール・ヴェルヌの諸作品

ヴェルヌはいいなあ。ウェルズよりも好きかもしれない。日本人はひょっとしたらウェルズよりもヴェルヌを好む傾向が強いんじゃないかな。『海底二万哩』はアニメ『不思議の海のナディア』に、『十五少年漂流記』はアニメ『銀河漂流バイファム』として翻案されたし。
うまく言えないけれど、「ウェルズではなくヴェルヌ」って点で、デルヴォーの作品は日本人にも人気があるんじゃなかろうか。

数年前に東京でデルヴォー展やった際にも観にいった。その時の目玉は「クリジス」だったっけ。あと、題名は忘れたけど筒井康隆の長編小説『パプリカ』のタイトル絵に使用された作品もあった気がする。けれどいちばん印象に残ったのは二人の女性(もちろん裸)が抱き合っている「女ともだち」という絵を見た同行者が「どういう友達なんだよ!」と叫んだこと。
地方でもけっこうやってるのな、デルヴォー展。

それにしても、出せばそこそこ売れると思うのに、手頃な画集もあまり見かけないのは残念だ。
図録もいいのだが、「『アッピア街道』がないよ」とか「『月の位相』や『隠棲の館』も入ってればなあ」とか小うるさい注文もカバーできるような決定版の画集をひそかに期待しているのだけれど。