小さいながらも鮮明な黄色の花が緑の葉に映える「コウホネ」。この時期に水辺でみられる黄色の花は少ないので目立つ。「河骨」と書かれて俳句の世界でも好まれた題材である。「沼の風河骨の黄を沈めけり 中村苑子」。
(2022年初夏 川崎市)
初夏の花シリーズ(2022年初夏)
「キンシバイ」(初夏の花 2022-01)
「どくだみ」(初夏の花 2022-02)
「アマリリス・アップルブロッサム」(初夏の花 2022-03)
「カラー・ピカソ」(初夏の花 2022-04)
「ペンステモン・ハスカーレッド」(初夏の花 2022-05)
「オルレア」(初夏の花 2022-06)
「 サルビア・ミクロフィラ・ホットリップス」(初夏の花 2022-07)
「アスチルベ」(初夏の花 2022-08)
「ゴデチア」(初夏の花 2022-09)
「ルリマツリ」(初夏の花 2022-10)
「アネモネ・ヴィルジニア」(初夏の花 2022-11)
「ハタザオキキョウ」(初夏の花 2022-12)
「サフィニア」(初夏の花 2022-13)
「エケベリア "七福神"」(初夏の花 2022-14)
「ホタルブクロ」(初夏の花 2022-15)
「ハクチョウソウ」(初夏の花 2022-16)
「マルバシモツケ」(初夏の花 2022-17)
「ブルビネ・フルテスケンス」(初夏の花 2022-18)
「オオヒエンソウ」(初夏の花 2022-19)
「キリンソウ」(初夏の花 2022-20)
「西洋オダマキ”イエロークイーン"」(初夏の花 2022-21)
「シラン」(初夏の花 2022-22)
「ワスレナグサ」(初夏の花 2022-23)
「トキワツユクサ」(初夏の花 2022-24)
コウホネ(河骨)
多年草
北海道〜九州の湖沼やため池、河川、水路などに生育する抽水植物。深い湖沼では浮葉植物となる場合もあり、また流水域では沈水葉だけの群落も見られる。コウホネ属では最も大形の種。太い地下茎が横走し、分枝した地下茎の先端に葉は束生する。沈水葉は薄い膜質、長さ10〜50cm、幅6〜18cm、葉縁は波打つ。抽水葉と浮葉は長卵形〜長楕円形で長さ(12〜)20〜50cm、幅(5〜)12〜20cm、基部は矢尻形。直径3〜5cmの黄色の花を水面上に咲かせる。色づいた部分は萼片で5片、その内部に退化した花弁がある。雄しべは多数、雌しべは多数の心皮が合生して1つとなり、各心皮の柱頭は柱頭盤上に放射状に配列する。柱頭は黄色で先端部は柱頭盤から突き出て歯牙状になることが多い。雌性先熟。果実は卵形で緑色、中に多数の種子がつまる。花期は6〜10月。(日本の水草)
学名は、Nuphar japonicum
スイレン科コウホネ属
河骨 の例句
がつしりと河骨咲ぬ水の上 三宅嘯山
つつまれし翳河骨の花の中 山口青邨
半月や河骨うごくかくれ水 加藤秋邨
口下手にして河骨の曇るなり 橋閒石 和栲
古きことききぬ河骨の花あらた 山口青邨
古池に河骨さわぐ嵐かな 正岡子規 河骨
国原に河骨の花 無辺在 伊丹三樹彦
打てばひびく河骨の鈴なりけり 安住敦
時計櫓で進む長針 河骨咲く 伊丹三樹彦
橋の下闇し河骨の花ともる 山口青邨
水抽きてより河骨の咲く高さ 後藤夜半 底紅
水渺~河骨茎をかくしけり 黒柳召波
池の底からの存問河骨黄 後藤比奈夫
沢瀉に河骨まじる小川かな 正岡子規 河骨
河骨にかゝる匂ひや早稲の花 牧童
河骨にきこえて祭ばやしかな 森澄雄
河骨にしては寒さよつばのはな 如行
河骨にそぞろ足する男かな 斎藤玄 雁道
河骨にとゞめし舟の吹かれ寄る 高野素十
河骨にわりなき茎の太さ哉 正岡子規 河骨
河骨に佇ちて誰よりも女なる 斎藤玄 雁道
河骨に寝不足の日のありにけり 亭午 星野麥丘人
河骨に影うかび来るいもりあり 水原秋櫻子 緑雲
河骨に日は照りつゝも梅雨入雲 西島麦南 人音
河骨に稀の落葉を法の松 清崎敏郎
河骨に立ちたる鷺も月を待つ 水原秋櫻子 晩華
河骨のいつも濃き彩花も葉も 右城暮石 天水
河骨のところどころに射す日あり 桂信子 草樹
河骨の上に撥橋撥ねてかかる 山口青邨
河骨の中なる鳰にふりむかる 岡井省二 明野
河骨の咲きしを電話にて知らす 飴山實 少長集
河骨の咲けば咲いたで行々子 森澄雄
河骨の夕占めくを通ひ路に 齋藤玄 飛雪
河骨の影流れ去り流れ去り 清崎敏郎
河骨の暮れてかなしき車椅子 赤尾兜子 玄玄
河骨の最後の花に間にあひし 飯島晴子
河骨の棒ばかり立つ水明り 飴山實 辛酉小雪
河骨の横にながれて咲にけり 正岡子規 河骨
河骨の水の傷みに顔映る 桂信子 新緑
河骨の水を出かぬる莟哉 正岡子規 河骨
河骨の水底をゆけり別れ星 三橋鷹女
河骨の水抽きかねて黄なりけり 臼田亜浪 旅人 抄
河骨の水色見する力かな 馬場存義
河骨の池に着きたり嗚呼といふ 飯島晴子
河骨の浮葉か寒し濃むらさき 石川桂郎 高蘆
河骨の玉の莟の底ゆらぎ 山口青邨
河骨の箔さへ古りて静かなり 麦水 葛箒
河骨の花たゆたへり沼の朝 飴山實 句集外
河骨の花や奥処の常闇に 山口青邨
河骨の花一時もさるほどに 嵐雪
河骨の花咲く川のよどみ哉 正岡子規 河骨
河骨の花浮くかとぞ見えにける 正岡子規 河骨
河骨の花芽つんつん 蝌蚪ぶるぶる 伊丹三樹彦
河骨の花起き直るさでのあと 正岡子規 河骨
河骨の葉と葉と花とさし交す 飯島晴子
河骨の蕾乏しき流れ哉 正岡子規 河骨
河骨の足もとに咲き沖に咲き 山口青邨
河骨の金盃を高く同人等 山口青邨
河骨の金鈴ふるふ流れかな 川端茅舎
河骨の金鈴まろぶ水の上 山口青邨
河骨の青き蕾の猛きとき 山口青邨
河骨の驚きもせぬ出水かな 正岡子規 河骨
河骨の黄のすがれしも残暑かな 安住敦
河骨の黄を来迎の黄となせる 後藤比奈夫
河骨は海士もたのまず浮みけり 中川乙由
河骨も下から行てかきつばた 土芳
河骨も下から行るかきつばた 土芳
河骨も絵図にかきけり干満寺 河東碧梧桐
河骨やしんと日傘を透す日に 中村汀女
河骨やすつぽんの胆を花に咲く 素丸 素丸発句集
河骨やちごの遊びのうらやまし 正岡子規 河骨
河骨や善女ばかりがぞろぞろと 佐藤鬼房
河骨や天女に器官ある如し 永田耕衣 人生
河骨や天女を破りたる如し 永田耕衣 人生
河骨や女人を愛せざれば死ぞ 永田耕衣 物質
河骨や水にこはげな雲の陰 三宅嘯山
河骨や水にはりあふ葉のつよみ 万子
河骨や水底を切ル鎌軽し 東皐
河骨や水皺に貌のまじりたる 桂信子 花影
河骨や池それぞれに岳の影 水原秋櫻子 緑雲
河骨や終にひらかぬ花盛 素堂 いつを昔
河骨や雨の切尖見えそめて 小林康治 四季貧窮
河骨や黄陵廟の女巫 三宅嘯山
河骨をくだく罪有鵜ぶね哉 中川乙由
河骨を剪らんと水と諍へる 後藤比奈夫
河骨を見てゐる顔がうつりけり 山口青邨
河骨を見てをり宇治にいとまかな 森澄雄
河骨を讃めてや午の奈良茶粥 岡井省二 有時
河骨を難かしき顔見てゐたり 飯島晴子
沼の風河骨の黄を沈めけり 中村苑子
泥ともに河骨かわく川辺哉 正岡子規 河骨
湿原に沼の目河骨の金一点 福田蓼汀 秋風挽歌
由布院に河骨の池なかりけり 雨滴集 星野麥丘人
陵を遥拝すれば 河骨咲く 伊丹三樹彦
鮒汁や河骨しほむ門の脇 正岡子規 河骨